2010年8月25日 11時52分 更新:8月25日 14時8分
日本学術会議(金沢一郎会長)は25日、基礎研究の重要性を再認識するため、科学技術基本法の改正を求めるなど4項目を柱とする勧告をまとめ、菅直人首相に提出した。政府の事業仕分けや成長戦略で、産業応用や短期的な効率性に偏った政策が顕在化したことに危機感を募らせた。勧告は、政府に対する最も強い意思表明で5年ぶり。法的拘束力はないが、内閣府が政策への反映状況を追跡調査することになっている。
勧告によると、国の科学技術政策の根幹となる同法の「科学技術」という用語を「科学・技術」と改め、基礎研究と産業応用の区別を明確にする。また、人文・社会科学の推進を明記し、次世代の研究者育成や男女共同参画の推進(女性比率向上)を法律に盛り込むよう求めた。さらに、政府の科学技術基本計画を5年ごとに改定する際、会議の意見を事前に聞くよう提言した。
現在、政府内で総合科学技術会議を「科学・技術・イノベーション戦略本部(仮称)」に改組する動きがあり、方針が具体化する前に意思表明する必要があると判断した。金沢会長は「効率性だけでは20~30年後の科学技術立国の姿が見えない。心配だ」と説明した。【山田大輔】