【ジャカルタ佐藤賢二郎】インドネシア国軍の兵士が東部パプア州で住民を拷問する様子を撮影したとされる映像が流出し、その残虐さが問題になっている。パプアでは今も分離独立を求める武装組織による小規模の武装闘争が続き、これを弾圧する国軍や警察による住民への人権侵害が報告されている。国軍のスハルトノ長官は18日、調査を命じたことを明かし、「関与が明らかになった兵士は法的な裁きを受ける」と話した。
映像は「パプア解放軍」を名乗る投稿者が先週末、動画共有サイト「ユーチューブ」に投稿した。約10分間、2人のパプア人が拷問を受ける場面が記録されており、映像の属性情報などから3月に撮影されたとみられる。
1人は首や鼻にナイフを押しつけられ、顔を何度も平手でたたかれている。もう1人は全裸で横にされ、兵士とみられる男が「武器はどこにある」と尋問しながら足で踏みつけ、熱した棒で男性器を焼いている。「お前はうそつきだ。焼け、焼け」という尋問者の声と男性の叫び声が響き渡る。
地元メディアなどによると、撮影場所はパプア州ブンチャック・ジャヤ県。この地域には独立闘争を続ける武装組織「自由パプア運動」(OPM)の基地があるとされ、国軍が掃討作戦を続けている。映像の男性2人は、3月に同県の国軍検問所で目撃されたのを最後に行方不明になっているという。
パプア州を含むニューギニア島西部を植民地支配していたオランダは61年、西パプア共和国として10年後の独立を承認。しかし、インドネシアは69年に自ら選んだ住民代表約1000人による投票で強引に併合した。
パプアは天然資源が豊かで米国系企業が採掘する世界有数の金・銅鉱山があるが、今も貧困率は国内で最も高く、中央政府や外国資本に収奪されているという不満が強い。独立運動への支援を警戒する政府は、メディアや人権団体関係者を含む外国人のパプア入りを厳しく制限している。
西パプア亡命政府の外相を務めるヤコブ・ルンビアック氏は「過去40年間で40万人以上のパプア人が殺害された。この映像はインドネシアによる虐殺や人道に対する罪が今も続いていることを示している」と話す。
毎日新聞 2010年10月20日 20時40分(最終更新 10月20日 21時48分)