January 01, 2009

【年頭所感】 2009年を迎えて 「反省」と「決意」と「宣言」  【テレビ撤退宣言】

2008年大晦日、甲府湯村で湯に浸かる。
ここは甲府富士屋ホテル、かつての友の働く場所。
湯気の向こうに星が瞬き、寒風が露天の風呂を吹き抜ける。
来し方行く末をひとり振り返り、一年間の数々の無礼に思いを馳せる。
まずはこの場をお借りして、取材対象者およびその関係者のみなさまにお詫び申し上げたい。

「不幸」があり飛んできた大晦日の夜。
ひとり入ったホテル前のラーメン屋、思わぬ「宴」が開かれた。
岩手・石巻の漁師と、河口湖出身の若い店員二人、そして私。
見知らぬ男四人が、何度も杯を傾ける。
年の瀬、私は初対面の漁師からビールとラーメンと餃子を馳走になった。
彼も含めて、一年間、お世話になったすべての人々に改めて感謝する。

わずか4年前、同じ山梨で過ごしたリハビリの日々。
いまは、それも、遠い昔……。
当時の「見舞金」、お見舞いの品々への御礼、昨年、今年の年賀状など、私は一切、怠けている。
自らの「怠惰」と「忘恩」、いま、それらを心から恥じる。
ご容赦願うとともに、なおしばらく時間を頂くことをお許しいただきたい。

振り返れば、私にとっての2008年は「アウトプット」の年だった。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ネット……。
考え得るメディアは可能な限り登場するようにした。
それはある意味で、そうした行為を「武器」にしようとしていた計算があったことも否めない。

背景には、一冊の本がある。
10年に及ぶ「記者クラブ」との戦いを世に問うた「ジャーナリズム崩壊」。
それは、かつての恩人たちを切り刻む行為に他ならない代物となるはずだった。
そして、実際にそうなった。

同業者、つまり仲間からの怒りは、よくわかっていた。
実際、表沙汰にならない多くの「反発」「反撃」「脅迫」が続いている。

しかし、それでもこの作業は、いつかはやらなくてはならないものだったのだ。
いまになって明かせば、10年間、私はずっとそのつもりでいた。
だから、上梓したときは本当に職を辞そうと考え、他の職業を探したものだった。
そのための「武器」としての多メディア露出でもあったのだ。

ところが、いまや、私にはまったく違う気持ちが芽生えている。
それは、きっと、いつか、わかってくれるだろう、という都合のよいものでもあり、思ったより早く結果が見えそうだ、という予感でもある。

今年2009年、日本のジャーナリズムは最大の危機を迎えるだろう。
記者クラブは開放され、メディア界にも真の競争が訪れるはずだ。
すでに、激しい波はメディア界に押し寄せてきている。

旧来のビジネスモデルは崩壊し、新聞・テレビとも変革を余儀なくされるだろう。
そこには、自主的な改革が求められている。
「できるか、できないか」の時代はもはや終わったのだ。
時代はすでに「やるか、やらないか」の選択を業界に迫っている。

ジャーナリスト生活10年。
思えば、それは決して短くない道程だった。。
1999年、ニューヨークタイムズに入り、岩瀬達哉氏の『新聞が面白くない理由』の解説を書いたときから、こうなる運命は決まっていたのかもしれない。
あの時、「記者クラブ開放はやっぱり無理だよ」という岩瀬氏の言葉を聞いて、「ならば、自分が」と勇んだのは紛れもない事実だ。

いま、「記者クラブ」は、メディアのみならず、日本社会全体をも蝕もうという機関に成り下がっている。
2009年、政権交代があれば、「内閣記者会」は、きっと開放を余儀なくされるだろう。
そうすれば、日本全国数百とも言われる「記者クラブ」のすべてに大きな影響を与えるに違いない。
そのときに、日本のジャーナリズムが変わる最後のチャンスも訪れるのだ。
また、個々のマスコミにとっても、生き残れるかどうか、厳しい対応を迫られることになる。

これは予言ではない。
確実に起こることなのだ。
その結果次第で、私の将来も決する。

そのための準備はすでにできている。

そこで私自身、次の「宣言」によって、自らの立場を明確にしておく。
春先から準レギュラー出演してきた地上波のテレビ番組を、遅くとも今年度いっぱいで終わりにしたい。
各々の番組担当者には、正月明けにも「お願い」と「お詫び」の連絡をしようと思う。
本当に、身勝手で申し訳ないが、その分、年度末まで猶予を置いた点をご理解いただければ幸いだ。

