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[11759] 世界を巡る異界の来訪者 (現在11eyes)
Name: Nameless’◆cab9bd9e E-MAIL ID:d8c5e88f
Date: 2010/06/10 09:00
チラ裏から移動してきました。

この話は、オリ主が世界を巡る話のようです。

気が向いた方は読んでやってください。

更新は不定期ですので気長に待ってくれたら幸いです。



[11759] DBとある転生者の最後! 
Name: Nameless’◆cab9bd9e E-MAIL ID:229cfa17
Date: 2010/03/22 09:27
始めまして、俺の名前はイーガス。

いきなりだが俺は人生の選択肢に立たされている。

俺にはこれから起こる未来が判る、何故なら俺は転生者だからだ!

問題なのは俺が転生した場所だった。

まあ、俺も最初の内は成り行きに任せだったが、よく考えると不味いことに気が付いた。

何が不味いかそれは、戦闘民族サイヤ人だから、鬱だ。

名前は絶対スイカをもじったに違いねー!

死亡フラグバリバリだ!

生まれた時から惑星侵略とかやってらんねー!

自意識が芽生えるまで本能でそれをやってるんだから戦闘民族恐るべし。

考えが横道に逸れた。

俺は今、今後の人生を左右する問題に答えを出さねばならん。

詰り、このまま黙ってフリーザに殺されるか、それとも逃げるか、戦うか?

大きく分けてこの三択、果たして如何するか……

少なくとも黙って殺されるつもりはない。

しかし、戦っても勝算は薄い。

少なくともフリーザを倒すには超サイヤ人に成らねばならんだろう。

怒りを切っ掛けに変身できることは知ってはいるが、それをするにもある程度力が必要だろう。

どっちにしてもここで生きる為には力が必要だ。

この世界は弱肉強食だ!

今の俺は下級戦士で更に子供、何としても強くならねばならない。

そんな訳で俺は侵略行為をしながら修行した。

この体は前世と比べ物にならん位頑丈で凄い体だった。

どんな疲労でぶっ倒れても次の日には全快していた。

だからどんどん修行も激しくしていった。

生前の努力を思い出して少し泣けてきた……



しかし、体を鍛えるにしても腕立て腹筋程度では準備体操にしかならない。

俺は持てる知識の全て(特に漫画やアニメ)を遣い修行を始めた。

まず何から始めたかというと、尻尾を鍛えることから始めた。

サイヤ人は尻尾が弱点、握られると力が抜ける。

尻尾を千切る方法もあるが、尻尾が無いと大猿になれない。

俺も出来ればなりたくないが大猿の時の方が強い。

其れにあんまり思い出せんけど、超サイヤ人4は尻尾が必要条件だったはず?

そんな訳で尻尾を鍛えることから始めた。

これがかなり大変だった。

勢い勇んで尻尾の上に石を乗っけたらそのまま動けなくなってしまった。

な、なんてことだ!

俺って相当馬鹿じゃねぇ~か!って思ったね。

おまけに失敗して切れてしまうし……

取り敢えず流して次に行こう。

次に生えた時は気を付けようと心に刻む。


次に始めたのが戦闘力のコントロール、つまり気のコントロールだ。

これができなければお話にならないだろう。

力は広く浅くでは無く、細く深くが基本だろう。

何の基本なのかは俺自身にも解らないが、そういうもんだろう。

そんな訳で八方手を尽くしていろいろ試した。

一番参考になったのは H×H の漫画が一番参考になったね。

こうイメージが大切なのだよイメージが!

もうネタ満載な修行に走ったね♪

指一本での腕立てとか、逆立ちとか、懸垂とか、いろいろ。

他にもネタ技に走ったり、

ストリートファイター、テイルズ、ケンイチ、修羅の刻、スパロボ?などなど…

そんな訳で数年はなかなか楽しかったんだけど、現実に鬱入った。

戦闘力があんまり上がってない。

これは非常に不味い!

戦闘力のコントロールは出来るようになったが、絶対値が低いんでは話にならん!

そんな訳で、俺は某漫画の地獄修行を慣行!

肌が焼けるような惑星で修行をしたり、逆に肌が凍るような惑星で修行したりだ!

他にも重力の強い惑星で修行したりと、

内容も普通なら死んでしまいそうなものを思いつく限りあの手この手を試した!

そのおかげで戦闘力もそこそこ伸びて来た。



そんな時だった、俺がバーダックに子供が出来たと聞いたのは…

この時、俺はマジかー!って思ったね。

息子の名前がラディッツって聞いたときはホッとしたよ。

俺は始めてバーダックを見たときはちょっち感動したね。

初めての原作キャラ(漫画は2コマだったけど)

DBではオレ的好きなキャラベスト3に入る。

たったひとりの最終決戦はかなり良かったね個人的に!

フリーザに一人で決戦を挑む姿は感動したね。



因みに現在二十歳前後の俺の戦闘力は最高値5万前後!

瞬間戦闘力は更に高い!

気が全身を流れるように遣い、一点に集中することで力を高める!

流石悟空さん、参考に去ります。

そして、更に放出する気を圧縮して体表面に纏う、暗黒魔闘術!

正に攻防一体! 拳に圧縮した気を敵に叩き込む!

出来たときはかなり感動した。

現在、自分的にサイヤ人最強を密かに自称している。

普段の戦闘力は5000ぐらい、これでも下級戦士では上位だ!

ハッキリ言って俺ほど真面目に修行している奴は居ないと断言できる!

サイヤ人は戦闘民族でもともと強い人種だから俺みたいな奴はいない。

それでも本能で戦いを求めているのか、戦闘好きが多いから実践で強くなる。

これで結構仲間意識がある。

エリート連中は知らん! 態度がでかい奴が多い。

バータックは下級戦士でその実力で有名だが、俺は変わり者で有名だ。

御蔭で俺は独りでいる事が殆どだ。

まあ、それはいいんだよ、実力がばれるとかなり不味いだろう。

周りに人が居るとおちおち修行も出来ない。

しかし、本格的に時間が無くなって来た。

これはもう最終手段に出るしかない!

詰り、自己破壊と回復!

悟空がナメック星に行くまでにやった様な過激な手段しかない!

取り敢えず出来ることは全てやって置こう。


俺はこれを機会にバーダックと知り合いに成っておいた。

具体的には酒場で話しかけた。

どうやら向こうも俺を知っていたようだ。

俺の噂をいろいろ有ったらしく笑われてしまった。

流しても良かったが、取り敢えず反論してた。

あんまり馬鹿にされると腹が立つからな。

そうこうしていると、なぜか遣り合う破目に成ってしまった。

そんな訳で、次の仕事を手伝ってもらう事にした。

流石に本星でやり合うのは不味い!

因みに俺に回ってくるのは辺境の星が殆どだ。

俺がそうして貰ってるのもある。

比較的楽なものが多い。

期限が有る時と無い時が有る。

有る時はギリギリまで戻らない。

無い時は長い時で数年は戻らなかった。

本星にはあんまり居ない、居たらいたでトレーニングルームとメディカルルームを往復している。

俺はどっちも常連者になっている。



そんな訳で仕事をさっさと終わらせて、戦うことになってしまった。

勝負は素手の殴り合い。

バーダックは、ハッキリ言って俺を舐めている。

俺は戦闘力を互角ぐらいまで引き上げ戦った。

周りの連中はかなり驚いたようだった。

今この場に居るのは俺とバーダック以外に四人、トーマ、セリパ、トテッポ、パンブーキン。

結果は俺の勝ち!

肉を切らせて骨を絶つ、相手の拳をどてっぱらで受け止め、カウンター殴り返す。

そして、真覇剛掌閃を叩き込んだ。

バータックが叩きつけられた岩に皹が入り、粉々に砕け散った。

成功したときはちょっと嬉かった。


この戦いを切っ掛けに付き合いが出来た。

具体的には向こうから突っかかって来るようになった。

時々手合わせする様になった。

因みに、バーダック達に俺の実力は口止めして置いた。

理由は適当に俺は基本的にめんどくさがりだから、などと言っておいた。

そして、俺の修行は一層激しさを増して、自分をぶっ壊した。

傍から見るとマゾなんじゃないかとかなり鬱になった。

治療設備がしっかりした惑星はかなり重宝した。

修行時間より治療時間の方が長いんじゃないかと思うぐらい。

そんな生活をして更に数年立ったときバーダックに二人目が出来たと聞いた。


予定日まで1ヶ月、俺は絶望した。

今の俺の限界基本戦闘力は20万そこそこは話にならねぇぇぇぇぇっ!!

一点集中・圧縮すれば10倍以上は行けるかもしれないが、一瞬だけの上にそれでも低い!!

俺がどんなに緊張してスカウターのスイッチ押したと思ってんだ!

もう俺は世界の理不尽さに嘆いたね!

余りのことに切れたね、理性が吹っ飛ぶくらいブチ切れたね!

御蔭で成れたよ、超サイヤ人!

髪が金髪になっているのに気が付いたときはかなり驚いた。

もっともあと少しで自滅しているところだった。

自分では解らなかったが、恐らく俺はブロリー見たいに白目をむいて、

八つ当たりで惑星の破壊活動をしていたのだろう。

ボール(宇宙船)が壊れてなくてよかった。

惑星が消滅してないのもかなり奇跡だろう、俺はさっさとこの星を脱出した。

そんな訳で俺は別の星で更に修業を積み惑星ベジータに戻った。



結論から行くと俺は、正面から戦ってはフリーザには勝てない。

超サイヤ人には成ることは出来たが、制御がまだ不完全。

全力戦闘なんかしていたら何時理性が跳ぶか解らない!

第一に元々の実力が弱い。

やはりライバルが居ないのは駄目なのか?

悟空にはベジータが居たし、悟天にはトランクスが居た。

悟飯には師匠が居た。

独りではここらが限界なのか?


しかし、逃げるという選択肢も余り選びたくない。

何だかんだで20年以上こんな事して生きて来て、ここに愛着が湧いたのか?

それとも俺の内にあるちっぽけなプライドのせいか?

はたまたサイヤ人の血が強敵を求めているのか?

まあ、逃げる選択が無いなら戦うしかないだろう。

勝算の無い戦いはするつもりはない。

詰りフリーザを倒すには不意打ちしかない!(断言)

フリーザが変身する前に倒す!

生き残る道はそれしかない!

悟空はフリーザがマックスパワーに成るまで待っていたが、

俺にそんなつもりは全く無い。

そんなことをしていたら勝ち目がゼロに成ってしまう。

そんな訳で対フリーザ戦に向けて綿密な計算をしつつ、

精神修行をしながら惑星ベジータで座して時を待った。



そして時は来た!

カカロット(悟空)が生まれ、倒れたバーダックを連れたトーマ達がカナッサ星より帰還した。

どうやら原作通りに成ったようだ。

今のバーダックは原作より明らかに強いからやられないと思っていた。

歴史には修正力があるのか?

他にも悟空が生まれる前にフリーザが攻めて来るんじゃないかと心配していた。

俺が居ない間に惑星ベジータが無くなっていては、ドラゴンボールが始まらない。

そんな事を考えている内にトーマ達が惑星ミートに行くらしいので、

俺も付いて行くことにした。



そして今俺の前にドドリアが居る。

こいつ等は俺達があっさりミート星人を片付けた後に現れた。

連中は滅茶苦茶油断していたからね、周り雑魚は俺が瞬殺してやった。

ドドリアはかなり驚いていたが、それでもまだ舐めていた。

俺は戦闘力を一気に上昇させた。

スカウターは全て弾け跳んだ。

ドドリアはちょっとビビリが入ったけど突っ込んできた。

俺は突っ込んできたのを受け止め腕をへし折り、半殺しにして返り討ちにした。

ドドリアは命乞いをして、自分達を襲った理由をべらべら喋りだした。

喋り終わったら勿論止めを刺した。

そして、これから如何するかをトーマ達と話そうとした時、

バーダックの宇宙船がこの星に落ちてきた。

俺達はバーダックとすぐに合流した。



俺達は事の経緯をバーダックに話した。

バーダックは驚いていたが、信じてくれたようだ。

俺は一応これから如何するかをみんなに聞いた。

全員二つ返事で打倒フリーザと答えた。

何と無く解っていたが、俺は溜め息を付いた。

俺は普通に戦っても勝ち目が無いこと、倒すにはフリーザが宇宙船から出てくる前に、

宇宙船ごと消し去るしかないことを伝えた。

バーダックは不満そうにしていたが、取り敢えず納得してもらった。

そして、俺達は惑星ベジータに引き返した。



惑星ベジータに到着した俺は直ぐに空に上がった。

フリーザの宇宙船を待ち構える為に、バーダックも俺について空に上がった。

他の連中は仲間を集める為に分かれた。

俺の予想では殆ど集まらないだろう。

俺とバーダックは精神を集中させて、時を待った。



暫くしてトーマ達が来たようだがやはり仲間は集まらなかったようだ。

兎に角もう時間が無い、俺は全員に構えるよう言った。

フリーザの宇宙船はもう近くまで迫ってきていた。

俺は最初の一撃に全てを賭けるようにいい、今まで溜め込んだ気を開放し、

超サイヤ人に成った。

周りの連中はかなりビビッていたし、宇宙船から戦闘員が出て来て居たりしたが、

俺は其れにかまう事無く、「天上天下一撃必殺波」を放った。

俺の全身全霊を賭けた一撃は全てを消し飛ばした。

バーダックたちは俺の放った一撃に呆気に取られていた。

俺も自分の放った一撃に驚いていた。



しばらく止まっていた俺達だが、ようやく動き出した。

フリーザを倒したことを喜び、

俺は質問攻めだったね、トーマ達にいろいろ聞かれたよ。

俺が気付いたのはバーダックが怪訝な顔をしていたことだった。

この時の俺は油断していたのだろう。

バーダックが叫び飛び退いたときには遅かった。

俺もギリギリで避けた時には閃光が通り過ぎ、トーマ達は消え去った。

俺も今ので左腕を持っていかれた。

でかい気を上から感じた。

俺がまさかと思い振り返った時そこに居たのは、フリーザではなかった。

そこに居たのはクウラだった。

オーマイゴット、そういえば居ましたねそんなのが!

態々劇場版から参戦して下さるとは、ご苦労過ぎて涙がでて来る。

全然嬉しくねー!

事態は最悪な状態に陥った。

俺はさっき放った一撃で力は殆ど残っていない。

おまけに片腕も無い。

これは終わったな。



俺がそう思ったその時、バーダックが切れた。

髪を逆立てクウラに向かって突っ込んでいった。

超サイヤ人一歩手前って感じだ。

俺も直ぐに気を取り直した。

いいだろう最後まで足掻いてやる。

今バーダックと二人がかりで罹っても恐らく勝てないだろう。

クウラは後一回変身を残している。

ならば一か八か、俺は超サイヤ人に変身し、上空にパワーボールを放った。

そして擬似満月を作り出した。

そう俺の最終手段は超サイヤ人での大猿化!

通常状態ならともかく、超サイヤ人での大猿化は理性を失うこと必至!

しかし、このままでは負けることは確実。

バーダックが時間を稼いでる内にやるしかない。

勝算は限りなく低いが無いよりましだろう。

そう思いながら俺の意識と視界は真っ白になっていった。



その後、惑星ベジータは消滅したが、戦いの結末は分からない。





あとがき

何と無く勢いで書いた。ちょっと後悔しているが世の中そんなもんだろう。

サイヤ人の転生者があんまり無いから書いてみた。設定を遣いたい人は好きにどうぞ。

結末が分からないのは一発物のテンプレだろう (オレ的に)




[11759] 俺は侵略者から狂戦士にクラスチェンジしたらしい ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/03/22 09:28

世の中いろいろ理不尽だと思うが、まあ良いだろう。

取りあえず軽く振り返ってみよう。

俺はフリーザを倒し、クウラを黄金大猿パワーで圧倒……

うん、覚えてるのはこの位だな!


仮に俺が死んでいたとしよう、

俺の記憶が正しければ、肉体を失い魂になって閻魔の前に居るはず、

そうでなければ魂の行列に並んでいるはずかな?

俺はおそらく地獄逝き、自分で言うのもなんだがかなり殺しているからな、

地獄に言った後はどうなるのか、罪を償ってから転生したような気がするが、

何かシリーズによって設定がコロコロ変わってた様な気がするから正直どうなるか……



まあ、現実逃避このくらいにしよう。

今現在、俺の目の前に居るのは銀髪紅眼の少女、

いったい何がどうなっているんだか、俺は相当混乱していた。

「あなたがヘラクレス?」

これが少女の第一声。

あ、何か記憶に引っ掛かりが、

「わたしがあなたのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」

少女は大層優雅に礼をした。

思い出した!

Fateだ! ということはこの世界月型か!?

インフレ上等なDB世界よりマシな気がするが有り得ねーだろ! 

ドラゴンボールに願って世界転移なんて方法も考えたが実行した覚えは無い!

世界と契約した覚えもね~! フリーザとクウラを倒して英霊になったか? 違うだろ!

仮に俺が英霊だったとして呼ばれる接点が無いだろ。

「受け答えは期待してないわ、あなたはわたしの命令に従いなさいバーサーカー」

バーサーカー、確かに七騎で俺に該当しそうなクラスはこれしかない

って言うよりこれ以外有り得ないだろう。

しかし、クラスに付いては納得したが、俺がイリヤに呼ばれた意味がわからない。

SSのテンプレではうっかり凛か士郎辺りだろう。

またはルール違反しているキャスター辺りが自然なところ、

アベンジャーの時みたいにルール違反でまた失敗したのか?

取りあえず俺はヘラクレスではなくイーガスのまま、格好はフュージョンの奴みたいな感じ、

俺があんまり戦闘服のデザインが好きじゃなかったのもあるが、唯の験担ぎ。

こうして思考できることを考えれば理性もあるんだろう。

サーヴァントをするのは構わないが、間違いは早めに正しておこう。

「マスター残念だが人違いだ」

「!?何で口が利けるの! 人違いってどういうこと!!」

「俺の真名はイーガスだ、ヘラクレスではない」

「なによそれ、全く聞いたことがないわ。あなたどこの英雄よ」

さて、これはまずいな正直に答えるべきか誤魔化すべきか…

「俺は自分の居た世界を理性を失い滅ぼしたから英雄などではない、名を知る者も居ないだろう」

嘘は付いていない全部は話していないが、

いきなり異世界から召喚されたとか言っても頭可笑しいと思われるだろう。

「じゃぁ、何でバーサーカーなのに理性が在るの?」

「それは俺が生前理性を失わないよう精神修行したからだろう。……恐らく」

「ふ~ん、ならあなたの宝具は?」

そんな物持ち合わせていません。

しかし何も無いと言うのは不味いだろう、

「それは多分俺の持つ変身能力だな、満月の大猿化と超化の二つ有る。
ただし、両方を同時にやると理性が飛ぶ」

「そう、わかったわ」

「ああ、これからよろしく頼む」

まあこれが俺とイリヤの出会いだった。


それからいろいろ有って予定より早く冬木に行くことになった。

何が有ったかは聞くな、ちょっとムカつく連中を掃除しただけだ。

狂化した際の事故だ、決してオレノセイジャネ~!


さて、そんな感じで冬木の森のアインツベルンの城に来た訳だが、

ここに来るまでに判った事がある。

何故か生前より力が落ちている。

というより抑えられている気がする。

これは俺の予測だが、世界の修正か抑止力辺りだと思う。

今の俺はサーヴァントという器【クラス】に納まるように抑えられているんだろう。

俺はその気になれば星を吹っ飛ばす力が有ったからな、流石に世界が認めんだろう。

流石のサイヤパワーも世界には勝てんか…

いや、もしかしたら超サイヤ人4なら世界にも勝てるかもしれないが俺には無理だし、

これに関しては仕方が無い、解決策も思い付かんから諦めよう。

次にどうでもいい事だが、頭の上にワッカがある。

微妙にDB世界の名残があるようだ。

霊体化も出来るし特に問題無い。

触媒に用意されたヘラクレスの斧剣は俺が有り難く貰っておいた。

流石の俺も今の状態でサーヴァント相手に素手では、大丈夫だと思うが万一ということもある。

そんな訳でこの身長よりデカイ斧剣を俺の武器に使っている。


次にこれからの事だが、

正直Fateの細かい話の内容なんかとっくに忘れてる。

それでも何とか思い出した結果やばそうな相手が、

ランサー、キャスター、桜の3人だ。

ランサーの槍は俺には防げん出されれば負ける。

何としても宝具を使われる前に倒さねば成らん。

次にキャスター、こいつは他の連中と違って真っ向勝負をしないから、気をつけないといかん。

宝具も一応警戒しとくべきだな、キャスターに俺が刺せるとは思えんが。

最後に桜、こいつが黒く成ったら町ごと吹っ飛ばす覚悟で戦わないといけないだろう。

ギルガメッシュは何とかなりそうな気がするんだな、根拠は無いけど。

後の問題は大聖杯か、

破壊しといた方が良いんだろうけど、

流石に山ごと全て消し吹っ飛ばす訳にもいかんし、今の俺に出来るか微妙。

これに付いては取り敢えず今は保留、

俺の目的はイリヤを守ることだから聖杯は破壊しなくては恐らく成らないだろう。

取り敢えず今の目標はイリヤと士郎の仲を何とかすることだな、

イリヤを助けるなら奴が必要だろう。

まぁ奴がどうなろうと俺は如何でも良いがな、理想に抱かれて死ぬのも別に良いんじゃね。

取り敢えず、この聖杯戦争の間はイリヤの序に助けてやる積りではいる。

イリヤをそれとなく説得しているが、俺サーヴァントだからなあんまり強く言えんし、

言っても聞いてくれんだろう。

それよりへそを曲げられると大変だ、機嫌直すのが難しい。

まあ、今いろいろ考えても仕方ない、成るように成るさ。

イリヤは士郎に会えるのを楽しみにしているが、俺はサーヴァントに会えるのを楽しみにしている。

それが唯会いたいからか、戦いたいからかは俺自身にも分からないが、

やばくなったら空に逃げるという選択肢がある。

俺の記憶が正しければ空を飛べたのはキャスター位のはず、

アーチャーの狙撃に気をつければ安全なはず?

多少卑怯な気がするが目的がある以上倒れる訳にはいかん。

後は俺みたいなイレギュラーが出てこないことを願うばかり。

しかし、具体的な方針はイリヤが決めることだけどな。



「イリヤ、予定より随分早く冬木に来た訳だがこれからどうする」

「誰の所為でそうなったと思ってるのよ」

「まあ、そう怒るな、聖杯戦争までまだ時が有るんだろう、どうするんだ」

「そうね、得にすることも無いしゆっくりするわ」

「だったらほら、会いたがってた奴に会いに行ってみね~?」

「会いに行くのはまだ早いでしょ」

「別に殺しに行く訳じゃねーよ、様子見に行こうってこと、どんな奴か気になるんだろ?」

「まあ、そうだけど…」

「殺す殺さないは会ってから決めれば良いだろ、一回殺すと終わりなんだからよく考えろよ」

「わかってるわよ! 行くわよ、イーガス」

「OK、マスター」

そんな訳で士郎に会いに行くことになった。

俺も世界が違うけど日本は久しぶり、楽しむとしよう。





「っで、勢いよく出てきたが、どこに居るんだ?」

「わたしは知らないわ」

「………」

「………」

今は時間的に昼過ぎ位だから学校に居るんじゃねーか?

「じゃぁ、町見て廻りながらそいつの家行ってみよーぜ」

「わかったわ、そうしましょう」

「おお、まずは空から見て廻りますか」

そんな訳で、俺はイリヤを肩に乗せて空を飛んで行く。

イリヤとも随分仲良くなったと自称している。

俺の強引さにイリヤが諦めただけかもしれないが、

俺のことは堂々名前を呼ばせている! どうせ知ってるやついねーし。

やはりイリヤがバーサーカーって言ったらあの方しかイネーだろ。

俺には勿体無い。

俺が変わりに成るとは思わんが俺なりにがんばろう。

因みに俺は空を飛んでいるけど魔力使ってないし、イリヤの認識阻害があるから大丈夫だろ。

ついでに俺の格好は革ジャン+ジーパンを仕入れてきた。

それでは深山町と新都をぐるっと空中遊泳してくるか。



俺たちは彼方此方顔出し寄り道しながら町を軽く廻って今、衛宮亭の前に居る。

表札にも衛宮と書いてあるし間違いなーい。

「来ちまった訳だがどうする?」

「……」

イリヤは黙っている。

何を考えてるのか俺にはさっぱりわからん。

しかし、イリヤは自分のことを士郎に話すつもりは無いんだろう。

イリヤは士郎を見たことも無いんだから、思うところも在るだろう。

だから俺も考え事しながら黙って横に立っている。

「あの家に何か用ですか」

しばらくして声が掛けられた、まぁおれは気付いていたが、

そこに居たのは学生服を着た学校帰りであろう衛宮士郎だった。

「こんばんは、お兄ちゃん」

イリヤはさっきまでの様子を微塵も見せず笑顔で挨拶した。

「小僧お前の名は」

俺は高圧的態度で名を問う。

「ああ、俺の名前は衛宮士郎」

「エミ ヤシロ?」

「いや、違う。衛宮 士郎、衛宮が苗字で士郎が名前だ」

「じゃあ、シロウね!」

「ああそうだ。っであんた達は」

「俺の名はイーガス」

「はじめまして、わたしはイリヤ。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと申します」

イリヤはスカートの裾を持ち優雅に礼をした。

「よろしくね、お兄ちゃん」

次の瞬間には雰囲気ががらっと変わってニッコリ笑いかける。

士郎は呆気にとられてる。

イリヤの礼は賓が在るからな、長続きしないが…

『それでどうする』

俺はイリヤに念話で声を掛ける。

パスが繋がっていると意外に楽に出来た。

イリヤのお陰かもしんねーけど、

『挨拶も出来たし、今日のところはもう帰るわ』

『それじゃー面白くねーよ』

『ちょっと、何する気?』

『ちょっとな』

俺は一歩前に踏み出す。

「小僧、これから俺と一つ喧嘩をしねーか」

「は?」

士郎は意味が判らないという顔、

「テメーに怨みはねー、しかしテメーの親父にはある」

「ちょっと! 何考えてるのぉー!!」

「安心しろ、今ならキッカリ全治三ヶ月にしてやるぜ!」

俺は指をボキバキ鳴らしてやる気満々。

ここで凹にして病院送りにすれば聖杯戦争に巻き込まれないだろう。

目の前でギタギタにしてやればイリヤも飽きるだろう。

飽きないで心配するなら、それはそれでいい傾向だ。

どう転んでも俺に不都合はねー!

これでこいつも命を落とさず済むならこいつの為にも成るだろう。

俺ってやさしー!

「ちょっと待ってくれ、もっとちゃんと説明してくれ」

「唯殴られろとは言わねぇ、テメーも殴り返して乞いやぁー!」

俺は激凶悪な笑みを浮かべ今にも殴り掛かろうとしたところ、

「ストーップ、今は駄目だって言ってるでしょ」

「いや、殺しはしねーよ、きっちり半分だけだって」

「もう、いいから下がりなさい」

「おーけー」

俺は少々不満だが言われた通り下がる。

「ごめんねお兄ちゃん。今日はもう帰るね。またねー」

イリヤは士郎にそれ言って、元気よく駆けていった。

「またなー」

俺も片手をヒラヒラさせてこの場を後にした。

士郎は呆けた顔をして突っ立ていた。



「それで、どういうつもりなの」

現在城への帰り道。

「相手を知るなら、殴りあうのが手っ取り早い」

「わたしには判らないわ」

「これは男にしか判らん事かもしれんな」

男にも判らんかもしれんが、

「ふ~ん、兎に角今後は勝手なまねしないでよ」

「りょうか~い」

「ほんとにわかってるの?」

無論このくらいで引き下がるワタクシではありません。

俺に命令できるのは俺だけだぜー!

こんな感じで冬木市での初日は終わりをつげた。



こうして俺とイリヤの物語は始まりを告げたのか?

この物語り続くのでしょうか?








【CLASS】バーサーカー

【マスター】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

【真名】イーガス

【性別】男性

【身長・体重】193cm・90kg

【属性】中立・狂

【筋力】A+  【魔力】E
【耐久】A+  【幸運】C
【敏捷】A   【宝具】B


【クラス別能力】

狂化:C
幸運と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせる。
超自我のスキルで理性を保ったまま戦闘できる。


【保有スキル】

大猿化
満月を瞳に映し大猿に変身する。尻尾が切れると元に戻る。

気功:A+
気をコントロールできる能力。気は体の中を流れるエネルギーの比喩。
気は凝縮、放出しエネルギー弾などを作り出すことも出来る。
また"気がゼロになる”は=死を意味する。

超自我:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
意識と無意識の両方に現れる超精神、理性を失うことなく戦闘できる。

直感:B 
戦闘時、常に自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。

戦闘続行:A
生還能力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】

『伝説の超戦士』[超サイヤ人]
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 

超サイヤ人への変身能力、戦闘力が大幅に上昇する。
イーガスは狂化すればランクBまで上がり超サイヤ人2まで変身できる。
ただし、2に成ると超自我のランクを超えるため理性を失う。





[11759] 二度目の訪問 ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/06/10 08:54

現在俺は朝の修行中。

死んでからの修行に意味があるのか? っと思うかもしれないが、

悟空もあの世で修行してたし、問題無し!

俺はこの暗黒魔闘術[モドキ]を極めるために修業中。

魔力じゃなくて気を使うから暗黒気闘術か?

まあいい。

兎に角俺はこの気を圧縮して体表面に纏う技術を会得する為にかなり頑張った!

この状態から更に攻撃に転じる為に両手に圧縮した気を集め直接攻撃を行う!

これが暗黒魔闘術だ!!

もうっかっなり死に掛けたねっ!


まあ、愚痴を零すのはこれくらいにして、

本当なら常時超サイヤ人で修行したいが、残念ながらイリヤに止められている。

理由としてはいろいろ在ったんだよ! いろいろっ!

そんな訳で、イリヤも寝静まる丑三つ時から朝にかけて超サイヤ人で修行している。

この膨大な気を操り完全に制御するために!

目指すは超サイヤ人4!

男なら一度は憧れる最強の男!!

やはりサイヤ人に生まれたならば成らねばならんだろう!

もっとも今の俺ではまず無理だろう、今はやっと超サイヤ人に慣れてきたところだ。

そんな訳で日々修行。

この森は一応結界が張られているし少々派手に動いても大丈夫だろう。

全力で気を放出し、体表面に圧縮、この状態を維持して技の練習。

かなり我流な型稽古をしている。

そしてこのバーサーカーの斧剣を使いこなす為の修練。

この斧剣を体の一部として気で覆い扱う。

恐るべき破壊力だ!

圧縮した気を斧剣に纏わせたその威力、ハッキリ言って下手な宝具より上だと思う。

だから俺は小手先の剣技は捨てた!

バーサーカーらしく腕力に任せて振り回すことにした。

剣の間合いを抜けて懐に入ってきた奴は拳で叩き潰す!!

俺の気を纏う拳なら素手で剣も槍も十分受けられるはず! ……たぶん

悟空もトランクスの剣、指一本で受けてたしな、大丈夫……だよな?



そんな感じで俺は朝食まで修行していた。

死人なのに飯を食うのかって、

俺はハングリーな死人なんだよ。

別に珍しくないだろ!



「さて、朝食は終わったわけだがこれからどうする?」

「あなた昨日も同じこと言ってたわよ」

「気にするな、で?」

「あなたは何かやりたい事あるの」

「無論昨日の続き」

「ダメって言ったでしょ」

「じゃあ、菓子折り持って詫びに行こう」

「何でそうなるの」

「アイツからかうと面白そうだから」

「………」

「わかった、そう睨むな」


俺はこれからのことについて考えを巡らす。

正直俺自身これからどうしたらいいかわからん!

イリヤを生かすのは絶対条件。

他は正直どうでもいい。

希望としてはサーヴァントは拳を交えたいってところかな?

イリヤの安全が確保されてるならそれで死んでも悔いは無い。

サーヴァントってどちみち遅かれ早かれ消えるしな、俺は今この時を楽しめれば満足だ。


「では、修行しよう。俺が全力全壊黄金大猿パワーを遺憾無く振るえる様に!」

「絶対駄目よっ!!!」

「そんなに大声出さんでも良いだろ」

「この前の満月の時のこと忘れてないでしょうね」

「無論覚えている」


そう前の満月の夜、イリヤに大猿化を見せようとして何故か暴走しかけた、と言うかした。

その正で大惨事になった。(俺にとってはどうでもいい)

止める為にイリヤが倒れるほど消耗し最終的に令呪を使用する羽目になった。

これに付いてはとても申し訳く思っている。

超サイヤ人2ならイリヤでもなんとか制御できるし、俺もなんとなく意識がある。

しかし、おかしい。

俺は生前大猿化はかなり慣れた筈なんだが……

大猿になっても凶暴化したり、興奮したりしないよう大猿で座禅組んで修行した。

だから超化しなければ大丈夫だと思ったんだが、ステップが上がったか?

因みに超サイヤ人になっても同じように修行していた。


「しかし、これはいずれ超えねばならん試練! 大丈夫、俺とイリヤなら出来る」

「その自信どこから来るのかしら?」

「俺は前回の変身で切っ掛けのようなものを掴めた気がする。 次は必ず限界を超えてみせる」

「………」

「安心しろ、イリヤは最高のマスターだ。 必ず俺を従えられる」

「確かにそうね。 わたし以上のマスターなんて存在しないんだからね」

「ああ、その通りだ」

「もっとも、使うつもりは無いけどね。 超サイヤ人で十分でしょ」

「いや、油断は禁物だ。 せめて2でのを修行しよう。 俺も超サイヤ人3に成りたいからな」

「はぁー、わかったわ。 言っても聞きそうにないし」


こんな感じでイリヤと共に鍛錬の日々が続いた。





そんな訳で日々の研鑽を怠ることなくすごしていたのだが、いよいよ聖杯戦争の始まりが近くなってきたようだ。

町の方から強い力をちらほら感じるのだ。

おそらくサーヴァントだと思う。

俺はサーヴァントになってから魔力も感じられるようになった。

気を感じるのと同じだが、感じる力の質が違うというかベクトルが違うというか?

今は感じないから霊体化しているか結界の中にでも居るんだろう。

霊体化してるだけなら集中すればおおよその位置は分かると思う。

実体化してくれればハッキリと分かるだろう。

魔術師に付いては魔術回路を使ってくれれば位置が分かるだろう。

最もそんなおっぴろげて使う奴なんて居ないだろうがな、

それ以前に今回の聖杯戦争、まともな魔術師が殆ど居なかったような気がする。

まあ、そんなことはどうでもいい、問題はサーヴァントだ。

つまり何が言いたいかというと、


「ちょっと挨拶回りに行かないか?」

「唐突ね、いきなり何言い出すの?」

「つまり、他のサーヴァントを見に行かないか?」

「まだ戦争は始まってないでしょ、後数日の内にすべてのサーヴァントはそろう。
だから、それまでもう少し待ちなさい」

「じゃあ、士郎に会いに行こう。 今は丁度、逢魔時だ。 逢うには相応しい時間だ。
序に夕飯も食わしてもらおう」

「会いに行くのはかまわないわ。 もう一度会いに行くつもりだったし、でもなんで夕食?」

「俺の勘が、奴の天職は電気工と執事、そして料理人だと継げている!」

「………」

「では行くとしようか」





そんなわけで士郎に会いに行ったのに、


「先輩は今日はバイトで帰りは遅くなりますけど」


桜とエンカウントした。

あれ? 何でこんなことになったんだろう。

やはり呼び鈴押して正面から入ったのがまずかったか?

イリヤは桜に鋭い視線を飛ばしている。


「あの、先輩にどのような用事でしょうか?」


さて、なんと言えばいいか?

迂闊なことは言わないほうがいいと思うし……

よし、さっさと離れることにしよう。


「奴が居ないならひとつ伝言を頼む」

「? 伝言ですか」

「そうだ。

家から出ずに首を洗って待っていろっ!! 夜中はせいぜい気を付けろ!

っと伝えておいてくれ」


俺はそれだけ言って踵を返し、衛宮亭を後にした。



しかし、だ!

ここまで来て、これで帰る訳にはいかん!

そんな訳で俺とイリヤは衛宮亭の前で張り込みを開始した。

そして張り込みを始めてから結構な時がたったころ、奴がのこのこ帰って来た。


「小僧! この俺様をこの寒空の下で待たせるとはいい度胸だっ!
その命、よほど要らないと見える」 

そいつのドタマをカチ割る為に地面を踏み砕く勢いで一歩踏み出した。

今の俺は大気を熱するほどの覇気を纏っている。


「ちょっと待てぇー! 何の事だかさっぱり身に覚えがないぞ!」

「貴様に無くても俺にはある! 
安心しろ、今なら漏れなく七泊八日、冥途への旅をプレゼントしてやるぜっ!」

「全然安心できねぇー!」

「俺の善意だ! 有り難く受け取れぇー!!」

「有り難くないぃーっ!?」


これこそマジで俺の最後の善意!

