遂に出てきたか、言峰綺礼こと麻婆神父、
実は俺はヤツに直に会うのは初めてではない。
俺は例の店でヤツに会っているのだ。
店の名前は遭えて言わなくてもいいだろう、俺もあまり思い出したくない。
兎に角俺は商店街に在った例の店に行ったのだ。
話に語られた麻婆豆腐がどれほどのものか確かめるために、
それで店に入ったら、レンゲでハフハフ言いながらマーボー食っていたのが奴だ。
因みに俺は例のマーボーを食し、火を噴き撃沈した。
比喩ではなくマジで、
しかし、このまま引き下がるのは負けのような気がするので、
俺は大量のライスを追加、マーボーカレーにして何とか完食、引き分けに持ち込んだ。
おかげで暫くの間、味覚が麻痺して味がまったくわからなくなった。
俺は二度とこの店に行かないことを誓った。
まあ、そんなことはどうでもいい、重要なのは、
「士郎、お前らどうやってここに入ってきた?」
俺が気になるのは似非神父よりも、こいつらがどうやって入ってきたかだ、
「ああ、洞窟の入り口が吹っ飛ばされたみたいに大穴が開いてたから、
遠目にもすぐにわかったぞ」
「さいですか」
俺は少々呆れ気味に返答した。
十中八九あの金ピカが穴開けたに違いねぇ。
俺が話している横では遠坂がシリアスを続けていた様で言峰と話していた。
「綺礼、何でアンタがこんなところにいるのよ」
遠坂は鋭い眼光を飛ばし言峰に問う。
もっとも、聞かなくても返ってくる答えは解っているのだろうが、
「愚問だな凛、私は聖杯戦争の監督役だ。 聖杯を管理、護るのは私の義務だ」
「減らず口をぬけぬけと」
遠坂はチッとした打ちしながら毒を吐く。
「遠坂あいつ何者だ?」
士郎が遠坂に質問している。
そういえば、士郎はフラグをブレイクしたから教会には一度も行っていないな、
これが言峰との初邂逅になるのか、
「アイツはこの聖杯戦争の監督役よ、教会で神父をしているいけ好かないヤツ」
「兄弟子に対して随分な言い草だな、
敬えとわ言わぬが、もう少し敬意を払ったらどうだ」
「生憎そんな気は毛の先ほども持ち合わせてはいないわ」
遠坂の殺気溢れる眼光を浴びて、気にすることも無くうけながしている言峰、
士郎も目の前の男が危険なヤツであることは感じ取っているのだろう。
目を逸らすことなく身構えている。
「それは残念だ」
口ではそんなことを言っているが、残念そうな顔にはまったく見えない。
寧ろ嘲笑っているかのような顔だ。
これほどムカつく顔もなかなかお目には掛かれないだろう。
「それでは凛、確認のために訊いて置くが、ここに何をしに来たのだ。
聖杯戦争はまだ中盤だ。 ここに来るのは些か早いのではないか?」
「聞くまでも無く解っているでしょう、大聖杯を破壊するためよ!!」
遠坂は啖呵を切って宣言した。
清々しいぐらいかっこいい、出切れば最後までその調子で行って貰いたい。
恐らく無理だと思うけど、
「ほう、聖杯を手にすることは遠坂の悲願、なぜそのようなことを?」
「あんた解って言ってるでしょう。 私があんな物を欲しがるはず無いでしょう」
遠坂の目は言峰の後ろ、禍々しい光を放つ大聖杯に向けられている。
その瞳は嫌悪を露にしている。
その表情を喜悦を浮かべる表情でみつづける言峰。
ヤツの性根の曲がり具合がどれほど歪か良く分かる顔だ。
「御託はその辺でいいだろう。 立ちはだかるなら打ち砕く、言葉なんざ必要ねぇ」
俺は重い体を引きずり前に出る。
ヤツにしゃべらせ続けると碌なことにならねぇ、
その内イリヤや士郎にまで絡むに違いねぇし、禄でもない事ベラベラ喋るに違いない。
こういう場合は潰して黙らせるのが一番だ。
「語り合うならこの拳で応えてやるぜっ!!」
俺は拳を突き出し構える。
俺の覇気はいまだ衰えることなく、滾っている。
「いきがるな雑種、貴様らはここで我が葬ってくれる」
ギルガメッシュは再び背後の空間に剣弾を装填していく。
「やれやれ、仕方がないな。 少々早いが最後の舞台を開幕しようか」
言峰は喜悦を更に深く浮かべるように口元を歪め、宣言した。
「アーチャー、出し惜しみするんじゃねぇぞ! 前は俺とヘラクレスに任せろ!!」
「仕方あるまい。 一分、時を稼いでくれ」
「余裕だぜ、寧ろぶっ倒してやるぜ!! 行くぞっ! ヘラクレスッ!」
「ウム」
俺とヘラクレスは正面からギルガメッシュに突撃する。
俺たちの背後では瞳を閉じたアーチャーが詠唱を始める。
I am the bone of my sword.
