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社説:観客数水増し ファンも泣いている

 サッカーJリーグ1部、大宮アルディージャが主催試合の入場者数を水増し発表していたことが分かり、社長が辞任に追い込まれた。

 スポーツに限らず、国内での各種の興行では観客の数を水増しして発表するのは珍しいことではない。ましてプロの興行では「景気づけ」の意味でも観客は多めに発表されるのが慣習化し、税金のごまかしなど違法行為を伴わない限り、許容されてきた面もある。

 これに対し、Jリーグは93年の発足当初から観客の実数発表を各クラブに義務づけた。興行に伴う不明朗感をぬぐい去り、経営の透明化を図ることが狙いだった。しがらみのない後発のプロ興行だからこそ可能な、志の高い挑戦で、スポンサーなどからも信頼を得てきた。

 それだけに、今回の大宮のケースは残念でならない。Jリーグの大東和美チェアマンも「多くのファンを裏切り、他のクラブの努力を踏みにじる行為」として大宮に対する制裁処分の検討を始めた。

 チームの発表によると、水増しは07年秋、ホームの「ナック5スタジアム大宮」の改装初戦以降、足かけ4シーズンにわたって主催した全58試合で行われていた。水増し数は08年は1試合平均約1300人、09年は同2400人にふくれあがり、累計では11万人に達した。

 大宮と同じ、さいたま市をホームとする浦和レッズは1試合平均4万人を超す日本一の観客動員数を誇る人気チームだ。後発の大宮には浦和に対抗し、観客数で追いつきたいという焦りがあったのだろう。

 水増しが発覚したのは今月2日の浦和戦だったが、そこには皮肉な現実も潜んでいた。その試合は大宮の主催ゲームだったにもかかわらず、浦和の本拠である埼玉スタジアムを使用した。大宮の本拠地スタジアムの収容人員が約1万5000人なのに対し、埼玉スタジアムは6万人を超す収容能力を持つ。しかも浦和のサポーターが多く応援に来ることも期待できる。

 「さいたまダービー」を盛り上げるため、現実的な選択として大宮が埼玉スタジアムを使うことは批判できないだろう。だが、本拠地に浦和を迎え撃てない大宮サポーターは寂しい思いをしているのではないだろうか。

 Jリーグが始まって17年。スポーツ興行の大先輩であるプロ野球にもさまざまな影響を与えている。プロ野球が05年から観客の実数発表に踏み切ったのはその一例だ。互いに影響を与えつつ、ともに発展していくのが望ましい姿だ。Jリーグは今回の大宮の不祥事を教訓に、より地に足の着いた形で日本のスポーツ文化の発展に努めてもらいたい。

毎日新聞 2010年10月23日 2時30分

 

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