ここでこいつが倒れれば、士郎にとって大きな転機となるだろう。

云わば今が士郎にとって運命の分かれ道! 

平凡な人並みの道を歩むか、その身磨り減らす孤独の荒野を歩むか!

どちらに決まるかの瀬戸際、

俺は士郎に一つの選択肢を与えているのだ!

決して、寒空の下待たされたことによる逆恨みじゃねぇ~


「逝けやぁーっ!」


そして俺の拳が容赦無く奴の額に突き刺さる。


「ストーップ!!」


俺の拳は正に紙一重の位置で止まった。

もっとも士郎は拳から放たれた衝撃だけで引っ繰り返ったが、

どうやら受身だけは取れたようだ。

チッ

どうやら伊達に鍛えてないらしい。

そして、俺をその叫びで止めたイリヤは


「何やってるのよっ!」

「善意という名の憂さ晴らしを押し売り?」


どうやらご機嫌斜めのようだ。

俺は自分の思ったままに返答した。


「なんで疑問系なのよ。 あなた前にも同じことやってたでしょ」

「気にするな、強いて言うならネタだ」

「なによ、それ?」


まあ、イリヤには分からんだろう。

持ちネタは芸人には必要不可欠なものだ。

もっとも、俺もイリヤも芸人ではないから必要無いが、 


「それで、あんた達は何をしに来たんだ?」

「そうだな、最後通告と言ったところか」

「最後通告?」


士郎は訳が分からないといった顔をしている。

確かに士郎にはあずかり知らない事だろう。

こいつ髪が赤いことを除けばマジでどこにでもいそうな凡人だ。

いや、俺もハリネズミの様なボサボサ頭でどこにでもいそうだが、


「お兄ちゃん、ひとつ訊いていい?」


俺がまったく関係の無いことに思考がずれている間にイリヤが問いかけた。


「ああ、かまわないぞ」

「お兄ちゃんって、何か夢ってある?」

「ゆめ?」

「そう夢、目標とか目的、何でもいいわ」


イリヤの問いは言葉は軽い感じに聞こえたかもしれんが真剣だ。

士郎、返答には気を付けろよ。

貴様の返答しだいでは、俺は今この場で貴様を殺すことになるかも知れんぞ。


「正義の味方だ!」


真顔で言い切ったっ!

士郎もイリヤの真剣身を感じたらしいがその返答は……


「ふ~ん、そうなんだ」


俺は視線をチラッとイリヤに向ける。

表面上変わりは無いが、俺は空気が冷えたような気がする。

イリヤと士郎の視線は交差し、二人は数瞬見つめ合う。

俺にはひどく永く感じたが、恐らく二人もそうじゃないかと思う。

そして、イリヤは一度瞳を閉じて足を踏み出し、

士郎の脇を通り過ぎた。


「帰りましょう、イーガス。 お兄ちゃん、次に会う時を楽しみにしているわ」

「残念だ士郎。 せめてもの情け、人形は出来るだけいい物を用意しておこう」

「……はぁ?」


俺はすれ違い様、士郎の肩を軽く叩きこの場を後にした。





俺たちはあのまま帰路に付き、アインツベルンの森に差し掛かった時に、


「よぅ……待ってたぜ、ちぃと俺に付き合ってらうぜ」


っと声を掛けられた。

俺に声を掛けた奴は木の幹にもたれ紅き槍を携え、俺を待っていた。


「ほう、それ即ち俺と殺り合おうって解釈でいいのか、 ランサー 」








あとがき

こんな感じで、続きを書かしていただきました。

更新は不定期、気長に待っていただけたら幸いです。

設定がヘボイのはあまり気にしないでくれたら嬉しいです。




[11759] 元侵略者 VS 槍兵  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/01/24 00:23


「ほう、それ即ち俺と殺り合おうって解釈でいいのか、 ランサー 」

「話が早くて助かるぜ」



全身青タイに紅い槍、間違いなく俺の知っているランサーだっ!

あんな奇抜な格好している奴はそうそういないはず、

俺みたいに知らないイレギュラーがバカスカ居るかもとメッチャ不安だったが、

よ、よかったぜ。

例えば

セイバー:統べし聖剣シュン [永遠のアセリア]

アーチャー:ムツミ [うたわれるもの]

ランサー:クリュサオル [聖闘士星矢]

ライダー:サンダルフォン [デモンベイン]

キャスター:リーゼロッテ [11eyes]

アサシン:うちは イタチ [NARUTO]

バーサーカー:リィンフォース [リリカルなのはA's]

敵キャラ大集合、こんな感じだったら面白そうだな、見る分にはいいかもしれないが、

参加はしたくない。

かなり混迷なメンバーだ。 英雄とか全然関係無いな。


「まだサーヴァントも揃ってないのに、随分と気の早いのも居たものね」

「ケッ、文句は俺のマスターに言いな」



ランサーは俺の正面に立ち、その手の槍を一度軽く回し、構えを取る。

俺も自身の獲物たる斧剣を取り出し、戦装束を纏った。

どこから取り出したかは深く突っ込むな。

所持品に付いては出し入れが出来るんだよ。

セイバーも私服から鎧姿になったりしていただろ。

頼むからそういう事にしといてくれ、


「イリヤ、下がっていろ」

「早く片付けてね、わたしまだ夕食を食べてないんだから」


そういってイリヤは下がっていった。

ランサーとの間合いは約10M、一瞬で詰まる距離だ。

俺は体を半身、斧剣を両手、腰横に薙ぎ払いの姿勢で構えた。


「待たせたか」

「いいやかまわねえぜ。 それじゃぁ、おっぱじめるかぁぁあああっ!」


ランサーは一瞬で間合いを詰め、槍を突き出した。

俺は斧剣を全力で薙ぎ払う。


「うぉおおおお!!」


ランサーは俺の斧剣を掻い潜り、弾幕の如き突きの連打を繰り出す。

俺は斧剣を盾にしながら力尽くで槍を弾き、斧剣を振り回す。

俺の斧剣とランサーの槍が激しく打ち合い、幾度も火花を散らす。

斧剣と槍による応酬が続いていたが俺はその状態から、更に一歩踏み出し、


「がぁあああっ! 爆砕斬!」


何故技を叫ぶのか? それはその方が気合が入り、明確に技をイメージが出来るからだ!

古来より言霊には力が宿ると言われている。

故に俺は叫ぶ、力の限り! 敵を打ち砕く為に!


俺は斧剣を振り上げ、振り落とす。

ランサーに後方にかわされてもそのまま大地に叩きつけ、俺もバックステップで離脱、

俺の斧剣は大地を陥没させて粉塵を巻き上げる。

粉塵が晴れその向こう、ランサーはほぼ無傷で立っている。


「てめぇ、中々やるな」

「貴様もかなりやるな、生前これほどの強敵と戦った覚えはねぇぞ」


マジでこれほどの奴と戦った覚えはねぇー!

俺は自分より格上、または同格の相手と戦ったことが殆どない。


今ので分かったが、俺には戦闘経験が明らかに不足している。

俺自身の技量は俺の予想より低いと見た、相手の方が技量は上だ。

比較対照が英雄なのが間違ってるかもしれないが、

しかし、身体能力で劣っている訳ではない。

ランサーのクラスは最速の英霊がなるらしいが、付いていけない訳ではない。

寧ろパワーでは俺が圧倒している。

もっとも、当たらなければ意味が無いが、

先の激突で、俺は油断無く最初から本気、全力だったが、ランサーを捉えることは出来なかった。

更に俺の方が押されていた。

それでも俺が負った傷は掠り傷程度だったのは、恐らく奴が様子見だったからだろう。

まあ、迂闊に踏み込めなかったのもあるかもしれないが、

間合いは俺の方が奴の槍より僅かに広いと見た。

長さ自体は槍の方が長いが、体の位置、持ち方で間合いは俺の方が広い。


「しみったれた偵察任務だと思っていたが、お前のような奴と戦えるのは悪くねぇ」

「俺も貴様のような奴と戦えるのは悪くないぞ、ランサー」


なんせ最後に勝つのは俺だからなっ!

こっちにはマスターのイリアが居る。

たとえ苦戦しても負ける要素は無いっ!!


「ハッ、それで、お前何の英霊だ。 獲物は剣の様だが、セイバーじゃねぇだろ」

「貴様はどう見てるんだ?」

「アーチャーやアサシンじゃあ無さそうだ。 キャスターは論外、残りはライダーあたりになるが」


なるほど、順当な判断だ、普通に考えればそうなるだろう。

残念ながら外れているがな、


「………」

「わからねぇ奴だな、さっさと名乗ったらどうだっ!」

「ふぅっ、俺の名はイーガス。
強いて言うなら元インベーダーのイレギュラーなサーヴァントだ!」


嘘は言っていない、自分的に俺はかなりイレギュラーだと思ってる。

存在自体がっ!!

そして、侵略者[インベーダー]辺りになるだろう。



「!? てめぇ、サーヴァントが真名を名乗るとはどういうつもりだっ!」

「深い意味はねぇ、俺にとってクラスなんてどうでもいいもんだ」

「はぁ?」

「寧ろ殺し合う相手には名乗るのが俺のポリシィーだ。
殺した相手の名前が分からんようでは、冥途で土産話もできんだろう」

「いいぜ、てめぇ、よく言ったっ!
なら、我が必殺の槍と共に、我が真名、その身にk「魔神剣!」ってうおぁっ」


俺は斧剣を振り下ろし、気による斬撃をランサーに向けて放つ。


「『君子危うきに近寄らず』悪いが、てめぇに宝具を使わせるつもりはねぇ! イリヤっ!!」

「許すわ。 やりなさい、イーガス!」

「GAAAAAッ!!」

「てめぇ!!」


宝具なんて使わせる訳にはいかん。

ランサーは今ここで片付ける!

一気に片を付ける為に超サイヤ人になった。

俺の内より解放された気が黄金の光を放ち周囲を明るく照らし、

俺の体を炎の様に包み込む。

俺は爆発した気を体表面に圧縮、

体を炎の様に覆っていた気は渦巻き俺の体に吸い込まれる様にその密度を増し、

より強い輝きを放った。

そして、俺はランサーに突っ込んだ。


「はあああ! 爆砕斬! 爆壊連舞!」


俺は斧剣を振り回す、ブン回す、叩き付ける!!

周辺への被害を全く気にせず破壊しまくる。

そして、俺の破壊した地面をランサー目掛けて散弾の如く弾き飛ばす。

ダメージ自体はたいした事はないだろうが、動きを止めるには十分

俺の斧剣を受ければ、例え槍で受けても重傷は確実だ。

常人なら剣圧だけで楽に死ねる。


「はぁっ! やぁっ! だぁっ!」


しかし、流石ランサー、俺の攻撃をすべて避け切ってる。

それに土砂や木片などの散弾も直撃はしてないけど、ダメージは蓄積している筈なのに、

このまま行けば俺が奴を捕らえるのも時間の問題だろうが、そう簡単にいかんだろう。

今は押しているがこのままでは、いずれ逃げられるか、最悪宝具で反撃される。

何とかしないとまずいと俺の直感が告げている。

何かランサーの仕留める方法は無いか?


「いい加減、くたばれランサーッ!」

「てめぇこそ、調子に乗ってんじゃねぇーっ!!」


ランサーは俺の放った散弾が薄いところを強引に突破、神速の突きを放つ。

俺は地に叩きつけた斧剣を切り上げ迎撃する。


「なっ!!」


しかし、俺の斧剣は空打った。

ランサーは放った槍を途中で引き戻した。

つまりフェイント、ランサーは槍を瞬時に引き戻し、再度槍を放つため深く踏み込む。

俺は切り上げた斧剣を後方へ跳躍しながら振り落とす。

だが、槍は放たれることなく、ランサーはバックステップ、大きく後方に跳躍した。


しまった! っと思った時にはランサーは地を這う獣の如く構えていた。


「受けてみろっ! 我が全身全霊の槍をっ!!」

「やらせんっ!」


助走を始めたランサーに高速で斧剣をブン投げる。


「!? チィッ!」


ランサーは斧剣を跳躍してかわした。

俺が投擲した斧剣は炸裂弾の如く地面に着弾、奴の居た地面を粉砕する。

上空に跳躍したランサーはそのまま体を弓の如くしならせる。

手にする深紅の槍には禍々しい魔力が収束されていく。

事ここに至っては真正面から全力で迎撃するしかない。

俺は気を全力解放、圧縮し、更に右拳の一点に集中させる。


「突き穿つ死翔の槍!!」[ゲイボルク]

「はああああっ!!」


ランサーの槍は放たれた!

槍は大気を突き破り俺に迫る。


「我流奥義! 魔神烈光殺!!」


俺は全力の拳を槍に叩き込んだ。

そして、視界は全て真っ白に染まる。

俺の視界が回復した時にはランサーはすでに居なかった。

どうやら霊体化して離脱した様だ。

俺の方は右の拳が少々砕けたが使えないほどではない。

全身の節々が痛むが致命傷には程遠い。

一応追撃は可能だが深追いは禁物。

周囲は俺を中心にクレーターが出来上がり、一帯が吹き飛んでいた。


しかし、どうやら先の一撃、相殺、いや粉砕することに成功したようだ。

俺の一撃は確実に槍を吹き飛ばし、その余波はランサーにまで及んだはずだ。

最も殆ど槍に相殺されていたから、ダメージはさしてだろう。

槍が俺の手を擦り抜けて来るんじゃないかと心配だったが、杞憂だったようだ。

その場合はランサーも俺の魔神烈光殺を受けて刺し違えることになっただろう。

ランサーに逃げられたのは痛いが、仕留め切れるとも思ってなかった。

まあ、終わったことは今はいい。

今心配なのはイリヤだ。

これでもイリヤには気を付けて離れて戦闘していたが、先の一撃は予想外。

怪我などしてないか心配だ。

さっさとイリヤのところに戻ろう。



俺がクレーターから飛び出した時、イリヤもこちらに向かって歩いて来ていた。

特に問題無さそうだ。

強いて言うなら砂埃を被ったのか機嫌が悪そうだ。


「無事かイリヤ?」

「ええ、問題ないわ。 それよりランサーに逃げられたのね」


訂正、どうやら機嫌が悪いのはランサーに逃げられたからのようだ。


「まあいいわ、所詮まだ前哨戦なのだし、あちらの目的はこちらの偵察のようだったし、
それに偵察で宝具を使うなんて、程度が知れるというもの、気にする必要は無いわ」

「そうでもないと思うがな、流石はケルトの英雄、クランの猛犬、クー・フーリンと言ったところか、
あの敏捷性と槍の鋭さはなかなかに脅威だ、防御に徹されたら厄介だと思うがな」

「それでも切り札である宝具があなたに効かないのなら、脅威ではない」

「まだ令呪が有るだろう」

「それはこちらも同じだし、わたし達にはまだ切り札も有る」

「あまり楽観するのも良くないと思うけどな~」

「その辺はあなたに任せるわ。 がんばってね、イーガス♪」


イリヤは笑って踵を返す。

やれやれ、これは信頼されていると受け取っていいのか?

そんなことを思いながら俺たちは城への帰路に付いた。







あとがき

こんな感じで投稿させてもらいました。

例に挙げたサーヴァントメンバーは思いついたのを適当に並べただけですから気にしないでください。

俺的に英雄って言ったら、焔王鬼 [天ツ風]、理由はなんとなく一番印象に残ってから、この方がセイバーならクラススキルの意味が無いな……





[11759] 俺の適当な現状確認、イリヤの回想  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/01/08 07:52
俺とイリヤはランサーを退けて後、城に戻って遅い夕食、いやすでに夜食か? をとった。

現在食後のお茶をイリヤが飲んでいる。


「それで今後はどう動くつもりなんだ?」

「あなたはいつもそれね」

「行動方針をマスターに問うのはサーヴェントとして当然だろう」


俺は食後のデザートに果物を摘みながら問う。

因みに俺が食べているのはみかん、もちろんコタツで食べている。

場所はイリヤの部屋、飲み物は日本茶……

洋風の部屋の真ん中にコタツがドカッと置いてある。

ぶっちゃけかなりシュールだと俺は思うんだが、そう思うのは俺だけではないと信じたい。

もっともこのコタツ、俺がここに持ってきたから言うのは筋違いかも知れんが…

町でついつい衝動買いをしてしまった。

お金についてはアインツベルン金持ちだなって感じで、

イリヤは全く疑問を抱いている様子は無い。

寧ろこのコタツが暖かくて気に入ってくれたようだから、それは良かったんだがな、

俺も買ってきた甲斐があるというものだ。

やはり元日本人としては冬はコタツだろう。

今も見た目日本人とかわらんけど、黒目黒髪だしな、


「その心がけはいいことだけどね。 あなたはじっとしているつもりは無いんでしょ」

「まあな、他のサーヴァントは動き出してるようだからな」

「はぁっ、傷の具合はどうなの?」

「そんなもの飯食ってすでに完治しとるわ」


ただし、外見上は、実際はまだ右手に痛みが残っている。

恐らく槍の呪いによるものだろう。

しかし、それも数日か経たぬ内に直るだろし、戦闘への支障も殆どない。


「はぁっ」


イリヤは俺の言葉に深い溜め息で答える。


「溜め息を付くと幸せが逃げるぞ」

「それってこの国のコトワザ?」

「たぶん」

「わたしは溜め息を付くから幸せが逃げるんじゃなくて、
幸せが逃げたから溜め息が出るんだと思うわ」

「ほぉ、なかなか意味深だな、俺もそう思うぜ」

「まあ、そんな事はどちらでもかまわないわ。 わたしは疲れたからもう寝るわ。
おやすみ、イーガス」

「ああ、おやすみ、イリヤ」


さて、イリヤも眠ってしまったが、俺はどうしようかな?


俺はこれからどうするかを考えていたが、めんどくさくなったので寝ちまう事にした。

俺はもともと肉体派、行動は直感で動く。

明日また考えればいいや、って感じで投げた。

サーヴァントは寝る必要ないんだけど、

何だかんだ言って俺もランサーと戦って疲れたのかもしれない。





そして、俺は次の朝を迎えた。

俺は霧に覆われる森に向い軽めにいつもの日課をこなす。

いよいよ聖杯戦争の開始が近付いているのだろう、

ここ最近高揚感のようなものが強くなってきているように感じる。

昨日ランサーと一戦交えたのも関係しているかもしれないが…



「それでイリヤ、今後のことだが、もう一度士郎と話してみないか?」


俺はやはり食後のお茶をしながらイリヤと話し合う。


「どうしてそう思ったの?」

「あいつどう見ても凡人、一般人だろ」

「シロウは魔術師よ」

「仮にそうだとしても、何も知らないんじゃねぇか? 
あの反応は素だと思うぞ、あれが演技なら奴は一流の役者か詐欺師になれる」

「確かに、シロウは何も知らないと思うわ」

「ならもう一度話してみよう。 奴はまだサーヴァントを召喚していない、
っていうか聖杯戦争何て知らないだろ」

「………」

「召喚なんて出来ないんじゃないか?」

「シロウは令呪を持っていたわ。 シロウが望むなら聖杯が応え、英雄は召喚される。 
………たぶん」

「……うん、まぁそうだな、奴は俺の勘だがトラブル体質だ。きっと何だかんだで召喚することになるだろうさ、うん」


場の空気が落ち込んできたから俺は慌ててフォローした積もりだが、全然フォローになってないな…

しばらく沈黙が続いたがイリヤが気を取り直して話を始めた。


「兎に角、シロウが何も知らなかったとしてもキリツグの息子なのは変わりがないわ」

「確かに、托卵されたカッコウでも一応は親子かも知れん」

「……何か言いたいことがあるのかしら?」

「托卵(たくらん)とは、卵の世話を他の個体に托する動物の習性のことである。代わりの親は仮親と呼ばれる。もともとは鳥類のそれを指したが、魚類や昆虫類でも見られる。
托卵は、巣作りや抱卵、子育てなどを仮親に托す行為である。一種の寄生といってもよい。他の種に対して行う場合を種間托卵、同種に対して行う場合を種内托卵という。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』参照」

「………なるほど、つまりあなたはわたしをバカにしている訳ね」


イリヤは優雅に紅茶を一口飲みながらそう応えた。

カップを置いた手が微妙に震えている。

まずい、見えないがイリヤがどす黒い気を放ってる様に感じる。


「いや、すまん。 ちょっと言ってみたかっただけだ。
俺もたまには読書の為に説明するのも大事だと思ったからだな…」

「?? 何を言ってるの?」

「いや俺にも良く分からんが、つまり俺が言いたいことはだな、
士郎と切嗣のことについてよく話し合う必要があるんじゃないか? ってことだ」



ここで分かりやすく簡単に今までを整理しておこうか、

聖杯戦争とはアインツベルン、遠坂、間桐[マキリ]の三家が造った儀式魔術だ。

召喚したサーヴァント七騎を聖杯に生け贄に捧げ、「 」に至る穴を召喚する儀式、

そして現在、三家それぞれ利益を独占する為、他者を巻き込みながら三つ巴の戦争をしている。


第四次の聖杯戦争で最後まで残ったのがアインツベルン代表、衛宮切嗣、

この方がイリヤの親父だが、この方は聖杯が気に喰わなかったらしく打っ壊した。

アインツベルンには戻ってくることも無くイリヤを放置した。

そして戦争があったこの地で孤児の士郎を引き取り余生を過ごし逝った。


こんな事があったから切嗣に捨てられたイリヤは切嗣を憎んでいる。

士郎に興味があるのも、ここから来ている。


多少偏見が混じってるかもしれないが大体こんな感じだ。

そして現在、俺の分かってる状況がイリヤはアインツベルンが用意した聖杯の器で長く生きれない。

おまけにサーヴァントを殺していくとイリヤが動かなくなってい・く・ん? だったかな?

俺はこの辺りを何とかする為に他力本願ながら士郎を当てにしているのだ。

正確にはこいつが知り合うであろう凛さんを当てにしている。

残念ながら俺にはイリヤを助ける手が思い浮かばん。

唯一思い浮かぶのが、大聖杯を破壊だが、迂闊に壊すのはまずい気がする。

しかし、今のタイミングを逃すと破壊するのは難しくなるだろう。

今なら邪魔は入らないはず、そして大洞窟に入って大猿化すればチェックメイト!

そうなれば例えイリヤでも俺は止められないだろう。


そういえば一つ気になってたが、そもそもアインツベルン、

マスターが途中で動かなくなるのにどうやって聖杯を手に入れるつもりだったんだ?

俺が知らないだけでなんか有ったのか?

そもそもどういった状態のものを連中は望んでるのか?

少なくとも俺は知らないな、持ち運べるようなものなのか?




「はぁ、わかったわ。 もう一度話してみるわ」

「ああ、そうしろ。 戦いとは敵を殺すことが出来る者だけがやるものだ……」








side イリヤ


わたしが呼び出したサーヴァント、イーガスは変わっていると思う。

本来サーヴァントは使い魔、道具であるはずなのに、

何時もわたしに話しかけてくるし、なれなれしい。

自分のことをクラスではなく真名で呼ばせているし、

サーヴァントなのにわたしの命令を聞かない時もある。

もっとも、何だかんだと文句を言っても最後には言うことを聞いてくれるが、

やりたくない事は例え令呪を使っても、恐らく動かないだろう。


わたしはイーガスとの『第五回 これからの事について会議』[命名イーガス]

の話合いを終えて今までのことを少し振り返っていた。



最初にイーガスを呼び出した時、ヘラクレスの召喚に失敗して呼び出された全く無名の英霊に、

アインツベルンの者は落胆した。

わたしに対する扱いも悪くなるだろうと思ったが、わたしの傍には常にイーガスが居た。

そしてイーガスは強かった。

その能力はステータスを見ても並みの英霊より明らかに強かった。

その力を見た他の連中は、まだ望みはあると再び歓喜していた。

もっとも、それを見たイーガスは嫌悪感を露にしていた。


そして訪れた満月の夜、怪物と化したイーガスはアインツベルンを滅ぼした。

山のように大きな怪物は腕の一振りで大地を穿ち、

口から吐き出された炎は森を焼き払い、城を吹き飛ばした。

この事件でアインツベルン当主のアハト翁も死にアインツベルンはほぼ壊滅した。

この後、わたしたちは居場所を失い冬木にやってきた。

この時のイーガスは薄く笑っていた。


この力を見たわたしは恐怖も抱いたがそれ以上に強く魅せられていた。

イーガスは生前、世界を滅ぼしたと言っていたがこの力を見て事実だと思った。

神話や伝承の中には滅びた世界や国の話は数多くある。

恐らくイーガスもそんな数ある伝承の中に、世界を滅ぼした怪物としてのみ残っているのだろう。

これならイーガスが全くの無名でも不思議ではない。

本来なら英霊の力は呼び出された時代の知名度に左右されるから、

知る者が存在しない英霊は、その霊格は生前より落ちるはずなのに、

それで尚この強さなのだからイーガスはヘラクレスを上回る最強のサーヴァントだろう。


わたしはイーガスに聖杯にどんな望みを願うのか聞いたら、

『どんな願いでも叶うなら、世界一美味い飯を腹一杯食いたい』っと応えた。

二度目の生を望まないの? っと聞いたら、

『俺は今この瞬間を楽しんで生きる。 先の事など知らん』って応えた。

イーガスは言葉通り、今を楽しんでいる様だった。

そんなイーガスと一緒にいるのはわたしも楽しかった。

町を一緒に見て回るのは、外を知らなかったわたしにはとても新鮮だった。

それはイーガスも同じ様で知らないところを二人で見て回った。

時々何を考えているのか分からない行動をするが、それはそれでいいと思う。

少なくとも退屈はしていない。



イーガスは自分は七騎の中ではバーサーカーしか該当しないと言っていた。

『俺は生前、剣を握ったことも無い!』と言って剣の練習を始めた。

英霊は座に着いた時すでに完成した存在のはずなのに、

イーガスは毎日修練を積み重ねていた。

そして、わたしもそれに付き合わされた。

この修練でイーガスは狂化で得た限界以上の力を自分のものにしていった。



他にはイーガスはシロウをからかうのが面白いのか、会う度に突っかかっている。

それもわたしが止めると分かっていてやっている。

恐らくわたしが止めなくとも2・3回、殴る程度で終わるでしょうけど、

からかう事自体は、わたしも面白いから賛成なんだけどね♪



そして始めて見たサーヴァント同士の戦闘。

その戦闘は物語でのみ語られる幻想を現実に再現していた。

イーガスは斧剣を使い、ランサーの槍と渡り合っていた。

2ヶ月前まで剣を持ったことも無かったのに、三騎士と引けを取らずに渡り合いを演じた。

宝具を開放してからのイーガスは、まさに圧倒的だった。

ランサーは後退しながら防戦していた。

二人は森を激しく移動しながら戦闘していたので、追いかけるのは大変だったし、

わたしは迂闊に近寄ることも出来ず遠目に見ていることしか出来なかった。

そして、ランサーが真名開放し撃ち放った宝具は、紅き流星の如く流れ落ちた。

イーガスはその一撃を正面から拳で受け止めた。

二人の力の衝突はわたしの視界を白く染め、バランスを崩すほどの衝撃を齎した。

わたしは瞳を閉じ、腕で顔を隠し、足を踏ん張って耐えた。

開いた瞳に映ったものは、まさに流星が空から落ちたような圧倒的な破壊跡だった。

わたしはその破壊を後を見て不安に成ったが、

イーガスはそのランサーによる一撃を受け止めても、ほぼ無傷で立っていた。

目立った外傷は右手から血を流している程度だった。

心配したわたしの前に、イーガスは平然と軽い様子で現れた。

心配して損をしたような気分になった。

ランサーには逃げられてしまったけど、イーガスを他のサーヴァントと比較できたのは良かったと思う。

こちらもランサーに宝具を見せることになったが、まだ奥の手もある。

イーガスがいる限りわたしが負けることは無いだろう。



そして先の話し合いでも、イーガスはあいつなりに私のことを心配しているのだろう。

わたしの事情はイーガスには話してある。

話を聞いたアイツはいい顔をしなかった。

あいつが聞いてきたことは聖杯戦争の後のわたしのことだった。

それに付いてはわたしも曖昧に答えを返した。

アインツベルンの一族は殆どが死んでしまったから、わたしにもどうなるかは判らなかった。

例えわたしがこの戦争で生き残ったとしても、帰ることなど出来ないだろう。

今はもう帰るつもりなど無いけれど。



今までを振り返ったわたしは、これか会う士郎と何を話すかを考え始めた。





ステータスが更新されました。

イーガス

超自我:C → B





あとがき

自分のボキャブラリーの無さに泣いた。

キャラクターの心理描写なんか、あまり美味く出来ていないように思う。

今回軽くイリヤの回想を入れてみたがどんな感じだろうか?

これから先どうなっていくのか?

次回はいよいよランサーの衛宮亭襲撃、セイバーは召喚されるのか?

それともイベントはまさかのブレーカーされるのか!

感想お待ちしてます。





[11759] 俺は貴様に答えを問う  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/01/19 07:32


「ハァッ…ハァッ……ハァ…」


なんだったんだあれは…

アレは…

とてもこの世の人間だったとは思えない。

あいつらは本気で殺し合いをしていた。

俺はそこに偶然居合わせて、そして……

確かに胸を刺されて死んだはずなのに…

いったい何がどうなっているんだ。


「まずは家に帰って…、すべてはそれからだ…」



衛宮士郎は刺された胸を押さえ、だるい体を引きずる様に帰路をいそいだ。

そして、家までは何事も無くたどり着き玄関の扉に手を掛けた…



「なに!?」


鍵が開いている。

朝確かに鍵は閉めてはずだ。

藤ねえでも来てるのか?

まさか!!


『見られたからには、しょうがねぇ』


槍の男はそう言っていた。

俺がこうして生きている以上、ヤツはきっと口止めに……

俺はカラカラの喉を鳴らし、震える手を押さえ扉を引いた。


「遅かったな、小僧」


腕を組み、仁王立ちの男がそこに居た。





side イーガス


「遅かったな、小僧。

この俺様をここまで待たせるとはいい度胸だ。
その命よほどいらないと見える!
二度目は無い、今ここで死ねぇ!!」


俺は殺気全開で士郎を睨み付ける。

士郎は俺の気に当たりにより後方に倒れることになったが、


「っと言いたいところだが、取り敢えずあがれ」


俺は倒れた士郎を引っ張り起こし、リビングまで連れて行く。


「お帰りなさいシロウ。 お邪魔しているわ」


そこにはイリヤが待っていた。


俺たちは衛宮亭にて士郎の帰りを待っていた。

俺かなり悩んだんだ。

原作通りに待ち伏せするか、学校での戦闘に乱入するか、セイバー召喚後に乱入するか…

どのタイミングで出れば今後の展開を有利に進めるか、

原作道理が一番展開を読みやすいかもしれないが、俺ヘラクレスじゃないからな、

結局結論は出なかったから、イリヤに任せることにした。

後は野となれ山となれ、臨機応変に対応できればいいなぁっと思う。


「それではお茶を入れてくれ、出来れば茶菓子も出してくれ」

「ああ、ってちょっと待ってくれ!!
何であんたたちがここに居るんだ?」

「昨日しっかり、伝言を頼んでおいただろう」

「確かに桜に聞いたが、やっぱりあんたたちだったのか」

「そうだ。 取り敢えず茶を用意しろ、話はそれからだ。
話が終わったら飯も頼む」

「………」


士郎は状況が良く分かって無さそうだが、台所に行ってお茶の用意を始めた。

因みに俺たちがどうやってこの家に入ったかというと、

霊体化した俺が中に入って内側から玄関を開けた。

扉を破壊しなかったのは俺の良心だ。


そして俺たちは机を挟んで向かい合って座った。

位地は俺の隣にイリヤ、イリヤの正面に士郎だ。

ついでに士郎に出された茶菓子は煎餅だった。

確かにお茶には合うかもしれんが、

こいつ正気か? 俺はともかくイリヤに出すか?

実は見た目より相当てんぱってんのか?

まあ、気にしても仕方ないか…


「それでは話し合いを始めるか、俺たちはおおよそ貴様の事情を理解している。
聞きたいことがあるなら質問しろ」

「ちょっと、なぜあなたが話を進めているの?」

「なに、話の切欠を作ってやろうと思ってな、
こいつも状況が良く分かってないようだし、別に構わないだろう」

「ふぅ、わかったわ。
それじゃあシロウ、応えられることなら何でも応えてあげるわ」


イリヤは一息を漏らしてシロウに質問を促した。


「ああ、それじゃあ、あんたたちは何者で、何の用があって俺に会いに着たんだ」

「そうね。 自己紹介はこの前したけど改めて、
わたしはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、聖杯戦争に参加しているマスターの一人。
こっちのイーガスは、わたしのサーヴァントよ」


なんてストレートな返答だ。

俺は回りくどいのは苦手だからその方がいいか、どの道一から説明せにゃならんし、


「聖杯、戦争?」

「そう、聖杯戦争。 分かりやすく言えば七人の魔術師とパートナーによる殺し合いよ」

「殺し合いだって!!」

「そう、万能の器である聖杯を求めた殺し合い。
シロウも見たんでしょう? あの人智を超えた死闘を」

「!? 何で知ってるんだ?」

「その傷痕を見れば分かるわ。 
学校で戦闘が行われていたのは知っているから、シロウはその戦いに巻き込まれたんでしょう?」

「ああ…、あいつらは何者なんだ、人じゃないのは分かる」

「サーヴァントは英霊よ」

「英霊?」

「英霊は生前に成した偉業を認められ、死後その魂を『座』へと迎えられた英雄のことよ」

「英雄ってアレか? 昔話とかに出てくる」

「そうよ、神話や伝説、伝承や信仰などからその魂を『英霊の座』に刻まれた者。
もっとも、なかには例外的なのも存在するらしいけど」


まあ確かにな、俺には詳しく分からないがアンリ・マユなんてのも居たぐらいだ。

ヤツは唯の人間だったが、中にはマジで悪魔や魔獣、天使なんて類も存在するかもしれない。

半神のギルガメッシュやヘラクレスが居たぐらいだ。

魔に堕ちた人間の伝承なんて腐るほど有るわ。


「じゃあ、あんたもそうなのか」

「まあ、一応な」


サーヴァントなんだから一応英霊なんだろう、多分。

佐々木小次郎は架空の存在って言われてるけど、日本での認知度はたけぇからな、

知らないヤツの方が少ないだろう。

もっとも俺を知ってるヤツは居ないだろうが、


「次はわたしたちがあなたに会いに来た理由だけど、それは…


カラン、カラン!!


「「!?」」

「どうやら招かれざる客が来たらしいな」


ここの結界、内側にいる奴全員に警告を出してるのか、関係者でないと解らんだろうが、

俺は咥えてた煎餅を噛み砕き、立ち上がってベランダから外に出た。

無論戦闘衣に着替えてだ。


「さて、ランサーここにいったい何用だ? まさか昨日今日で再戦に来たのでは有るまい」


俺が庭に向って声を掛けると紅き槍を携えた槍兵が姿を現した。


「けっ、てめぇらこそなんでここに居るんだよ」

「俺らは昨日から小僧にアポとってあるんだ。 
てめぇこそ俺の飯の邪魔をするとは容赦しねぇぞ」

「おい、本気で飯食って行く気だったのか!」


俺の台詞にシロウが突っ込みを入れてきた。

なかなか余裕だな、


「まあいい、ランサー、貴様は仕留め損じた小僧を殺しに来た、そう解釈していいのか?」

「ああ、俺はそこの坊主を殺しに来た、お前が居るのは予想外だったがな」


背後から士郎の息を呑む音が聞こえる。

目の前の男が自分を殺しに来たと言ってるんだから無理もない。

一度殺されてるなら尚更だ。


ランサーも少なくともこの敷地に踏み込むまでは俺の存在に気付いてなかったろうからな。

一応気を消し気配を絶っていたからな、

気配遮断のスキルなんて持ち合わせてないから、どこまで通用するか分からないが…


「なるほど、丁度いいかもしれんな、小僧! 
俺たちがここに来たのは貴様がこの戦争に参加するか否かを問いにここに来た」

「!? どういうことだ?」

「シロウ、あなたにはマスターの資格がある。
わたしはあなたにこの聖杯戦争に参加するか、しないのか、答えてもらうためにここに来たの」


そういうことだ、イリヤとしては少々予定が狂ったかもしれないが、

俺たちは士郎にこの戦争に参加するかどうかを聞きに来たのだ。

ここに至るまでの俺がイリヤに成れない説得? をして話し合った結果だ。

いや、本当に苦労した。

この俺が命の尊さをイリヤに語る、言い出してなんだが自分の台詞に吐き気を催し途中で断念した。

取り敢えず命の価値観は人それぞれに違うが、一つしかない代えのきかないものだと語った。

イリヤは俺の命の価値観を聞いてきたが、

俺は「知らない他人はどうでもいいが、気に入ったヤツは敵でも生かす」と正直に答えた。

イリヤの反応は「ふ~ん、そうなんだ」っとこんな感じだった。

この話は今一だったから、代わりに人生の楽しみ方を独断と偏見を多分に含んで語ってやった。


随分話がそれたが、これで後は成り行きに任せて大丈夫だろう。

ヤツは正義の味方志願者、十中八九戦争に身を投じるだろう。

仮に戦争に参加しなかったとしても、やる事は変わらない。

大聖杯を破壊する、そうすればすべてのケリが付く。

もう決めた、誰が何と言おうと俺はぶっ壊す。

こいつはもうここに来る前にイリヤにも話した。

アインツベルンはもう殆ど滅んでいる、この際後腐れなく全部潰してやろうと、

そうすれば今後、姉弟? としてイリヤも残り数年と短いかもしれない人生を楽しく暮らせるだろう。

イリヤも特に反対しなかった。

元々イリヤにとっては聖杯や根元なんてどうでもいい物だったのかもしれない。

唯少し哀しそうな顔をしていたのは、気のせいではないと思う、

その理由までは俺には分からない。


それに士郎が戦争に参加しないのなら俺が戦争を続ける意味は殆どないからな、

イリヤとお別れってのと、他のサーヴァントと戦えないのは残念だが、

ここは確実性を求めるべきだ。

先のランサー戦も一歩間違っていたら、俺が死んでいたかもしれない。

ならばさっさと目的を達成してしまうべきだろう。

大聖杯の破壊でこの地の霊脈がどうなろうと俺の知ったこっちゃねぇ、

仮にこれが原因で災害なんかが起きたとしても、その辺は土地の管理者である遠坂の領分だろう。

俺の領分じゃねぇ。


士郎が戦争に参加するなら出来るなら共闘、[これは俺の希望]

無理なら出来るだけ戦闘は先延ばしにする方向で、

もっともセイバーは騎士王、聖杯の中身を知れば、騎士道精神で協力してくれるだろう、きっと…

無理なら決戦は最後、相応し居舞台での決闘を宣誓すれはいきなり切りかかりはしないだろう、多分。

出来ればギルガメッシュ退治を協力してほしい。

俺一人では少々不安、俺一人なら最悪逃げることは出来るだろうが、

イリヤが一緒だとどうなるか分からない。

ヘラクレスの旦那が負けた大きな原因でもあるからな、俺もイリヤを庇いながら勝てるとは思えん。

ヤツは英雄王なんて謂われてるが不意打ちとか平気でやるからな、

俺も人のことは言えんが…

まあ、戦の常勝とは戦わず勝つことだから、大聖杯を破壊すれば流石のヤツも消える…よな?

