身体障害者補助犬受け入れマニュアル<事業者編>
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6.事業者別受け入れ体制

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  1. 飲食店
  2. 商店(百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストア・個人商店など)
  3. 宿泊施設
  4. 温泉・銭湯
  5. レジャー施設
  6. スポーツ施設
  7. 動物園・水族館
  8. 映画館・劇場
  9. 美容院・理容室

(1)飲食店


 補助犬同伴の来店に特別に身構えることはありません。席にご案内した後で、「子ども連れだからもっと広い席がいい」、「タバコが嫌いだから、隣でタバコを吸っているこの席ではない席に案内してほしい」と依頼されるお客様への対応と同様に捉えればよいでしょう。

■テーブルへのご案内

 5.補助犬使用者への対応の「盲導犬使用者・視覚障害者への対応」「聴導犬使用者・聴覚障害者への対応」「介助犬使用者・肢体不自由者への対応」の項を参考にしながら、テーブルへと誘導します。

■ほかのお客様への対応

 犬にアレルギーがあるお客様や犬が嫌いなお客様が補助犬使用者と隣り合わせて食事をするのは、双方にとって気持ちがよいことではありません。トラブルを防ぐためには始めにほかのお客様には補助犬使用者の方が隣席になることを伝えて了承を得ることで、お互いに快適に飲食を楽しむことができます。

<補助犬使用者の方を席にご案内するとき>
ご案内する前に、隣の席のお客様に「お隣に盲導犬(聴導犬・介助犬)をご同伴の方をご案内いたしますが、よろしいでしょうか?」と尋ねます。「犬アレルギーがあるから困るわ」などといわれた場合は、補助犬使用者の方を違う席にご案内します。

<先に入店している補助犬使用者の隣の席に、お客様をご案内するとき>
ご案内するときに「お隣に盲導犬(聴導犬・介助犬)をご同伴のお客様がお座りのお席ですが、よろしいでしょうか?」と確認して、お客様の意向を尋ねます。

■補助犬使用者への対応

 盲導犬使用者には、メニュー内容などの説明をしましょう。
 使用者が食事している間、補助犬は使用者のテーブルや椅子の下で伏せるなどして静かにしています。他のお客様が、使用者の許可なく補助犬に水や食事などを与えないように注意を払いましょう。

※お客様のなかには「保健所の指導や食品衛生法で、動物は同伴できないはずだ」と苦情をおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、食品衛生法上で動物が同伴できないのは調理場です。飲食店のテーブルに着席することや生鮮食品売り場などに補助犬同伴をしないようにという保健所の指導はありません。(逆に補助犬法が適切に運用されるために同伴を受け入れるように指導をする立場となります。)

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(2)商店

 視覚障害者、肢体不自由者は買い物に援助が必要な場合もあります。しかし、ずっと店員に付き添われては、お客様も気が休まらず居心地が悪くなってしまうでしょう。
 入店時に「お手伝いいたしましょうか?」と声をかけ、補助犬使用者が必要とするサポートを行うようにします。補助犬同伴に関するその店のシステム、意向などがあれば、情報を使用者にきちんと伝えます。

■ほかのお客様への対応

 7.トラブルとその対処 「ほかのお客様とのトラブルを防ぐために」の項を参考にしてください。

■介助犬とお買い物

 介助犬の場合、買い物の介助として「商品を口にくわえる」という動作もできます。しかし、商品をくわえることに抵抗を感じる職員やお客様が多いことも事実です。介助犬の買い物介助については事業者で判断し、使用者の方にきちんと説明するようにしましょう。

<対応例>介助犬による買い物介助を控えていただく場合
「申しわけありませんが、当店では商品を取っていただく際には、スタッフがお手伝いさせていただいております。お近くのスタッフに遠慮なくお申しつけください」

■通路の狭い食料品売り場での対応

 通路の狭い店舗では補助犬が商品である食品に触れる可能性があるので、スタッフが補助犬使用者から購入されたい商品を確認し、代わりに取ってきて差し上げるのも一案です。

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(3)宿泊施設

 基本的に、宿泊に必要な犬のフード、水入れ、エサ用の食器、ペットシーツ、マット等の宿泊セットは補助犬使用者自身で用意しています。宿泊施設側が補助犬のために特別な設備や場所を準備する必要はありませんが、ご予約の際に、何か施設側で用意をしておくものがあるかどうか、使用者に尋ねましょう。また、補助犬同伴に関する利用システムなども事前に伝えるようにします。