「辞退」の最大の理由は、総選挙取材の準備のためである。
1月5日から始まる通常国会に対応するため、永田町取材とテレビ出演の両立は難しいと判断した。
また、その先にはもちろん、記者クラブが開放した場合に備えての用意もある。

さらに正直にいえば、私自身がひとりでできる仕事量はすでに限界に達している。
これまでの10年間の取材による情報の蓄積は、すでに出し尽くした感がある。
いわば、いまの私は、出涸らしのジャーナリストにすぎないのである。
そうした人物が、日々のニュースについてコメントするのは、視聴者にとっても失礼なことだ。

再び、努力をすべき時が来たようだ。
場合によっては、これが最後になるかもしれない。
だが、今年は間違いなく、総選挙があり政界再編のスタートとなる年でもある。
そのときに、取材活動という最重要のインプット作業を怠れば、私は本来の職分を見失うことになる。

私は、2008年後半の自身の仕事にまったく満足していない。
私は、取材者(ジャーナリスト)であり、評論家(コメンテーター)ではないはずだった。
にもかかわらず、率直に振り返れば、自らの立場を見失い、取材不足のままアウトプットをし続けた。
それが2008年の私であった。
結果、何度、反省してもし足りないくらいのお粗末な仕事ぶりを晒すことになったのである。

よって2009年は、その反省の上に立って、自ら変わらなければならない。
そのために、総選挙が終わり、政治取材が一段落するまで、長時間の準レギュラー番組の出演はすべて辞退したい。
それが、私の新年の決意である。

関係者には、ご理解をご容赦を賜れば幸いである。


2009年元旦 

上杉隆拝

uesugitakashi at 02:25│Comments(26)この記事をクリップ!おしらせ 

この記事へのコメント

1. Posted by 浅利情報漏洩本部   January 01, 2009 03:01
年頭所感、拝見しました。

昭和30年生まれの岩瀬さんと上杉さんの年の差13歳。上杉さんと拙者が6歳差。
同じフリー記者として、現時点で、記者クラブ開放運動の末席を汚す実力を持ち合わせているとか、同志として心強い存在になり得るとか、そんなおこがましいことは勿論考えていませんが、自分も、同じ道を歩んでいきます。

そして、ここを訪れる一般の方々のほとんどは、自身の言われる通り、今や電波露出が盛んになったことで、知名度が格段に上がった、政治方面を追う上杉氏の発することにその都度反応し、様々な意見を寄せているのだと思いますが、世の中は、言うまでもなく政治・政局だけで動いている訳ではなく、本来関心を持たねばならないことは、それ以外にも当然あるはずです。いわゆる永田町政治とか政局は、追う先達が幾人もいるので、私が関わるジャンルではないと心得ていますが、今年は、私も、それを除く社会分野全般においては、例外を設けず対峙していく所存です。

コメント欄をお借りして、同業の者として「便乗所感」とは場違いは承知の上ですが、岩瀬さんとの話のくだりなどにふれ、つい言わずにはいられませんでした。

2009年、拙者も、無所属のジャーナリストとして、次の一歩を進めていきます。
2. Posted by kibalt   January 01, 2009 05:41
やっぱりどう考えても民主主義医にとって必要なもののひとつに、健康なディスクロージャーがあると思います。本当の情報提供機能をもつジャーナリズムの出現を待ち望む人は増えていると思いますよ。

声は聞こえないかもしれませんが、上杉さんの思いを共有してる一般人も増えていると思います。

「ニュースの深層」も降板か?と思いましたが、テレビ出演辞退は「地上波の番組」だということなので、安心しました。メイさん僕と結婚してください。

では、上杉さんの今年の過労死寸前までのハードワークと、よりたくさんの執筆活動を期待しています。本は買いますから!
3. Posted by ニック   January 01, 2009 06:31

ジャーナリストとして、総選挙あるし地上波に不公平にもでれませんよね

選挙関連の著書を楽しみにしてます。
4. Posted by yoko   January 01, 2009 09:23
5 いつも鋭いコメントを楽しみにしています。

大阪のテレビも辞めてしまうのですか?
選挙が終われば、また戻ってくるのですか?
ニュースの真相はどうしはるんですか?

質問ばかりですいません。

総選挙が終わればまた戻ってくるんですか?
最後の取材って?
これから上杉さんをどこで見られるんでしょうか?