我ながらかなり楽観的な考えだ、前向きだと考えておこう。


「資格って何のことだ?」

「シロウの左手にある痣は令呪というの、それはマスターの証、そしてサーヴァントを縛り付ける鎖」

「鎖?」

「令呪はサーヴァントに対する絶対命令権、それはサーヴァントと契約して初めて意味を成すもの」

「………」


士郎は黙って自分の左手の甲を見つめている。


「説明はここまでよ、さあシロウ選んで、この戦争に参加するか否かを」

「ちょっと待ってくれ! 行き成りそんなこと言われても…」

「それならそれでかまわない、その代わり今日のことは忘れてもらうわ。
あなたの令呪もわたしが貰う」


おいおい、イリヤさんそれはどういうことですか?

ワタクシ聞いてないですよ?

いや待て、戦わないのなら今日の記憶は必要の無いものなのか、

下手な記憶があると今後に禍根を残すことになるかもしれないからな。

特にアイツの場合は何か一騒動起こすに違いない。


「俺が参加したら、イリヤと戦うことになるのか?」

「シロウが望むなら、受けて立つわ。 わたしは逃げも隠れもしない」

「…俺は殺し合いなんてするつもりは無い、聖杯なんてもの欲しくもない」

「そう、ならシロウはもうゆっくり休んで、
そうすれば、明日起きたらいつもと変わらない朝が訪れるわ」


イリヤは目を伏せそう言った。

その表情はいつもと変わらないが、俺にはどこか ホッ としているように見える。

例えるなら弟を心配した姉の表情だ。(見たまんま)

やはり切嗣のことを抜きにすればいい姉弟[兄妹?]になれるだろう。

もっとも士郎がイリヤに振り回されるのはすでに確定事項だと思うが、


「……いや、そんなつもりはない」

「えっ?」

「イリヤみたいな子に戦いなんてさせる訳にはいかないっ!」

「…………」


イリヤは口を開いたまま呆けている。

ちょっと待て小僧、それは俺の実力が信用できないということか!!

俺は今すぐ士郎をアイアンクローで吊るし上げたい衝動に駆られたが、何とか耐えた。

空気が読める俺、偉い♪


「それに関係のない誰かか巻き込まれるかもしれないのを黙って見過ごす訳にはいかない。
だから俺も戦う、みんなを守るために」



どうやら、士郎は聖杯戦争に参加することを決意したようだ。

果たしてこれから先どうなっていくのか?

つづく?








あとがき


Nameless’です、予想外に続いています。

初めの予定では、三話ぐらいでランサーと刺し違えて死んでしまうつもりだったのに、

しかしまだ続いております。

美味く表現できているか、書けているか自分では今一つ。

さて、これからのイーガスの方針が一応決定しました。

これからどうなるか私にも今はまだ分かりませんが、期待してくれると嬉しいです。

それでは感想お待ちしています。




[11759] 赤き主従との邂逅  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/01/24 00:30

「それで、そっちで話を進めるのはかまわねぇが、俺はいつまで待たされるんだ?」


士郎が聖杯戦争参加の決意を宣言した時、今まで成り行きを見守っていた、

ぶっちゃけ放置されていたランサーが口を開いた。


「なんだ貴様、まだいたのか」

「ケッ、よく言うぜ、気なんか片時もそらしてなかったろうが」


ランサーは槍を消してそう言った。

確かに俺は士郎とイリヤの会話に耳を傾けていたが、

ランサーから気をそらすようなことは一時もしていない。

もっとも、ランサーはこっちに殺り合うつもりが無い事は初めからわかっていたようだし、

今では完全にヤル気が失せたようだ。


「まあな、それでランサー、お前はこれからどうするつもりだ?」

「どうもこうもねぇ、こっちは元々偵察でここに着たんだ。
サーヴァントと殺し合うつまりはなかったし、貴様もヤル気が無いなら、俺は帰る」

「そうか」

「言って置くが、次に会うときは最後まで付き合ってもらうぜ」

「覚えておこう」


ランサーはじゃ~な~っ、って感じで背を向け跳躍、塀を飛び越えここから去っていった。

俺はランサーが去っていった方とは別の方向に視線を向ける。


「やれやれ、さっさと済ませるか」

「ええ、そうね」


流石俺とイリヤ、すでに阿吽の呼吸だぜ。

士郎だけが訳が分からないっという顔をしている。


「シロウはここで待っていて」


イリヤはそう言って、士郎に背を向けリビングの方から玄関に歩いていく。

俺は庭から玄関の方に歩いていく。


「おっおい、ちょっと待ってくれ」


士郎は慌ててイリヤの後を追いかけたようだ。

そして俺たちは玄関で合流した。


「おい小僧、てめぇは来る必要は無いぞ」

「そうね、見送りならここまででいいわ、心配しなくてもすぐに戻ってくるわ」


士郎は全く納得いかないという顔をしている。


「いったいどこに行くつもりなんだ」

「何、客の出迎えといったところだ」

「客って、まさか戦いに行くのか!!」


士郎は怒鳴るように言葉を放つ。


「それは相手の出方にもよるが、恐らくそうなるだろう」

「それは相手を殺すということか」

「向こうがこちらを殺す気で来るなら、こちらもそれ相応の対応をさせてもらう」

「っ…………」


歯を食いしばり、納得いかない表情を浮かべている士郎に、俺はやれやれと溜め息を吐く。

イリヤも少々困ったような(不思議そうな)顔をしている気がする。


「どの道もういい合う時間も無い、敵は外で待っているようだしな」

「話し合いで何とか成らないのか?」

「それで何とかなるなら戦争なんて起こらんわ」


なんせこの戦争すでに五回目、しかも最初の一回目は200年以上前だからな、

話し合いでケリがつくなら当に終わっている。

俺は士郎に背を向けて歩き出す。


「残念だけどシロウ、サーヴァントの居ないあなたが来ても足手まといよ。
心配しなくても大丈夫、イーガスは最強のサーヴァントよ、私が負けることは有り得ないわ」


イリヤは優しい微笑みを浮かべて、士郎に背を向ける。

士郎は一瞬呆けた顔をしたが、すぐに気を取り直して後を追いかける。

結局ついてくるのかヤツは、付いてきてもイリヤの盾ぐらいにしかならんだろう。

いや、それだけ出来れば十分か?

まあ、相手が俺の予想道理なら行き成り切迫したことにはならんと思うけど、




「よう、待たせたなっというべきか?」

「なに、こちらは待ってなどいないさ」


こんな感じで俺は赤の主従と邂逅した。

俺にとっては必然だったがな、

向こうはすでに臨戦態勢、アーチャーはすでに白と黒の双剣を構えている。

一見手に持っているだけのように見えるが、アレこそが奴の構えなのだろう。

俺も斧剣を肩に担ぐように一撃必倒の構えで対峙する。


俺にとってアーチャーはハッキリ言って不確定要素だ。

やつの正体と目的は一応覚えているが、その行動はルートごとにバランバランだった気がする。

被害最小、目的達成のために行動しているんだろうが、

俺には奴の基準が分からんから、行動の予測がまるっきりできん。

少なくともイリヤに手を出すような奴ではないとは思っている。

アニメの最後は一番印象に残っているな、


兎に角、ここで士郎を殺されると俺の努力が水の泡になる。

ここは排除しておいた方が得策なのか?


「こんばんは、リンはこんなところに何の用かしら?」


イリヤが俺の横に並び、リン、遠坂凛に声を掛ける。

後ろから「と、遠坂?」とか聞こえたが無視、


「あら、私のことを知ってるの?」

「ええ、知っているわ。
そのようすじゃあ、あなたはわたしの事を知らないようね、自己紹介しておきましょうか」


イリヤはそう言って居住まいを正し、優雅に礼をする。


「はじめまして、わたしはイリヤ、
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言えばわかるかしら?」

「なんですって!?」


遠坂は驚愕の表情を浮かべる。


「一応聞くけど、今ここで戦うつもりかしら?」

「聞くまでも無いじゃい、出会った以上、戦うしかないわ」

「それもそうね」


遠坂の返答にイリヤは応えながら薄く笑う。

まさに一触即発、次の一声で激突は必至、止められるとすれば第三者の介入、


「イーg…」 「アーty…」

「ちょっと待ってくれ!!」


イリヤと遠坂が声を出した時、士郎が叫びながら飛び出し、姿を現した。

ちっ、どこまでも予想道理か、どこまでも厄介な奴だ!


「シロウ!?」

「衛宮くん!?」

「!?」

「おい小僧! 何のつもりだ貴様、自殺志願者か?」
 

全員の視線が一時的に士郎に集まる。

士郎はその視線に一瞬気圧されるが再び声を発する。


「俺はまだこの戦いに納得できない! 本当に殺し合わないといけないのか!!」

「てめぇ、さっき戦うって啖呵切ったヤツはどこのドイツだ!」

「それでも知り合いが殺し合うのを黙って見過ごすことは出来ない」


マジで鬱陶しくなってきた。

俺は餓鬼のお守りをするつもりはないぞ!


「シロウ退きなさい、シロウの言っている事はタダのわがままよ」

「衛宮くん、私たちは最初から覚悟は出来てる。 あなたに口出し出来る事じゃないわ」

「小僧、今の貴様は気に入らないから泣き叫ぶ、やってることは赤子と同じだ」

「それにサーヴァントの前に飛び出すなんて、自殺行為よ。
ひょっとして、お兄ちゃんバカ?」

「シュレッダーに札束放り込むくらいバカだわ、後先考えてないでしょう」

「そいつに後先考える頭があれば、そもそもこんな戦争に巻き込まれてねぇだろ」

「…………」


俺たちは士郎を言葉で叩きまくる。 

アーチャーは無言だが鋭い視線で士郎を睨み付けている。(哀れみも含まれてる気がする)

士郎は気圧されて後ずさり押し黙る。


「小僧、一つ教えてやる、力なき正義は無意味だ。
自らの意思を示すにはそれに見合う力が必要だと知れっ!」


別に暴力に限ったことじゃないぞ、力ってのは権力とか精神力とかいろいろ有るからな。

まあこいつには行動力は無駄に有るのかもしれないな、


「確かに俺は無力かもしれない、それでも俺は自分の意志を曲げるつまりは無いっ!!」

「ふぅっ、やれやれしかたのないヤツだ。
おい、アーチャーとそのマスター、この勝負預けるぜ」


俺はイリヤに視線を向ける。

イリヤは俺の視線を受けて笑みを浮かべる、どうやら俺の考えを正確に把握したようだ。


「リン、そういう訳だからまた合いましょう」


イリヤは踵を返し駆けて行く。


「ボケッとするな小僧」

「うわぁっ」


俺はすぐに士郎の首根っこをガシッと引っ掴み、イリヤの後を追いかける。



その場に残された二人


「凛、どうするのだ?」


俯き加減の遠坂、その拳は震えているように見える。


「決まってるじゃない! 追いかけるわよ!!」


率先して駆け出して行った。

やれやれっと言った感じでその後を追いかけ始めるアーチャー。





「これからお前のサーヴァントを召喚するぞ」


俺は土蔵の扉を開き、士郎を放り込んだ。


「ぐわっ!」


土蔵の地面にへばる士郎を見、続いてイリヤが土蔵に入っていく。

俺も後ろに気を配りながら中に入る。


「いっつつっ、いったい何するんだよ!」

「さっきも言ったろう、貴様のサーヴァントを召喚すると」


俺は士郎に応えながら、イリヤに注意を向ける。

イリヤは地面の一角を丹念に調べていた。


「そこでいいのか?」

「ええ、ここに召喚の魔法陣がある」


イリヤが地面に手を添えると地面が輝き、魔方陣が現れる。

イリヤは一息付き、立ち上がると士郎に歩み寄り、


「がんばってね、お兄ちゃん♪」


笑顔で背中を押した。

躓きコケ掛けた士郎は何とか踏み止まり、ますます分からないといった顔で???を浮かべる。


「ちょっと待ってくれ、いったい何を始めるんだ?」

「貴様は馬鹿か? 馬鹿なのか、馬鹿なんだろ!
サーヴァントを召喚するって言ってんだろ!」

「俺はどうやって召喚するかなんて知らない」

「んっなことはわかっとるわっ、だからここまでお膳立てしてやっとるんだろうが!
後は召喚の呪文を唱えるだけで召喚できる、イリヤ」

「分かっているわ、ただこのまま触媒も無しに召喚するつもり?」

「触媒なら打って付けのものがあるだろう」


俺は不敵な笑顔を浮かべ魔方陣に歩み寄り、中心に斧剣を衝き立てた。


「どうせ呼ぶなら、最高のサーヴァント、それならこいつを使わない手は無いぜ」


俺が衝き立てたのはもちろん、ヘラクレスの斧剣だ。

騎士王も捨てがたいが聖杯をぶっ壊すのは確定事項だから、説得が面倒だ。

何より見た目が少女だから、士郎が戦わせようとしないだろう。

その点旦那なら大丈夫だ、あの方は男の中の男、士郎も安心して戦わすことが出来るだろう。


「それじゃあ、はじm…」

「ちょっと待ったー!!」


遠坂が土蔵に踏み込んできた。


「あらリン、まだ帰っていなかったの?
他人の敷地に無断で入ってくるなんて、不法侵入で訴えられるわよ」

「そんなことはどうでもいいのよ! あんた達何しようとしてるのよ!」

「見ての通り、シロウのサーヴァントを召喚しようとしてるの」


遠坂はかなり興奮しているようだ。

イリヤはその様子を面白そうに眺めながら対応している。


「そんな事させると思っているの」

「べつにリンの許可なんて必要ないわ、戦争に参加することはシロウが決めたことだから、
それにサーヴァントも連れずにうろつくのはあぶないから」

「……わかったわ、確かにサーヴァントも連れずに飛び込まれるのはこっちも迷惑だわ」

「へ~、敵が増えることになるのに、リンはそれでかまわないの?」

「敵なら打ち倒すまでよ、それに無抵抗な相手を倒すのはフェアじゃないから」

「ずいぶんと余裕ね、まあいいわ。
それならここで最後のサーヴァントの召喚に立ち会うことを許してあげる」

「ええ、見届けさせてもらうわ」


女の闘いってコエェ~、顔は笑ってるのに目は笑ってない、マジ射殺すって感じだ。

背後に竜と虎が幻視できる。


「あらためて、はじめましょう。
シロウわたしが紡ぐ呪文をそのまま唱えて」

「えっ…ああ、わかった」


そしてシロウは魔法陣の前に立ち、イリヤに続き詠唱を始める。


「告げる。 汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に」

「…告げる。 汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に」

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「…聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

「…誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

「…汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」


魔法陣がいっそう強い輝きを放ち、視界が光に包まれる。








あとがき

今回はこんな感じで閉じさせてもらいます。

いいところで終わるのはお約束ということで、

遂に召喚されるサーヴァント、ここまでかなり引っ張った。

次回士郎のサーヴァントが召喚されるわけですが、

ここで少々アンケートを取りたいと思います。

次回召喚されるサーヴァントは誰か!?

やっぱりアルトリアが召喚されるか、ヘラクレスが召喚されるか?

はたまた全く違うイレギュラーが召喚されるか?

少々意見を聞いて見たいので気が向いた方はよろしくお願いします。

期間は次の話が掲示されるまでお願いします。




[11759] サーヴァント召喚、そして同盟  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/02/10 09:16
眩しい光が徐々に消えていく中、声が響いた。


「問おう、汝が我を招きしマスターか」


その声の主は2メートルを軽く超える体躯に鉛色の肌、

俺の記憶と違い獅子の兜に毛皮の鎧を纏ってはいるが、

間違いない! ヘラクレスだ!!


「よっしゃーっ! 成功だ! 間違いねぇ!」

「当然よ、なんたってわたしがサポートしたんだから」


俺は成功を喜びイリヤの肩を叩く、イリヤはそれに応えるように小さな胸を精一杯に張る。

他の連中はこのヘラクレスを見て口を開けて呆けている。

声もなく沈黙が続く。

それは問われた士郎も同じだ。


「今一度問おう、汝が我を招きしマスターか」

「あ、ああ、たぶんそうだ」


二度目の問いかけに困惑しながらも応えた。

いっつ、っと言って士郎は左手を押さえた。

その左手の甲には令呪が光っていた。


「なるほど、汝が我のマスターで相違ないようだな。
マスターよ、汝は何を聖杯に求め我を召喚した」


ヘラクレスは鋭い視線で士郎に問いかけた。


「…俺は聖杯なんてものに興味はない。
でもこの戦争に関係のない誰かが巻き込まれるのを放って置けないんだ。
だけど俺一人の力じゃ、駄目だった。
だから俺に力を貸してくれないか」


自分の想いと共にその問いに真っ直ぐに答える。


「甘いな、そして何よりも未熟……だが良かろう。
我は汝の召喚に応じ参上したセイバーのサーヴァント、
汝の尊き願いの為に、我が剣を振るうことをここに誓おう。
しかし、覚えて置け我が主よ、
汝の想いは叶うことなき幻想に等しきものだということを」

「俺はそうは思わない、必ずみんなを救って見せる。
この想いに間違いなんてない」


士郎は自分の意志を曲げることなどないと強き意思を示す。

俺にはその視線を受けたヘラクレスが薄く笑ったように見える。

そして俺も思う、若いな~っと、怖いものなど知らぬ子供のようだ。

確かに士郎の思いは尊いだろうがヘラクレスの言うように幻想に近いだろう。

仮に士郎の幻想が存在してもその世界はいずれ緩やかに滅び逝くだろう。

闘争とは生き物の本能だ、争いの無い世界などいずれ腐敗していくと俺は思う。


しかしだ、この戦争の間ぐらいなら手を貸してやってもいいだろう。

ようはとっとと柳洞寺に陣取っているキャスターをブッ倒して、

大聖杯を破壊すればいいだけだろ。

俺一人でも大丈夫だと思うが、ヘラクレスと組めば敗北は有り得ないな、

これで安心して前に出れるってもんだ。



「俺の名前は衛宮士郎だ。 よろしく頼む」


士郎は手を差し出し握手を求める。


「うむ、よろしく頼むぞ、マスター」

「俺のことは名前で呼んでくれ、マスターなんて呼ばれるのは何か柄じゃないからな」

「良かろう、士郎」


ヘラクレスも士郎に応え手を差し出し握手をする。

傍から見ると手の大きさが全然違うから、ヘラクレスが士郎の手を握りこんでるだけに見えるな。

俺がそんな光景を眺めていると背後から、ドサッという音が聞こえた。

振り返ると遠坂が地面に膝を付いていた。


「あ、ありえない、何で衛宮君のサーヴァントがセイバーで、しかもあんなに強力なヤツなのよ。
私のはこんなヤツなのに」


遠坂がジト目で土蔵の入り口に居るアーチャーに視線を送る。


「こんなヤツとは酷い言いようだな、凛」


アーチャーはその視線に肩かをすくめて応える。


「リン、あいつが強力なのは当然よ、なんせ彼はギリシャの大英雄、ヘラクレスなんだから」


イリヤは自慢するように、あっさりヘラクレスの真名をバラしてくれました。

ま、別にいいのかな、俺に不都合は無いし。


「ヘラクレスですって!!」

「そうよ、本当ならアーチャーのクラスで呼びたかったけど、
アーチャーはリンが召喚しているし、セイバーのクラスしか残ってなかったようね。
ヘラクレスはセイバーのクラスにも該当するから召喚できたみたいね」


確かに、ヘラクレスはゴットハンドが有るからクラススキルがたいして意味がない気がする。


「ちょっと! 何考えてるのよ! 何でサーヴァントの真名をばらすのよ!」

「別に隠すようなことでもないから」

「あなたは良くても衛宮君は良くないでしょ!」

「全く、リンは品が無いわね、もっと余裕を持って優雅に出来ないのかしら?」

「あんですってぇ~っ!!」


俺が考え事をしてるとイリヤと遠坂が激しい言い争いをしている。

まあ、遠坂が一方的に吼えてるだけなようにも見えるが…


「士郎、この場には他のマスターやサーヴァントも集まっているようだが、
どういう状況なのだ」

「ああ、それは……」

「待て士郎、ここで話すのもなんだ、場所を移動しよう」


この場は俺が仕切り母屋へ移動する。



今現在、士郎が淹れたお茶をみんなに配っている。

今リビングには6人の人間が存在している。

ここのリビングは結構広いんだが、流石に俺にアーチャー、ヘラクレスの三人がいると手狭に感じる。

って言うかヘラクレス一人だけ体格が違いすぎる。

アレでは立ち上がることも出来ない。


「さて、取り敢えず7人のサーヴァントが揃い聖杯戦争が始まった訳だが、
ぶっちゃけ俺もイリヤも聖杯なんかに興味はないし、こんな戦争いつまで続ける積もりは無い」

「「はぁ?」」


士郎と遠坂が訳が分からないと言う顔をしている。


「イリヤスフィール、どういうことか説明してくれる?」

「イーガスの言った通りよ、わたしもイーガスも聖杯戦争を続けるつもりはもう無いわ」

「じゃあ、いったい何のためにわざわざ冬木まで来たのよ」

「わたしは大聖杯を破壊するためにここまで来たのよ」

「大聖杯を破壊ですって!!」


遠坂は机を激しく叩きつけて立ち上がる。

なんてことするんだ、湯飲みが引っくり返ったぞ。


「とても聖杯に固執してたアインツベルンの言葉とは思えないわね」


遠坂は鋭い視線でイリヤを睨み付ける。


「今更滅びた一族のことを持ち出されても、わたしには関係ないわ」

「滅びた…ですって?」

「そうよ、もう一ヶ月以上前の話よ」


驚愕の表情を浮かべ唖然とする遠坂にあっさり応えるイリヤ。

まあ、元々イリヤはアインツベルンに愛着なんか無さそうだったけどな、

因みに士郎は良く分からないといった顔で、台拭きでこぼれたお茶を拭いている。


「本当なの、今の話」

「イリヤの話は本当だぜ、アインツベルンは俺が滅ぼした」


遠坂は弾かれたように俺を見る。


「アレは不幸な事故だった、ああ、不幸な事故だった。
俺としてはイリヤにちょっと実力を見せてやろうとしただけなんだが…、
あんな大惨事になるとは予想外だった」


俺は思い出してちょっと遠い目をする。

まあ、結果的にはアレでよかったとも思っているから、後悔は令呪を使う破目になったことだけだ。


「まあこの話に付いてはいい、お前らには関係ないし。
話を聖杯戦争に戻そう。
兎に角、俺たちは大聖杯を破壊する。
元々この地の聖杯は百害あって一理なしの災いしか齎さんもんだ。
核弾頭よりたちが悪い殺戮兵器だ、そんなものでも魔術師には魅力的なものかもしれんが、
俺にはさっぱり理解できんな」

「ちょっと待ってくれ! 殺戮兵器っていったい何のことだ!」

「言葉通りだ、今のアレは破滅しか齎さんらしい」


士郎の叫びに応えて俺はイリヤに視線を向ける。


「ええ、聖杯の中身はすでに黒く汚染されているわ。
10年前の災厄も聖杯から漏れ出した魔力が原因よ、
アインツベルンはそれでも穴を開けられれば良かったみたいだけど」

「……10年前の災厄、原因不明の災害は聖杯が原因だったのか」


士郎は恐らく過去を振り返っているのだろう。

顔色が若干悪くなっているし、拳が震えている。

果たして、それが気持ち悪さからか怒りからなのか……


「そういう訳だ、この聖杯戦争を手っ取り早く終わらせるには、
大聖杯を破壊するのが最も近道、そうすればサ-ヴァントは消滅して戦争は終わる。
そんな訳で俺は同盟を提案する。」


全員が俺に注目する。

それはイリヤも含まれる。


「イーガス、どういうこと?」

「折角サーヴァントが一堂に会してるんだ、提案自体は悪くないだろ。
旨くいけばイリヤの負担も軽くなる」


因みに俺の言っている負担は敵が少なくなるという意味での負担だ。

倒したサーヴァントは聖杯の器であるイリヤに回収される。

この行為はイリヤの人間性を削っていく、これはイリヤの寿命も削ることになるだろう。

俺は器として機能させずに大聖杯を破壊するのがベストだと思う。

詰まりサーヴァントを倒さずに目的を完遂したいんだ。


イリヤも俺の考えが大体読めたのだろう、軽く溜め息を付いて「分かったわ」っと言った。


「お前らにとっても悪い話じゃないだろ」

「どこがよ、大聖杯を破壊するなんてこの冬木の霊脈に、どんな被害が出るか分かったものじゃないわ」


遠坂はすぐに反論してくる。

しかし、この程度は予想の範囲内だ。


「聖杯の器はアインツベルンが用意しているのは知っているな?」

「ええ、知っているわ。この聖杯戦争の儀式で御三家はそれぞれ
遠坂は土地を、マキリは令呪を、アインツベルンは器を用意したわ」

「器が無かったら、どうなると思う?」

「ちゃっと待ちなさいよ!!」


遠坂を手を前に突き出し、待ったを掛けた。

次に顎に手を当ていろいろ考えながらブツブツ唸り出した。

ハッキリ言ってこえぇ~、これでは迂闊に声も掛けれない。


『なんで嘘を付いたりしたの?』


イリヤがラインから話しかけてきた。


『何が?』

『器が無いって』

『俺が言ったのは、無かったら、っという仮の話だ。
アレはアイツが勝手に考え込んでるだけ』

『あなたって結構、性格悪い?』

『さて、どうだかな』

『へぇ~』


イリヤが意味ありげな視線を俺に向けてくる。


『それにしても、リンとも組むつもりなの?』

『敵は少ない方がいいからな』

『わたしはあまり気が進まないけどね』


イリヤは少々不満そうにしている。


『そういうな、旅は道連れ、世は情けって言うだろ』

『それもこの国のコトワザ? どういう意味?』

『たくさんのいる方が面白いってことだ』

『ふぅ~ん』


こんな感じでイリヤと話していたら、遠坂は結論を出したようだ。


「分かったわ、同盟の提案、受けましょう」

「おお、それはありがたい。
士郎はどうする、もっとも、聞くまでも無いと思うが」

「ああ、同盟には賛成だ。
俺は元々イリヤや遠坂と争う積もりは無いからな、ヘラクレスもそれでいいか?」

「我は士郎の願いに応じ契約したのだ。 断る理由は無い」


ヘラクレスも賛成してくれたようだ。

しかし、もっと荒くれものを想像してたんだが、意外に温厚そうだな、

生前羊飼いをやってただけはあるな、切れると手が付けられなさそうだが、


「話は纏まったな、今之より大聖杯破壊の為の同盟が結ばせたことを宣伝しよう」

「ところで、何であなたが仕切っているのよ?」

「気にするな、細かいことだ」


遠坂の疑問は軽く流す。


「まあいいわ、それよりもあんた達、何でサーヴァントを真名で呼んでるのよ!!」

「けど遠坂、偽名で呼ぶよりちゃんとした名前で呼んだほうがいいだろ」

「シロウの言う通りね、それともリンは自分のサーヴァントに自信が無いのかしら?」

「うっ……、そ、そんなこと無いわよ。
ただ私はサーヴァントの真名は弱点にも繋がるから忠告しているだけよ!」

「実は自分のサーヴァントがどこの誰だか知らないんじゃないの?」

「っ………##!!!」


すげぇ~、イリヤの発言は大当たりだ。

そして遠坂もすげぇ~、一般人なら楽に失神できるような殺気をアーチャーに飛ばしている。

とても魔術師とは思えねぇな、


「まあ、真名はともかく戦力の把握は重要なことだ。
そんな訳でヘラクレス、俺と一つ手合わせ願えないか?」


俺はヘラクレスに仕合いを申し込んだ。








【CLASS】セイバー

【マスター】衛宮士郎

【真名】ヘラクレス

【性別】男性

【身長・体重】253cm 311kg

【属性】混沌・善

【筋力】A   【魔力】B
【耐久】B   【幸運】D
【敏捷】B   【宝具】A+


【クラス別能力】

対魔力:A 
A以下の魔術はすべてキャンセルする。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけることはできない。

騎乗:A 
騎乗の才能、獣であるならば魔獣・聖獣のものまで乗りこなせる。
幻獣・神獣ランクの獣は乗りこなせない。


【保有スキル】

戦闘続行:A
生還能力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

心眼(偽):B
直感・第六感による危機回避。

勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
格闘ダメージを向上させる効果もある。

神性:A
主神ゼウスの息子であり、死後神に迎えられたヘラクレスの神性適正は最高クラス。


【宝具】

『十二の試練』[ゴッドハンド]

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―

11回分の蘇生のストックにより、死んでも戦闘可能の状態まで瞬時に再生、蘇生される。
Bランク以下の攻撃を全て無効化し、一度受けた攻撃に耐性を得る。


『射殺す百頭』[ナインライブズ]
ランク:A+ 種別:― レンジ:―

確たる姿を持たず、状況・相手に応じて形を変える万能型の宝具。
今回セイバーとして召喚された為、対人用の人体急所九箇所への連続斬撃を放つ。


『九つ頭持つ蛇の毒』[ヒュドラー]
ランク:A+ 種別:― レンジ:―

9つの(百とも言われる)頭を持った水蛇の猛毒の血。
本来は矢に塗り対幻想種用に使用していた。
ヘラクレスは師と自らの死の原因であるこの毒を好ましく思っていないので使う積もりは無い。








if 没ネタ アルトリアの場合



「問おう、貴方が私のマスターか」


それは鈴の音のような、リンッと響き渡る声だった。

風に揺れる金砂の髪、月明かりを纏った蒼い衣、

言葉を失うような光景だった。

ガクッ

その時、背後から音が響いた。

振り返ればイーガスが膝を突いていた。


「しょ、召喚は、失敗だーっ!!」 


俯いた顔を勢いよく上げて大声で叫んだ。


「イリヤ、どうやら召喚をしくじったようだ」

「そう見たいね」

「やはりあの斧剣、パチモノだったんじゃないか?」

「そんたなはず無いんだけど……」

「しかし、これで二回目だろ?」

「うぅ~ん?」


立ち上がったイーガスは士郎に近付き、その肩に手をのせる。


「すまない士郎、約束を守ることが出来なかった」

「ごめんなさいお兄ちゃん、わたしの力が及ばないばっかりに」


イリヤも近付き士郎に頭を下げる。

困惑する士郎は確かに聞いた、ブチッっとまるで腸が引き散られたかのような音を


「いったい何なんですか! 貴方達はっ!!!」


怒れ狂う獅子が光臨された。





あとがき

こんな感じで、セイバーのクラスで召喚して見ました。

今回シロウは正式に契約できてるから、パラメーターも高い。

最初はすげい破格な感じのアサシンにしようかと思いました。

毒を使うならアサシンのクラスがいいかなっと思いまして、使う予定があるか判りませんが…

ぶっちゃけ、セイバーで召喚してもゴットハンド有るから、対魔力意味無いかな~とか、

アサシンなら暗殺で狙撃が出来るようなイメージがある、滅茶苦茶個人的主観だが…

それでは今回はここら辺にして置きます。

次回ヘラクレスとの対決!? 果たしてどうなるか? ご意見、感想があれば幸いです。





[11759] 現狂戦士 VS 大英雄  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/02/10 09:16


「まあ、真名はともかく戦力の把握は重要なことだ。
そんな訳でヘラクレス、俺と一つ手合わせ願えないか?」

「ふむ、我と戦いたいというのか」

「ちょっと待ってくれ、何で行き成りそんな話になるんだ」


士郎が俺の提案に疑問の声を上げた。


「さっきも言ったが戦力の把握だ。
それに士郎もサーヴァント同士の戦闘がどういったものか知るいい機会になるだろ」

「それは建前でしょ、本音は何かしら?」


流石イリヤさんは良く分かっていらっしゃる。


「これだけの強者[つわもの]には早々巡り合えない、だから一度手合わせしたい」

「そんな事だろうと思ったわ」


イリヤは軽く溜め息をしている。

少々呆れられてしまったようだが、まあいいか、


「それでどうだろうか?」

「我は構わない」

「俺はあまり気が進まない」


ヘラクレスは了承、士郎は少々不服そう。


「軽くやり合う程度だ。 
宝具も使う積もりは無い、そうすれば決定打に欠けるだろうし、死ぬことは無いだろう。
俺も今日は早くイリヤを休ませたいからな」

「わたしはまだ大丈夫よ」

「しかし、サーヴァントを召喚したんだ、結構な魔力を消費しただろう」

「サーヴァントを召喚した?」


士郎は疑問顔だ。


「ああそうだ。 
サーヴァントと契約したのはお前だが、呼び出す際の魔力は全部イリヤが肩代わりしたんだ。
そうで無かったら今頃お前はぶっ倒れているわ。
イリヤに頭を下げて感謝しろ」

「別にいいわよ、わたしにとってはたいした事ないし」


まあそんな訳だ。

ぶっちゃけ士郎は呪文を唱えただけで、後は殆どイリヤがやった訳だ。


「そうだったのか、イリヤありがとう」

「別にいいって言ってるのに、まあ、シロウがお礼を言うなら受け取っておくけど」


頭を下げて言う礼を言う士郎にイリヤは少し照れてるようだ。

顔が横を向いているあたり、素直じゃないのか、慣れてないからか、

まあ、恐らく両方だろう。


「よく考えれば、お前の魔術は殆ど独学なのか?」

「いや、爺さん、俺の親父に教えてもらった」

「まあ、どっちにしてもヘボイのは確かだな、才能無さそうだし」


確か俺の記憶が確かなら、士郎の魔術回路は殆ど閉じていたはず。

全部開けることが出来れば、魔力も並ぐらいまではいったはずだ……たぶん。


「物事は何事も半端なのが一番危ない、半端な奴ほど死に易い。
そんな訳で遠坂、こいつに魔術について教えてやってくれ、基礎だけでいい」

「はぁ?」


俺は遠坂に顔を向けて言う。

俺の記憶が確かなら、士郎は遠坂に師事していたはず。


「……別にいいけど、何でわたしに頼むのよ」

「俺は専門外だからな」

「そんなの見れば分かるわよ!
私が言いたいのは何でイリヤスフィールじゃなくて、私に頼むのかよ」

「イリヤは魔術師じゃないからな」

「はぁ? そんな分けないでしょ、魔術師で無いならサーヴァントの召喚なんて出来ないわ」

「すまん、言い方が悪かった。 
イリヤは魔術は扱えるがそれは感覚的なもので他者が真似できる様なものではない。
つまりイリヤは魔術を使えるが、その結果が生じる工程・過程はイリヤ本人にも解らんという感じだ」

「何よそれ?」


こんな感じであってるのかな? 第一俺は魔術のことなんて良く分からん。

イリヤに聞いても、イリヤ自身よく分かってなかったのか、俺には尚分からん。

数学や物理だって式が無ければ答えは出ないんだ、魔術の式を知らん俺に解るはずが無い。


「はぁ…」っと遠坂も大きな溜め息を付いている。

どうやらこれ以上の追求は無意味と諦めたようだ。


「話がずいぶんそれたな、取り敢えず庭で模擬戦するか」





「防音結界は張ったけど、あまり派手なことはしないでね」

「それはあんまり保障出来んかもな」


なんせ相手は大英雄ヘラクレス、俺には手を抜くことなんて出来ん。

今の俺の力はイリヤの魔力に比例している。

正確には少々違うが、

イリヤから供給されている魔力は俺の存在維持と俺の放出した気を補うために使っている。

つまり俺はイリヤから供給された魔力を気に変換して使っている感じだ。

細かいことは俺自身にも良く分からん。

しかし、俺が狂化したり、超サイヤ人になったりすると、

イリヤの魔力消費が大きくなることが今までで分かっている。

これは俺が気功波の類をぶっ放した時の消費が一番デカイ。

現在の俺はやたらめったら撃ち捲くるということが出来ないわけだ。

それでもイリヤの魔力なら対城宝具並の砲撃を連続で放つことも出来るんだが、

それではあまりにもイリヤの消耗、特に体へ負担が大きすぎるだろう。

まあ、対城宝具を連射出来るようなサーヴァントは初めから想定外だろう。

俺だけだったら根性と気合で何とかしたんだが、っと言うかしてきたんだが、

今はそういう訳にもいかんだろう。

余力は常に残して置いた方がいい。

だからこそ、俺は自分自身の戦闘技術を向上させたいわけだ。

それにはやはり強い奴と戦うのが一番の近道だろう。


「それでは始めようか、準備はいいかヘラクレス」

「うむ、我は何時でもかまわんぞ」


俺とヘラクレスは双方共に構える。

獲物は同じ斧剣、これには俺も少々驚いた。

セイバーとして召喚されたからには剣を持っているとは思っていた。

仮に無かったら俺が使ってるのをやるつもりだった、俺は素手でもかまわん。

しかし、ヘラクレスが持っている方がどう見ても新しい様に見える。

いや、元が同じ剣だというのは良く見ないと分からないほど違う。

何か馬鹿でかい鉈のような感じ、この斧剣元から欠けてたわけじゃないんだ……


「それなら先手は俺が貰う。 はぁぁあああ!!」


俺は全身に圧縮した気を纏い突撃!