体は剣で出来ている。
ドクンッ!
アーチャーが呟くと同時に空気が変わる。
アーチャーを中心に、世界を侵食するように異質な気配が広がっていくような感じ。
Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は鉄で 心は硝子。
I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗。
特に変化があるわけでもないのに、士郎も遠坂もイリヤも動く事が出来ずにいた。
もっとも、それはマスターだけの話で、俺もヘラクレスは聞き惚れる時間もねぇ、
俺も本音としては生でゆっくりと聞きたかった。
しかし、その声は降り注ぐ剣弾の豪雨の中でも耳に響きよく聞こえた。
Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく、
Nor known to Life.
ただの一度も理解されない。
「何をするかしらぬが、これで終わりだっ!! 雑種共!!!」
憤怒の怒りを込めた咆哮がこだまする。
ギルガメッシュが再び異形の剣、エアを振り上げ、剣は唸りを上げ始める。
「馬鹿めっ!!!」
俺も再びギルガメッシュの背後に瞬間移動して、拳を叩き込む。
しかし、流石のギルガメッシュも2度目は反応し、エアで受け止める。
「ぐぅっっ!!」
如何に慢心王でも2度目は通じないか、
Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。
その詩を聞いた者達は思った、なんて悲しい詩なのだろうと、
マスター達はそんなことを思ったたかもしれないが、
「おのれっキサマッッ!!!」
「DAHAHAHAHAッ!!!!」
この戦いでテンションが見事全快突破を果たした俺様には丸っきり聞こえない。
ほぼゼロ距離でのラッシュの連打連打連打!!!
この近距離では剣弾も撃てまい!!
弾かれながら後退するギルガメッシュに距離を開けることなくピタリと付いていく。
ギルガメッシュの手にあるエアでは接近戦では役に立つまいっ!!
もっとも、この距離では長剣など振れるはずも無いが、
俺はヤツに剣を取り出す時間すら与えず攻めまくる。
こと近接格闘戦に置いて俺の右に出るサーヴァントはいねぇ~っ!!
Yet, those hands will never hold anything.
故に、生涯に意味はなく。
因みに、剣弾を放つ余裕が完全に無くなったギルガメッシュは、
完全にヘラクレスをフリーにしてしまった。
この性で士郎たちに仕掛けようとしていた言峰に気付いたヘラクレスは、
ギルガメッシュを俺に任せ言峰に突撃して行った。
俺は目の前のギルガメッシュしか既に見えなくなっていたから与り知らない事だった。
So as I pray, unlimited blade works.
その体は、きっと剣で出来ていた。
ゴォォォォオオオオ!