■チェックイン

 基本的な施設の説明などについては、一般のお客様の場合とまったく同様です。
 補助犬を同伴できない場所(たとえば大浴場など)があれば、施設側の意向とその理由をきちんと伝えます。また、補助犬の排泄場所についても、使用者の方に提案しましょう(排泄に適した場所については、5.補助犬使用者への対応 「排泄場所への誘導」の項を参照)。施設の敷地内に排泄場所を用意するのが望ましいのですが、施設内に排泄できるような場所がない場合は、近くの公園や植え込み、土、草等がある場所へご案内します。

■室内での対応

 補助犬がベッドや布団で使用者と一緒に就寝したり、室内で走り回ったりすることはありません。
基本的に使用者が適当と思う場所に、持参したマットなどを敷き、補助犬にそこで待機するように指示します。
 客室が靴を脱いで畳に上がる和室の場合は、犬を畳に上げてもよいかどうかを伝えます。畳の上に犬を上げることに抵抗があるようならば、和室の上がり口のところなどの畳ではないところを補助犬の待機場所にしていただくよう提案します。
 車椅子や犬の足も拭いてから上がることが必要であれば、その旨もきちんと説明します。

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(4)温泉・銭湯 

 大浴場への補助犬の同伴はかなり難しいと思われます。
 宿泊施設にある大浴場の場合は、補助犬は客室に待機させることができます。
 クアハウスや銭湯の場合、待機させる場所がなければ同伴者に預ける方法もあります。同伴者がいない場合の補助犬の対応については、施設側の意向を伝え、対策を提案するのが望ましいでしょう。しかし、最終的な判断は管理責任者である使用者自身に任せます。
 基本的に、施設側は補助犬を預かる法律的な義務はありません。もし、使用者が預かりを希望し、それ応じて施設側で預かりが可能な場合は、待機の場所や状況をきちんと説明します。補助犬の管理責任者である使用者の目の届かないところでは、施設側でも責任が取れないことも伝え、最終的には使用者に判断を仰ぎましょう。

<対応例>入浴中、補助犬を預かってほしいと依頼された場合
使用者「大浴場に入りたいのですが、少しの間、補助犬をフロントで預かっていただけますか?」
施設側「私どもも目を離すこともあるかもしれないので、すべての責任はもてませんがそれでもよろしければお預かりいたします。待機場所はフロントデスクの脇になりますがよろしいですか」

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(5)レジャー施設

 施設内の移動、レストランやショップのご利用については、(1)飲食店(2)店舗での対応に準じます。
 広い施設内で補助犬使用者が迷うことがないよう、補助犬の排泄場所や障害者対応トイレの場所などの情報は、あらかじめきちんとご案内しましょう。また、乗車規定があって補助犬を同伴できない乗り物、着ぐるみのいる場所、暗闇、ライト、音響、花火、揺れ、振動など、補助犬にとって大きな刺激となるアトラクション※などの情報は事前に伝えます。

■使用者が乗り物に乗っているとき
 乗車規定のあるアトラクションは、子どもの対応と同様にセーフティバーができないので、安全運行上、補助犬は同伴できません。補助犬と離れるときはどうするのか、使用者の意向を尋ねます。補助犬をひとりで待機させたり、施設側での預かりを望まれたりした場合、場所や状況をきちんと説明し、使用者の目の届かないところでは施設側としても責任を取りきれないということを伝えたうえで、最終的には使用者に判断を仰ぎましょう。

<対応例>乗車中、補助犬を預かってほしいと依頼された場合
使用者「彼女と一緒にジェットコースターに乗りたいんだけど、介助犬を預かってくれるところはありますか?」
職員「はい。受付でお預かりできなくはないですが、受付の者もその場を離れることがございますので、こちらで責任持ってお預かりするということは原則的に遠慮させていただいております。その点をあらかじめご了承頂けるのでしたら結構ですが?」
使用者「わかりました。それでは、補助犬に何かあっては困るので彼女と二人で乗るのはあきらめて一人ずつ乗ることにします」