斧剣を叩きつけるように振るう。

ヘラクレスも斧剣を使い受け止める。

正面から打ち合う斧剣、火花を散らしながら打ち合い続けるが、

俺は斧剣を打ち合った反動を利用して、後方に跳躍、いったん離脱した。


強い、ランサー以上の威圧感を感じる。

体格差があるにしても、俺は全身を気で強化して斧剣を両手で構えているのに、

片手で斧剣を振るい受けるとは、これが技量の差か?

俺がそんなことを考えていると、ヘラクレスは斧剣を両手で構え仕掛けてきた。


「むぅんっ!」

「はぁああっ!」


俺は上段からの振り落としを下から振り上げるような斬撃で受け止める。

打ち合う剣、火花を散らす鍔迫り合いになるが、お、重い!

今までの斬撃より遥かに重い!

俺は全力で受けに回るが、ヘラクレスは更に一歩踏み出し、剣の軸をずらす。

バランスを崩した俺は横に弾き飛ばされたが、倒れることなく着地した。

体勢を立て直す俺に、ヘラクレスは看破いれず間合いを詰め横薙ぎを放つ。

俺は受けるのではなく上空に跳躍してかわす。


「魔神剣・空牙!」


俺は気で作り出した斬撃をヘラクレスに放ち、その反動を利用して後方に下がり着地した。

俺が放った空牙は、ヘラクレスの振るった斧剣により相殺された。


「流石ヘラクレス、その実力、武勇に偽り無しっと言ったところか」

「貴様の実力も相当なものだ。 しかし、次は全力で来い」


ずいぶんな事を言ってくれる、俺は手加減抜きで本気でやってるのにな、

全力で来いと言われたからには狂化はせねばなるまい、宝具は使わないと言ったからな、

大猿化するのは論外だし、

俺の場合は狂化しても戦意向上、興奮するぐらいしか精神に影響が無い。

このまま続けても俺の勝ち目は薄いかも知れない。

ヘラクレスの剛剣はそれぐらいに強い、まさに戦技無双って感じだ。

伊達に六クラスも該当してるじゃ無いらしいわ。

しかし、狂化するっていうのは態々隠してるクラス名をバラスってことだからな、

一応同盟組んでるし別にいいかな、俺も戦うからには勝ちたいからな…


「……イリヤ」

「わかったわ。 でも、やるからには勝ちなさい、負けることは許さないからね」


うぅ、プレッシャーがでかいなぁ、


「狂いなさい、バーサーカー!!」

「HAAAAA!!」


身の内に渦巻く熱を感じるぜ!

俺はこの身に感じる衝動のままに咆哮を上げる。








雄叫びを上げたイーガスは、斧剣を振り上げヘラクレスに襲い掛かる。


「イリヤスフィール、貴女のサーヴァント、バーサーカーだったの」

「ええ、そうよ。 イーガスはバーサーカーのクラスのサーヴァントよ」


遠坂の確認のための問いかけに、イリヤはハッキリと答えた。


「バーサーカー、狂戦士か」

「そういえばシロウには詳しい説明はまだ教えて無かったわね。
聖杯戦争に召喚されるサーヴァントには【器】であるクラスが与えられるの、
クラスは全部で七つ、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、
そしてバーサーカー、呼び出されたサーヴァントはすべていずれかのクラスに該当してるわ。
クラスが重複することは無いけれど、七つに該当しないイレギュラークラスが召喚されることもあるわ」

「それぞれのクラスには特徴があって、呼び出されたクラスに応じて能力が付加されるのよ。
衛宮君のセイバーは高い対魔力、私のアーチャーは弓兵としての単独行動のスキル」


士郎の疑問にイリヤが答え、遠坂が補足で説明していく。


「そしてバーサーカーは、理性と引き換えに強大な力を与えられて召喚されるクラス」

「理性と引き換えって、そんなんでまともに戦うことが出来るのか?」

「いいえ、理性を失い狂化したサーヴァントは本能とのみで暴れ続ける。
狂化したサーヴァントを制御できるかどうかはマスターの実力しだいね。
本来バーサーカーのクラスは能力的に劣る英霊を強化するためクラスなんだけど…」


言葉を切った遠坂はイリヤに視線を向ける。

それにつられた士郎もイリヤに視線を向ける。

イリヤは薄く微笑みで返す、見方によっては意地の悪い笑み。


「あいつはどう見ても理性を失ってるようには見えない。
受け答えはしっかりしてるし、戦闘している今だってしっかり状況判断が出来てる」

「そんなことは解ってるわよ! どういうことなの?」


遠坂の鋭い視線を気にした様子も無く、イリヤは自慢するように応える。


「イーガスの狂化のスキルがそれほど高くないのもあるけど、
イーガスは始めから狂化を抑えるための保有スキルを持っているのよ。
だからイーガスは狂化しても理性を失わずに戦闘できる」

「なにそれ、反則じゃないの?」


遠坂は少々納得がいかないという顔で声を漏らす。


「狂化はわたしたちには切り札だからね、クラスを隠しているほうが都合がいいのよ」

「それを私達に教えるってことは、それだけ信用されてるってことかしら?」

「そう受け取ってかまわないわ。 仮に裏切られたとしてもわたしたちが負けることは無いわ」
(元々クラス名を隠してたのは、イーガスがそのほうが相手が驚くからっていう理由だし、
これにはわたしも賛成したけど、
わたしたちの本当の切り札はやっぱり宝具による変身、
イーガスの宝具は特別、本人の実力に応じてランクが上がる。
狂化で宝具のランクを引き上げれば、イーガスは二段階の変身が出来る。
この変身を完全に制御できるように、この二ヶ月わたしたちは特訓してきたんだから、
この状態のイーガスならサーヴァント数体を敵にまわしても勝てるはず。

大猿化はやっぱり使えない。
この状態のイーガスは狂化のランクでいえばA+、宝具なら対界クラス、 
わたしでも制御は出来ない。
これを使う時は世ほどの事態、そんなことは起こってほしくないけれど……)


イリヤが物思いに耽っているとイーガスとヘラクレスの勝負もそろそろ決着が付きそうだ。

狂化してからの戦闘は一見イーガスが押しているように見えたが、

ヘラクレスはその体格に似合わぬ身軽な動きと、自身の持ち得る戦技でイーガスの猛攻を防ぎ、

尚且つ反撃すらも行っていた。

イーガスは反撃に怯むことなく攻め続けるが、後一歩攻めきれずにいた。

両者の斧剣が幾度目かの激突を迎えたとき、イーガスの斧剣が上空に弾き飛ばされた。

ヘラクレスは看破入れずイーガスの頭上に剣を振り落とす。

イーガスはその身を捻りギリギリで剣をかわし上空に飛ぶ。

上空に飛んだイーガスは宙に舞う斧剣を掴み取り、その刀身に炎の如き気を纏わせる。


「これで終わりだ! 緋焔滅焦陣!!」


イーガスは体を回転させ、ヘラクレスの直上から斧剣を叩きつける。

ヘラクレスは頭上に斧剣を横にし、両手で構え受け止めた。

辺りに閃光と轟音が響いた。



閃光と轟音の後も両者共に健在、二人共立っていたが、

イーガスは肩で息をし、全身の傷からところどころ血が流れていた。

ヘラクレスは全身から蒸気を放っており、足場が陥没していた。

しかし、両者の闘志は衰えることなく、更に激しく火が付いた様だ。

二人は獲物を構え再び剣交える為に踏み出そうとしたが、


「ストーップ!! あんた達何考えってんのよっ! ちょっとは自重しなさいよっ!」


遠坂の咆哮に動きを止めた。


「派手なことはするなと始めに言ったでしょうが! あんた達のせいで庭がボロボロよ!」


遠坂の言う通り周辺は荒れ果て、破壊の様相を示していた。

イーガスが狂化した辺りから二人とも遠慮が無くなって来たようで、派手にやり合っていた。


「少々残念だが仕方がないか、ヘラクレスこの勝負次の機会に預けよう。 機会が有るかは分からんがな」

「致し方無いか、我も次の機会が有ることを願おう」


二人の勝負は結局付かないままに幕を閉じた。

この後、今夜はみんな衛宮亭に泊まることにしたようだ。

イーガスたちは初めからその積もりだったらしく、遠坂は便乗したようだった。

追記、時刻は深夜を回っているというのに士郎は夜食を作らされていたらしい。





あとがき

結局勝負は付きませんでした。

俺としてはヘラクレスにもイーガスにも負けてはしくなかったから流してしまいました。

戦闘描写に自信が無いというのも理由はありますけど、

決着の過程が思いつかなかったというのもありますが、これから更に精進したいと思います。

さて、次回の予定は全くの未明、これから先どうなって行くのか、

恐らくイーガスが動いてくれるでしょう、次回に続く。




[11759] 俺は美味い飯が食いたい!  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/03/06 08:38

今現在、朝日が昇って間もない時間、

俺は冬木の外れにあるアインツベルンの城に戻ってきている。

俺がなぜここに居るかというと、日課というのもあるが、

食材確保が第一目的だ!

昨日、正確には今日だが、

夜食を作らせた時に衛宮亭の冷蔵庫が空になったのに気が付いた。

そんな訳で、俺は適当に食材を見繕っている。

流石にこの時間では商店街はまだ開いてないからな、

普通ならここに来るのに相当な時間がかかるだろうが、

俺も一応はサーヴァント、半刻掛からずここまでたどり着いた。


しかし……

俺は今、巨大冷蔵庫を前に悩んでいた。

巨大冷蔵庫、並みの飲食店に置いてある冷蔵庫より確実にでかいだろう。

子供がかくれんぼするんじゃなく、大人が数人かくれんぼ出来る位にでかい。

中には品のよさそうな食材がずらっと並んでいる訳だが、

どの食材をどのくらい持って行けばいいのか、サッパリわかんねぇ?

俺は料理は素人だからな、

好き嫌いは在るが、食えないものは殆ど無い。

味に強い拘りもないし、

美味い料理が食いたいとは思うが、

目の前にいい食材と沢山の普通の食材で同じように調理された料理があったら、

間違いなく量が多い方を取るね!!

俺は質より量を取る!

美味い料理も食べたいと思うが、腹一杯の方が満足感があるからな。


暫く悩んだ俺は適当に2・3個ずつダンボールに放り込んで持ち帰ることにした。

肉は多めに放り込んだ。

俺としては次は遠坂の中華辺りが食べたいところ。

本当のところはアーチャーに作らせたいんだが、難しいだろう。

しかし、そう簡単に諦めたくも無いな、

俺は何とかアーチャーに料理を作らす方法を考えながら食材を詰め込んだが、

結構な量になってしまった。

やはり欲張って果物も入れたのがかさばっているようだ。

まあ、食べるだけなら俺とヘラクレスがいれば余裕だと思うが、

正直昨日の夜食は量が少なかったからな、食う必要は無いし、空腹も無いんだが…


仕方がない、裏技を使おう。

俺は中指と人差し指を額に当て瞳を閉じた。


「はっ!!」


俺は かっ!! っと目を見開きその場から消えうせた。



次に俺が立っていた場所は衛宮亭、離れの客室、イリヤが寝ているベットの隣。

ここまでくれば分かるだろう、

そうだ、俺は遂にあの瞬間移動を体得したのだ!!




……

………

ごめんなさい、嘘です。 すいません。

実はイリヤの所にしか移動できないんです。


ドラゴンボール見てたなら、誰もが一度はやってみたいと思うじゃないですか、

だから俺はヤードラットにまで行って修行してたんですよ、実は…

かなり苦労して技を教えてもらったんだが、会得できなかった。

数年で会得した悟空は化け物だと思う。

もっとも俺も諦めることなく十数年修行を続けてきた訳だが、

俺がイリヤの所に瞬間移動できるようになったのは、恐らくパスが繋がっているからだと思う。

イリヤの存在を感じて、ハッキリと居場所が分かるんだ。

俺はきっかけを掴めた気がするから、もう少し修行すれば自由に使えるようになると思うんだがな…

そんなことを考えながら居間にダンボールを運んでいく。



居間に食材を置いた俺が次に訪れた場所は屋根の上だ。


「いるんだろアーチャー、出て来いよ」


俺は見張りをしているアーチャーに会いにここに来たわけだ。

会いに来た理由は無論、こいつに飯を作らすためだ。

有言実行を心情とする俺は、思い立ったら吉日、早速こいつに会いに来た。

暫くするとアーチャーは俺の目の前に陽炎のように姿を現した。


「用件を聞こう。 私に何用でここに来た」

「話が早くて助かる。 実は貴様に頼みがある」

「頼みだと…」


アーチャーは眉を顰め警戒してこちらを見ている。

警戒事態は初めからしていたが、

俺は表情を引き締め、マジ真剣な表情で応える。


「そうだ。 これからを左右する重大な頼みごとだ」

「どのような頼みがあるのかは知らんが、話だけは聞こう」


アーチャーは更に視線を鋭くして話を促す。

辺りは静寂に包まれており、徐々に空気が張り詰めてきている。


「ああ、貴様を 鉄人(料理の) と見込んでの頼みだ」

「ほう、私をそのように例えるとはな」


俺は一泊の間を置いて本題を切り出す。


「実は貴様に料理を作ってほしい」


俺はメッチャ真剣な表情と真剣な声でそう言った。


「……はっ?」

「食材に付いては俺がアインツベルンの城から調達してきた」

「なんでさ」


おっ、よもやこんなところで士郎の名台詞が聞けるとは、

それも士郎より先にアーチャーから聞けるとはラッキー、俺かなり満足。

これだけでもアーチャーに話しかけた甲斐があるってものだ。


「ちょっと待ちたまえ、なぜ私にそのようなことを頼む」

「俺は料理なんて殆ど出来んからな、まさかヘラクレスに頼む訳にはいかんだろう」


チャンスは今しかない、アーチャーが動揺した隙に畳み掛ける!


「確かにそうかもしれないが、私に頼む理由にはならんぞ」

「いいや、俺の直感が貴様は料理が出来ると訴えている。
それもテーブルマナーから紅茶まで一通り相当なレベルで出来ると!!」


俺は厚く力強く断言し、詰め寄る。


「重要な話ではなかったのか!?」

「重要な話だ。 食は人間の参代欲求の一つだ!
この食事で俺の今後モチベーションが大きく左右される。
俺の見立てではお前の技量は小僧の数段上と見ている、その腕前を惜しみなく披露してくれ!
頼む! イリヤにも美味い料理を食わしてやりたいんだ!」


俺は自分でも良く分からん気迫を出しながらアーチャーに詰め寄る。

後退るアーチャーに更に詰め寄る。


「わ、わかった…」

「そうか、分かってくれて何よりだ!! それではよろしく頼む!」


声を大にしてお礼を言った俺は、上機嫌でその場を後にした。

後には額に手を当てて溜め息を付くアーチャーが残された。





アーチャーの元を後にした俺だが、これからどうするか?

イリヤが起きるまで時間もまだ有るし、道場で座禅でも組むか?

などと考えながら廊下を歩いていたんだが、向かい側から誰かが歩いてきた。


「なんだ士郎、もう起きてきたのか」

「ああ、そういうあんたも起きてたのか」

「元々サーヴァントに睡眠は必要ないからな、ちょうどいい、少し付き合え」


俺は鋭い視線でシロウに告げる。


「あ、ああ……」


俺は士郎を連れて道場に行く。

あまり他者には聞かれたくない話だからな、特にイリヤには、





「実は、不本意ではあるが貴様に頼みがある」

「頼み?」


俺と士郎は道場で胡坐をかいて向かい合っている。


「ああ、俺が頼むのは筋違いかもしれんが、聖杯戦争の後のイリヤのことを頼みたい。
傍にいてやるだけでもかまわん」


こんなことは俺が頼むまでも無いことかもしれんがな、

俺のやってることは自己満足の上に余計な御節介かもしれん。


「何でそんなこと俺に頼むんだ?」

「分かっているとは思うが聖杯戦争が終わればサーヴァントは消える。
俺は自分が消えた後のイリヤが寂しい思いをしないか心配な訳だ。
俺がお前に頼むのは、イリヤがお前に懐いているからだ」


本当はいろいろと理由があるんだが、それは俺から言うべきではない。

イリヤが自分から士郎に言うべきだろう。


「わかった。 俺に出来ることなら引き受けるよ」

「その言葉、忘れるなよ。
俺はイリヤに生きることを楽しんで欲しいんだ。
例えそれが短い間でもな」

「短い間ってどういうことだよ」


士郎が少々声を荒げて俺に疑問をぶつけてくる。


「イリヤは長くは生きられない、成長もすでに止まっている。 
だが同情などはするなよ、もしイリヤを哀れむようなら俺は貴様を殺す。
詳しいことが知りたければイリヤに聞け、俺からこれ以上語ることは無い」


それだけ言って立ち上がり、士郎はまだ俺に話を聞きたそうだったが、

俺はそれに構わず背を向けて道場を出た。

我ながら何がしたかったのか今一分からんな、

しかし、後のことは流れに任せるしかないだろう。

願わくば、イリヤが楽しき余生を過ごせるように、序に士郎が道を踏み間違わんように、



「それで、盗み聞きとはあまりいい趣味とはいえないな、アーチャー」

「君と小僧が道場に行くのが見えたのでね、様子を見に来たのだ。
それに聞いていたのは私だけではなくヘラクレスもいただろう」


俺が立ち止まり声を掛けるとアーチャーは姿を現した。

それにしてもこいつ、まだ屋根の上にいたのか?

まあ、こいつに聞かれても特に問題は無いだろう。

初めから気付いていたしな、


「ヘラクレスが士郎の傍に居たのは知っていたし別にかまわない、口は堅そうだからな。
それよりお前は朝食の準備はできたのか?」

「ああ、下準備は済ませてきたところだ」


マジか!! えろうはえーな!

いったいいつの間に準備を済ましたんだ?

俺がアーチャーと別れてから一時間もたってないぞ。


「そうか、それならいい。 期待しているぞ」

「せいぜい期待に応えられるようにしよう」


アーチャーはニヒルな笑みを浮かべて母屋の方に歩いていった。

あいつは何しにここに来たんだろうな、やはり士郎が気に成るのか?


「まあ別にいいか、イリヤの傍で朝食ができるまで待つか」


俺はイリヤの寝顔を見ながら朝食までの時をすごした。

少女の寝顔は天使の微笑ってな、和むな……♪

俺のことをロリコンというヤツがいたとしても、この寝顔を見るためなら甘んじて受けてやろう。

とても良い一時を過ごした俺だった。





「何か朝からえらく豪勢ね」


寝起きの遠坂が牛乳を ぷはっ! っと一気飲みした後の甲斐口一番の台詞だ。


「実はアーチャーにその腕前を惜しみなく振るってもらった」

「何やってんのよ、あんた」


遠坂がジト目をアーチャーに向ける。


「何、昨日の小僧の料理が見るに耐えんものだったのでね。
料理というものがどういうものか、一つ教えてやろうと思って朝食を作らせて貰った」

「むっ」


きざな笑みを浮かべ、肩をすくめて悠々と応えるアーチャー、士郎の視線など全く気にしない。

アレだけ楽に毒と嘘を吐けるのはなかなかすごいと思う。

まあ、流石にほんとの事はいえんのだろう。


「そこまで言うなら食べさせて貰おうじゃないの」


遠坂は腰を下ろして、箸を持ち一口。


「うっ! ……ま、負けた」


電気が走ったかのような表情の後、頭が落ちる遠坂、

気を取り直してして一口ずつ食べていくと、落ち込みは更に大きくなった。

アーチャーはそんな遠坂を見て得意げな笑みを浮かべている。

実は他の連中はもう先に朝食を食べ始めていた。

最初に食べた時のイリヤのはしゃぎ様と士郎の落ち込み具合はすごかった。

士郎の落ち込みは、遠坂に輪を掛けてすごかった事を告げておく。

因みに食事は和食だった、恐らく士郎への宛てつけ、

俺も絶賛したし、ヘラクレスも褒めていた。

因みにこの時のアーチャーの表情は見た事無いくらい清々しい笑みだった。


こんな感じで楽しい食事をさせてもらった。

一部に付いてはそんな事無かったかもしれんが、俺は知らん。


「さて、食事もひと段落着いたところで、本題に入るか」


俺は表情を引き締めそういった。





あとがき

あんまり話が進んでいないが、こんな感じだろう。

主人公は相当に食い意地が張ってるように見えるが、

Fateの世界にきたら一度は食いたいだろう、アーチャーの料理は俺的に、

それでは次回予告

遂にイーガスが行動に出る!

我に秘策あり!? ほんとに在るのか? 次回を待て!!





[11759] 作戦会議、そして突入  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/03/22 02:03


「この聖杯戦争にケリを付ける為に動く訳だが、この面子なら細かいことは考えなくていいだろう。
例え邪魔者が現れたとしても、正面突破のゴリ押し、一気に大聖杯を破壊する!!」


イーガスは力強く宣言する。


「確かにこれだけサーヴァントが揃ってるんだから、その意見には賛成よ。
大聖杯の在り処は分かっているんでしょうね」

「勿論だ。 大聖杯は柳洞寺の地下、大洞窟に在る!!」


遠坂の質問にイーガスは力強くうなずき、断言して応える。


「今現在柳洞寺にはどうやらキャスターが陣取っているらしい。
俺たちの目的は大聖杯だから特に問題は無いと思うが、どうする」


イーガスは柳洞寺の現在の情報を説明する。

そして意見を求めるように声を掛ける。


「そうね、無駄な戦闘は出来るだけ避けるべきだけど、
自分の陣地への侵入者をキャスターが放って置くとは思えないわね」

「十中八九何らかの動きを見せるだろうが、邪魔をするならブッ潰すだけだ」


イーガスは自信満々に応える。

自分がやられるような事は微塵も考えていないようだが、


「しかしだ、敵の神殿に無策で突っ込むのは、万が一があるかもしれないから作戦も考えておいた。
考えたプランは全部で三つだ、

1、正面強行突破! 後は野となれ山となれ作戦。
初めに正面から乗り込みキャスターを倒した後で大聖杯を破壊する。

2、戦力分散! 信頼こそが勝利の鍵作戦。
囮兼時間稼ぎのキャスターと戦うチームと大聖杯破壊のチームに分かれて行動する。

3、さらば柳洞寺! 全ては俺に任せろ大作戦。
俺が柳洞寺を山諸共全てをふっ飛ばし終わらせる。

概要は大体こんな感じだが、どれにする?」


作戦の説明を終えたイーガスがみんなに聞くが、


「ちょっと待ちなさいよ!! 
作戦らしい作戦なんて2番しかないじゃない!
大体3番なんて明らかにおかしいでしょう!」


遠坂が吼える。

それはもう鬼のように吼える。


「失礼な、俺が一晩考えたシンプルかつ解り易い作戦のどこが不満なんだ?」

「……はぁっ、これ以上言っても無駄そうね」


俺の大真面目な返答に、遠坂は諦めたように大きな溜め息を吐いた。


「解ってくれて何よりだ。
第一このメンバーにチームワークを期待するのは無理だろう。
それぞれがその場その場で臨機応変に対応するのが一番だろう。

まあ、どうしても心配だというなら、

4、単独斥候! 偵察は俺に任せろ作戦。
作戦名通り単独斥候をする。

でどうだ!」


イーガスはこのメンバーでの連携は難しいと考える。

イーガスとヘラクレスが前衛、アーチャーを後衛に置くよりも、

それぞれが個々に戦う方が強いと考えている。

一人が前面で戦闘を行い、敵に致命的な隙を作り出し、他の者が止めを刺す。

これが一番いい戦法だと考える。

初めての戦闘で足並みをそろえ、息を合わせての戦闘はかなり難しい。

それが出来うる技量の持ち主も存在するかもしれないが、

少なくともイーガスはそれ程の技量は無いし、他者に気を使いながら戦闘できるほど器用でもない、

戦闘をするなら、

ヘラクレスが前衛、アーチャーが支援、イーガスがマスターの護衛、

もしくは、イーガスが前衛、ヘラクレスが護衛、この布陣がベストだと考える。

イーガスはこのように思考を巡らせていた。


「あんまり変わらないし……、けど突入するなら下調べも重要なのは確かね」

「俺はあまりお勧めできないな、1の全戦力を投入した奇襲か、2の作戦がいいと思うが…、
アーチャーはどう考える」


イーガスはここで行き成り話をアーチャーに振る。

今まで壁にもたれ傍観していたアーチャーは、眉根を寄せて口を開く。


「なぜ私に聞く」

「お前がこの中で一番、戦略や戦術に長けていそうだ」

「……行動の方針はマスターが決めるべきだが、強いて言うなら2番だろう。
我々の目的は大聖杯の破壊でサーヴァントを倒すことではないからな」


アーチャーは一泊の間を置き、自分の意見を述べた。


「なるほど、なら後は戦力配分か、
柳洞寺は結界がしかれているから、正面からしか侵入できない。
正面突破の囮はヘラクレスとアーチャーに任せるから、聖杯の破壊は俺に任せろ」

「だからなんであんたが仕切ってるのよ。
まあいいわ、対魔力の高いセイバーと後方支援が出来るアーチャーがキャスターにあたるのはいいけど、
バーサーカーは大聖杯を破壊できるの?」


遠坂は多少不満もあるようだが2番の作戦に納得。

そして、イーガスでは無くイリヤに疑問を述べる。

これは確認のための質問だろう。

イーガスに聞かなかった理由は、多分答えが解り切っているからだろう。


「大丈夫よ。
イーガスはこの中で一番火力があるわ」


イリヤはハッキリと断言する。


「そう、それならいいわ。
大聖杯の破壊は貴方たちに任せるわ」


イリヤの答えを聞いて、遠坂は少々不満はあるようだが大聖杯の破壊をイリヤに託す。

本当は自分で破壊したいのだろう。

もしくは脇役なのが不満なのだろうか?


「士郎もそれでいい?」


そして今まで口を挟まず聞いていた士郎に遠坂が聞く。


「ああ、俺もそれでかまわない。
ヘラクレスもそれでいいか?」

「うむ」


士郎とヘラクレスも了承した。


「これで作戦の大まかな流れが決まったな、早速今夜仕掛けるぞ!

後は双方の連絡が取れないと不便だからな、これを渡しておこう」


イーガスはその手に出した何かを士郎に抛る。

抛られた物を受け取った士郎は疑問の声を上げる。


「これは?」

「スカウターだ」


士郎の手にあるものは一風変わった、片眼鏡にも……見えないかな?

兎に角スカウターがその手にあった。


「それを付ければマスターじゃなくても相手のステータスが解る、
更に通信まで出来る便利な道具だ」



これはイーガスがサーヴァントになってからも、何故か取り出せた唯一の道具、

どうやら宝具にカウントされているようで、一度に数個出すことも出来る。

例え壊しても何度も取り出すことが出来るようだ。

これは、恐らく生前イーガスがスカウターをよくぶっ壊し何度も新しくしたからだと思われる。

イーガスは自分の宇宙船に予備のスカウターを常備していた。

現在イーガスの持っているスカウターは、サーヴァントのステータスを表示できるようになっている。

因みに表示されるサーヴァントのステータスは殆ど埋まっているが、

これはイーガス自身が覚えていたからだと思われる。


イーガスは自分の分も取り出し、身に付ける。


「それを使えば俺の持つスカウターと連絡が取れる」

「…ああ、わかった」

「何であんたそんなもの持ってるのよ、
そして何で私じゃなくて士郎に渡す」


遠坂はものすごく訝しそうにイーガスに視線を向ける。


「細かいことは気にするな、
お前に渡さなかったのは、なんとなく壊されるような気がした。
直感だがな……」


遠坂は、 うっ っと唸って大人しくなった。

こんな感じで作戦会議は終わり、後は英気を養うために解散となった。





草木も眠りに付く深夜、暗き森を駆け抜ける一陣の風がある。

風は目にも留まらぬ速さで蛇走しながら駆け抜ける、

その様は何かを探しているようだったが、迷走しているようにも見えた。


「おい、ひょっとして迷ったんじゃないか? ほんとにこの辺なのか?」

「仕方ないじゃない! わたしもここに来るの初めてなんだから!!
それよりいったん止まって、こんなにくるくる回られたら目が回るわよ!!」


そして動きを止めた風、

イーガスとその肩に乗るイリヤは山の結界に強引に侵入を果たしていた。

無論そんなことをしてただで済むはずが無く、

イーガスはこの結界中ではその力が数ランクは落ちている。


立ち止まり周辺の気配を探り、周囲に目を向けるイーガスだが、

イリヤは気分が悪いのか、口元に手を当て俯いた。

イーガスはそんなイリヤに心配げに声を掛ける。


「おいおい、大丈夫か?」

「ちょっと気持ち悪い、 もうっ! イーガスがあんな走り方するから!!」

「お前も初めは面白がっていただろうに!」


二人はこんなところで、喚き合いながら言い争いを始めてしまった……


「っと、流石にいつまでもこんなところで言い争ってる場合じゃないな、
向こうはどうやらアサシンと交戦を始めたようだ」


イーガスはスカウターに手をかけ、外部音声を出力すると、

イリヤにも剣戟と破壊音が聞こえるようになった。


「さっきの会話から察するに、相手の真名は剣豪佐々木小次郎、
どうやらあのヘラクレスを相手に引けを取らぬ剣技とは、俺も剣をまじえてぇな~」

「貴方のそれはいつものことだからほっとくとして、
アサシンがそんなヤツなんてね、普通ではまずありえないわ」

「ほう、で、それはどういうことなんだ?」

「おそらくキャスターの仕業でしょ、
キャスターは魔術師のクラスのサーヴァントだから、あの魔女のやりそうなことだわ。
向こうにはヘラクレスがいるんだから、負けは無いでしょ」


イリヤは軽く肩をすくめ、溜め息を吐くようにそう言った。


「その様子だと、キャスターの正体に心当たりがあるようだな」

「まあね♪ でも、貴方は初めからキャスターが誰か知ってたんじゃないの?」

「………」


”くすっ”


「イーガスは意外と顔に出るね♪
別にいいわ、いまさら貴方がどこの誰だかなんて、わたしにはどうでもいいことよ。

”貴方がわたしのサーヴァント”

このことだけハッキリしていれば、他のことなんて気にしないよ」


イリヤは小さく笑い、笑顔でそう告げた。

その笑顔は今まで見た中でも、一番のいい笑顔だった。


イーガスは呆けたような顔をしていた。

いや、事実呆けていたのだろう、開いた口がふさがらないほどに、

まさにハトが豆鉄砲をくらった様な顔だ。


暫く放心していたイーガスだが、次第に笑みを浮かべる。

傍から見るとイリヤに比べかなり悪い笑みに見える。


「…変わったな、ほんといろいろとな、なかなかいい感じだ」

「貴方と出会ってから、いろいろあったからね」


イリヤは今までを振り返って、少々回想に入っているようだ。


「惜しいな、実に惜しい、もう少し熟れていたら喰っていたかもしれんなぁ~」


イーガスも少々別のところに逝っているようだ。


「むっ、ちょっと今のどういう意味よ!
わたしは立派なレディーなんだからねっ!」

「突っ込むところそっちかよっ!
まあ確かに、俺もお前も見た目より結構年いってるからな」

「レディーに年の話を持ち出すのはマナー違反よ!!」


こんな感じで再び言い争いを始めてしまったんだが、


「こんなことしている場合じゃなかったわ。 さっさと入り口を探す!」

「やれやれ、これで最後だと思うとなかなか名残惜しいが、
そろそろ行くとしようか、

すべてを終わらせるために」



風は再び走り出す、その足はすでに迷うことなくまっすぐに、

二人が向う先には何が待ち受けるのか!?

次回に続くぅっ!





ステータス更新

【宝具】

『視通す片眼鏡』 [スカウター]

ランク:F- 種別:対人宝具 レンジ:―

相手のステータスを分析できる。 相手の位置を確認できる。 
同機器と通信が出来る。 神秘なんて殆ど無い量産品。



あとがき

イーガスがイリヤにフラグを立てていたようだが、

どうやらクライマックスが近いようだ、このまま終わってしまうのか?

何かまだ出ていないキャラクターもいるような気がするが、

何か予想を裏切り、何事も無く終わらせたくなったきた、

ある意味型破り、おもしろみまったくねえだろう!

兎に角、物語は終盤に突入するのか?

作者は次回に期待!




[11759] 狂戦士 VS 槍兵 最後の勝負  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/03/29 22:57


「ここが入り口か?」

「ええ、間違いないわ。 この先に大聖杯がある」


イーガスとイリヤは大洞窟の入り口へと到達していた。

そこは違和感を感じる場所をだった。

イーガスは魔術について今一解っていないからそう感じるのだろう。

恐らく結界が張られているということはわかるのだが、

それがどのような効果を出しているのかが解らない。


「…まあいい、兎に角行くぞ!」

「ええ、行きましょう」


イーガスは洞窟の中へ足を進めて行く。

しかし、少し進んだところで立ち止まった。


「おっと、すっかり忘れてたぜ。
地獄破山撃!!」


振り返ったイーガスは、圧縮した気を地面に叩きつける、

そして後方へと飛び退いて後退した。

前方の出入り口へと続く道は崩れた土砂で完全に塞がれた。


「これで邪魔者が現れることは無いだろう」

「………」



ふ、解ってますよ。

このまま行ったら十中八九、邪魔者が現れるだろうからな、

出入り口を塞いでしまえば、外からは入ってこれないだろう。



「心配しなくても聖杯をぶっ壊す前に、穴を開けてやるから心配するな」


そういって再び、走り始める。。

イーガスは足を進めながら疑問に思っていたことをイリヤに質問した。


「イリヤ、今更ながらなぜ俺についてきた、
ここまでイリヤが付き合う必要は無かったはずだ」


イーガスは疑問に思っていた。

イリヤがこの大洞窟まで付き合う必要は無いと、

イーガス一人の方がすばやく移動できるし、

万が一問題が発生してもマスターとは視覚を共有出来るだから指示を仰げばいいし、

最悪瞬間移動でマスターの元に戻れる。

わざわざ、イリヤがここまで付いてくるメリットは少ない。


「俺は単独行動のスキルなんてものは持ち合わせていないが、
それは理由にならないだろう。
どうして付いてきたんだ」

「……わたしが自分の目で見届けるためよ。
最後の結末はわたしがこの目で、この手で終わらせるわ」

「………そうか、ならば俺から言うことはもはや何も無い!
先を急ぐぞ!!」


イーガスは更に走る速度を上げて、駆けて行く。

洞窟の奥に強い光が見える、

肌に感じる魔力も近付くに連れて更に強く感じる。

そして、大聖杯のある広場に到着した時、


「よう、待ちくたびれたぜ」


前方に佇む男、ランサーから声を掛けられた。


「ば、ばから!! ランサーだと!」


イーガスは声を上げて驚愕した。

かなり驚いたらしく呂律が少々うまく回らなかったらしく変な声を上げた。

イーガスとイリヤの前には槍を携えたランサーが待っていた。




「貴様、いったいどうやってここに入ってきた!
ここまでは一本道、しかも入り口は塞いで来たはずだぞ!!」

「そんなの手前らがここに入る前からいたに決まってんだろ」


う、迂闊だった。

結界内では気配察知がしずらかったし、大聖杯の魔力で気付きにくかったとはいえ、

ランサーの気配に気付かなかったとは!! 