アーチャーが詠唱を終えた瞬間、焔が走り世界は侵食される、
現れたのは剣、剣、剣、剣、剣、無限とも呼べる数の剣と赤き荒野、
そして空には巨大な歯車が音を立て回っている。
「これが私の宝具、固有結界、術者の心象風景を具現化する魔術だ。
そしてこの世界の名は“無限の剣製”(アンリミテッド・ブレード・ワークス)
私の持つ唯一無二の力だ」
アーチャーが瞳を開き、声高らかに宣言した。
眼前に広がる光景は消滅していくギルガメッシュと、ミンチにされた言峰だった……
実はアーチャーの詠唱終了と同時にケリは付いた。
俺は痺れを切らしたギルガメッシュがエアを唸らせ強引に弾き飛ばそうとしたところを、
ヤツの腕を取って、見事な一本背負いで地面に叩きつけ、そのまま捻り十字固めを決めて押さえ込み、
ゼロ距離んちゃ砲で止めを刺した。
ヘラクレスは普通、言峰は黒鍵を取り出し抵抗したらしいが、
サーヴァント、それもヘラクレスに適う筈も無く、十数秒でケリが付いた。
俺的にはかなり奮戦した方だと思う。
……
………
…………
……………
沈黙が、空気が重い、重力が数倍に感じる。
戦闘の疲労もあるだろうが物理的重圧で潰れそうな感じだ。
辺りには歯車の回転音だけが重々しく響いている。
何でこんなことになったんだろう。
俺は予告を完遂しただけなのに、
こうなったら、スルーして話を進めるぞ、
「戦いのケリは付いた。 後は大聖杯を破壊すればすべてが終わる」
俺は無表情、棒読みで明後日の方に視線を向けて呟き、大聖杯の方に歩みを進める。
他の方々も無言で歩を進める。
アーチャーだけがその場に留まっていた……
「それでは破壊しようか……」
大聖杯の正面までやって来た俺たちはその全容を改めて眺めることになった。
改めてみるとデカイ、火山の火口かと見まがえそうな感じだが、
中身は溶岩よりよっぽど性質が悪い。
それにしてもここほんとに地下なのかと思うほど広いな、
バチカンの都市が楽に入るほどにここの空洞は広い。
まあ、物思いに耽るのも眺めるもこのくらいにして、そろそろ始めるか、
「HAAAAAA……」
俺は構え精神を集中していくが、
「待ちたまえ、ここは私に任せて貰おう」
背後からアーチャーが歩み出る、その手には一振りの黄金に輝く剣が握られていた。
アーチャーさん、それはもしや約束された勝利の剣、エクスかリバーではありませんか?
よもや、なりふり構っていられなくなったのか、
いろんな意味で必死だな、少々哀れに思えてしまった。
この作品ではアンタが一番の苦労人だからな、
しかし、そんな男の最後の機会も、
「待ってアーチャー、ここはわたし達に任せてもらうわ。
この聖杯戦争はアインツベルンが始まりだった。 だからわたしの手で終わらせたいの…」
「………わかった。 ここは君たちに譲ろう」
アーチャーは剣を消して後ろに下がる。
結局エクスかリバーは使わずじまいだったか、
真名を開放しなかったとはいえ、投影するだけでもかなりのリスクがあっただろうに、
俺には背中が泣いているように見えたぜ、
「アーチャー、元気を出しなさいよ…」
「……何を言っているんだリン」
なんて会話が後ろの方から聞こえてきたが、
ここは聞かなかったことにするのがいいかな、
「イーガス」
「わかっているぜっ!
最後の令呪を頼む。 俺の限界突破、全力全壊、最終奥義を見せてやるぜっ!!!」
「わかったわ、令呪を持って命じる。
わたしに限界を超えた貴方の力、見せてみてっ!!」
イリヤが手を突き出し声高らかに宣言する。
全身に文様が走り光り輝く。
その瞬間俺に流れ込む今までと桁違いの莫大なる力、
ZEHAAAAAA!!!
俺は身の内に宿る力を開放するように咆哮を挙げる。
そして俺は黄金の稲妻を放ち閃光に包まれる。
次に姿を現した俺は、
腰まで届く角が突き出しまっくてるような黄金の髪!
ヤクザが裸足で逃げ出すような凶悪な面!
全身に纏い放電しているかのような雷!
腰から伸びる立派な尻尾!
俺は遂にスーパーサイヤ人スゥリィーになって居た。
士郎や遠坂があごが抜けるような驚愕を浮かべた間抜け顔を晒している中イリヤは、
「か、かっこいい!!」
キラキラ輝いているような瞳で見ていてくださった。
そうだろうそうだろう、
残念ながら俺自身はどんな姿をしているか見れないのは残念だが、
やはりこのワイルド(予想)な姿はかっこいいよな、
気分を良くして腕を組む。
しかし、残念ながらそんなに長くこの姿でいられそうに無い、
早々にケリを付けるぜ!!