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(6)スポーツ施設

 補助犬使用者がその施設でスポーツをする場合、補助犬と一緒にスポーツはできないので待機場所が必要になります。補助犬をどうするのかは使用者に尋ね、施設側の意向も伝えます。施設に待機場所があれば、すみやかにご案内します。待機場所にはクレート(犬舎)があれば安心です。ボールなどが飛んでくる危険がなく、不特定多数の人の目に触れるようなことのない場所を用意しましょう。

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(7)動物園・水族館

 レジャー施設と同様に、施設が広い場合は、入園時に補助犬の排泄場所や障害者対応トイレの場所についてご案内します。
 補助犬同伴で近寄ってはいけない展示動物は特別にはないと思われますが、サル類や鳥類は犬に対して興奮する傾向があります。もしも展示動物が異常に興奮するようなことがあれば、使用者の方に補助犬を遠ざけるように伝えましょう。盲導犬使用者が、展示動物の興奮や異常反応に気がつ
いていない場合には、状況を説明して補助犬を遠ざけるよう誘導してください。
 ふれあい動物園などでは、補助犬同伴により展示動物と犬が直接接触することになり、感染管理上の配慮が必要となります。これについて、動物園側として「直接の犬と展示動物との接触は避ける」とするのか「使用者の判断で直接接触することもかまわない」とするのかの判断をしておく必要があります。
 感染管理上、犬との直接接触は避けたい、という場合には使用者だけがふれあい動物園に入場することとなります。補助犬と離れるときはどうするのか、使用者の意向を尋ねます。補助犬をひとりで待機させたり、施設側での預かりを望まれたりした場合、場所や状況をきちんと説明し、使用者の目の届かないところでは施設側としても責任を取りきれないということを伝えたうえで、最終的には使用者に判断を仰ぎましょう。

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(8)映画館・劇場

 補助犬は鑑賞中、椅子の下でおとなしく寝ていますので、特別の配慮は何も必要ありません。
 基本的に開演前に補助犬の排泄はすませている場合がほとんどですが、上映(上演)時間が長い場合は、入場時に補助犬の排泄場所や障害者対応トイレの場所についてご案内します。
 退場時は、多くのお客様が一度に移動されるので、通常の障害者への対応と同様に、いちばん最初かいちばん最後にご案内するようにします。
 レストランと同様に、着席する前に隣のお客様のご意向を尋ねておくことでトラブルを避けられます。ご案内をする場合は、隣のお客様に「盲導犬(聴導犬・介助犬)使用者の方がお隣に来られますがよろしいでしょうか?」と声をかけましょう。着席している補助犬使用者のお隣に他のお客様をご案内する場合も同様に、案内する前に「お隣に盲導犬(聴導犬・介助犬)使用者の方がご着席ですがよろしいでしょうか?」と声をかけます。案内がなく既に着席された後で、席を替わるご希望があれば「補助犬法に基づいた受け入れをしており、迷惑をかけないよう訓練も健康管理も受けているので安心であること」を説明し、それでも席の変更を申し出られる場合には、どなたか他のご了解いただけるお客様との座席の変更をしていただくか、空いている他の席に誘導をします。
 車椅子席を設けている施設も増えています。車椅子使用の介助犬使用者は、車椅子席にご案内しますが、まわりの席に犬アレルギーの方がいらっしゃるかを確認し、お申し出があった場合はその方を他の席にご案内します。

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(9)美容院・理容室

 補助犬が足下で待機すると、移動しながら作業するのに支障が生じたり、補助犬が切った髪の毛まみれになってしまうので、足下ではなく使用者の目の届く範囲の場所、待合い場所などに待機させることが望ましいでしょう。ただし、待合場所で待機する場合は不特定多数の方と接することになるので、ほかのお客様にもきちんと説明する必要があります。また、受付カウンターの下などを待機場所にしてもよいでしょう。どのような場所で待機させるのがよいかは、使用者に尋ねてください。

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