あのボケエセ神父め! よもやこちらの動きを呼んで先回りさせているとは、

いったいいつ気が付いたんだ!?

こっちは動き始めてから速攻だったはずだ、

今の俺たちの行動も洞窟に入る前ならば、キャスターへの背後からの挟撃にしか見えんはずだ。


まさかギルガメッシュか!?

ヤツならば未来を予測できるような宝具の原点も所有しているかもしれん。

例えば、未来を映し出す鏡とか、風水盤の原点とか、


よもや唯の偶然じゃねぇだろうな、

偶々、キャスターの偵察に来ていたランサーが俺たちと鉢合わせそうになって、

偶々、近くにあった洞窟に身を隠したとか、そんな落ちはねぇだろうな。


「それにしても、キャスターの様子見に来ただけだったんだがな、
アサシンは山門から動けねぇみたいだからわざわざ裏に回ったのによ」


マジで偶然かゴラァ~ッ!!

ぐぅっ、なんて運が悪いんだ! 俺の幸運はそんなに低くないはずなんだがな、

いや、この場合はランサーの運が悪いせいなのか?


「マスターからは戦うなって言われているが、出会っちまったら仕方ねぇよな?
おまけに決着を付けるには相応しい舞台が整ってやがる」


この野郎、こっちの気もしらねぇでいい気になりやがって、

顔が滅茶苦茶笑ってるじゃねぇかこらっ!


イーガスはイリヤを肩から降ろし、スカウターを渡し後方に下げる。


「イーガス…」

「解ってるぜ、速攻でケリを付ける」


イーガスはイリヤの呼びかけに強く頷いて応える。

それを確認したイリヤは笑みを浮かべ離れていく。

イリヤを見送ったイーガスは前へと踏み出しランサーを鋭く睨みつける。


「いいだろう、受けてやろうじゃねぇか、
ただし! こっちは後が込んでいるからな、さっさとケリを付けさせてもらうぞ!」

「かまわねぇぜ、どの道今回は最後まで付き合ってもらうからな!!」


言葉が終わると同時にランサーは一気に距離を詰める。


「GAHAAA!!」


イーガスも一気に超サイヤ人に変身して、斧剣を振り落とす。

陥没する地面、イーガスは斧剣を振るい破壊を振りまく、

この剣戟の間合いに踏み込むならば、まずその命は助からないだろう。

しかし、ランサーはその間合いに踏み込み、

その手の槍は敵の急所を貫くために唸りを上げる。

その槍は前回よりも更に鋭く速い!


「今の俺には縛りはねぇ!!」


ランサーは叫びと共に更にスピードを上げていく。

しかし、イーガスもその槍を凌ぎきる。


「貴様と戦うのは二度目! 早々遅れは取らんぞ!!」


そして、イーガスの斧剣は更に苛烈さを増し徐々にランサーを押し始めるが、

ランサーも押し返すが如く槍捌きは鋭く成っていく。

それに比例するように両者の戦撃は激しくなり周囲は破壊されていく。





イリヤは二人の戦闘を離れた場所から見守っていた。

そんなイリヤに、


「おーい、聞こえるか?」


スカウターから声が響いた。

イリヤは手に持つスカウターを身に付け応える。


「聞こえているわ、シロウ」

「イリヤか?」

「ええ、そっちのどうなったの?」


イリヤは士郎にそっちの状況を訪ねる。


「ああ、こっちは……」

「ちょっと、私に代わりなさいよ」


士郎が状況を応えようとした時、遠坂の声が割って入る。


「ちょっ、遠坂!」


スカウターの向こうから騒がしい様子が伝わってくる。

その様子から、向こうのケリが付いた事はわかった。


「はぁっ、シロウ外部音声を出力して、それでリンにもわたしの声が聞こえるから」


イリヤは溜め息を付いてシロウに応えた。

「ああ」 っと士郎からの声が聞こえてきた。


「イリヤスフィール聞こえてる」

「ええ、聞こえているわ、リン」


そして、遠坂は状況の説明に入った。

その説明は簡潔に要点だけを伝えていた。


「こっちはヘラクレスが一回殺されたけどアサシンは倒したわ。
ただ、キャスターとそのマスターには逃げられたわ」

「そう、わかったわ」


イリヤはアサシンが倒された事には気付いていた。

聖杯の器であるイリヤにはそのことが誰よりも分かっていた。


「そっちはどうなの、大聖杯のところまでたどり着けた?」

「こっちは今ランサーと交戦中よ」

「はぁ~っ! 何でそんなことになってんのよ!!」


遠坂の叫びにイリヤは顔を顰め耳を押さえる。


「ちょっとリン、あんまり叫ばないでよ! 耳が痛いじゃない!」

「それより今どこにいるのよ!」

「……大聖杯のある大空洞よ」


イリヤは顰めた顔のままで遠坂の質問に答える。


「待ってなさい! 私達もすぐにそっちに行くから」

「必要無いわ、こっちもすぐに終わらせる。
それに洞窟の入り口はイーガスが塞いだわ」

「何でそんなことしたのよ!」

「もちろん邪魔が入らないようにするためよ。
もっとも、中にランサーがいたのは予想外だったけど」


イリヤの受け答えに遠坂は更にヒートアップしていく。


「面倒なことしてくれるわね、兎に角何がなんでもそっちに行くからね!
行くわよ士朗!」

「ちょっと、遠坂! 
まったく、兎に角俺たちも行くからイリヤも無事でいてくれ」

「心配しなくても、わたしは大丈夫よ」


そう言って通信を切る。


「そう、向こうは終わったのね。 
それならこっちも早々に終わらせましょう」





「烈・魔神剣!」


イーガスはその斧剣を振り抜き前面一帯を吹き飛ばす。

ランサーは無論その一撃を受けることなく後方にかわし下がったが、


「狂いなさい、バーサーカー!!」


そこにイリヤの声が響く。

イリヤはこれ以上勝負を長引かせるつもりはなく、ここで一気に勝負を決めるつもりだ。

そしてそれはイーガスも同じ、


「はあああっ! 割破爆走撃!!」


狂化で力を増したイーガスは一気にランサーに突撃し、

斧剣を振り下ろし、追撃でランサーを防御の上から吹き飛ばす。

そして上空に飛び上がり、そのまま一気にランサーに仕掛ける。

刀身に圧縮された力はそのすべてが解放される。


「吹き飛べ! 龍虎滅牙斬!!」


イーガスの一撃は、叩きつけられた斧剣を中心にすべてを吹き飛ばす。

辺りは煙に包まれたが、イーガスは油断無く周囲を探り、

相手の気配を探る。

そしてランサーの気配を捕らえ、更に追撃を放つ。


「魔神連牙斬!!」


イーガスは斬撃より生み出した気による衝撃波を連続で次々に放つ。

その衝撃波は煙を吹き飛ばしランサーに迫る。


「はあっ!」


ランサーは槍の薙ぎ払いで衝撃波を相殺する。

すべての煙が晴れたそこには満身創痍のランサーが立っていた。

対するイーガスは全身に傷はあれど、それはどれも大したものではない。


「やってくれたなてめぇ…」

「貴様こそ、まだ生きていたか」


両者は睨み合う。

辺りは静寂に満ちていたが、空気は張り詰めていた。


「次で決めさせてもらうぞ」

「奇遇だな、俺もそう思ってたところだ」


そして両者は獲物を構える。

イーガスにはランサーの構えに覚えがあった。

その下段突きのような構え、そしてこの状況で繰り出す技は、

十中八九、刺し穿つ死棘の槍[ゲイ・ボルク]


二人の武器に力が宿る。

ランサーの槍は唸りを挙げて魔力を喰らい、

イーガスは斧剣に気を限界まで圧縮していく。


両者は同時に動く。

ランサーはその俊足で間合いを詰める。

イーガスは飛び上がり、空中で斧剣を振りかぶる。


「刺し穿つ死棘の槍!!!」 [ゲイ・ボルク]

「奥義 魔神烈光斬!!」


そして、二人は激突した。





激突の後に立っていた二人は、

イーガスは胸から血を流している。

そしてランサーは、肩口から胸元までぶった切られている。


激突の瞬間、イーガスはランサーの槍の間合いを完全に見切った!

そして、宙を飛ぶことで槍の間合いを外し、ギリギリでかわした槍は心臓に届くことは無かった。

如何に因果を逆転させる槍も、心臓に刺さる結果が存在しなければ、

その槍が心臓に穿つことは無い。



「ちっ、負けたか、けど悔いはねぇ、全力での命懸けの勝負が出来たからな」


ランサーは満足そうに笑っている。

その体は足元から徐々に消え始めていた。


「俺も貴様と戦えてよかった。
もし、機会があれば、次は一緒に美味い飯を食おうぜ」

「そいつはいいな、
もし、機会があれば、付き合ってやるぜ」


”へっ”

そして両者は笑みを浮かべた。

ランサーはそのまま陽炎のように消えていった。


「終わったのね」

「ああ、終わった」


ランサーが消えた後に、イリヤが話しかけてきた。


「貴方にも困ったものね。 わざわざランサーに付き合うなんて」

「アイツとは真っ向勝負がしたかったんだよ」

「ふぅっ、そのことに付いてはもう諦めたけどね」


溜め息を付いて、イリヤは笑いながらそう言った。

確かに、イリヤの言うとおりに剣で闘わずに拳で、更に気を放出して戦えば、

もっと早くに決着が付いたかもしれない。

大威力の広範囲砲撃を連続で放てば、

いくらランサーでも一発目はかわせても二発めは無理だろう。


「それよりイリヤは大丈夫か」

「ええ、わたしはまだ大丈夫よ」

「……そうか、ならとっとと終わらせっ!!」


イーガスが大聖杯を破壊しようとイリヤに背を向けようとした時、

二人に無数の剣軍が飛来した。

イーガスは瞬時にイリヤを抱き寄せ、斧剣を振るい、その場から跳躍する。


「ふんっ、王の洗礼を受けるのだ、甘んじてその身に受けるのが礼儀であろう」

「貴様はっ!!」


イーガスとイリヤの前に立ちはだかる黄金の男、

果たしてこの男は何者なのか!?

次回に続くぅ!








あとがき

どうやらマジでクライマックスのようだ。

遂にあの方が出てきました。

出番なんかなしで終わらせてやろうかと思っていたが、

これがFate編でである以上出さねばならんだろう。

終わりの時は近い。




[11759] 狂戦士 VS 英雄王  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/05/31 09:00
あ、危なかったぜ

今の攻撃、もし俺に直感のスキルが無かったとしたら、

イリヤ諸共串刺しにされていた。

背筋に感じる悪寒をこれほど明確に感じたことは無かったぜ。


イーガスは剣軍が飛来した方向に視線を向ける。

そこには爪先から毛の先まで、金色に輝く黄金の男、

ギルガメッシュが立っていた。

その身に纏う金の鎧は大聖杯の放つ光を照り返し、不気味に輝いている。

そして、紅い瞳が更に不気味さを助長していた。


ギルガメッシュ、遠坂が言うようにマジで金ピカ、

全身黄金の鎧なんて悪趣味だと思っていたが、改めて見ると、

なかなかかっこいいじゃねえか、ちょっと欲しいぞ。

それにしても、黄金の鎧って聖闘士星矢を思い出すな、

アレを思い出すと良くあんな重装備で動き回れるなと、常々思っていたが、

今の俺ならあのぐらい重装備な鎧を着ても楽に動けるな。


なんて事を少々逃避気味にイーガスは考えていたが、


「な、なによアイツ!?」


イリヤの声で正気に戻る。

イリヤは目を見開き驚愕していた。


そうだった、こんなこと考えてる場合じゃねぇ、

問題は今の状況をどう乗り切るかだ!

奴との戦いは今回は想定していなかった。

勿論対策は考えてはいたが状況が悪い、

俺一人なら奴をシカトして自爆で大聖杯を破壊するところだが、

それだとイリヤを巻き込んでしまう。

イリヤを護りながら戦っては勝算が薄い、

いったい如何するべきか、


「貴様、入り口は確かに塞いできたはずだ。 どうやって入ってきた」


取り合えず時間稼ぎだ。

その間に何とか妙案をひらめくしかねぇ、


「質問を許した覚えはないぞ、雑種」

「俺は純血だ、ボケ。 雑種はてめぇだろ、この半神半人」

「キサマッ!!」


ウォッ!! ヤッベーッ!!!


「――王の財宝!」 [ゲートオブバビロン]


ギルガメッシュの背後の空間が歪み、

そこから迫り来る剣軍、もう古今東西様々な武器が津波の如く押し寄せてくる。


「グゥオッハーッ!」


俺は斧剣で弾きながら後退、必死で剣軍を跳ねる様に避ける。

剣は辺りを破壊しながらスコールの如く降り続ける。

その破壊後はまさに絨毯爆撃、地面が粉々になっている。


「ちょっと!! なにやってるのよ!!!」

「すまん! つい本音が口から出てしまったっ!
けど仕方ないだろ! あんな事言われたら腹立つじゃん!!」


俺は担いでいるイリヤと言い争いをしながら、逃げ回る。

何気に余裕があるのかもしれん。

そんなこと思っている間に剣軍は更に数を増やし飛来する。


「王への侮辱は万死に値する! 疾く消え去るがいい!」

「そう簡単に消えてたまるかゴラァァァッ!!」


俺はギルガメッシュの攻撃を弾きかわしながら更に、多重残像拳で撹乱に出る。


[多重残像拳]

高速で移動することにより、実体の無い残像を生み出す技



「愚か者め、そのようなまやかしで我の目を欺けるものか」


しかし、ギルガメッシュの剣軍は俺を見失うことなく追撃してくる。

元々かなり大雑把な攻撃だったから、

俺に飛んでくる弾より外れてる弾の方が圧倒的に多いんだが、

流石に捌くのが辛くなってきた、

このままやってもジリ貧だ、ここは一つ賭けに出るしかねぇか!


「これで終わりにしてやる。 我が手を下すことを光栄に思うがいい」


ギルガメッシュの後方に浮かぶ剣軍は、今までの更に倍は有る様な数になっていた。

言葉通りこれで終わりにするつもりだろう。


「イリヤ!!」

「わかっているわ!」

「ならばその命、俺が預かる!!」

「そんなの最初から預けているわ♪」


笑顔で俺に答えるイリヤ、その顔には俺に対する絶対の信頼を感じる。

これで失敗しようなら、男の沽券にかかわるな、

ぶっつけ本番だが、やるしかねぇ!!

俺はイリヤを背に回し、首に腕を回させ、絶対に離すなと


「消え去るがいい!!」

「消え去るのはてめぇの方だ!! GOHAAAAAA!!!」


俺は光に包まれた。

俺を中心に大地に亀裂が走り、光が弾け飛ぶ。

光から現れた俺は、髪が更に逆立ち、体には稲妻が迸る。

俺は超サイヤ人2に成った。


「そのようなことで我が財を防げるものか!!」


ギルガメッシュは剣軍を容赦なく打ち放つ。

それに対し俺は、



正面から突っ込んだ!!!


「はああああああっ!!」


迫り来る剣弾を気を纏った斬撃で薙ぎ払い、弾き飛ばす。

不退転心の覚悟で突貫っ!!


「おのれ、貴様!!」


向い来る俺に憤怒しているギルガメッシュは次々に宝具を放つ。

俺は弾幕の僅かにでも薄い場所に体を滑り込ませ、

斧剣を振るい距離を詰める。

しかし、如何に今の俺でもこのまま、奴との距離をこのまま完全に詰めることは不可能、

前へと進むに連れて弾幕は厚くなり、激しくなる。

俺の背にはイリヤがいる、そんな無謀なことは出来るはずが無い。

俺は詰めれる間合いの限界を見極め前に進む、


傷を負うことなく距離を詰める。

そして辿り着く、


ここだ、

これ以上は完全に捌く事が出来なくなる、デットライン!!

ここで仕掛けるしかない!!!


「ギルガメッシュゥゥゥッ!!!」


俺はヤツの気を引く為に真名を叫ぶが、

ここで予想外に剣弾が止んだ。


「我の真名を知っているとはな、
冥途への手向けに、一言申すことを許そう」


ギルガメッシュがそんなことを言っている間に、

ヤツの背後には、宝具が次々と装弾され、狙いを俺に定めていく。

しかし、剣撃が一時的にでも止んだのは俺にとって、嬉しい誤算だ。

これでヤツに確実に当てられる。


「では、一つ言わせて貰おう」


俺は斧剣を横に付き立て、ヤツを見据える。


「ほう、なかなか潔いではないか、
人形の心臓を差し出すならば楽に消してやるぞ」


どうやらヤツは俺が武器を手放したのを諦めと受け取ったようだが、

なるほど、ヤツは聖杯の器が欲しいのか、

いや、恐らくヤツにとってはそれほど重要ではないのだろう、

ヤツにとっては聖杯も玩具の一つか、


「残念ながらそれは断らしてもらうが、一言は言わせて貰おう」


そして、


「太陽拳っ!!!」


両手を眼前で広げ太陽拳を放った。


[太陽拳]

全身を太陽のように輝かせ強烈な閃光を放つ技、

この技をくらった者は暫くの間、視界を封じられる。



「がぁっ!! キサマッ!!!」


目元を押さえ、憤怒の叫びを上げたギルガメッシュは無差別に剣弾を撃ち捲くる。

俺はその攻撃を瞬時に斧剣を引き抜き上空に飛んでかわした。

更に斧剣に気を込め、


「クタバレッ!! ギルガメッシュッ!!!」

「ッ!!!」


全力でギルガメッシュ目掛け投擲した。

斧剣は空気を切り裂き轟音を響かせギルガメッシュに迫る。

しかし、ギルガメッシュは俺の一撃を感じ取ったらしく、

自らの財より黄金の盾を取り出し斧剣を防ぐ。

黄金の盾に炸裂した斧剣は甲高い音を響かせ弾き飛ばされた。


「馬鹿め!! 我にこの様な攻撃がっ!!!」


―バキッ―


俺の左拳がギルガメッシュの背に突き刺さり、ヤツの鎧にヒビが入る。


「慢心は己が死を招くぞ英雄王、奥義!! 魔神烈光殺!!!」


俺の右拳がギルガメッシュの鎧を粉々に打ち砕き、ヤツを吹き飛ばす。

俺は荒い息を吐きながらイリヤを背から下ろす。


あの時俺は投擲した斧剣を囮にして、ヤツが盾を出し防いだ時に、

俺はヤツの背後に瞬間移動で移動したのだ!!

そして看破入れず、拳を放った。


つまり俺は、

太陽拳を確実にヤツに喰らわす為に出来るだけ接近しつつも、

ある程度距離を開け正面からの突撃を印象付けた。

太陽拳で視覚を塞ぎ、次に斧剣でヤツの注意を更に正面に引き付け、着弾音で聴覚を塞ぐ、

仮にギルガメッシュがかわしていたとしても地面に炸裂して轟音を響かせていた。

この様に俺はヤツ確実に一撃を喰らわす為にいくつもの布石を打っていたのだ!!!

英雄に通じるかは正直微妙だったし、瞬間移動がうまくいくかも賭けだったが、

俺は賭けに勝利した。



「終わったの?」

「いや、今止めを刺す」


洞窟の端まで吹き飛び壁に叩きつけられたギルガメッシュは、

巻き上がる砂煙で姿は見えないが、ヤツの気をまだ感じる。

俺は腰だめに両手を構え、気を一点に収束する。

ここは下手に近付かずに、砲撃で決める。


「か~め~…」


俺がチャージに入った瞬間、ヤツは煙を吹き飛ばし現れた。

ヤツの手には三節に解れた異形の剣が唸りを上げていた。

大気が歪むほどに魔力を貪っているのを目視できる。


まずいっ!! 

だが、こちらのほうが早い!!!


「は~め~っ波ぁっ!!!!」


俺は両手を前に突き出し、収束し、限界まで圧縮した気を開放し撃ち放つ。


「天地乖離す、開闢の星!!!」 [エヌマ・エリシュ]


俺が放った全力でのかめはめ波がヤツに到達する寸前にヤツは己が宝具を解放した。

ヤツのエヌマ・エリシュは俺のかめはめ波を呑み押し迫る。


クソッタレッ!!!


「イーガスッ!! 全力防御!!!」


イリヤの全身に文様が走り抜けた。

イリヤが令呪を使用して、俺は瞬時に防除体制に移行した。

俺は両手を左右に広げ、気の障壁を前面全力展開!!


その直後、俺達はエヌマ・エリシュに呑み込まれた。



「がぁっはぁっ……」


俺は血を吐きながら、地に膝を付いた。

な、何とか耐え切った。

ピッコロの名シーンを思い出したぜ。

よもや自分が体験するなどとはこれっぽちも思っていなかったが……


「だ、だいじょ…う…ぶ…? イー…ガス」


息切れ切れのイリヤが俺に声を掛けてきた。

振り向いて見たイリヤの姿は、ハッキリ言ってボロボロだった。

服はあっちこっち破れて擦り切れているし、全身傷だらけだ。


「俺は見ての通り五体満足だ。 俺よりイリヤの方こそ大丈夫か?」

「わたしは、あなた、ほどじゃ…ないわ」

「俺はこのぐらい生前日常茶飯事だった。 サイヤ人は動ける限り戦える!!」


俺は自らを鼓舞し、全身に力を入れて立ち上がる。

そして晴れた視界の先、前方に存在するギルガメッシュを睨みつける。


「まだ生きていたか、雑種」

「当たり前だ、この程度でくたばるか、不意打王」


ギルガメッシュの姿も満身創痍、上半身の鎧は砕け散り、全身から血を流してる。

しかし、あの鎧は予想以上に硬かった。

普通ならあの一撃を受けたら、楽に死んでいるはずが、

ヤツはまだ五体満足で生きてやがる。

あの鎧、伊達や酔狂じゃ無かったらしいな、流石は王の財といったところか、


俺はそんなことを考えながら、睨み牽制しているところに、


「イリヤスフィール、バーサーカー!!」

「イリヤ、イーガス、無事かっ!!」


どうやら士郎たちが到着したようだ。

ヘラクレスに担がれた、士郎と遠坂が俺たちの元にやってくる。

続いてアーチャーも現れた。


「よう、お前らずいぶん早かったな」

「ええ、もっとゆっくりしていても、よかったのに」


俺もイリヤも軽く声を掛ける。


「そんなボロボロでよくそんな軽口が叩けるわね」

「ああ、遠坂の言うとおりだ。 後は俺たちに任せてイリヤたちは下がっていてくれ」


そういって、遠坂達は前方のギルガメッシュを見つめる。


「アイツ、何者なの、あんたたちランサーと戦ってたんじゃないの?」

「ヤツの真名は古代ウルクの王、ギルガメッシュだ」


俺は遠坂の問いに、ヤツの真名をあっさり告げた。


「ライダーのサーヴァントか?」

「残念ながらそいつは違うと思うぞ」


そう言って俺が士郎の疑問に答えた時、


「雑種どもがワラワラと、まとめて消し去ってくれる」


ギルガメッシュが再び異形の剣を振り上げた時、


「まあ、待てギルガメッシュ、
折角舞台に役者が揃ったのだ。 そう急く事も無いだろう」


周囲に声が響いた。 そして現れたのは、


「あんたは、言峰綺礼!!!」



どうやら、とうとう黒幕が現れたようだ。

いったいこの先どうなるのか!?

次回に続く!







あとがき

どうやら、遂にクライマックスを迎えるようで、

次あたりでfate編は終わりになりそうです。

すいません、結局なんの捻りも無くギルガメッシュを出しました。

例え十中八九出てくるヤツがわかっていたとしても、

敢て隠すのが予告の鉄則だと個人的には思っています。

この先果たしてどうなるのか、結末は納得行くかどうかは作者にもわからん。

私はイリヤとイーガスのコンビはなかなかに気に入っていたから、

これで終わりと思うと頗る残念だ。




[11759] 最終決戦、これが俺の全力だっ!!  ×Fate
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/05/31 08:59


遂に出てきたか、言峰綺礼こと麻婆神父、

実は俺はヤツに直に会うのは初めてではない。

俺は例の店でヤツに会っているのだ。

店の名前は遭えて言わなくてもいいだろう、俺もあまり思い出したくない。

兎に角俺は商店街に在った例の店に行ったのだ。

話に語られた麻婆豆腐がどれほどのものか確かめるために、

それで店に入ったら、レンゲでハフハフ言いながらマーボー食っていたのが奴だ。


因みに俺は例のマーボーを食し、火を噴き撃沈した。

比喩ではなくマジで、

しかし、このまま引き下がるのは負けのような気がするので、

俺は大量のライスを追加、マーボーカレーにして何とか完食、引き分けに持ち込んだ。

おかげで暫くの間、味覚が麻痺して味がまったくわからなくなった。

俺は二度とこの店に行かないことを誓った。


まあ、そんなことはどうでもいい、重要なのは、


「士郎、お前らどうやってここに入ってきた?」


俺が気になるのは似非神父よりも、こいつらがどうやって入ってきたかだ、


「ああ、洞窟の入り口が吹っ飛ばされたみたいに大穴が開いてたから、
遠目にもすぐにわかったぞ」

「さいですか」


俺は少々呆れ気味に返答した。

十中八九あの金ピカが穴開けたに違いねぇ。

俺が話している横では遠坂がシリアスを続けていた様で言峰と話していた。



「綺礼、何でアンタがこんなところにいるのよ」


遠坂は鋭い眼光を飛ばし言峰に問う。

もっとも、聞かなくても返ってくる答えは解っているのだろうが、


「愚問だな凛、私は聖杯戦争の監督役だ。 聖杯を管理、護るのは私の義務だ」

「減らず口をぬけぬけと」


遠坂はチッとした打ちしながら毒を吐く。


「遠坂あいつ何者だ?」


士郎が遠坂に質問している。

そういえば、士郎はフラグをブレイクしたから教会には一度も行っていないな、

これが言峰との初邂逅になるのか、


「アイツはこの聖杯戦争の監督役よ、教会で神父をしているいけ好かないヤツ」

「兄弟子に対して随分な言い草だな、
敬えとわ言わぬが、もう少し敬意を払ったらどうだ」

「生憎そんな気は毛の先ほども持ち合わせてはいないわ」


遠坂の殺気溢れる眼光を浴びて、気にすることも無くうけながしている言峰、

士郎も目の前の男が危険なヤツであることは感じ取っているのだろう。

目を逸らすことなく身構えている。


「それは残念だ」


口ではそんなことを言っているが、残念そうな顔にはまったく見えない。

寧ろ嘲笑っているかのような顔だ。

これほどムカつく顔もなかなかお目には掛かれないだろう。


「それでは凛、確認のために訊いて置くが、ここに何をしに来たのだ。
聖杯戦争はまだ中盤だ。 ここに来るのは些か早いのではないか?」

「聞くまでも無く解っているでしょう、大聖杯を破壊するためよ!!」


遠坂は啖呵を切って宣言した。

清々しいぐらいかっこいい、出切れば最後までその調子で行って貰いたい。

恐らく無理だと思うけど、


「ほう、聖杯を手にすることは遠坂の悲願、なぜそのようなことを?」

「あんた解って言ってるでしょう。 私があんな物を欲しがるはず無いでしょう」


遠坂の目は言峰の後ろ、禍々しい光を放つ大聖杯に向けられている。

その瞳は嫌悪を露にしている。

その表情を喜悦を浮かべる表情でみつづける言峰。

ヤツの性根の曲がり具合がどれほど歪か良く分かる顔だ。


「御託はその辺でいいだろう。 立ちはだかるなら打ち砕く、言葉なんざ必要ねぇ」


俺は重い体を引きずり前に出る。

ヤツにしゃべらせ続けると碌なことにならねぇ、

その内イリヤや士郎にまで絡むに違いねぇし、禄でもない事ベラベラ喋るに違いない。

こういう場合は潰して黙らせるのが一番だ。


「語り合うならこの拳で応えてやるぜっ!!」


俺は拳を突き出し構える。

俺の覇気はいまだ衰えることなく、滾っている。


「いきがるな雑種、貴様らはここで我が葬ってくれる」


ギルガメッシュは再び背後の空間に剣弾を装填していく。


「やれやれ、仕方がないな。 少々早いが最後の舞台を開幕しようか」


言峰は喜悦を更に深く浮かべるように口元を歪め、宣言した。





「アーチャー、出し惜しみするんじゃねぇぞ! 前は俺とヘラクレスに任せろ!!」

「仕方あるまい。 一分、時を稼いでくれ」

「余裕だぜ、寧ろぶっ倒してやるぜ!! 行くぞっ! ヘラクレスッ!」

「ウム」


俺とヘラクレスは正面からギルガメッシュに突撃する。

俺たちの背後では瞳を閉じたアーチャーが詠唱を始める。



   I am the bone of my sword.
     体は剣で出来ている。



ドクンッ!


アーチャーが呟くと同時に空気が変わる。

アーチャーを中心に、世界を侵食するように異質な気配が広がっていくような感じ。



Steel is my body, and fire is my blood.
    血潮は鉄で 心は硝子。

I have created over a thousand blades.
   幾たびの戦場を越えて不敗。



特に変化があるわけでもないのに、士郎も遠坂もイリヤも動く事が出来ずにいた。

もっとも、それはマスターだけの話で、俺もヘラクレスは聞き惚れる時間もねぇ、

俺も本音としては生でゆっくりと聞きたかった。

しかし、その声は降り注ぐ剣弾の豪雨の中でも耳に響きよく聞こえた。



      Unknown to Death.
     ただの一度も敗走はなく、

      Nor known to Life.
     ただの一度も理解されない。



「何をするかしらぬが、これで終わりだっ!! 雑種共!!!」


憤怒の怒りを込めた咆哮がこだまする。

ギルガメッシュが再び異形の剣、エアを振り上げ、剣は唸りを上げ始める。


「馬鹿めっ!!!」


俺も再びギルガメッシュの背後に瞬間移動して、拳を叩き込む。

しかし、流石のギルガメッシュも2度目は反応し、エアで受け止める。


「ぐぅっっ!!」


如何に慢心王でも2度目は通じないか、



Have withstood pain to create many weapons.
 彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。



その詩を聞いた者達は思った、なんて悲しい詩なのだろうと、


マスター達はそんなことを思ったたかもしれないが、


「おのれっキサマッッ!!!」

「DAHAHAHAHAッ!!!!」


この戦いでテンションが見事全快突破を果たした俺様には丸っきり聞こえない。

ほぼゼロ距離でのラッシュの連打連打連打!!!

この近距離では剣弾も撃てまい!!

弾かれながら後退するギルガメッシュに距離を開けることなくピタリと付いていく。


ギルガメッシュの手にあるエアでは接近戦では役に立つまいっ!!

もっとも、この距離では長剣など振れるはずも無いが、

俺はヤツに剣を取り出す時間すら与えず攻めまくる。

こと近接格闘戦に置いて俺の右に出るサーヴァントはいねぇ~っ!!



Yet, those hands will never hold anything.
    故に、生涯に意味はなく。



因みに、剣弾を放つ余裕が完全に無くなったギルガメッシュは、

完全にヘラクレスをフリーにしてしまった。

この性で士郎たちに仕掛けようとしていた言峰に気付いたヘラクレスは、

ギルガメッシュを俺に任せ言峰に突撃して行った。


俺は目の前のギルガメッシュしか既に見えなくなっていたから与り知らない事だった。



  So as I pray, unlimited blade works.
  その体は、きっと剣で出来ていた。



ゴォォォォオオオオ!


アーチャーが詠唱を終えた瞬間、焔が走り世界は侵食される、

現れたのは剣、剣、剣、剣、剣、無限とも呼べる数の剣と赤き荒野、

そして空には巨大な歯車が音を立て回っている。



「これが私の宝具、固有結界、術者の心象風景を具現化する魔術だ。
そしてこの世界の名は“無限の剣製”(アンリミテッド・ブレード・ワークス)
私の持つ唯一無二の力だ」



アーチャーが瞳を開き、声高らかに宣言した。

眼前に広がる光景は消滅していくギルガメッシュと、ミンチにされた言峰だった……



実はアーチャーの詠唱終了と同時にケリは付いた。

俺は痺れを切らしたギルガメッシュがエアを唸らせ強引に弾き飛ばそうとしたところを、

ヤツの腕を取って、見事な一本背負いで地面に叩きつけ、そのまま捻り十字固めを決めて押さえ込み、

ゼロ距離んちゃ砲で止めを刺した。


ヘラクレスは普通、言峰は黒鍵を取り出し抵抗したらしいが、

サーヴァント、それもヘラクレスに適う筈も無く、十数秒でケリが付いた。

俺的にはかなり奮戦した方だと思う。



……

………

…………

……………


沈黙が、空気が重い、重力が数倍に感じる。

戦闘の疲労もあるだろうが物理的重圧で潰れそうな感じだ。

辺りには歯車の回転音だけが重々しく響いている。


何でこんなことになったんだろう。

俺は予告を完遂しただけなのに、



こうなったら、スルーして話を進めるぞ、


「戦いのケリは付いた。 後は大聖杯を破壊すればすべてが終わる」


俺は無表情、棒読みで明後日の方に視線を向けて呟き、大聖杯の方に歩みを進める。

他の方々も無言で歩を進める。

アーチャーだけがその場に留まっていた……





「それでは破壊しようか……」


大聖杯の正面までやって来た俺たちはその全容を改めて眺めることになった。

改めてみるとデカイ、火山の火口かと見まがえそうな感じだが、

中身は溶岩よりよっぽど性質が悪い。

それにしてもここほんとに地下なのかと思うほど広いな、

バチカンの都市が楽に入るほどにここの空洞は広い。

まあ、物思いに耽るのも眺めるもこのくらいにして、そろそろ始めるか、


「HAAAAAA……」


俺は構え精神を集中していくが、


「待ちたまえ、ここは私に任せて貰おう」


背後からアーチャーが歩み出る、その手には一振りの黄金に輝く剣が握られていた。


アーチャーさん、それはもしや約束された勝利の剣、エクスかリバーではありませんか?

よもや、なりふり構っていられなくなったのか、

いろんな意味で必死だな、少々哀れに思えてしまった。


この作品ではアンタが一番の苦労人だからな、

しかし、そんな男の最後の機会も、


「待ってアーチャー、ここはわたし達に任せてもらうわ。
この聖杯戦争はアインツベルンが始まりだった。 だからわたしの手で終わらせたいの…」

「………わかった。 ここは君たちに譲ろう」


アーチャーは剣を消して後ろに下がる。

結局エクスかリバーは使わずじまいだったか、

真名を開放しなかったとはいえ、投影するだけでもかなりのリスクがあっただろうに、

俺には背中が泣いているように見えたぜ、


「アーチャー、元気を出しなさいよ…」

「……何を言っているんだリン」


なんて会話が後ろの方から聞こえてきたが、

ここは聞かなかったことにするのがいいかな、


「イーガス」

「わかっているぜっ! 
最後の令呪を頼む。 俺の限界突破、全力全壊、最終奥義を見せてやるぜっ!!!」

「わかったわ、令呪を持って命じる。
わたしに限界を超えた貴方の力、見せてみてっ!!」


イリヤが手を突き出し声高らかに宣言する。

全身に文様が走り光り輝く。

その瞬間俺に流れ込む今までと桁違いの莫大なる力、


ZEHAAAAAA!!!


俺は身の内に宿る力を開放するように咆哮を挙げる。

そして俺は黄金の稲妻を放ち閃光に包まれる。

次に姿を現した俺は、

腰まで届く角が突き出しまっくてるような黄金の髪!

ヤクザが裸足で逃げ出すような凶悪な面!

全身に纏い放電しているかのような雷!

腰から伸びる立派な尻尾!

俺は遂にスーパーサイヤ人スゥリィーになって居た。



士郎や遠坂があごが抜けるような驚愕を浮かべた間抜け顔を晒している中イリヤは、


「か、かっこいい!!」


キラキラ輝いているような瞳で見ていてくださった。

そうだろうそうだろう、

残念ながら俺自身はどんな姿をしているか見れないのは残念だが、

やはりこのワイルド(予想)な姿はかっこいいよな、

気分を良くして腕を組む。

しかし、残念ながらそんなに長くこの姿でいられそうに無い、

早々にケリを付けるぜ!!


「イリヤ、お前と過ごしたこの二ヶ月はなかなか楽しかったぜ」


俺はイリヤに背を向け構える。

そして、全身全霊の力を拳の一点に圧縮させる。


 ゴゴォオオオオオオ!!!