本当に質問ばかりで・・・(笑い)
まずは、お身体に気をつけてがんばってください。
5. Posted by ルル3   January 01, 2009 21:48
ジャーナリズム再編、大いに期待します。
受け手のこちら側も問われている気がするな。
6. Posted by 番記者   January 02, 2009 01:27
いつか、大手マスコミ関係者が「ああ、あの頃は、所詮ジャーナリストごっこをやっていたにすぎなかったんだなあ・・・」と、己を振り返る日が来ることを願って。
7. Posted by GonSun   January 02, 2009 09:54
朝日ニュースターは続けるべき。
インプットの場でもある筈。
またそうできる筈。
ゲストを選ぶ事で。
記者クラブ制度と闘う場の一つである筈。
取材の場ともする事で。
まあ、勝手を言わせてもらうと、
火曜日の唯一の楽しみだから、
その楽しみを奪うのはケシカラン!
8. Posted by 司馬遼次郎   January 02, 2009 15:24
5 記者クラブ崩壊、政権交代、
この国の民主主義が試されていますね。
頑張れ!!上杉!!
平成の福沢諭吉になってください。
御身体を大切に。
9. Posted by MegJungle   January 02, 2009 17:29
5 昨年中は上杉さんの著作、出演番組など
存分に楽しませていただきました。
ありがとうございました。

今年は日本の煮詰まり切った政治状況にも
ジャーナリズムにも変化がありそうで、
期待できるってことですね!

応援してます。頑張ってください!
10. Posted by かんべえ   January 02, 2009 18:21
一読してやっぱりね、と感じました。
引き続き応援しますよ。今年もよろしく。
11. Posted by 姫   January 02, 2009 23:10
『一陽来復』
あの年賀状、大切にしてます(^o^)
12. Posted by 案山子   January 04, 2009 00:44
かっこいい言葉を並べ立てているけど、人の心を引き裂き、傷つけ、そしてその痛みをなんら省みることもなく踏み台にしてきたということも、忘れないでほしい。
13. Posted by dondon   January 04, 2009 01:27
久しぶりに書き込みます。
上杉さんの記事はたしかに書かれた人は傷ついているだろうなと思います。
でも、上杉さんはいつも強き者側を叩いている姿勢を貫いている人だと思ってみています。
その中にたまたま踏み台になってしまった人もいるのでしょう。
それに痛みを忘れていないからこうして反省できるんじゃないですか。
案山子さん、あなたこそかっこいい言葉を並べても、具体性がないから心に響きませんよ。
14. Posted by kaichukin   January 04, 2009 17:58
4 あいかわらず、面白いですね…

1)崩れそうになかったものが「案外早く崩れそう」なのは、たしかそうに見えます。ここまではよさそうですね。形を変えるだけのような気もしますが。

2)溜まった仕事は、つながることによって流れるようになるでしょう。個別の流れは複雑そうですが、単純な法則が形を変えているだけかもしれません。でも、水面をずーっと見つめていると気分が悪くなるかもしれませんね。

3)ところでつながるって何のことでしょうか。例えば今日比谷にいる300人だかの人たちが、そのまま居残って増え始めたらどうなるでしょう。つながるっていうのはそういうコトです。一揆やデモとはちょっとちがうわけです。

4)ま、状況は変わるでしょうから、周りを見渡してしばらく見てみるのも良いのではないのでしょうか。故に別に辞める必要はないと思えます。
15. Posted by ラジオからも撤退?   January 05, 2009 14:58
ってことはラジオからも撤退ってことですか?
もしラジオからも撤退ならとても残念です。
16. Posted by 文衛門   January 05, 2009 19:54
感度良好 ご立派。

最近の露出の多さから宮崎・勝也にならないかと
心配していましたが、心配無用ですね。

応援してます 頑張って下さい。
17. Posted by ほっとあいず   January 06, 2009 17:40
色んな意味で、今年は色んなトコロで、本当の意味の「改革」が起こらないと、日本に明日は無い!んでしょうね

特に、色んなコトが集まって来る(≒いる)ニッポンの中央の場所
其処が、改めて新しい革袋(システム)になって貰わないと...

