2010年10月23日7時43分
【北京=吉岡桂子、広州=小林哲】中国で停電が続出している。年末に期限がくる国の省エネ目標を達成しようと、地方政府が電力の供給を制限しているからだ。突然の停電で人々の生活や日系企業の工場にも影響が出ている。
「電力の供給は毎日午後6時から10時まで」――。河北省のある村が10月、「無差別停電」を始めたところ、抗議が殺到。村は22日、「エネルギー効率の悪い企業は淘汰(とうた)するが、学校や病院への送電は保障する」と通知を出し、停電は「電線の修理のため」と弁解した。同省のほかの村でも9月、ろうそくが値上がりしたり、ポンプが止まって野菜の水やりが滞ったりした。
中国政府は2010年までの5カ年計画で、国内総生産(GDP)単位あたりのエネルギー消費量を05年より20%減らす目標を掲げる。だが、金融危機もあって省エネへの取り組みが後回しになり、今年上半期は微増。残り半年で約5%を減らさなければならなくなり、生産活動のもとになる電力を制限したようだ。
中国共産党・政府は人事評価に近年、省エネ・環境への対応を加えており、温家宝(ウェン・チアパオ)首相は「(割り当てた)目標を達成できなければ責任を追及する」と明言。地方政府の幹部はしゃにむに動いている。中国は過去、設備の老朽化や消費の伸びに発電が追いつかずに停電を迫られたことはあったが、意図的な停電は初めてという。
工場向けに停電に踏み切る都市も多い。8月末以降、江蘇、浙江、山東省などで日系企業にも影響が出ている。突然の通知で5日連続の停電を命じられたり、送電量を2割減らされたり。増産を見こんで新しい設備を導入したとたんに停電され、資金繰り難に陥った企業もある。1カ月、操業停止になった中国の製鉄会社もある。