大気がしびれて、大地が唸りを上げるほどの力を俺は一気に解放する。


「魔闘術最終奥義!! 魔王破滅拳ッ!!!!」


俺の解き放った一撃は世界すべてを閃光で染め上げ大聖杯を消し去った。





「終わったな、これで……」


ゴゴゴゴゴゴゴォ


「??! おいおいこの音はまさか……」 


古今東西役目を終えた秘密基地や地下施設は消滅すると相場が決まっているが、

どうやらここも例外ではなかったようだ。

地響きを立てながら大洞窟は崩れ始めていた。


「早く脱出した方がいいぞ」

「どうやらそのようね。 士郎、イリヤスフィール行くわよ」


ヘラクレスが遠坂と士郎を担ぎ上げる。

アーチャーは先行して退路を確保しようとしている。


「イリヤとイーガスも早く!!」

「残念ながら俺はここまでだ」


俺は士郎の叫びにそう応えた。

驚愕を浮かべた士郎たちの目の前で俺は足元から光に包まれ、消え始めていた。


俺が先ほど放った魔王破滅拳は文字道理、破滅を齎す最終奥義。

対象と自身に破滅を齎す最後の業だ。

今の俺は消えかけの蝋燭と同じだ、もう超サイヤ人ですらない。

イリヤから供給される魔力も焼け石に水、芯の残っていない蝋燭はいずれ消える。


「士郎、最後に忠告してやろう。
正義の味方ってのは英雄と同じで他者から送られる称号だ。
自ら成ろうとして成れるもんじゃない。
このことを理解していないとお前は、そっちの男みたいに捻くれたヤツになるかもな」


俺はそう言って視線を士郎からアーチャーに向ける。

アーチャーは、鼻を鳴らして顔を背け、先へ進み始める。

俺は苦笑を漏らす。

我ながららしくない事を言ったものだ。

しかし、これが最後ならば別にかまわんだろう。


「イーガス……」


イリヤが寂しげな表情を俺に向ける。

確かに別れは寂しいものだが、この表情は戴けないなぁ、


「イリヤ、出会いがあれば別れもある。
そして俺とお前に縁が在れば再開も有りうる。 だから別れは言わねぇぜ」

「……わかったわ。 また合いましょう、イーガス」


イリアは笑顔でそう言った。

俺もそれに答え、


「オウ、またな、イリヤ」


手を上げて軽い感じでそう応えた。

そして、イリヤもヘラクレスに乗せられて、大洞窟を後にした。

俺は体が徐々に消えていきながらも最後まで見送ったが、

アイツ等が振り返ることは無かった。
 

「ああ、これでいい」


俺の最後なんてこんなもんだろう。

でもな、最後にイリヤに言った言葉はその場しのぎって訳ではないぞ。

何と無くだが、連中にはまた会えるような気がしたんだ、

それがいったいどれほど先のことになるかは生憎皆目検討付かんし、

それが俺自身であるか、アイツ等自身であるかもわからんが、

自分で言ってて良く分からんな。


物思いに耽っている内にどうやら時間切れのようだ。

思考に霞が掛かったかのようにぼやけ、真っ白になっていく。


「はてさて、この先どうなることやら……」


などという言葉を最後に、

俺は光に呑まれて意識を失った。








あとがき

取り合えずFate編終了、エピローグはあまり書くつもりが無い。

リクエストがあれば書いてもいいんだが……

現在次ぎのネタを考え中、果たしてどこに行くのか?

あとイーガスをどうするか?

1、新たに転生する。

2、原作キャラ転生or憑依。

3、このままいく。

大きく分けてこの三つさて、どれでいくか?





[11759] 今度は狂戦士から黒騎士に転職したようだ ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/06/10 08:51


さて、それでは今現在の俺の状況から話そうか、

今俺の眼前に広がっている光景は、


暗い町、明かり一つ付いてない沈黙した町並み。

これくらいはいいだろう。

灯り一つ付いて無いのは異常かもしれないが、町全体が停電しているだけかもしれない。


次に、人や生き物の気配がまったくしない。

ひょっとしたら、廃棄都市なのかも知れない。

戦争で疎開したとか、疫病が流行ったとか放射能汚染があったとか、

このような理由ならば俺も長居は無用、即この都市を離れた方がいいだろう。


そして更に次が、空が赤い。

夕焼けなんかじゃなくて赤黒い、

更にそれが侵食しているように世界全てが血に染まったかのように紅く、夜のように暗い。


極め付けが、頭上に存在する黒い月。

ただの黒い月ならこんなに驚いたりはしないが、

アレからは溢れるような禍々しい力を感じる。

漏れ出た、溢れ出た力が世界を覆い尽くしているようだ。

今のこの世界の状態は十中八九アレのせいだろう。


問題なのはアレが何かということだ。

この感じる力の気配は、聖杯に近い感じがする。

しかし、ここの町並みを見る限り冬木市ではない。



次に俺の状態だ。

俺の体はどうやら変質してしまっているらしい。

あの黒い月と同質、禍々しい力が俺の身を覆っている。

まるで黒い甲冑を全身に纏っているような姿だ。

いや、正確には違うのか、この禍々しい力が俺の肉体を形創っている。


俺の肉体はすでに消滅している。

先の聖杯戦争でも、聖杯とイリヤの魔力で形創られた仮初めの肉体だった。

それ故にその体は、本来の俺の肉体(DBでの)には遠く及ばなかった。

前回、力が抑えられているように感じたのも、

俺の精神に肉体が付いてこれなかったのだろう……多分。

まあ、あくまで推測でしかないからこれ以上考えても無駄だろう。

外れてるかもしれないし。



俺は自分の体の様子を見る。

軽く体の調子を確かめるように、体を動かす。

いつもの鍛錬のように準備運動、軽く型稽古。

どうやらこの肉体でも前回と同程度には動けるようだ。

身の内には黒い力が渦巻いているが、

超サイヤ人3にまで成った俺様、

この程度の力に流されるような軟な魂はしていない。

俺は後百年戦えるぜ! 黄金の戦士だけに!!


精神は肉体の影響を受けるというが、

精神が肉体に影響を与えることも有りうるだろう。

故に俺は更に強くなってやるぜ!!


次に確かめたのは獲物、

俺はヘラクレスの斧剣を取り出すことが出来た。

他にもスカウター、俺の使っていた衣類なんかが取り出せた。

後はなぜかイリヤの紫の上着と帽子、

どうやら大洞窟に入った時に預かったのがそのままになってたようだ。

どうやら装備品やアイテム、持ち物は引継ぎらしい。

チッ、

こんな事ならギルガメッシュやアーチャーから宝具をパチっときゃ良かったぜ、

何か俺の持つこの固有スキル?の能力はウィザードの月衣(かぐや)に近いな~と思う俺だった。



しかし、この世界観少し覚えがあるな。

もう少し切欠があれば思い出せると思うんだが、


「ここにいても仕方がない、この世界を少々捜索してみるか」


俺はそう呟いて、この場を後にした。



俺はまずこういった場合の定石として、近くの本屋、或いはコンビニを探した。

辺りに人の気配どころか生き物の気配すらないが、

町が荒れている様子はまるで無い。

道路には車も放置されている。

ならば、恐らく本屋やコンビニに行けば新聞や地図なんかも置いてあるだろう。

周りの看板や文字を見る限り、日本であることは間違い無さそうだ。

まずはここがいつのどこなのか調べる必要がある。

そして、程なくしてコンビニを見つけた。

俺は動かない自動扉を強引に押し開け中に踏み入り、手近な新聞を手に取った。


新聞の日付けは2009年9月17日と打たれている。

新聞の内容自体は特に変わったことは書かれていなかった。

どこかの政治家が脱税で捕まったとか、融通がどうのとか、高齢化とか、

唯一目を引いたのが行方不明者がどうのという記事だ。

三面にも載らない小さな記事だったが、

綾女ヶ丘市、つまり今俺がいるこの町で起こっているようだ。


しかし、今の状況を見ると行方不明者とか失踪者とかってレベルじゃないと思う。

この都市全ての動物が消失してしまっている。

生物というカテゴリーには植物も含まれるから、動物。



しかし、いったいどうなっているのやら……

あと少しで思い出せると思うんだが、

一度思い出せば後は芋ずる式で思い出せると思う。

原作キャラにでも会えば思い出せるだろう。


俺はそんなことを思いながらコンビニを出て、

ふと、ガラスに映る自分の姿を改めて見た。


全身真っ黒のフルメイルの甲冑、鋼の装飾が施されている。

全体が引き締まった軽鎧にも見えるが、

鋭角に尖った突起が全身に施され、放たれる威圧感から重く感じられる。

後は紅い文様が彼方此方に施されている。

そして、腰から生えている硬質な尾、

尻尾というより竜の尾とか連接剣みたいな感じ、とても元がサルの尻尾には見えん。

最後に紅く染まった瞳。


まるでゲームに出てくる黒騎士みたいだ。

黒騎士?

ひっかかるな、

何だったかな、黒騎士とか暗黒騎士って結構いたからな、

カードゲームとかにもよく出てきたし、


しかし、ここまで着たらもう後一歩、後ちょっとで思い出せ!?

今、強い力を感じたぜ、

そう遠くない。

ここは行くしかねぇだろう!!



俺は速攻で地を駆けた。

周囲の建物を屋根ずたいに走り抜ける。

気配の近くにたどり着いたら、

気配を消して、建物の影に身を隠し、様子を伺う。


そこでは一人の少女が化け物と戦っていた。

いや、少々語弊があった。

言い直そう、化け物を駆逐していた。

今の俺と同じ、同質の力を放つ触手の這えた黒い塊に面が付いた怪物。

生き物かどうかすら解らん怪物を少女は魔術で消滅させる。

物量では圧倒的に怪物が勝っているが、彼我の戦力差は圧倒的。

あの様子では怪物が何十匹束になろうとも相手にならんだろう。


少女は長い銀髪をツインテール、いやツーサイドアップか?

髪形なんて俺にはよくわかんねぇーや、

兎に角、銀髪ロングに白い法衣を纏っている。

そして、その手には黒い表紙の本を持っている。

そして表紙にはINDEX、インデックス!?

常人の目には見えん距離だろうが、俺の目にははっきりと見えた!

間違いなくINDEXと書かれている。


黒い月+紅い夜+黒騎士+インデックス=11eyes

何で今まで気付かなかった!!

普通黒い月と紅い夜辺りで気付きそうなモンだろう。

自分の迂闊さを少々呪う。

悔やんでも仕方ない、

どこの世界か分かった所で早急にこれからの行動を考えねばっ!


俺の脳内がフル稼働を始めたところで少女、

俺の記憶では百野栞こと書架のウルスラ、の怪物の掃除は終わったようだ。

そして、少女がこちらに振り向く。

俺は無論少女が振り向く前に身を引っ込めた。

俺は気配を探っているが少女の視線がこちらに向けられているのを感じる。

まずい、これは見付かっているのか?

俺は息を潜めて身を隠し気配を絶っているが、


「出て来なさい」


静かな声が響いた。

どうやらばれているようだ。

このままでは無言で魔術をぶっ放されそうだ。

まあいい、

こちらに声を掛けてきたという事は、話合う余地が有るということだ。

そうでなければ撃って来るだろう。

ちょうどいい、俺も少女にはいくつか確認したいことがあった。

俺は意を決して物陰から出て少女の前に姿を現す。



少女はこちらに手を翳し構えている。

妙な素振りを見せれば速攻で撃って来るだろう。

俺は構えることなく少女の前に立っている。


「何者」


まったく抑制の無い声、必要最低限の言葉、

彼女の表情にも感情というものが感じられない。

まるで人形のようだ、

って、そういえば少女の体は義体だったな、

なんて考えてる場合じゃないな。


「女性に名を問われたら応えるのが礼儀だろう。
俺の名はイーガス、君の名前は?」


出来る限り紳士的に対応してみた。

少女の返答は、


「……」


沈黙だった。

くっ、まったく反応無しとは少々凹む。

やはり俄仕込みではだめか、


「OK、ギブアンドテイクといこう。
まず俺が君の質問に一つ、答えられる事には答えよう。
俺が答えたら君も俺の質問に一つ答える。 OK?」


俺は少女に提案する。

このまま沈黙していては話が進まない。

俺の知りたい事を知る為にもまず会話をしなければならない。


「この空間位相結界について」


少女は僅かに頷いてから俺に問いを投げた。

空間位相結界、つまりこの赤い夜について俺の知っていることを話せと、

はてさて、どの位話せばいいか、


「魔術に関しては良く分からんが、
この世界は幻燈結界・ファンタズマゴリアと、そう呼ばれている。
空に浮かぶ黒い月は異界への門だ。
この世界には異界の門より流れ出た闇精霊・ラルヴァの力が溢れている」


このくらいでいいだろう。

実際、俺には詳しくは解らないし、

俺自身の認識には、推測や独自解釈などが多分に含まれているからな、

本当に有っているかどうかなど、俺には解らん。


「次は俺の質問だ、君の名前は?」

「書架のウルスラ」


なるほど、聖名を名乗ってきたか、

いや、こっちが本名で百野栞は偽名だったか?

今は禁書目録聖省の法衣を纏っているのだから当然か、


「この幻燈結界を創り出したのは」

「聖省一四聖の一角、虹のゲオルギウス」

「!?」


少女から僅かに驚いた気配がする。


この閉鎖結界は確か、

リーゼロッテ・ヴァルクマイスターと虹のゲオルギウスの力の衝突の結果から発生したはず、

そしてこの世界は虹のゲオルギウスがリーゼロッテを封じ込めている結界。

っで合っているのかな?


「君がこの幻燈結界に侵入した目的は?」

「私が意図してこの結界に侵入したわけではない」


なるほど、これで俺の確認したいことは終わった。

実は少女の最初の質問で答えは得ていたのだが、


俺が確認したかったことは、

この世界がアニメか原作、どちらがベースに成っているかだ!

初めの質問で、この結界の事を聞いてきたということは、

この世界付いての知識が無いということ、詰りここは原作ベースの世界だろう。

俺の記憶では確か、アニメ版での書架のウルスラは、初めからすべての事情を知っていたはずだ。

詰り、そんなことは質問しないだろう……たぶん。


しかし、流石俺様!!

この短時間でこれだけの思考と状況把握、現状認識が出来るとは、

我が事ながら、素晴らしい!


まあいい、今考えることはこれからの俺の行動だ。


「次は私の質問、貴方の目的は?」

「俺の目的か、それは……」








あとがき

こんな感じで11eyesに行ってみました。

これからのイーガスの行動をさてどうするか……

そんな訳で展開予告!!

1、主人公勢に合流、大筋原作通り、リーゼロッテを倒す。 友情は無二の財産だ。

2、原作に関わらず静観、ゆっくり観賞。 生で見るって素晴らしい♪

3、黒騎士ボッコ、リゼットを助ける。 囚われの姫を助けるのは男の義務だ!

4、原作ブレイク、俺が最強! 黒い月は俺が破壊する!! 物語速攻終了。

5、俺は更なる力を求める! 手段は選ばず、例えすべてを滅ぼしてでも!!!

って感じでこの内どれかで行こうと思う。






[11759] 現状確認、これからの行動  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e E-MAIL ID:d8c5e88f
Date: 2010/10/18 00:24


「俺の目的か、それは囚われの姫を助けること、かな?」

「姫?」


俺はリゼットを助けることに決めたぜ!

やはり原作の終わりは納得できん。

アニメは輪を掛けて納得できん。

まあ、原作はアレはアレでよかったとも思う。

トゥルーではないがベターだとは思う。

リーゼロッテは死を望んでいたし、愛する男の手で逝けたのなら、

それは幸せな結末だったかもしれんが、ヒロインが死ぬのは納得できん。

攻略対象ではなかったから仕方ないかもしれんが、それでもだ!!

この世界に来たのも何かの縁だ。

例え自己満足でも、俺が決めたからには何が何でも生きてもらうぞ!!


因みに俺は主人公は死んでもいい派、戦い果てるのはある意味最高の死に方だ!

もっとも、何だかんだで帰って来るのが多いがな。





「それで君はこれからどうするんだ?」


俺はこれからどうするのかを少女に尋ねる。


「……」


少女は俺の質問に沈黙で答える。

まあ、仕方のないことかもしれないな、

少女は未だに俺を警戒している。

まあ、当然だろう。

なんせ見た目から信用できん姿をしとるからな、

闇精霊・ラルヴァに侵食されとるし、正気に思えんのだろう。

もっとも俺は正気だが、

自分がぶれているとは微塵も思っておらん。

闇を受け入れ、肉と魂魄の全てを深く暗黒に染め上げれば、

暗き深淵の瘴気は豊穣の力の源となる、だったか?

俺は闇を受け入れたのだろう。

闇を拒絶すれば自らの存在を蝕む呪いとなったはず。

俺にはそんな兆候は感じられんからな、流石俺様、器がでかいぜ!


「警戒するのは仕方ないかもしれんが、俺は正気だ。
お前と戦う積もりも無い」


今のところは、

虚無の欠片は回収したいと思うから戦うことには成るかもしれないが、

少なくとも今はその積もりは無い。

書架のウルスラが持つ五千の魔書も少々魅力的だしな、響き的に。

まあ、某禁書目録の少女が持つ十万三千冊には及ばないが、五千冊で十分だと思う。

第一、十万三千冊って今一ピンとこない。

本当に十万三千冊記憶してるのか?

俺の予想では訳が違うだけで同じ魔導書の写本なんかが大量に在るんじゃないかと思う。

ラテン語版とかギリシャ語版とか、そんな感じで。


話は大分それたが今は戦う積もりは無い。

しかし、少女には俺を見逃せない理由があるだろう。

なんせ少女は聖省に忠誠を誓った使徒、

聖省に害成す異端異郷を滅ぼす使命を帯びている。

俺は間違いなく滅ぼすべき敵だろう。

俺がそんなことを考えていると少女は口を開いた。


「貴方が言葉が真実なのならば、私はその所在を確認しなければならない」

「虹のゲオルギウスか、奴は今の俺と同じ、闇精霊・ラルヴァに侵食されている。
しかし、俺とは違いまともな話し合いなどできんぞ」


嘘は言ってはいないぞ。

虹のゲオルギウスは多分正気だとは思うが、

向こうは話し合いをする気が無いから、話し合いはできんだろう。


「それに向こうには居るのは虹のゲオルギウスだけじゃない。
一人で行くのは無謀だぞ」

「それでも、真偽は確かめなくてはならない」


まあ、当然だろうな、


「そうか、どうしても行くなら俺も付いていこう」

「何故?」

「俺も連中には用があるからな、
お前が連中と戦うならば、ある種利害が一致する」

「……」


あまりこういう事はしたくないのだが、

勝手に動かれるといろいろ面倒くさいことになるかもしれないからな、

いや、俺としてもあまり戦いたくは無いし、寧ろ仲良くしたい。


「虹のゲオルギウスが居る場所はこの結界の中心、
黒い月の真下、六つの水晶柱に囲まれた神殿の中に奴は居る」


俺は黒い月に指を向けて、書架のウルスラにそう告げる。

リーゼロッテを封印し、奈落堕としを止めている虹のゲオルギウスは、

今はまだあの場所から動くことは出来ない。

いや、動くことは無いはずだ。


「しかし、今しばらくは様子を見た方がいいぞ。
どうやらこの結界にお前以外にも侵入者が居るようだ」


俺はこことは違う場所に眼を向ける。

先ほどから力を何度か感じた。

集中すれば気を感じとることが出来る。

中でも二人ほど大きな気を感じるが、多分、美鈴と雪子の二人だろう。

この二人は他の連中より、気つまり生命力が強いと思うから。


「俺はこれから様子を見に行くが、君はどうする?」

「……私も同行する」

「そうか」


こんな感じで俺らは二人で行動を共にすることになった。








さて、現在書架のウルスラと俺は綾女ヶ丘と新綾女を繋ぐ鉄橋の上に居る。

俺たちは他の連中の所在を確認した後、

この綾女ヶ丘と新綾女を両方を一望できる鉄橋の上に来ている。

他の奴には気付かれること無く様子を窺うことが出来た。

皐月 駆と水奈瀬 ゆかは一緒に学校にいた。

草壁 美鈴とは橘 菊理は行動を共にしていた。

広原 雪子と田島 賢久はそれぞれ単独で行動していた。

状況から推測して恐らく今は紅い夜一回目で間違いないだろう。


「さて、これからどうする?」


俺たちはこれからについて話し合おうとしていた。

俺と書架のウルスラは現在一応同盟を組んでいる。

もっともこの同盟がいつまで続くかは、分からないが。

俺の目的の為には敵対する可能性が非常に高い。

書架のウルスラも俺のことはあまり信用していない。

一緒にいるのは俺と同じで、双方共に監視が目的。


「私はこれから結界の中心に行く」

「ならば俺も行こう」


そして俺たちは移動しようとしたのだが、

世界が静止するような感覚が走り抜ける。

疑問に思い確かめる間もなく、書架のウルスラは硝子のように砕け散った。

一瞬驚愕したが、状況は理解できた。

この結界の外に出たのだろう。





取り合えず時間が出来たから、原作を知らない人の為に自己解釈、独断、偏見、ネタバレを含んだ状況説明をしよう。

リゼットことリーゼロッテ・ヴェルクマイスターは、

この罪に穢れた世界を浄化し、輪廻の円環を断ち切る為に、世界を滅ぼそうとしている。

これを止める為リーゼロッテに64年前戦いを挑んだのが、

聖省十四救難聖人の一人、虹のゲオルギウス、

聖骨のセバスティアヌス、龍骸のイレーネ、書架のベネディクトゥス、戦槌のサムソン、の使徒4人、

そして草壁 操、この6人がリーゼロッテと戦い、

力の源であった虚無の魔石を7つに分割して封印することに成功した。

リーゼロッテはこれが原因で記憶喪失になり、魔女であったことを忘れている。

今現在、過去に捨てた本来の名前であるリゼット・ヴェルトールを名乗っている。

そして分割され平行世界に飛び散った残り6つの魔石の欠片を持つ者達が、

水奈瀬 ゆか、草壁 美鈴、橘 菊理、広原 雪子、田島 賢久、百野 栞の6人。

紅い夜の世界で滅びの御名を背負い黒騎士になった虹のゲオルギウス達は、

魔石の欠片を持つこの6人をリーゼロッテの力を削ぐ為に殺そうとしている訳だ。

原作主人公だった皐月 駆は、ぶっちゃけ巻き込まれただけ、

強いて上げるなら、自身の瞳に宿る劫の眼の因縁。

劫の眼に魂が宿っているヴェラードは生前リーゼロッテの恋人だった。

要点だけ言うとこんな感じだ。

さて説明も終わったし、これからどうするか、



俺は間宮記念図書館、その中の間宮文庫が収められている場所に向った。

ここには確かアレがあったはず、俺は目的の物をがんばって探した。

なんせこの世界、電子機器の一切が止まってたもんだから、

探すのが無茶苦茶大変だった。

ここの蔵書は数千万冊、途中で図書館を打っ壊してやろうかと思ったくらいだ。

しかし、俺は目的の本を探し当てた。

不幸中の幸いは蔵書の整理がしっかりされていたことだな。

『形而上物理学、および現代魔術のシステム理論』

俺が探していた本のタイトル。

こいつは天見莞爾・著、現代魔術の基礎理論が記された本だ。

前の世界では魔術には縁が無かったからな、

俺は早速中身を拝見、好奇心を押さえることなく読み耽ったのだが……

ちょっと難度が高かったかな?

内容は恐らく半分も解らなかった。

しかし、諦めが悪い俺様は天見 修と紅野 澪の家を家捜しさせてもらった。

俺は目的の為ならば手段は選ばない。

住所に関しては学校まで行って調べさせてもらった。

其れっぽいノートを幾つか見つけたが、結果は芳しくなかった。

紅野 澪は努力家で基礎固めをしっかりしているだけに、

ノートの内容は俺の持ってる本と大して変わらなかった。

天見 修の家は其れっぽいものすら殆ど無かった。

やはり重要な物はパソコンの中にプロテクトでも掛けてしまってあるんだろう。

パソコンからハードディスクだけでもパチって行こうかな、

取り合えずノートパソコンはパクらせて貰った。

しかし、こいつを完全に理解するにはもっと勉強せねばならんだろう。

だが根本的な問題として、ここでは電子機器が使えないから現代魔術は使えない。

このことに途中で気付いた俺は、いったん保留にして次の場所に向った。



俺が向った場所は間宮邸にある開かずの書庫だ。

ここに納められた文献は草壁 遼一が残したものだ。


草壁 遼一は戦前、草壁宗家の長男として生まれ、歴代の中でも屈指の天才、

しかし、西洋魔術の研究も行ったために外法使いとして14歳で破門にされ、

草壁一族より追放された男。

追放された後、放浪の末に日本最高峰の魔術機関である霊能局の癲狂院で研究員になる。

現在魔術の創始者・天見完爾とも交流があり、

遼一の研究していた東洋呪術と西洋魔術の統合が現代魔術の発想のベースになってるらしい。

遼一の最後は傲慢・ホッファートのヴァルター・ディートリヒと戦い相討ち。

しかし死後、生前に行っていた転生の秘術により、二度に渡って転生。


必殺技が朱雀爆焔呪、

最強技が草壁流の最大秘術、百鬼鎧骨格!!

間違いなく草壁最強の術者!!!

詳しく知りたい奴は前前作のパソゲーをしてくれ。



俺は書庫の南京錠を打っ壊して中に進入、文献を漁らせて貰った。

流し見ただけだが、これまた難度がかなり高かった。

しかし、いろいろと参考になるものが沢山あった。

俺は有り難く文献すべてをいただいた。

暇を見つけてゆっくり読もうと思う。



さて、思いつくことはすべてやった。

後はリゼットに会いに行くか、新技会得の為に修行するかぐらいしかないな、

ここは取り合えずリゼットを水晶の中から出すほうが優先かな、

しかし砕いちまっていいのか?、あの水晶は恐らく結界の要。

水晶を砕いたくらいではリゼットは死なないだろうが、

って言うより砕いたくらいで死ぬならとっくに砕いているだろう。

砕いたことで何が起こるかはわからん。

虚無の魔石の欠片を融合させなければ暫く大丈夫かな?

いきなり黒い月が落ちてくることも無いだろう、多分。

まあ、なんだかんだ行ってもあそこから連れ出さんことには話しにならん。

俺は決めた。

水晶は打っ壊す、やってやるぜ!!

奈落堕としに付いては虹のゲオルギウスに任せる。

そして、あわよくば6つの虚無の欠片は俺がいただいて、

劫の眼はリゼットにプレゼントしてやるぜ!!


そんな訳で俺は意気揚々とリゼットの元へと向った。








あとがき

こんな感じで物語りは進み始めました。

やはり三番がいいという意見が多かったので、自分的にもそれがいいと思います。

どんな結末になるかは作者にもわかりません。

しかし、リゼットには死なないで貰おうと思う。

リーゼロッテになるかは今のところ分からないが、恐らくなると思う。

個人的にはリーゼロッテの方が好きです。

しかし、リゼットも捨てがたい、

こうなったら記憶喪失のテンプレで、

二重人格にして見るとか、どうでしょうか?

お、なんとなく書いただけだがなかなかいいアイデヤの気がします。

この二人の同時に性格を再現できる技量が俺に有るかは解らないが、




[11759] リゼット奪取! 姫を連れ去る俺は悪役か?  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/06/25 12:01


現在リゼットの元に向おうとしていたのだが、

世界に揺らぎを感じ、精神を集中させたところ、

どうやらまた主人公勢がこの世界に足を踏み入れたようだ。

いや、引っ張られて来たと言った方が正しいのか?

それにしても何時の間にか結構時間が経っていたんだな、

ここは夜とか昼とかが無いようだから、時間の感覚がかなり曖昧だ。

時計なんてものは全部止まっているし。


まあいい、兎に角今はこれからの行動だ。

いったん書架のウルスラと合流した方がいいのか?

それとも他の奴から虚無の欠片を奪うか?

いや、待て!!

今俺が虚無の欠片を所持するとリゼットに融合される恐れがあるか、

まあ、俺自身が喰われる事は無いだろう。

簡単に喰われる積もりはないし、寧ろ喰う側だ。


今はまだ黒騎士が顕現していない筈だから、

今の内に水晶を砕いて連れ出すのがベストか?

確かに俺は奴らの顕現と名乗りを悠長に待ってやったり聞いてやる義理は無いが、

生で見学できるのは少々魅力的だ。

どうするか?





俺は取り合えず書架のウルスラに合流した。

俺には少々判断が付きかねたから流れに身を任そうかな?

後は臨機応変に対応する。


「これから結界の中心に行くのか?」

「この結界に付いて調べるためにも行かなければならない」


やはり行くことになるのか、

ならばやはり強襲でリゼットを水晶の中から奪取した方がいいな、

このことは書架のウルスラに伝えて置いた方がいいか、

行き成りの行動で背後から撃たれるのも嫌だしな。


「ならば行こう。
先に言って置くがあそこには囚われの少女がいるからな、
俺は強襲を仕掛け少女を助けるから背後から撃つのはやめてくれ」

「……」


ウルスラは鋭い視線で俺に向けてくる。

ただし、俺がそう感じているだけで表情は殆ど変わっていない。


「お前は遠方からじっくり観察してればいい。
俺が少女を奪取したら連中も現れるだろう」

「わかりました。 後方で分析させてもらいます」


こんな感じで俺たちはリゼットの元に向った。 





黒い月の下、水晶柱が建つ神殿の前まで来た俺は、

両手を地に付き、クラウチングスタートの体制で構えた。


「3,2,1、GO!!」


カウントダウンを終えた俺は全速力で駆ける。

狙うは一撃離脱!!

モタモタしてると囲まれてしまうからな、

俺は疾風の如く駆け抜ける。

そのまま一気にリゼットが封じられている水晶の前まで駆け抜ける。


「ッ!? きゃぁぁぁぁあああッ!!!」


頭に響くリゼットの悲鳴を聞きながらも、

そんなことに構うことなく俺は跳躍、

そして拳を振り上げ叩きつける。


「はぁぁぁあああッ!!」


―ピスィィィイイ!!―


「なにぃ!!!」


水晶には皹が入っただけで砕けはしなかった。

くぅっ、予想より硬い!!

手加減し過ぎたかっ!?

流石に簡単に砕けるようには創っていないかっ!!


すぐに構え直した俺は、


「魔闘術奥義!! 魔神破砕撃!!」


―ビィキッ、パァァァアアン!!!―


今度こそ罅割れた水晶を粉々に砕いた。

砕かれた水晶の破片と共に宙を舞ったリゼットを、

俺は跳躍してキャッチ、そのまま離脱しようとしたが、

背後から迫り来る気配を感じ、

身を捻り斬撃をギリギリかわした。

俺は体制を崩しながらも何とか着地に成功した。

しかし、俺はいつの間にか周囲を囲まれていた。


俺が抱き抱えるリゼットは水晶を砕いた時に気絶してしまったようだ。

今は好都合だ、出来れば暫くはそのまま眠っていて欲しい。

リゼットをしっかり脇に抱え直し、俺は6人の黒騎士と対峙した。


解っているとは思うが一応言って置く。

俺を囲んでいる6人の黒騎士は、

聖骨のセバスティアヌスこと、憤怒のイラ。

龍骸のイレーネこと、嫉妬のインヴィディア。

書架のベネディクトゥスこと、怠惰のアケディア。

戦槌のサムソンこと、暴食のグラ。

草壁 操こと、傲慢のスペルビア。

そして、虹のゲオルギウスこと、強欲のアワリティア。


「ふっ、勢揃いだな、ここから俺を逃がすつもりは無いという訳か」


俺は不敵な笑み、って言っても仮面で顔なんて判らないと思うが、

そんな雰囲気を出しながら連中の大将、

アワリティアに視線を向ける。


「貴様が何者かは知らぬが、その魔女を逃がす訳にはいかん!!」


俺を指差し吼えるアワリティア、

その叫びと共に一斉に俺に襲い掛かってくる。



提灯のような姿をしたアケディアが先制に魔術を放ってくる。

イーガスは体を屈めて前へと前進することで避ける。

そこに横から狙って振るわれるインヴィディアの蛇剣を、

イーガスはリゼットを左手で担ぎ、右手を使って弾き跳ばす。

そこに追撃で振り下ろされるグラのクリストフォロの戦鎚を足で蹴り上げ受け止める。

戦鎚を受け止めることでイーガスの居る地面に皹が入り陥没したが、


「オオオオォォァッ!!!」


イーガスは咆哮を上げ、戦鎚を押し上げ蹴り跳ばす。

足を振り上げたまま体制の整っていないイーガスに、一息に接近し正拳突きを放つイラ。

イーガスは正拳突きを避けることなく右手で受け止め、


「ガァッハアアア!!」


挟むように背後から仕掛けようとしていたスペルビアに投げ飛ばす。

しかし、スペルビアは難無くかわして踏み込み、イーガスに斬撃を繰り出す。

イーガスも右手で斬撃を弾き、半身になってかわしながら応戦するが、


「クッソォッ!!」


スペルビアの繰り出す二刀はすぐに捌き切れなくなる。

イーガスは戦闘中、魔闘術で全身に圧縮した気の鎧を常に纏っているが、

スペルビアの刀はこの鎧を切り裂いてくる。

スペルビアは一気に畳み掛けようとするが、


「魔闘術奥義! 魔神崩山脚!!」


イーガスは強引に足を振り上げ振り落とす。

足場を踏み砕き周辺一帯を吹き飛ばす。

視界は一瞬瓦礫と煙に覆われるが、それもすぐに晴れる。

イーガスの正面にはスペルビアが悠然と佇んでいる。

スペルビアはイーガスが足を振り下ろす時には後方に飛び退きすでに離脱していた。

そしてイーガスの周りには距離を置いてはいるが、依然変わらず6人の黒騎士が取り囲んでいる。

しかし、アワリティアだけは最初に現れた場所、

リゼットが封じられていた水晶が存在していた場所から動いてはいない。

そしてイーガスはこの状況を打破する為に己が知を持って全力で思考する。



さて今の状況、少々まずいぞ。

先の手合わせでわかったが、連中の実力は予想以上だ。

唯一の救いは黒騎士達は殆ど連携が出来ていない。

それぞれが個々に襲い掛かって来ているのと差して換わらない。

恐らくラルヴァに侵食されている影響だろうが、付け入る隙は十分に有ると見た。

使徒四人の実力も今のところ同時に来られてもギリギリ何とかなるレベルだ。

しかし、スペルビア、奴だけは違う!

初めから解っていた事だが、奴だけは他とは別格だ!!

とてもリゼットを庇いながら戦えるような奴ではない。

そしてアワリティア、奴がなぜ動かんのかは俺には解らない。

自らが動くまでも無いと思っているのか?

仲間を信頼しているのか?

それとも何か動けない理由があるのか?

兎に角、奴が動かんのは好都合、今の内に状況を打破する。

逃げるだけなら難しくない、このくらい余裕でやってやる。


「うっぅ……」

「あ、ちょっと、もう少し寝ててくれるとうれしいな…?」 


まずい、リゼットが起きそうだ。

今起きられると色々ややこしいことになるような?


「ぁっ、……こ、ここは?」


リゼットは周囲に見回したリゼットは黒騎士たちを見て恐怖の顔を浮かべるが、

自分の足が地に付いてないことに気付いたらしく、その顔を上げて俺の目と合った。

ちょ、ちょっと気まずい。 (汗汗 (;´Д`A ```


「ど、どうも……、ちょっと取り込み中だから大人しくしていてくれると嬉しいかな?」

「いや……いやぁぁぁぁぁああああッ!!!」


ががーん!!

顔を合わせただけで女の子に叫ばれた。

絹を裂くような悲鳴が頭に響くように木魂して響き渡る。

かなりショックだ、テンションがかなり落ちる。

それはもう具体的には地の底突き抜け反対側に出るくらいに、

しかしこんなところで呆然とする訳にはいかん。


「リゼット!! 瞳と口を閉じていろっ!!」

「ッ!!?」


俺の叫び声に、リゼットは体をビックっと震わせて黙ったから、

俺は速攻リゼットを上空に放り上げた。

そして俺はいつものように、お約束の如く、両手を額に翳して、


「太陽拳!!」


全身から閃光を放ち敵の視界を塞いだ。

俺はすぐに跳躍、リゼットを空中でキャッチ!!

そのまま敵の頭上を飛び越え離脱した。

しかし、敵もさることながらひるんだのは数秒で、すぐに追って来た。



太陽拳、便利な技ではあるんだが、初見でしか通用しないし、

両手で無いと使えないと、結構欠点もある。

おまけに敵が高実力者になってくるとあまり通じない奴もいるんだよな……

スペルビアはすぐに追って来ているし、今回奴も最初から本気みたいだな。


俺は後方に気を配りながら前方に眼を向けるが、


「!!?」


前方、出入り口に見える少年少女が約三名。

はっ!? どう見ても主人公とヒロイン二人。

よりによってこんな所で鉢合わせるとは連中無茶苦茶運が悪いんじゃないのか?

どうする、このまま飛び越えるか?

待て、ここでこいつらが殺されると色々問題だ。

こいつらにリゼットを預けて俺がスペルビアを足止めする。

却下だ、そんなことして融合されたら事態が更に混沌なことになる。

ああ、もうどうすりゃいいんだ!!