その現場からのレポート、本当のジャーナリズムに期待します 

北の空から ツ(^o^)シ
18. Posted by うとうと   January 06, 2009 23:50
5 いつも応援してます。

健康に気をつけてがんばってください。

19. Posted by 心乱   January 07, 2009 02:06
5 いつも上杉さんの報道を拝見しております。ひたむきな姿は皆に伝わっております。今後とも健康に留意され、ご活躍されることを祈念します。
20. Posted by ラジオからも撤退?   January 07, 2009 11:23
ラジオは引き続き出演なさるみたいで安心しました。テレビに出過ぎると劣化しちゃいますからね。

ラジオと活字でがんばって下さい!!
21. Posted by いぐいぐ   January 07, 2009 22:05
怒濤の一年が始まり、既に多忙な日々をお過ごしの事でしょうね。。。お疲れさまです

ぇえ〜と、私如きがコメントするのは烏滸がましい事なのですが…

メディアだろうが、誌面だろうが、何処で活動されても良いと思います!TVに出た事によって脱力氏の“弁”に共感し、応援している人が増えたのも確かな事です。

脱力氏の軸がブレずに、脱力的ジャーナリズムを貫いて下さい!外野があ〜だのこーだの言う事ではないので…
あっ!軸がぶれない為にも取材活動に集中するんでしたね! (^^ゞ失礼!

フリーは体が資本なので体調万全で頑張って下さい!!非力ながらエールを送る一人です∠(^_^)

22. Posted by 高瀬真実   January 08, 2009 12:16
いよいよ鳩山新党で出馬ですか?(^^ゞ

政治家には絶対にならないと決めている小生とは、進む道は少し離れるかもしれませんが、同じ道を歩んできた者として、応援しています。選挙イヤーの今年は、お互い転機かもしれませんね。(^_-)-☆
どんな結果になろうが、引き続き上杉君は、小生の友人です。

土日は休むを徹底し、上杉君よりはるかに「脱力ジャーナリズム」を実践しているどらえもんより
23. Posted by Tak   January 10, 2009 15:58
4 「ジャーナリズム崩壊」の名もなき読者です。

上杉さんの、その覚悟やよし、です。記者クラブが壊れて、大新聞の記者の方々が、自分で体力と頭を使って書いてくれる日が来るのを待っています。

がんばって取材と物書きをしてください。本が出たら買って応援させていただきます。

フレーフレー、うえすぎ!
24. Posted by やま   January 20, 2009 19:10
上の高瀬何がしへ。
勝手に、他人のことで誤解生む妄言垂れ流してるけど、それでも記者かよ。所詮週刊現代の契約はその程度のデタラメ吐いてれば勤まるのかって呆れる。
上杉だって政治屋になんてなるわけないし、なれないって。プレイヤーには死んでもならないと言ってるんだし。
自分の進路を決する云々は、政治モノから完全に足洗うことを指していて、贅沢紀行とかのライターに転ずるっていう意味で、電波で出るのが武器になったつもりとか準備云々は、そっちで仕事貰えるように顔売れたらという意味だしょ。
的外れな妄想は、自分の脳内だけなら結構だけど、卑しくも記者名乗って、他人に迷惑になる嘘を吐いて、わざと誤解招くなら、ゴシップライター以下の嫌がらせだろ。
25. Posted by ひろ   March 26, 2009 01:19
簡単に言いたい。
・ジャーナリズムは常に中立の立場でなければならない。
・事実だけを正確に、記事もしくは放送物にして公に伝えなければならない。
・「〜ではないのでしょうか?」などといった憶測を交えた報道、発言は人民の感情もしくは情報内容を扇動するものであり使用してはならない。
・私事、個人の感情を込めた一方的な視点のみからみた発言、文章はしてはならない。
・よくジャーナリストもしくは記者、報道側に"ペンは剣よりも強し"といった言葉はあるが、それは国家武力によって文章の検閲があったころの記者の志のようなものであり、実質検閲のない今の国家の主権を批判する理由に値しない。
・ペンを持つものは金で手を(口を)動かしてはならない。
・派閥にとらわれ一点的な視点に甘んじてしまってはならない。
・世の中の風潮に敏感であっても、流されてはならない。
・批判からは不安しか生まれないが、賞賛は安心を生む。安心は良民を生む。
26. Posted by 野中 達夫   March 26, 2009 21:00
4 大賛成です。ガンバッテください。
NHKの国谷女子の小沢代表TV出演時や3/25の日テレアナウンサーのWBC選手へのインタービューの下手クソ加減には辟易しました。
また、政府筋等の匿名報道による世論誘導等
現在のマスコミは政府与党の広報機関となり、
批判論評はポーズでしかありません。

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