第二次世界大戦中に中国から広島県の建設現場に強制連行され、重労働を強いられた中国人たちの「受難の碑」が中国電力安野発電所(広島県安芸太田町)の敷地内に完成し、23日、除幕式があった。施工業者の西松建設(東京都)と中国人側による和解成立から1年。式には、邵義誠(シャオイチェン)さん(85)ら元労働者5人のほか、遺族や支援者、西松建設関係者ら約100人が参列した。
発電所は軍都だった広島の電力を賄うために建設され、西松建設の前身・西松組は1944年4月、中国から360人を強制連行した。最高裁は2007年、中国人側が西松建設に賠償を求めた訴訟で請求を棄却したが、強制連行の事実を認めて自主的な解決を求めた。09年10月、西松建設が(1)歴史的責任を認識し謝罪の意を表明(2)被害補償や記念碑建立などを目的とする基金設立のため2億5000万円を支払う--とする条項で和解した。
碑は高さ3・6メートル、横1・3メートル。強制連行の歴史や訴訟経緯、360人の氏名などを記し、「歴史を心に刻み、日中両国の子々孫々の友好を願ってこの碑を建立する」と結んでいる。原告だった邵さんは「両国の国民が歴史を確認できるだけでなく、友好を大切にし、再び悲惨な歴史を繰り返してはならないと青少年に伝えていける」と話した。【寺岡俊】
毎日新聞 2010年10月23日 大阪夕刊