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【高橋昌之のとっておき】尖閣問題 前原外相まで「弱腰」か (4/4ページ)
しかし、尖閣諸島については領有権問題は存在しないので、ここで少し、解説したいと思います。日本政府は明治28(1895)年、尖閣諸島の現地調査を何度も行って、清国の支配が及んでいないことを確認したうえで、標杭を建設する閣議決定を行い、日本の領土に編入しました。これより前の歴史を遡(さかのぼ)っても尖閣諸島は日本の領土である南西諸島の一部を構成していて、1895年発効の下関条約に基づき、清国から割譲を受けた台湾などには含まれていません。
また、サンフランシスコ講和条約においても、尖閣諸島は日本が放棄した領土には含まれず、米国の施政下におかれ、1971(昭和46)年の沖縄返還協定によって、日本に施政権が返還されました。この点については米政府も日本と同じ見解です。このように歴史的経緯、国際常識からいっても尖閣諸島が日本固有の領土であることは、疑いのない事実なのです。
これに対し、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、1968年に行われた国連の海洋調査で、大量の石油が埋蔵されている可能性が指摘された後のことです。中国の領有権主張がこの資源ねらいであることは明白で、その主張には歴史的、資料的合理性はありません。ですから、日本がこの問題で「弱腰」になる必要は全くないのです。日中友好関係は大事ですが、その友好関係を壊しているのは中国であって、日本ではありません。
それにもかかわらず、菅政権が「弱腰」になっている背景には、中国と対立したくないという「事なかれ主義」や、中国によるレアアース(希土類)の輸出停止など日本経済への影響に対する懸念があると思います。しかし、尖閣問題は外交が守るべき根幹の領土の問題であって、非は明らかに中国側にあるのですから、絶対に譲歩してはなりません。
一方、今回の尖閣問題は、日本がとるべき安全保障上の教訓を示しています。安全保障は単に軍事面だけではなく、経済、食糧、資源といった総合的な要素で構成されます。中国が信頼できる同盟国ならば、総合的な依存関係であって構いませんが、残念ながら中国は、日本にとって信頼できる国にはなっていません。その意味で、日本が中国一国に過度に依存している現状は見直す必要があります。
レアアースはすでに、他の国からの供給が受けられるように動き出していますが、経済面でも中国依存体質から脱却していく必要があります。そうしなければ、中国から「日本は経済制裁をすれば言うことを聞く」と思われてしまいます。今こそ、中国とどう付き合っていくのか、総合的な安全保障の観点から考えるべきだと思います。
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