俺は立ち止まり後方に向って技を放つ。


「魔闘術奥義!! 地獄破山撃!!」


前面一帯を吹き飛ばす。

更にスペルビアの気配を感じる方に右手から気弾を、マシンガン如く撃ちまくる。

牽制の意味を兼ねて近付けないように連射で撃ちまくる。


「おい餓鬼共!! こっちはメッチャ取り込み中だ!!
巻き込まれたくなかったらとっとと失せろッ!!!」


俺は背を向けて餓鬼共に激怒して言い放つ。

結局リゼットを抱えたまま応戦することにした。

くぅっ、ますます難度が上がったぞ!!


「た、助けてくださいっ!!」


おまけにリゼットが助けを求めるし、事情を知らないっていいな! 怒怒怒!

中途半端に知っているといろいろ大変だぞ!!


「馬鹿やろう! 相手見て物言え!! んな餓鬼が連中の相手になるかぁっ!!?」


リゼットが俺の叫びに驚いて身を竦ませる。

何かもう完全に余裕が無くなってきたぞ。

俺が少女に対してこんな暴言を吐くとは、

祖父ちゃんの遺言で女の子には優しくしろと言われていたのに、

俺自身の叙事にも引っ掛かるぞ!!


なんて考えてる内にスペルビアは俺の弾幕を抜けてきた。

俺は右腕で応戦したが、やはり片腕で防ぎ切れる物ではない!!


「チクショーッ!!」


一刀で右腕を弾き、残り一刀が止めを刺すために俺に迫り来る。

スペルビアの刃がゆっくりと俺に迫り来る。

視界はモノクロに見える。

迫り来る刀がやけにゆっくり見えるがこれは単なる錯覚だ。

振るわれる刀より速く俺が思考しているに過ぎない。

その証拠に弾かれた右腕はいまだに反動で動かん。

左手はリゼットを抱えていて使えない。

万事休すか~っ!!





イーガス絶体絶命のピンチ!!

果たしてこのピンチをどう乗り切るのか!?

次回に続く!!








あとがき

イーガスがかなりピンチです。

事態は大変なことになってきましたが、

果たしてどうなるのか?

結構ご都合主義な展開も許して欲しいと思います。

それでは次回をお楽しみに、




[11759] 黒騎士 VS 黒騎士  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/07/03 15:27


―ガキィィィン!!―


「ラァァァァアアア!!!」


気合一閃、俺はスペルビアを弾き飛ばす。

今のは正直かなり危なかった。

もし俺に尾が無かったら、左手で受ける為にリゼットを抛り飛ばすことになっていた。

そう、俺はスペルビアの刀をこのバージョンアップした尻尾で受け止めたっ!

この尻尾がもしサルの尻尾のままだったら切られていたな。

俺自身、今の今まで自分に尻尾があることを忘れていたぜ!!


俺とスペルビアは再び間合いを取って対峙したが、他の黒騎士もすぐに追いついて来る。

さてさて、ますます不味くなってきたな。

ここはスーパーサイヤ人になるしかないのか?

しかし、果たして今の俺に変身できるのか?

実のところ俺はこの体になってからまだ一度も変身していない。

俺はすでに(見た目)サイヤ人では無くなっているし、

こう、出来るって言う手応えというか、確信が持てない。

仮に出来たとして、ちゃんとパワーアップするのかどうかすらも判らない。

見た目が変わるだけなんてのはかっこ悪すぎる。

まあ、見た目がかっこよくなれば俺のテンションは上がるから、

パワーアップに繋がるかもしれないが、

ぶっつけ本番でやるしかないのか?

俺としては序盤から使いたくは無いのだが、

切り札ってのはマジここぞって時に使いたい!!


だがしかし、今現在そんなことを気にしている余裕はあまり無い。

流石の俺様も餓鬼4人のお守りをしながら戦うのはかなり厳しい。

こうなったら新しく手に入れた力を使ってみるか、

まったく練習などしていないが、ここはぶっつけ本番でやってやるかっ!?

っと俺は考えを巡らせていたのだが、


「??」


スペルビアの視線が俺から僅かにずれている?

俺の後方にいるのは餓鬼どもが3人、

そういえばさっき、五宝召喚の詠唱が聞こえてきたような?

っという事はスペルビアが見ているのは草壁美鈴か?


「面倒臭くなってきた、おい餓鬼どもマジで逃げた方がいいぜ」


俺は背を向けながら餓鬼どもに声を掛けた。


「何だ……貴様たち、いったい何者だ……」


背後の美鈴が背に問い掛けてきたが、

どうやらゆっくり応えている時間は無さそうだから、


「そうだな、少なくとも俺は唯の通りすがりだ……」


っとだけ応えさせて貰った。

実際俺にはこんなところでこいつらと出くわす予定はまったく無かった。

俺が唯忘れていただけかもしれないけど、


そうこうしている内に他の黒騎士が追いついたようだ。


「虚無の欠片どもが集まって来たか、やはりここから逃がす訳にはいかない」

「貴様が何者であろうと、我らの使命はこの地に集い者たちを殲滅することのみッ!!」


追いついて来た黒騎士、アケディアとイラが叫ぶ。


「面白い、殺れるものなら殺ってみろッ!!
ガアアアアアアアァァアアアッ!!!」


俺は咆哮を上げ、身の内に溜めた気と闇精霊・ラルヴァを開放し始める。

地鳴りが鳴り響き、大気が震え始める。

俺の威圧感は今までの数倍に跳ね上がっているだろう。

俺自身、身の内のラルヴァの力を全開放するのは初めてだ。

自分でやっといてなんだが、まるで全身から瘴気が噴出しているようだ。

普通の人間なら触れただけでも死ぬかもしれない。

後ろの三人が脅えているのが判るし、リゼットからも震えているのが伝わってくる。


「心配するな、お前のことは俺が護ってやる」


俺はリゼットに小声で囁いてやる。

リゼットから震えの他に戸惑いが俺に伝わってくる。

俺は言ってから口説いているみたいだと気付いて少し後悔した。


「ほう…、なかなかの力だ……」


スペルビアから感心するような感じが伝わってくる。

まるで心地よい風に当たっているかのように、俺から溢れでる力を受け流している。

ひるむ様子などまったく見られない。

他の黒騎士にも同様、やはり並ではないな、


「はあああぁぁぁぁ……」


俺は徐々に呼吸を整え、噴出す闇精霊・ラルヴァを押さえ込み、

体の表面に纏い圧縮していく。

やはり俺はラルヴァの力を制御できている。

初めての力を行き成り使いこなすことが出来るとは、

やはり俺は天才か!?

俺には行き成り目覚めた力を使いこなせるような主人公補正があるッ!!


なんて事はない。

普段からの修行の成果だな、

この自称用心深い俺様が、まったく練習などしていない力など、

ぶっつけ本番で使う訳が無いだろう。

そんなん使う時は、後が無いほどピンチの時か、その場にノリと勢いが在る時だけだッ!!


俺はこの世界に来て、この力に気付いた時から、この力を使いこなせるように修行してきた。

そして心を静め、力を制御できるように精神修行もしてきた。

この全身を苛む不快な苦痛に耐え抜いたのだ!

やはり力を使いこなすにはそれなりの修練が必要なのだ。

そんな何処かの主人公みたいに得体の知れん力とか目覚めた能力、

覚醒した異能なんかを行き成り本番でバカスカ扱えるかッ!!

羨ましいぞッ!!

っとかなり話がそれたな、兎に角、俺は修練を怠ることは無かったのだ。

この力を使いこなせるよう少しずつでも修練した。

流石にこれだけ全力で開放したのは初めてだが、暫くは大丈夫だろう。



「その程度の力で我らが怖気付くと思ったかっ!! ――――」


アケディアから声にならぬような声が響いてくる。

その瞬間、目の前に光が円状に輝き文字や記号を形作り、巨大な魔法陣が出現する。

そしてその中心には光が収束していく。


この声、魔術詠唱…か?

そしてこの力、まとめて吹き飛ばす気か、


「させない! 火焔呪、急々如律令ッ!」


後方の美鈴が素早く印を組み炎を放つが、

更に展開された別の魔法陣が放たれた炎を消し飛ばす。


「――ッ!?」

「貴様も術者か、だがこの程度の術ではこのアケディアに傷一つ負わせることはできない。
さあ、消え去るがいいぃぃ!」


アケディアが魔方陣から撃ち放った光の奔流が迫り来るが、


「消え去るのは貴様の方だ、魔闘術奥義! 魔神烈光殺!!」


俺は拳に圧縮した力を撃ち放ち、

アケディアの魔術を正面から相殺、


「馬鹿なあああ!?」


障壁も間に合わず吹き飛ばされるアケディア、


「おのれぇ、貴様ッ!!」


仲間がやられたことに対して憤怒し、突っ込むイラ、俺に対して正面から拳を打ち込む。

それに対し、真正面から更にもう一発、俺は拳に拳を打ち込だッ!


「ハアアアァァァッ!!」


拳同士の打ち合いで大気が弾け飛ぶ音、

そして衝撃が周囲に響き広がるが、


「ぐぅッ!!」


俺が打ち勝ち、イラの拳を砕き、イラを打っ飛ばす!!

次に俺はスペルビアに視線を向けるが、

奴は俺を無視して、駆たちの方に向っていた。

しかも、どうやら駆たちはスペルビアの気に呑まれているらしく、

殆ど身動きできないでいるようだった。

美鈴は辛うじで二人の前に立ち、剣を構えてはいるが、

あんなんでは容易く斬られてしまう。

ゆかは駆の後ろですでに気絶して倒れてしまっている。

駆は何とかゆかを護るように立ちはだかり、今だ意識を保っているようだ。

女の為に体を張るとは、少々感心するな、


この距離ではすでに間に合わない俺は、美鈴の傍に瞬間移動で跳躍、

尻尾で美鈴を後方に弾き飛ばし、右腕でスペルビアの刀を受け止める。


「!?」


そして至近距離からスペルビアを気合砲で弾き飛ばす。


「ハァッ!!」

「くッ!」


スペルビアは後方に跳んで威力を殺しながら下がる。

もっとも、俺の気合砲(衝撃波)は直撃したとしても、たいしたダメージにならないと思う。

俺は一度仕切り直すためにも間合いを離し、駆の傍まで下がる。

俺とスペルビアは再び距離を離して対峙し、再び動き出そうとした時、


「なにぃ!?」


世界が静止するような感覚が走り抜ける。


ちょっと待てッ!!

こんないいところで終わりか!?

ここからが俺の見せ場だろうに、っていうより後ろの奴らだけ逃げるのかッ!!?


「ちょっち待てッ!」


俺は咄嗟に駆の肩を掴んでしまったのだが、

次の瞬間には世界が罅割れ、硝子の様に砕け散った。


「はぁッ!?」


周囲には人の波、何事も無いかのように通り過ぎていく人達……って、

まずいッ!!

俺はさっさと駆から手を離し、

気配を殺して素早く人が認識できるか出来ないかぐらいの速さで離脱。

それはもう某21の少年の如く脇目も振らずに逃走した。










side 皐月 駆



「ここは……?」


ランドマークタワーの地上階、ショッピングモール『アヤナス』

周囲には何人も人がいたが俺たちに驚くことも無く、通り過ぎていく。

まるで今までのことがすべて幻想だったかのような平穏。

俺たちが突然現れたことに対しても、誰一人気付いた様子は無いようだ…。

俺は暫くの間、呆然としてしまったが、


「ゆか…、ゆかッ!!」


倒れているゆかに気付き、抱き起こして肩を揺さぶるが、

肩を手で押さえられ止められる。


「皐月くん、あまり揺らさない方がいい」

「あ、はい…」


肩に手を掛け止めてくれたのは草壁先輩だった。

先輩の表情や声は疲れ果て、肩が僅かに戦慄せている。

それは殺されかけた恐怖からか、成す術も無かった自身に対する怒りからなのか、


「君は…大丈夫なのか…、眼帯から血が出ているぞ」


先輩に言われて眼帯の下、頬に手を当てる。

手が粘着くように濡れる感触、俺の手は真っ赤な血と混じる汗に濡れていた。

言われて始めて気が付いた。

俺の右目からはかなりの血が流れていたようだ。

あの黒騎士が現れ、重圧な殺気に押し潰されそうになった時、

右目が抉れ、刃に貫かれ、穴が開くかのように響いた激痛。

身動きすら出来なかった俺に頭を掻き回すかのように襲った苦痛。

しかし、この激痛や苦痛が無ければゆかと同じように気絶していただろう。

あの痛みも今は右目の奥に鈍い鎮痛が僅かにする程度。


あの時、眼帯越しの右目から見えた光景。

この視えるはずの右目から見えた光景は、いったいなんだったのか、

深く考え込みそうになった俺の頬に、何かが触れる感触。

気付いた時には先輩がハンカチで頬を流れる血を拭いてくれていた。


「あっ、ありがとうございます」


少し気恥ずかしくなりながらも礼を言う。


「いや、気にしなくていい。
それより、取り合えずここから移動しよう」


周囲を見回しながら声を掛ける先輩。

その言葉で俺も気付いた、俺たちの周りに人が集まって来ている。

俺もこのままここに留まるのはよくないと思い先輩に頷く。

ゆかを背中に背負い、俺たちは『アヤナス』から外に出た。

そして頭上を振り仰いだ俺の目には、

あの黒い月が以前と同じように厳然と存在していた……。










あとがき

イーガス側だけでは話が掴みにくいと思いまして、

主人公側からも少し話を進めたいと思います。

主人公サイドは原作と被るところが多いと思いますが、

すいません作者がヘボいんです。

どこまで出来るか判りませんががんばりたいと思います。

後、作者はリゼットを残すかリーゼロッテに成るか決めかねています。

提案としては、


1、リゼットのまま

2、リーゼロッテ様

3、二重人格にしてしまう。

4、デジモンの如くジョグレスしてオリキャラにする。

5、俺は欲張りだから某漫画の如く二人に分けて、二人ともいただく。


こんな感じです。

それではご意見・ご感想お待ちしています。




[11759] 隠密行動の後(のち)、ただいま潜伏中  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/07/10 21:35

俺たちは一刻も早くあの場所から立ち去りたくて、綾女ヶ丘方面を目指し歩いていた。

そして、葦原大橋の袂から綾女ヶ丘公園へと入る。

ゆかを近くのベンチに下ろし、ようやく人心地ついた気分になれた。


「皐月くん……すまなかった」


そんな時、先輩が俺に謝ってきた。


「いきなりどうしたんですか」

「私は君たちに謝らねばならない。
あの時奴らが現れた段階で、有無を言わさずあの場から君たちを逃がすべきだったのに……
やつらの気に呑まれて何も出来なかったとは……本当にすまない」


草壁先輩は悔しそうに唇を噛んで俺に向き直るとそう言った。


「それは……先輩の謝ることじゃないですよ」


例え草壁先輩が陰陽師だとしても、あの恐ろしい敵たちには勝てるとは思えない。

特に初めに姿を見せた、少女を抱えた黒い騎士みたいな奴と、

次に現れた小柄な二刀使いの奴は、後に現れた二人よりも明らかに次元が違った。

いや、先に姿を見せた二人の印象が強すぎて、後から現れた二人が霞んで見えたほどだ。


「あの黒い騎士みたいなやつらは、何者だったんですか?」


先輩の苦々しい表情を見る限り、黒い月と同じく、正体不明の何か。


「私にもわからないが……
彷徨い出た闇精霊(ラルヴァ)などとは比較にならぬほど、
強く括られた邪悪な存在だった。
しかも、人語を解し、術を使うものまでいる……」


群れなす闇精霊(ラルヴァ)を一蹴するほどの実力を持つ草壁先輩の術が、

いとも簡単に防がれた。

そして更に強力な術を撃ってきた。


「けど、最初に現れた奴は後から現れた連中と敵対しているようでしたよ」

「確かにあいつは抱えている少女を護っているようだった。
どのような意図があったのかはわからないが、私たちのことも助けてくれた」


最初に現れた奴が敵か味方かまではわからないが俺たちを助けてくれた。

あいつがいなければ俺たちは間違いなく死んでいた。


「あいつらが結界の謎を解く鍵だとは思うが、
何とか見つけ出して話を聞けるといいのだが……」


草壁先輩は考え込みながらそう呟いた。


「話を聞くって……」

「君は気付かなかったかもしれないが、
最初に現れた奴は、私たちと同じようにこちら側に来ている」


それはあの恐ろしい力を持った黒騎士がこの世界に居るということなのか、

謎が謎を呼び混迷の度合いを濃くしていく中、

俺たちの未来はいったいどこに導かれていくのか、

それは、誰も知る由はなかった。










side イーガス


『アヤナス』から急いで逃走をはかった俺様は、

廻り巡って、ただいま城砦跡の雑木林に潜伏中。

ここにはかつて他国からの侵略を監視するために間宮氏が建てた城砦があったらしいが、

第二次大戦以降に、葦原川を含めここらいったいを開発した際に整えられ、

現在は石垣だけが名残に残る雑木林になっている。

ここは原作で駆と美鈴が秘密の鍛錬していた場所、

詰り、美鈴さん一押しのお気に入りの場所、恐らく。


ここに巡ってくるまで大変な苦労をした。

最初は人通りの少ない路地裏に避難しのだが、

俺は兎も角、リゼットをいつまでもこんなところに居させる訳にもいかず移動。

次に訪れたのが、どっかのビルの屋上にある給水搭の上、

しかし、この場所、人が来る事はないが、周りから目撃される可能性があるので断念。

ここ新綾女、発展途上の都市だけに建設途中で放棄されたビルや、

廃墟になっている建物も早々見つからず、綾女ヶ丘の方にまで流れ、

最終的にここに落ち着いた。


そして今現在俺が何をしているかというと、

手持ちの文献を片っ端から読み漁っている。

何故俺が今そんなことをしているかというと、人の姿に戻れない……

今の俺は人の姿に成れないッ!!

どうがんばっても成れなかった。

まあ、俺の肉体はとっくの昔に滅んでいるし、

この姿にもすでに馴染んでいるから仕方無いかもしれないが、このままでは目立つ。

紅い夜の世界に居る内はよかったが、

この黒い甲冑姿で往来を歩いたら間違いなく通報されてしまう。

捕まる事は有り得ないと思うが、動き辛く成ってしまう。

そんな訳で俺はこの状態をどうにかするべく文献を漁っている。

仮に方法が見つかったとして俺に扱えるかは判らないが、何とかするしかないだろう。


おっ!

こいつは鬼封じの術か、

草壁の一族はその身に流れる血に、鬼を封じ力に変えて悪鬼を調伏してきた。

正に、毒をもって毒を制してきた一族だ。

草壁は没落し、力を失いつつあると聞いていたから、

封印の術自体が失われたと勝手に思っていたのだが、

こんなところに記されていたのか、これはなかなか遣えそうだ。



それにしても何で俺たちがこちら側の世界に飛ばされたんだ?

理由がまったく解らん。

世界間の移動はスペルビアもやっていたから出来るのだろうが、

そんなことは余程の術者でないと出来ないはずだ。

まあ、俺は今までに何度も世界を超えているから、

出来ないこともないのかもしれないし、駆に引き摺られただけかもしれない。

ひょっとしたら、俺が水晶を砕いたのが原因かもしれない。

元々あの世界(赤い夜)に主人公達が集まっていたのは、

リゼットの持つ虚無の欠片に引っ張られて来ていた訳だから、

今度は向こうの欠片にこっちの欠片が引かれたのかもしれない。

欠片の数は向こうの方が多い訳だし、

しかしだ、主人公達がこちら側の世界に戻れていた理由は、

アワリティアがリーゼロッテの力を封印していたのが理由ではなかったか?

そうだとしたら、水晶の封印を砕いたのだから、

紅い夜の世界から戻ることは出来ないのではないか?

うむ、解らん。

推測に推測を重ねても、この世界の理すら知らん俺様には、

答えなぞ出るはずも無い。

頭を使わず腐らせる積もりは無いが、

無意味なことを考え続けるのも不利益、時間の無駄だ。

例え無限の時間が在ろうと時は有意義に遣うべきだ。


「あ、あの……」


そんな時リゼットが脅えながら声を掛けてきた。

そういえばここに来てからずっと放置したままだった。

悪いことをしたな、っていうかよく逃げ出さなかったな、

これだけ不気味な西洋甲冑?を纏った奴といるなんて、普通はできんだろうに、

常人なら間違いなく逃げる。

因みに俺の具体的な姿はアワリティアとイラを足して2で割って、

インウィディアの蛇剣を腰に繋げたような姿だ、残念ながらマントはない。

っと思考がそれたな、


「ああ、すまない。 少々考え事をしていた。
腹が減ったのか? お菓子ならば手持ちにあるが、何か食べるか?」

「いえ、…そうではなくて、その……」


な、なんだ?

何か言いたいことがあるのは判るんだが、何が言いたいのかは判らん。

いったい何を言いたいのか?


「喉が渇いたのか? 水は無いが飲み物なら有るぞ」

「い、いえ……違います」


う~ん? これも違うのか、いったいなんだ?

ま、まさか、催しているとかッ! は無いな、

仮にそうだったとしても俺は口にはしないぞ、最低限のことは弁えている積もりだ。

俺は腕を組み頭を捻る。

こうなったら向こうから答えてくれるのを待つしかないのか?

俺は頭を更に捻りながら時を待った。


「貴方は……何者…なんですか?」

「おおっ!」  ―ポン―


俺は手を叩いて声を上げた。

リゼットは俺の動作にビクッと震えていたが、そんなに怖がらんでもいいだろう。

見ている分には小動物みたいで可愛いが、

いちいち脅えられると、凹む。

しかし、そういえば俺はリゼットの事を一方的に知っていたが、

俺自身は自分の名前すら名乗った覚えは無い。


「すまない。 
そういえば名乗っていなかったな、俺の名前は……」

「??」


あれ? そういえば俺の名前ってイーガスでいいのだろうか、

全然姿とか変わってしまっているし、人の姿にも戻れない訳だし、

いや、サイヤ人も尻尾があるから人かどうか怪しいが、

まぁいいか、

ウルスラにもイーガスって名乗ったしな、

今はこのままでいいか、


「うん、俺の名はイーガスだ。
良ければ君の名前も聞かせてくれ」

「…私の名前はリゼット、
リゼット・ヴェルトール」


リゼットは戸惑いながらも答えてくれた。

うん、良かった良かった。

これで一歩前進だな、やはりコミュニケーションの大事なのは会話だな。


「ではリゼット、聞きたいことを言ってくれ、出来うる限り答えよう」


俺自身解説キャラには向いてないと思うんだがな、

この場に他の人間がいない以上、仕方がないだろう。

リゼットは意を決して、という感じで俺に声を掛ける。


「貴方は…悪魔…ではないのですか?」


あ、悪魔ね。

予想はしてたが、えらい言われようだ。

まあ、仕方ないかもしれんが、


「そうだな、悪魔というよりは、俺は亡霊だな」

「亡…霊…」


リゼットは脅えながらゆっくりと後ずさった。


「そう脅えるな、別に捕って喰うつもりはない」


流石の俺も人間を喰ったりは……余程のことがないかぎり無いと思う。

「若い少女の肉が好みだ」とか言ってバリバリどこぞの鬼みたいに喰うのも、

少々面白そうではあるが、そこまで人間辞めてないと思いたい。


「確かに俺はすでに何度か死んではいるし、
この身はすでに人ではなくなっているが、自分の意思がぶれた事など……
結構あるかもしれないが、俺の意志がぶれた事など微塵もないッ! たぶん。
俺は俺だッ!! っと断言できる」


リーゼロッテは器に宿る魂は永劫不変ではなく、

老い、淀み、腐り、干乾びる。

人の身ならば高々百年。

刻の重みに耐え切れなくなった身体が朽ち果て、

肉体(ソーマ)は土に還り、魂(プシュケー)は霧散し、霊(プネウマ)は新たな生へと巡る。

不死である自らの魂は、『人でない何か』に変質している。


などと語っていたが、人を人たらしめているのは自らの意志ッ!

魂が永劫不変でないのは俺も同感だ。

魂なんて物は流れ移ろい逝くものだろう。

俺は例え自らの魂が、『人でない何か』に変質しても全く気にしないぜ。

って言うより今更気にすることではないな。


リゼットはどこか呆然としてしまっている。


「なんだ? どうした?」

「…いえ、何でもありません」

「そうか…」


何か俯いてしまったが、どうしたんだろうな?

何か、思うことでも有ったのか?


「それじゃあ、他に聞きたいことは?」

「………」


沈黙、って事はもうないのか?


「貴方は私のことを知っているんですか?」

「直接の面識は無いが、少しは…な……」


残念ながら俺はリゼットに付いて殆ど何も知らない。

俺が僅かに知ってることといえば、

確かオクシタニアのベゼルスの生まれってことぐらいかな?

後は『清浄なる者』と呼ばれる真なる神を信仰する宗教者だったらしいとか、

ああ、思い出した。

次の新作ではヒロインに昇格していたはず、ってこれは関係ないな…


「私は自分の名前以外、何も覚えていないんです。
貴方が私のことを知っているのなら、教えてくださいっ!」

「…………」


予想はしていたがこれは難しい質問だ。

俺が今知っていることを喋るのは色々とまずい気がする。

第一俺が知っているのはリゼットではなく、

リーゼロッテのことになってくる訳だから、余計話す訳にはいかん。

少々ありきたりな台詞になるが、仕方ない。


「俺から話すことは出来ない。
それは自分自身で思い出すべきことだろうし、刻が来ればいずれ思い出すだろう」


そう、刻が来れば、例え拒絶しても思い出すことになるだろう。

例え俺が干渉しようとも、恐らく刻限を先伸ばすことは出来まい。

いや、この身と魂を賭ければ或いは何とかなるかもしれないが、

今はまだその時ではない。

命が惜しい訳ではないが、

ここで退場するのはいくらなんでも無責任すぎるだろう。

俺にはまだ成さねばならん事があるのだ。


「俺から出来るアドバイスは、強い意志を持つこと、
己が己であることを確か足る物にする強き自我ッ!!
これさえ確かならば何が有ろうと大丈夫だ」


リゼットは俺のこと半信半疑ながらも聞き入っていたようだ。

これなら柄にも無く熱く語った甲斐があるというものだ。

是非無駄にならないで欲しい。

俺は最後にものを言うのは意志力、魂の強さだと思っている。

前のマスター、イリヤはその意志の力が強かったが、

目の前の少女は少々頼りない。

はてさてこれからどうなるのかな?










あとがき

物語が殆ど進まない内に、一話が終わってしまった。

イーガスにはこれから更にがんばってもらおうと思う。

それでは次回に続くッ!!





[11759] 相手が美少女でも女性の買い物に付き合うオトコは大変だ  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/08/06 20:03


さて、俺が今何をしているかというと、街中をリゼットと一緒に歩いている。

現在新綾女駅前を抜けて『アヤナス』に買い物をしに行くところだ。

今のリゼットの格好はイリヤの紫の上着を着てもらっている。

サイズは少々小さめで上着だから何とか着れるレベルだ。

まだ秋で少々暑いだろうが、あの白いドレス姿では目立ちすぎる。

もっとも、本人の容姿の正で、目立つこと事態はどちらにしろ避けられなかったようだ。

……さっさと新しい服を買ってしまわないとな、


因みに俺の姿だが胸元にお札が“バン”っと張ってある。

何とか俺に使えるレベルの術を探した結果がこれだッ!

このお札には周りの認識を誤魔化す力がある。

簡易結界みたいなもので、周りの人間は特に俺の事を気にする奴はいないだろう。

今の俺は例え視界に移ったとしても、周囲を歩く人間と同じく有象無象。

例え俺から話し掛けても特に問題無し、

暫くすればどんな奴だったか思いだせんぐらい印象に残らんだろう。

まあ、その筋の奴が見たら一発で判るだろうし、

そうでなかったとしても違和感があるだろう。

因みにお札は俺お手製、昨日一日掛けて完成させた。

お札を作る際に血で印を描こうとして、流した血が真っ黒だったのが少しショックだった。

お札は最初、まるでキョンシーみたいに額に“でん”と貼ってあった。

そして、徹夜でテンションを上げた俺は、完成したお札をリゼットに自慢していたのだが、

お札の位置を指摘されてしまい、胸元に貼り直した。

この時の空気はなかなかに痛かった、あまり思い出したくない。


結局昨晩はリゼットに野宿をさせてしまった。

不幸中の幸いは空が晴れていて夜空が綺麗だったことと、

十分布団代わりになるジャケットやコートを俺が所持していたことだ。

リゼットはよく眠れたらしく、たいして気にしていなかったが、

今日は何とか寝床を確保したいと思う。

当ては有るような無いような、どうしようかね?


そして、手持ちの金にもそれほど余裕が無い、暫くは大丈夫だが限りがある。

次に赤い夜が訪れたら、銀行や宝石店に足を運ぼうと思う。

具体的な表現は避けるが、使える物を放って置くのは勿体無いだろう。

使えるものは有効に使うべきだ。

今使っている金も元々平行世界の物だし、別に大丈夫だろう。

札の番号が重複するんじゃないかって、

俺には関係ないな。


俺もリゼットも恐らく飯なんて食べなくても平気なんだろうから、

食費なんて必要ないんだが……

そこに美味そうな物が売っているとついつい衝動買いしたくなるのが人間だ。

そんな訳で今現在も、駅前移動店舗のドネルケバブを軽く5つほど買ってしまった。

一つをリゼットにあげようとしたのだが、


「ごめんなさい。 私、お肉は……」


などと言っている。

無理に食べさそうとは思わないから、残念だが諦める。

そういえば、リーゼロッテは宗教の関係上ベジタリアンだったような?

それなら食えない訳ではないと思うんだが、

それ以前に記憶喪失のはずなんだが、なんとなく覚えているのか?

その割には真っ白いドレスなんかを着ていたが、よくわからん。


とりあえず俺は絶賛食べ歩きをしながら『アヤナス』に向っている。

ヨーグルトソースがかなり美味い、仮面に口があって本当によかった。

次の狙いはドーナツだな、これならリゼットも食べれるだろう。


こんな感じでたどり着いた『アヤナス』ショッピングモールの服飾売り場、

まあ、俺に女性の服の良し悪しなんて分かるはずがないので、

近くの女性店員を捕まえて後を任せる。

どうやらこの女性店員、なかなか商魂たくましい女性であったらしく、

下着から装飾品まで、色々持ってきてリゼットに薦めている。

あの様子では着せ替え人形にされそうだな……

いや、ひょっとしたら最初からそれが目的だったのかもしれない。


そんな様子を眺めながら、ながら俺は朝方の回想に入る。










俺はリゼットが眠る場所から少し離れた雑木林の開けたところ。

まだ日が昇って間もない朝方に、俺は日課になる鍛錬を始めたところだった。

文献を読み耽り、お札製作などで結局徹夜だった俺、

更に鍛錬をするからには、今まで押さえていた力が少なからず漏れる訳で、

気が付けば数人に囲まれておった。

まあ、囲むというよりは様子見のようだ。

なかなかにうまい穏行だが、一度気付かれた時点でアウトだな、

心を落ち着け、精神を統一すれば判る。

数は三人、内一人の気配には覚えがある。


「ウルスラ、出てきたらどうだ」

「………」


俺が視線を向けた方向、

雑木林の中から無言で書架のウルスラが現れた。


「用も無しに俺のところに訪れるお前ではあるまい、何用だ?」

「………」


まだ沈黙を貫くのか、

話せない理由は後ろの二人が原因なのか?

姿は見えないが、大体の予想は付く。

ならばここは俺から話を振る方がいいのか?


「ふむ、このまま睨み合っていても仕方ない。
取り合えず、後ろの二人も出てきたらどうだ?」


暫くした後、警戒しながら出てきたのは、天見 修と紅野 澪の現代魔術師二人。

予想はしていたが、この二人に合うことになるとは思っていなかった。

しかし、紅野 澪が襲い掛かって来なかったのは意外だ。

出会い頭に攻撃してきそうな印象があるんだが、他の二人が止めたのか?

まあいい、とりあえず話を進めるか、


「その手に持つ携帯、お前ら現代魔術師か?」

「「!!」」


二人の顔に緊張が走り今にも仕掛けて来そうな雰囲気になった。

判り切った事ではあるが一応聞いておこうと思ったが、余計警戒されたか?

何とかしないと不味いかな?

俺はこいつらとは初対面だからな、やはりここは自己紹介からいくべきか?


「俺達の事を知っているのか?」


眼鏡の少年、天見 修が俺の問いを質問で返す。

ふむ、現代魔術師の事を知っているのかと聞いているんだな。


「ああ、少しぐらいはな、
俺の名はイーガス、お前らの名は?」

「天見 修だ」

「……紅野 澪よ」


むっちゃ警戒しているようだが、取り敢えずは答えてくれたか、

出来れば穏便に話を進めたいところだ。


「禁書目録聖省(インデックス)に属するウルスラと共に現代魔術師がいるとは、
少々意外ではあるが、まあいいだろう」


最初に言っておく。

俺はトコトンしらばっくれるぞッ!

そうしないと話がややこしくなるし色々まずい気がするからな、

俺のポーカーフェイスを見せてやるぜッ!

素顔なんてものは仮面ですでに無いが、


「貴様らの聞きたいことはある程度わかっている。
俺が何者かって事だろうが、生憎と俺は俺としか答えることは出来んな」

「そんなの何の答えになっていないわっ!」


赤毛で気の強そうな少女、紅野は俺の答えに叫び返す。

どうやら俺の答えがものすごく不満らしい、当然だと自分でも思うけど、

俺は自分が怪しい奴だって自覚しているからな、

それもこれ以上無いくらいの最上級レベルだろう。


しかし、結論から言えばウルスラは兎も角、

天見と紅野に俺は用なんてまったく無いからな、正直早々にお引取り願いたいところだ。

俺は虚ろなる鏡界の方に関わる気は、まったく無かったからな、

まあ、出会ってしまったからには関わるのも吝かではない。

この際、人工翠玉碑も頂いてしまおうかな、

あんまり俺が持っていても使えなさそうだけど、無いよりは有る方がいいだろう。

コレクションとしては上物だろうし。

俺って結構収集癖があるからな、持ち物引継ぎなら珍しいもの集めるのもいいかもなぁ~


などと俺の思考はどんどんずれていっていたが、


「それなら何が目的でこの町に来たんだ?」


前に一歩歩み出た天見に声を掛けられたことで戻ってきた。


さて、俺の目的か、

残念ながらこいつらに正直に答える訳にはいかないな、

なんせ俺のやろうとしてることは世界を敵に回す行為に近いからな、

もっとも俺は一度決めたからにはその程度で怖気付いたりはしない。

俺は必ずリゼット&リーゼロッテを助けて見せるぜ。

どうやれば助けられるか方法が全く思い付かんが、


「そうだな、少女を助けるというのが一番の目的だな」

「少女?」

「向こうで寝ている女の子だ。
言って置くが、可愛いからって手を出すようなら容赦はしないぞ」


俺は後方を親指で指しながら答える。

言葉自体は軽く言ったつもりだが、雰囲気は真剣(マジ)だ。

こういうことはしっかり釘を挿して置かないとな、

向こうも俺の言葉を信じているかどうかなんて判らないし、

多分信じてなんかいないと思うけど、


「……そちらが何もしないなら、こちらも手を出したりはしない」


スルーしたか、


「まあ、俺はお前たちには興味が無いし、争うメリットも無い」

「信用できないわね。 そんな言葉……」


それはそうだろうな、実際興味はあるし、

天見が誰を選ぶかっていう恋愛的な意味で、

俺としては黒芝かなえとくっ付いてくれると面白いが、これは有り得ないからな。

やはり俺個人としては最初に告白した吾妻を応援してやるぞ!