「イリヤ、お前と過ごしたこの二ヶ月はなかなか楽しかったぜ」
俺はイリヤに背を向け構える。
そして、全身全霊の力を拳の一点に圧縮させる。
ゴゴォオオオオオオ!!!
大気がしびれて、大地が唸りを上げるほどの力を俺は一気に解放する。
「魔闘術最終奥義!! 魔王破滅拳ッ!!!!」
俺の解き放った一撃は世界すべてを閃光で染め上げ大聖杯を消し去った。
「終わったな、これで……」
ゴゴゴゴゴゴゴォ
「??! おいおいこの音はまさか……」
古今東西役目を終えた秘密基地や地下施設は消滅すると相場が決まっているが、
どうやらここも例外ではなかったようだ。
地響きを立てながら大洞窟は崩れ始めていた。
「早く脱出した方がいいぞ」
「どうやらそのようね。 士郎、イリヤスフィール行くわよ」
ヘラクレスが遠坂と士郎を担ぎ上げる。
アーチャーは先行して退路を確保しようとしている。
「イリヤとイーガスも早く!!」
「残念ながら俺はここまでだ」
俺は士郎の叫びにそう応えた。
驚愕を浮かべた士郎たちの目の前で俺は足元から光に包まれ、消え始めていた。
俺が先ほど放った魔王破滅拳は文字道理、破滅を齎す最終奥義。
対象と自身に破滅を齎す最後の業だ。
今の俺は消えかけの蝋燭と同じだ、もう超サイヤ人ですらない。
イリヤから供給される魔力も焼け石に水、芯の残っていない蝋燭はいずれ消える。
「士郎、最後に忠告してやろう。
正義の味方ってのは英雄と同じで他者から送られる称号だ。
自ら成ろうとして成れるもんじゃない。
このことを理解していないとお前は、そっちの男みたいに捻くれたヤツになるかもな」
俺はそう言って視線を士郎からアーチャーに向ける。
アーチャーは、鼻を鳴らして顔を背け、先へ進み始める。
俺は苦笑を漏らす。
我ながららしくない事を言ったものだ。
しかし、これが最後ならば別にかまわんだろう。
「イーガス……」
イリヤが寂しげな表情を俺に向ける。
確かに別れは寂しいものだが、この表情は戴けないなぁ、
「イリヤ、出会いがあれば別れもある。
そして俺とお前に縁が在れば再開も有りうる。 だから別れは言わねぇぜ」
「……わかったわ。 また合いましょう、イーガス」
イリアは笑顔でそう言った。
俺もそれに答え、
「オウ、またな、イリヤ」
手を上げて軽い感じでそう応えた。
そして、イリヤもヘラクレスに乗せられて、大洞窟を後にした。
俺は体が徐々に消えていきながらも最後まで見送ったが、
アイツ等が振り返ることは無かった。
「ああ、これでいい」
俺の最後なんてこんなもんだろう。
でもな、最後にイリヤに言った言葉はその場しのぎって訳ではないぞ。
何と無くだが、連中にはまた会えるような気がしたんだ、
それがいったいどれほど先のことになるかは生憎皆目検討付かんし、
それが俺自身であるか、アイツ等自身であるかもわからんが、
自分で言ってて良く分からんな。
物思いに耽っている内にどうやら時間切れのようだ。
思考に霞が掛かったかのようにぼやけ、真っ白になっていく。
「はてさて、この先どうなることやら……」
などという言葉を最後に、
俺は光に呑まれて意識を失った。
あとがき
取り合えずFate編終了、エピローグはあまり書くつもりが無い。
リクエストがあれば書いてもいいんだが……
現在次ぎのネタを考え中、果たしてどこに行くのか?
あとイーガスをどうするか?
1、新たに転生する。
2、原作キャラ転生or憑依。
3、このままいく。
大きく分けてこの三つさて、どれでいくか?