【コラム】韓国が大国の力に相対するために(上)

 称賛の言葉を聞いても喜んでばかりはいられない。称賛の中には毒が埋め込まれていることもあるからだ。高学歴者による競争が激しい社会ほど、称賛の中に、相手の弱みにつけ込もうとする意図をうかがい知ることができる。政界でもそうだ。「優秀な頭脳」「才能豊か」「弁舌に優れる」といった称賛の言葉を聞いた瞬間、絶対に緊張を緩めてはならない。こうした言葉の背後には、「要領がよい」「鎌かけがうまい」「口達者」などの意味合いが隠れている。このことを理解していなければ、いつ、どのような災難に見舞われるか分からない。やたらと称賛する人間を警戒せよ、という意味ではないが、称賛の背後にはどのような意図が隠されているのか、一度振り返る必要があるということだ。

 1996年1月11日、フランスのミッテラン元大統領の葬儀が執り行われた際、その場に必ず出席すべき人物の姿が見えなかった。野党時代から、そして14年間の大統領在任中も、常にミッテラン氏のそばを離れず、「ミッテランのノートパソコン」とまで呼ばれた特別補佐官、ジャック・アタリ氏だ。大統領に就任するための試験が行われた際には、間違いなく首席で合格するといわれていた人物だ。ミッテラン元大統領は社会党党首時代、わずか34歳の若いアタリ氏を経済顧問として採用し、自らのポケットに入れるように、常に同行させた。二人の関係を知る人なら誰もが、アタリ氏が葬儀に出席しなかったことに疑問を感じたが、これにはそれなりの理由があった。問題はアタリ氏の口の軽さだった。葬儀の数年前、アタリ氏は大統領の補佐をしていたころの出来事を記録した日記を基に本を出版したが、その中でミッテラン元大統領が「ドイツが統一すれば、また欧州で戦争を起こすだろう」と語った事実を暴露した。これは今でも、ドイツ統一に対してフランスが本心ではどう考えていたかを説明する際、引用される表現だ。これに腹を立てたミッテラン元大統領はアタリ氏を死ぬまで絶対に許さず、遺族もその意向を受け、同氏を葬儀に招かなかったというわけだ。

 日本の右翼には親米という固定観念がある。しかし、とりわけ極右といわれる人物に会うと、彼らが自らの激しい反米感情を自然と口にすることに驚くことがある。米国のニクソン政権が1971年に中国との国交正常化に向けた秘密交渉を行っていた当時、ニクソン大統領の下で安全保障を取り仕切っていたキッシンジャー補佐官は、日本の軍国主義の復活を懸念する中国の周恩来首相に対し、「日米安全保障条約と在日米軍が、日本の軍事大国化を阻止する役割を果たしている」と語ったという。国と国との非公開の対話内容を、どちらか一方が故意に、あるいはミスで公開した場合、このような結果を招くことになる。漏れた情報が事実と異なっていた場合、状況はさらに深刻化するだろう。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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