「まあ、言葉を並べるだけで信用を得られるなどとは思っていないさ」


まず見た目から信用できる奴には見えんからな、

無理に信用してもらう必要もないと思うけど、こう敵意を向けられっ放しだと鬱陶しい。

それに、女の子にこれだけ敵意を向けられると気が滅入る。


「俺はお前たちと敵対する意志はないし、お前たちも俺と戦うメリットは無い。
双方不干渉、魔術師としてはこれで十分だろう」


魔術師は本来自分本位の奴が殆どの筈だから、

この約が取れれば、後のことなど気にするものは殆どいないだろう。

まあ、こいつらは例外かもしれないけどな、


「いや、あなたがこの町に住んでいる人達を害するならば戦わざるを得ない」

「俺自身にそんなつもりは無い。
それに一般人に手を出すなどタブーだからな、そのぐらいのマナーは弁えて居る」


もっとも相手はそんなこと気にしてないかもしれないが、

他にもリーゼロッテは世界を滅ぼすつもりだからなぁ~……


「わかった。 一先ずその言葉を信じよう。
ただ、あなたは少女を助けると言った。 何から助けるんだ?」

「なかなか鋭いな……」


こいつらが手を出せるとは思えんが、話すのは不味いだろう。

俺は視線をチラッと二人の後方にいるウルスラに向ける。

俺の視線に気付いたウルスラは僅かに首を横に振る。

他の二人には気付かれないほどの短いやり取り、


「残念だがそいつは教えることが出来ないな、お前たちには関わりの無いことだ。
それに目的はすでに達している」


実際は何も目的が達してない上に問題は山積みなんだがな、

しかも片付ける方法が分からないときている。

全く如何すればいいんだか……


「お前たちが気にすることじゃない」

「……なら次の質問をさせて貰う。
ドッペルゲンガーについて、何か知っているか?」


そのことに付いてか、

ぶっちゃけ黒幕まで知っているんだが、

今俺が喋ってしまうのは些か不味いだろう。

何より、壁に耳あり障子に目あり、周りには俺たち以外の気配など感じないが、

奴がここでの俺たちの会話を盗み聞いている可能性も無きにしも非ず。


ってまずいことに気が付いた。

ここにリゼットことリーゼロッテがいることに気付かれると、奴が殺しに来る可能性がある。

赤い夜の水晶に封印されている内はある意味では安全だったが、

この世界にいるなら奴が手を出すのは容易だろう。

リーゼロッテはすでに『トゥーレ』を除籍されている。

奴の目的の為にはリーゼロッテの存在が邪魔だろうからな、

もっとも迂闊には仕掛けてこないはず。

例え力が分散し記憶を失おうとも欧州最強の魔女、そう簡単には殺せないだろう……たぶん

出来るだけリゼットの傍から離れない様にしないとな、


以上のことから俺の執った選択は、


「ドッペルゲンガー(独: Doppelganger 自己像幻視)は、「生きている人間の霊的な生き写し」を意味する。ドッペルケンガーと発音する場合もまれにある。単純な和訳では「二重の歩く者」となる。

ドイツ語: doppel(ドッペル)とは、二重という意味である。
自分の姿を第三者が違うところで見る、または自分で違う自分を見る現象のことである。自ら自分の「ドッペルゲンガー」現象を体験した場合には、「その者の寿命が尽きる寸前の証」という民間伝承もあり、未確認ながらそのような例が数例あったということで、過去には恐れられていた現象でもある。

ドッペルゲンガーの特徴として、

ドッペルゲンガーの人物は周囲の人間と会話をしない。
本人に関係のある場所に出現する。
等があげられる。

死期が近い人物がドッペルゲンガーを見るという事から、「ドッペルゲンガーを見ると死期が近い」という民間伝承が生まれたとも考えられる。また、自分のドッペルゲンガーを見た人はそのドッペルゲンガーによって殺されるという言い伝えもあるかもしれない。

なお、もしも運悪くドッペルゲンガーに遭遇してしまった場合は、どういう言葉でもいいのでそのドッペルゲンガーを罵倒すれば助かるというが、詳細は不明。

アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンや芥川龍之介、帝政ロシアのエカテリーナ2世等の著名人が、自身のドッペルゲンガーを見たという記録も残されている。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』参照」

「「「………」」」


しらばっくれる事だ!!


「あなた、まさか喧嘩を売ってるんじゃないでしょうね?」


紅野が俺に問いかけてくる。

その声の雰囲気は、今にも爆発しそうな怒気がありあり伝わってくる。


「失礼な、俺はドッペルゲンガーについて知っていることを答えたに過ぎん。
内容を明確にしてから質問しろ。
まあ、大体の事情は把握している。
ウルスラが困っているのであらば手を貸すのも吝かではない。
俺の目的に支障が出ない程度に協力しよう」

「!! 協力してくれるのか?」

「私情を優先させてもらうが、それ以外でなら構わない。
何か判った事があれば連絡しよう」


三人とも俺の言葉の真意を計りかねているのか、困惑している。

実際善意という訳ではないし、隠し事も山ほどあるから仕方が無い。

この件を確実に片付けないといけないという点からも、放って置く訳にも行かないだろう。

この後、向こうは疑惑を抱きながらも協力を了承、解散となった。





「………」


この場に残っているのは、俺とウルスラだけ、

ウルスラは俺の前で沈黙を貫いている。


「ウルスラ、何か用があるのか?」

「……栞、でいい……」

「そうか…」

「何故、私たちに協力する?」

「お前とは一応協力関係にあるからな、もっとも一番の理由は……
可愛い女の子が困っていたら、助けるのが漢(オトコ)だからだ!!」 


栞の顔は、相も変わらず無表情だが、

雰囲気から理解出来ないという感情が感じられる。


「ところで、栞は今どこに住んでいるんだ?」

「今はホテルに宿泊しています」

「紹介してくれないか?」

「………」


俺は現状を四苦八苦、がんばって説明+協力要請+説得。

とりあえず、夕方頃にもう一度会うことになり、

住んでいるホテルの場所だけは教えてもらいました。

少々情けないが、当てにさせてもらうぞ!

これが駄目なら仕方がないから、大きめのテントでも買ってこよう。

リゼットがベット派か敷布団派かが問題だ。

床で寝るのは日本人なら普通だが、

リゼットはフランス人、たぶんベット派だろう。

テントにベットを入れるのは少々辛いかな、

風呂は銭湯に行けばいいよ、リゼットを一人にするのは少々不安だが仕方ない。

お札を付けてれば入っても騒がれないかもしれないが、人として駄目だろ。

お札が濡れたらたら剥がれるかも知れん。

ふむ、雨に降られることもあるかもしれないし、文具や行ってラミネート加工するか、


後は新綾女3丁目、ラブホぐらいしか候補が思いつかん。

ここなら、身元不明でも金だしゃ泊まれるだろう。

いろんな意味で最後の手段にしたい。


なんて考えながら逃避気味な回想終了。





今の俺にはリゼットの眼差しが向けられている。

その眼差しからは助けを求める感情がすごく伝わってくる。

こんな俺に助けを求めるのだから余程のことなのも良く分かる。

って言うか原因は一目見れば一目瞭然。

リゼットの前、試着室にランジェリーショップから女性店員が持ってきた、

色とりどり形様々な下着類が原因だろう。

リゼットに手持ちの下着をそれぞれに解説・説明・特徴なんかを延々話している。

俺にも説明が僅かながらに聞こえてくるが、

ハッキリ言って異界言語、何言ってんのかさっぱりわかんね。

因みに俺とリゼットの距離、約10メートル。


顔を逸らしている俺に、尚も続くリゼットの助けを求める視線。

心なしか目が潤んでいるような気がする。

しかし、そんなことで俺に助けを求められても困るし、

第一、いったいどんな助けを俺に求めてるんだっ!!

俺は溜め息を吐いて、気を重くしながら、

仕方なしにとりあえず、リゼットの下に向うことにした。










あとがき

結局人の姿にはなれませんでした。

イーガスには今回この姿のまま頑張って貰おうと思います。

イーガスとリゼットの軽い日常編。

さて、これから先どうなっていくのかな、

次回に続きます。





[11759] ニックネーム  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/08/19 22:01


いや大変だった、女性の買い物に付き合った経験はほとんどないが、

こんなに疲れることになろうとは……

女性は逞しいなぁ~っとしみじみ思う今日この頃、

もっともリゼットも疲れ果ててヘタっているから、逞しいのはあの女性店員だけか?

因みに今のリゼットの服装はフリルとリボンが軽く付いた白いワンピースだ。

更に余談だが、色違いの黒いワンピースも買った。


それで、現在俺が何をしているかというと『くりくり☆どーなつ』で、

名前からすでに分かると思うが、ドーナツを食べている。

地下に存在しているフードコートには軽食店舗や洋菓子店などが数多くあるが、

その中でもこの『くりくり☆どーなつ』はかなりの評判を誇る有名店舗で、

ここのドーナツ店は開店してからそこそこ経つようだが、いまだに列が出来るほどだ。

俺もドーナツを注文するのに少々待つ事になった。

まあ、俺が注文したドーナツの数もかなりの量だったので、

席に付いてからもそこそこ待つことになった。

注文がアバウトにドーナツ全種三つずつとかだったからな……


そして、ここのドーナツが、甘く甘く美味いこと美味いこと、

特に『オリジナル』のスタンダートな奴がかなり美味い、やはり基本は押さえるべきだな、

こっちのチョコでコーティングされたのもなかなかだ。

そして、チェリードーナツがマジでなかなか美味かった。

本当(マジ)にあったんだな、フカシだと思っていたぜ。

嘘から出た誠か……


しかし、やはり疲れているときは甘いものに限るな、疲れが取れるぜ。

疲れの大半は精神的なものだがら、尚更だ。

リゼットも目の前に山の様に詰まれたドーナツを戸惑いながらも美味しそうに食べている。

まあ、これだけ甘いとのども渇くからな、ドリンクももちろん注文した。

因みに飲み物は2人ともオレンジだ。

まあ、リゼットが初めから全種食えるとは思っていないので、残った分は俺が食べる事にする。

一度手を付け残すのは食材と調理をした人物に対する冒涜!

この大地が育んだ食材の全て、いや、食事や食物と言う概念全てに対する侮辱であるっ!

引いては、地球……ガイアの意思への反逆!! って何か変な電波を受信したっ!




こうやって眺めてるだけでも俺はいいのだが、

ここは親睦を深めるために、会話の一つもしたいと思う。

だが、何を話せばいいのか、俺にはさっぱりわからん。

仕方ない、ここは出たとこ勝負で行くか、


「どうだ、ドーナツは美味いか?」


ここは無難にドーナツの感想から、


「…はい、とても美味しいです」

「そうか、そいつは良かった」


ちょっと、はにかみながらも笑顔で答えてくれた。

しかし、これで会話が終わってしまった。

いや、これは食べている最中に話しかけた俺が悪いな、もう少し待つことにしよう。


しばらく経ってから、リゼットの手が止まった頃に俺はもう一度話しかけた。


「気に入ってくれたようで嬉しいよ」


すこし、口調が変になっているのが自分でも分かるが、

今の俺にはそんな事を気にする余裕は全くないぞ。

第一、俺が女の子に優しくした事なんて生涯でも数えるほどしかなかったぞ。

戦い戦いの連続だった。

サイヤ人になってから、それ以外に全く覚えがない。


「出来ればもう少し親睦を深める為に俺を名前で呼んでくれると嬉しい。
何ならニックネームをつけてくれても構わないぞ!!」


俺ってばまだ一度も名前で呼ばれていないんだわ。

少々テンパってきている様な気がするな、

イリヤ相手ではこんな事にはならなかったから、って言うより俺の周りには気の強い女しかいなかった。


「好きに呼んでくれて構わないぞ、イーガスでもイーさんでもガスさんでも、
何なら“西瓜”というあだ名も甘んじて受け入れよう!」

「え、……えっと…」


リゼットがものすごく戸惑ってるようだ。

当然だな、俺も戸惑っているよ。


「いきなり言われても困るか、ならここはりゼットの愛称から先に決めよう」


うむ、発想の転換だ。

ここはリゼットのニックネームを先に決めよう。

さて、どんなニックネームを付けるかな、

リゼ、リト、リズ、リット、ゼット、Z、ズィー……駄目だ変なのがまじって来た。

確か、 リーゼロッテは『トゥーレ』で愛称リズで呼ばれていたようだから、

これとは被らない様にしたいな。

ヴェルトールから考えるか、ヴェル、トール、ヴェト、ルト、ヴェー、ヴェルル……

どれもしっくりこないな、こうなったら本人に選んでもらうのがいいか、


「さて、リゼットはどんなニックネームがいい?
リゼ、リト、リット、ヴェル、トール、ヴェト、ルト、ヴェー、ヴェルルと色々考えてみた。
俺のお勧めはリルだ」

「リル…ですか?」

「ああ、理由は特にない。 敢えて言うなら直感だがなかなか似合っていると思う」


リゼットはしばらく沈黙していたが、微笑んでから、


「リル…と呼んでくれて、いいですよ…」


っと言ってくれた。

ちょっと感激だっ!!

俺は自分にネーミングセンスがないのは分かっているからな、気に入ってくれたようで良かった。


「よし、それなら次は俺の愛称を考えてくれ!
何でもいいぞ、この際可愛くクロとかでも構わんぞ!」


俺は調子に乗ってかなりテンションを上げていた。

今の俺はどんな愛称でも受け入れるつもりでいたのだが……


「えっ…と…それでは、……“すいか”さんで…」

「!? …えっと、もう一度聞いていいかな…?」

「“すいかさん”です……」


どうやら聞き間違いではなかったようだ。

てっきり普通に名前に“さん”付けになると思ったんだが、

よりによってスイカになるとは……、言ったのは俺だけどかなり後悔。


「因みになぜ“すいか”に?」

「なんとなく、優しそうな響きがしたから……」


リゼットは小さな声でそう答えてくれましたが、私には全然分かりません。

しかし、漢(オトコ)イーガスっ!! 言葉に二言は……


「わかった。 では俺の事は“スイさん”とよんでくれ♪」


俺はむっちゃ笑顔でさりげなく最後の抵抗させてもらった。


「はいっ!」


リゼットは笑顔で返事をしてくれた。

こんな感じで俺とリゼットの愛称が決まりました。

うん、素直な子は大好きだぞ♪





そんなこんなでゆっくりした後に、俺たちは栞に会いに俺たちはホテルに向かった。

正直、栞さんとリルを会わせるのは色々と危険だと思うんですけど、

背に腹は代えられない。

何時かは通らなければならない危険、もし栞がリルに取り込まれたら、

どうしようか?

わからん、成るようにしかならんか、





「それでは改めて自己紹介と行こう。
俺の名はイーガス、それでこっちの子がリゼット・ヴェルトール。 愛称リルだ」

「リゼット・ヴェルトールです。 よろしくお願いします…」

「百野 栞…です」


頭を下げて挨拶をするリルに、坦々と名を告げる栞。

早くも胃がキリキリしてきた。

やはり来ない方が良かったかもしれない。

俺だけで来たらまだ気が楽だったかも知れないが、どうなんだろう。

色々後ろめたいからな、ボロを出しそうで怖い。

この際もう全部ゲロってしまおうか、いや弱気になるなっ!

欺いているのは気が滅入るが、いずれはおそらく闘うことに相手。

美少女と戦うのは、っていうか本音は闘いたくないが、

ここは宿命と思い諦めよう。

そうだ、俺はリゼットを助けると決めた時に、世界を敵に回したのだ。



しかし、出来れば今ぐらいは二人が仲良くしてほしい。

迂闊に触れあうのは危険だと思うのだが……

やっぱり、ここは要件をさっさと済ませてお暇しよう。

泊めて貰うのは諦めた。


「自己紹介の終わったし、お土産も渡したし、頼んだ要件はどんな感じだ?」

「もう一部屋、隣の部屋を確保することができました。
これが部屋の鍵です」


俺は栞から部屋の鍵を受け取った。

因みに持ってきたお土産はドーナツだ。

俺は栞が甘い物を好きなことをちゃんと覚えているからな、

受けと取る時は「どうも…」っと素っ気無かったが、喜んでくれることだろう。


「いろいろすまない。
しかし、お前もしばらくこの町に留まるのなら、アパートの一部屋でも借りたらどうだ?
その方が融通も利くだろうし、金も掛からんだろう?」

「……考えておきます」


よし、これで一応寝床の確保はできた。

ホテル代は少々懐に痛いが、まだ大丈夫、次の赤い夜に色々なんとかしよう。


「それでは話を聞かせて貰います。 その人が何者なのか」


栞はリルに視線を向けて俺に問う。

まあ、当然その話になるよな、


「……エメラルド・タブレットを知っているか?」

「第六王朝時代、女王ニトクリスの手で砕かれ、12の欠片となり散逸したとされる碑文、ですか?」

「その通りだ。
翠玉碑 (すいぎょくひ)とも云われる神の叡智と無限の魔力を得ることができると謂われた12に砕かれた究極の魔具。
その12に砕かれた欠片の一つをリルは持っている。
正確にはその身に宿している」

「!?」

「連中がリルを狙う訳のは、そういうわけだ」


正確には理由の一つなんだがな、

他にも理由が沢山あるだけで、嘘は言っていない。


「……わかりました」


まだ、疑いは晴れていないようだが、取り合えず今回の話は終わった。

俺とリルは早々に隣の部屋に移動させてもらった。


今日はいろいろあって本気(マジ)に疲れたから、少々早いが寝かせて貰おう。

まあ、俺はこんな姿だから別途では寝れないから、

部屋の隅で壁に寄り掛かって寝るんだが、リルがベットで寝れるならそれでいいだろう。

この部屋元々ベットは一つしかないし、


「リル、俺はしばらく寝かせて貰う。
用があるなら起こしてくれて構わない」


俺は床に腰を降ろし、壁にもたれながら言う。


「……そこでお休みになるのですか?」

「ああ、リルはそこのベットを使ってくれ、シャワーを浴びるならそっちの扉だ」


部屋の間取りは確認済み、ってほども広くないんだがな、扉を指差しながら答えた。


「えっと、ありがとうございます」


リルは少し俯きながら返事を返した。

俺はその様子を見て、溜息を吐いてから何となく、ベットの縁まで移動して再び寄り掛かった。

俺の様子を見たリルは、俺からは見えていなかったが、

おそらく嬉しそうに微笑んでからベットに横になった。

しばらくしてから寝息が聞こえ始めた。


「なんだかな~」


っと思いながら俺も眠りに付いた。









イーガスとリゼットににニックネームが付きました。
やはり愛称は親睦を深める上で大切なものだと思います。
ニックネームについては直感です。
それでは次回は赤い夜、話の進めようと思います。
どのぐらい進むかはわかりませんが、次回も宜しくお願いします。




[11759] 予想外の展開  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:d8c5e88f
Date: 2010/09/12 21:36

さて、アレから数日が特に何事も無く流れやってきました赤い夜。

いったい何が俺たちをこの世界に呼んでいるのか?


ってかっこ付けました。

今の俺はパニクリまくっている。

俺とリルは綾女ヶ丘公園で休息しながらソフトクリームを食べていたんだ。

クリームを食べたら次ぎは喉が乾いた俺は、近くの自販機に飲み物を買いに行ったんだ。

そしたら今まで何度か感じたような、時が止まるような感覚に襲われたんだ。

そして次の瞬間には毎度の如く硝子が砕け散るような音が響いた。

ただし今回砕け散ったのはリルだけで俺にはまったく影響なし、

どうやらあの世界に呼ばれていたのはリルだけの様子です。

まあ当然だな、冷静に考えれば俺って、まったくの部外者だからな……


……


…………


……………………………


…………………………………………………………


………………………………………………………………………………………………what?


「はあああああっ!!!!!??」


って叫び声を上げたのが今現在だっ!

まずいっ、まずいぞ!!

いや、まず落ち着け、いや、落ち着いてる場合じゃないっ!!!

何とか後を追わないと、

だがこっちと向こうでは時間の流れが違ったような?

確か赤い夜の世界に居る間はこっちの時間は流れていない!?

っという事は俺が置いて行かれた時点ですでにアウトなのかっ!?

しかし、このまま手をこまねいている訳にはいかないっ!!

常識を拳で打ち破ってこそ俺様だっ!










side リゼット・ヴェルトール


気が付いた時には、私は一人だった……。

目に映る景色が全て砕けた後に、残っていたのは私だけだった。

近くにいたはずのスイさんも周りの景色と一緒に砕けてしまった。

今わたしの傍にあの人がいないことがよくわかってしまう。

そして、この赤い世界に居る6人の悪魔たちの居場所が、私には感じ取ることが出来る。

他にはこの世界に居る6人の少年少女たちのことも私には感じ取ることが出来た。



怖い、独りぼっちでいることがこんなに寂しく、怖いことだったなんて、

私が目を覚ましてからいつもスイさんが傍にいてくれた。

強大な恐ろしい力の持ち主だけど、どこかやさしさも感じられる人だった。

しかし、今は傍にいない……。



このままここにいる訳にはいかない。

何かよくないものが集まってきている。

ここから移動しないと、でもどこに行けばいいの?

行く当てなんて……栞さん、彼女もこの世界に居る。

彼女の居場所も私は感じ取ることが出来る。

彼女とは部屋がお隣さんでそれなりに面識もある。

なら彼女の元に向う方がいいのかも知れない。

こっちの方、多分以前見た丘の上にある虹陵館学園、あの辺りにいる。

私は栞さんに会う為に学校の方に向って歩き出した。



私はよくないものたちを避けながら、住宅地を学校の方に走っていました。

けれど、走る私に不気味な羽音が聞こえてきました。

おぞましく感じる大きな羽音が、どこからともなく響いてきます。

私は足を止めて、不気味な羽音の出所を探しました。

無視の羽音に似ていすが、この音は私には気持ち悪く、酷く不快に響く。


羽音は空から響いていた。

そして、私は羽音の出所を見つけた。

そこにはとてもこの世のものとは思えないような、

ぶよぶよした体に多くの仮面を貼り付け、人面が浮き出たものが、

背にある翅で、羽音を響かせ飛んでいた。

アレは悪霊や怨霊の類の異形の“モノ”であると直感した。

見るのも嫌悪するような姿だが、感じる力は弱い。

あの悪魔たちやスイさんとは比べられないほどに小さい力だが、

今の私にはその弱く小さい力ですらも脅威でしかない。

私は動けず震えながら、それは見つめていたが、

“それ”に浮き出た人面と目が合ってしまった。

私は震えながらも、すぐに踵を返してその場から逃げ出した。

足がもたつきながらも必死に逃げる。

どこをどう逃げたのか自分でもわからなかったが、走り続けているのに、

この身に感じる悪寒は無くならないどころか大きくなっていく。

私はこの嫌な感覚に耐え切れずに背後を振り返った。

“それ”はいつの間にか数を増やして私を追ってきていた。


「きゃっ!?」


背後を振り返りながら走っていた私は、足を縺れさせて転倒した。

すぐに起き上がり逃げようとしたが、

一度止まってしまった足は震えて動こうとはしない。

動けなくなった私に“それ”は触手を振り上げ勢いを増して飛んで来た。


「きゃああああッ!?」


私は瞳を硬く閉じ、地に伏せながら肉を貫く嫌な音を聞いた。

しかし、私には痛みはない。

顔を上げて瞳を開いた私の見た光景は、

鎖で貫かれ黒い霧となり、消えて行く異形の“モノ”と、

拘束された痛ましい姿の天使だった……










side 皐月 駆


学校の校門前で草壁先輩と合流した俺とゆかは、

今は橘先輩と合流する為に住宅街に向かって階段を駆け下りている。

草壁先輩の話によれば、橘先輩は俺とゆかを迎えに行く為に、

丘の中腹辺りの住宅街に行ったそうだが、

どうやら俺たちとは入れ違いになったようだ。

草壁先輩によれば、橘先輩についていた式紙からの情報が途絶えたらしい。

おそらく敵、闇精霊(ラルヴァ)と遭遇したんだろうということだ。


この綾女ヶ丘は丘の上を切り開き住宅地が作られていて、坂道や階段が多い。

学校は丘の頂上付近に立てられていて、

学校前には住宅地に繋がる坂があり、『地獄坂』と呼ばれている。

俺とゆかは迂回して登って来たから橘先輩と入れ違いになったのか、

或いは住宅地で遭遇した闇精霊(ラルヴァ)の相手をしてくれたのかもしれない。


階段を下り、俺のアパートや床の家がある住宅街の道に出る。

その時、建物が歪み崩れるような音が響いてきた。


「あっちか―――」


草壁先輩が音が聞こえてきた方に顔を向ける。

向こうに橘先輩がいるのか?


―ジャラジャラジャラ―


何の音だ? そう考えた瞬間――

闇精霊(ラルヴァ)が宙を跳び、俺達の眼前を横切って、住宅塀に叩きつけられようとしていた!

鎖――

細く、長い、鉄の鎖が、化物の体に何重にも巻きついている。

闇精霊(ラルヴァ)の肉――と呼んでいいのか判らないけれど――に鎖が音を立ててめり込む。

それは荒縄に縛られた肉のように、痛々しく闇精霊(ラルヴァ)に食い込んでいく。

鎖がギリギリと締め上げた部分は、形が崩れ黒い霧がにじみ出ている。


大きく反対側に振り回され、対面の塀に激突し、

何軒分か家屋を派手に壊しながら、鎖に引きずられている。

立ち上がって暴れようとする闇精霊(ラルヴァ)。

だが鎖は更に食い込むように縛り上げた。

よリ激しく化物が体を捩り振るったとき、

もう一本の鎖が槍のように飛んできて、すごい勢いで巻きついていく。

隙をついたように化物は、頭から地面に引き倒されて、

反対側の塀に激突、叩きつけられる。

今度は複数の細い鎖がからまり、綱引きの綱のように、

ゴツゴツした一本の太い鎖になっていく。

金属が激しく擦れる音と一緒に、勢い良くしなる動きが加わる。

そして、化物の体は更に強引に引き起こされ、

崩れた体勢のまま、最初に激突したほうの塀のほうに投げられた。


アレが橘先輩の――


「これって……」

「見てみろ、ゆか」


俺たちが視線を向けた先には、

天使……。

ゆかの声がそう聞こえたような気がする。

ただの天使と形容するには、あまりに痛々しい姿ではあるが、

――拘束された天使。


俺たちは先輩の能力を始めてみたように、呆然と見つめ続けた。

あの天使の名は――


「アブ……ラク、サス。
アブラクサス、だったよね?」

「……ああ」


俺はゆかの声に呆然としながらも答える。

そう、アブラクサス――

翼を広げ、天使の輪を冠する姿は紛れもい『天使』のイメージ。

だけど、自らを縛る鎖を伸ばし、相手を幾重にも縛り付ける光景は、

『天使』の清廉かつ神秘的なイメージからは程遠いものだった。

こうして戦っている姿を見ると、天使にも、

そして、悪魔にも……どちらにでも見えてしまう。

前に屋上で見せてもらった時とは、桁違いに迫力が増して感じられる。


先輩は敵の方を向き、立っているだけのようにも見えるが、

それはアブラクサスを意志の力で操作している状態なのだろう。

アブラクサスは先輩の意のままに動いているのだ。


アブラクサスの両腕から伸びる鎖。

それは自らを拘束しているのと同時に、

敵を捕縛し、打ちつけて砕く、攻守兼用の武器


女性的な外見からは想像も出来ないような強力な力で、

鈍重な闇精霊(ラルヴァ)を左右に叩きつけている。

単純な力だけで見るなら、何度か戦闘を目撃している草壁先輩の力を、

数倍上回っているだろう。


『大丈夫だ、彼女は強い』


草壁先輩の言葉を、実感する。


強い―――驚異的なまでに強い。


そう、橘先輩が操っているとは信じられないほどに……


アブラクサスの腕から伸びる鎖は、闇精霊(ラルヴァ)の触手が脆弱に見えるほど、

硬質かつ自在に操れる鞭のように見える。

それが先輩を護るかのように空に浮いていた。

1本1本が、意思を持っている動いているかのようにさえ見える。

まるで鉄でできた蛇――


「あ―――!」


その光景に目を疑った。

何も無い空間から、突如として鎖が出現し伸びている。


「あれはいったい……」


思わず驚愕が口をついで出る。

それに草壁先輩が気付いて俺の隣に立った。


「これがアブラクサスの力、菊理くんの戦い方だよ」

「あの鎖は、いったい何なんですか……?」


言葉は足りなかったが、先輩は俺が何に驚いているのか汲んでくれたようだ。


「アブラクサスは菊理くんの魂、光精霊(エーテル)によって造られていると話したね」

「はい……」

「あの鎖もアブラクサスの一部。空中から突出している鎖も含め、
すべて菊理くんの意思の力で生み出されているものなんだ」


つまり、すべてが橘先輩の魂の一部―――


鎖に締め上げられた闇精霊(ラルヴァ)はそれだけで醜く崩れ、消滅し始めている。


「―――」


橘先輩が言葉にならない声、気合を発した。

見ると、締め上げられた闇精霊(ラルヴァ)の周囲に、新たな鎖が出現していた。

それらの鎖は、狙いを定めるように先端を闇精霊(ラルヴァ)に向ける。


「あッ―――」


闇精霊(ラルヴァ)に向けて一直線に放たれた鎖は、

槍のように闇精霊(ラルヴァ)の身体を貫いた。

複数の鎖に同時に貫かれた闇精霊(ラルヴァ)は、串刺しという表現すら生温い状態となる。


「っ!きゃああっ!!」


一泊の間を置いてゆかが悲鳴を上げ、目を手で覆った。

相手が闇精霊(ラルヴァ)とはいえ、見るものにとっては凄惨で残酷な光景だ。

闇精霊(ラルヴァ)相手に同情も哀れみも無いが、

俺はその光景に頭を殴られたようなショックを受けた。

俺が眩暈をするほどショックを受けたのは、アブラクサスを意のままに操り、

闇精霊(ラルヴァ)に止めを刺したのが、橘先輩だという事実。

姉さんと同じ顔をした女性が、こんな戦い方を―――

菊理姉さんと橘先輩を重ねて見ていた俺は、

天地の感覚を失いそうになるぐらいの衝撃を受けたのだ……


「――終わりましたか?」


衝撃を受け、呆然としていた俺の耳に聞こえてきた声。

その声は崩れた塀の向こうの方から聞こえてきていた。

塀の向こうから現れたのは、白い姿の少女。

その少女は前の赤い夜で、黒騎士と共にいた少女だった。










side リゼット・ヴェルトール


周囲に異形のモノ、闇精霊(ラルヴァ)? の気配が感じられなくなり、

とりあえず、私たち5人は学校の校門前に来ている。

私の目の前では菊理くんと呼ばれた女性と拘束具を付けた天使が、

皐月くんと呼ばれた少年を治療していた。

菊理さんと天使の手から柔らかく暖かな光が溢れ、皐月くんの足を包んでいる。

暫くすると皐月くんの足は完全に直ったようで、

立ち上がった皐月くんは、軽く跳ねたりして足の具合を確かめていた。


「うん、皐月くんの足も治ったようだし――」


赤い髪の女性が私の方に顔を向けてくる。


「君のことを聞かせてくれないか?」


その向けられた鋭い視線に、少し体を強張らせたが、

改めて、自分のことを話そうとしたとき―――周囲の空気が一瞬にして変質した。


「これは――」

「ああ、赤い夜が終わるな……」


硝子が砕けるように、赤々とした風景は消え去りました。

暫くみんな呆然としていたのですが、


―ピシュンッ―


といった音が響き渡り、突然目の前に黒い何かが現れました。

周りの人たちは突然のことに、驚いたり構えたりしていましたが、


―ドサ―


目の前の存在は音を立てて沈み込み、


「ま、間に合わなかった、かぁー……」


もの凄く沈み込んだ声を上げました。

目の前にいたのは、とても暗い雰囲気を辺りに振りまいているスイさんでした……









久しぶりの更新です。

今回イーガスの出番は殆んどありませんでした。

次回からは活躍して欲しいと思います。

リルには何か自衛手段を身につけて欲しいので、ここでアンケートを取りたいと思います。

1、やはり魔術ということで、現代魔術を覚えてもらう。

2、いやここは東洋の神秘、陰陽術を覚えてもらう。

3、無理を承知で、我が武、魔闘術!

4、ここは百鬼鎧骨格を纏う的にイーガスとユニゾンって自衛じゃないし!!

5、他力本願アイデア募集

この中から行きたいと思います。

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




[11759] 修行を始めるぞっ!  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:650589d2
Date: 2010/09/21 21:46


side イーガス


ああ、何故こんなことになってしまったのか……

やはり虚無(クリフォト)の魔石を持ってないのが大きな原因か?

まあ、そうなんだろうけど、

前の赤い夜からは普通に出ることが出来た。

俺がリルを担いでいたからか、駆に触れていたからか?

そういえば、原作では駆たちに憑いていた式紙は、赤い夜に出入りできていたな、

そして、猫などの動物は移動できない。

俺は元サーヴァント、ということは分類上、この式紙と同じになるのか?

つまり、俺が赤い夜に行くには、他の連中と接触していないといけない可能性が高いな、

後は力尽くで空間を破るか、

操が出来るんだから、出来ないことはないはず、

手持ちの文献を調べてみるか?


「あの、スイさん、スイさん?」

「ん? ああ、すまない。 考え事をしていた」

「それは構わないんですけど……」


リルは困惑顔で俺を見つめてくる。

いったいどうしたことだ?


「どうしたんだ。 何かあったのか?」


えっと、といいながらリルは俺の後ろの方をチラチラ見ている。

仕方がない、惚けるのもこの位にした方がいいか、

俺の背には後ろの連中の視線が突き刺さっている。

俺は白々しさを感じられないように後ろを振り向く。


「おぉ――!?」


俺はさも今気が付いたかのように驚きの声を上げた。

後ろには、まあ主人公勢がいたわけだ。


「君たちは何時ぞやの少年少女たちではないか、こんなところでどうしたのかね?」

「…………」


睨まれてます、睨まれています。

もの凄く鋭く睨まれています。 特に草壁 美鈴さんから、

皐月 駆はかなり警戒している。

橘 菊理と水奈瀬 ゆかはキョトンとしている。

この二人は天然か? それとも呪符が効いているのか?


「貴様たちは、何ものだ」


静かに思い声で聞いてくる美鈴さん、

ここが一応は日常で無かったら、すでに抜刀しているだろう。

俺はそれに飄々と答える。


「そうだな、問われたからには礼儀として名乗らねばなるまい。
俺の名はイーガス、愛称スイさんで通っている、以後よろしく」


俺はそう言って、今度はリルの肩に手を当て前に軽く押し出す。

戸惑うリルに視線で訴える。


「私はリゼット・ヴェルトール、スイさんからはリルと呼ばれています」

「うむ、上出来、上出来。 それで君たちは?」


俺はリルのペコリと頭を下げた可愛い自己紹介を、頭を撫でて褒めながら聞き返す。

まあ、ある程度は知っているんだがな、


「……私は虹陵館学園3年、草壁 美鈴だ」

 ―同じく3年で橘 菊理です―

「…2年の皐月 駆」

「水奈瀬 ゆかです。 よろしくお願いします?」


しぶしぶながら自己紹介といった感じ、ゆかだけ何故か疑問顔。

菊理さんはスケッチブックに名前を書いてる以外は普通でしたね。


「さて、自己紹介も終わったし、立ち話もなんだ。
もう夕方だし、今日はこの位にして、話し込むならまた後日にしないか?」


とりあえず俺は提案してみる。

なんせここは学校の校門前、こいつらは兎も角、俺とリルは全くの部外者だ。

このまま話し込むのは他の方の迷惑だろうし、俺としても困る。

遅いか早いかの違いだと思うが、栞のこともあるし、


「確かに、ここで話し込むのは他の人の迷惑になるし、目立つか」


美鈴さんは思案顔で考えを巡らしながら、

仲間に視線を巡らし、結論を出したようだ。


「結論を出したようだな、こちらはいつでも構わない。
携帯番号を教えるから、気軽に掛けてくれ」


俺はそう言って、携帯電話を取り出した。

最近は便利な世の中になた物で、取り出したのはプリペイド携帯だ。

これなら比較的楽に買える。


「いや、ここから移動して話そう。
私と菊理くんの二人で行くから、皐月くんと水奈瀬くんは帰りなさい」

「先輩ッ!?」


そう来たかっ! 別にいいけどね。


「こちらは別に構わん。
安心しろ少年、少なくともこちらに戦う意思は無い」


そんな訳で、少々揉めたが駆は結局引き下がったようで、

俺たちが移動して来たのは、俺にとってはいつもの鍛練場所、城砦跡地。


「さて、俺に何が聞きたいんだ? まあ、ある程度予想は付くが…」

「それなら話は早い、赤い夜のこと、そして貴様のことを話して貰おう」


かなり高圧的だな、俺が油断できる相手でないのは認めるが、

俺的にはこれでも友好的に接している積もりだ。

やはり見た目なのか?

男はイケ面で無いと駄目なのか?

そんなのはこっちから願い下げだっ!!

そんな連中、俺が滅ぼしてやる!!!


「俺に話すメリットは無いが、まあいいだろう。
だが、俺自身知っていることはそれほど多くない、詳細は知らん」


っとあらかじめ言っておく。

俺も全てを知っているわけではないからな、たぶん。


「赤い夜は黒い月、ランドマークタワーを中心に半径約15kmに及ぶ空間位相結界。
そして、この結界に囚われた者は外に出れないってところか……」


俺自身は出られるかもしれないが、試してはいないな。


「外に出られない、だと!?」


美鈴さんと菊理さんは驚愕の表情を浮かべている。

まあ、これは仕方のない事かもしれないな、

この方たちは赤い夜に出入りできる理由とか知らない訳だから、

俺は何食わぬ顔で話を続ける。


「気付いてなかったのか? 信用出来んなら自分で確かめるといい。
次に俺のことだが、元サーヴァントといったところだ」

「サーヴァント?」

「判りやすく言えば使い魔の上位種といったところだ。
陰陽術で言えば式紙、前鬼や後鬼といったところか?」

「貴様が式紙だというのかっ!?」

「まあ、似たようなものだ。
死者の魂を術により現世に縛り付け、仮初の血肉を与え使役する秘術。
もっとも、俺のマスターはすでにいないし、俺自身は自立している。
今は彷徨い歩く亡霊といったところだ」


俺は肩をすくめながら軽く答える。

驚いているな、本来サーヴァントは過去の英霊を呼び出し使役したものだが、

俺の場合は少々外れているし、ややこしくなるからこんな感じでいいだろう。

美鈴さんは驚愕といった表情のまま目を見開いていた。


「それはあの時にいた他の黒騎士たちも同じなのか?」


うむ、これに付いてはどうするか、

別に話してしまっても問題ないかな?


「厳密には違うが、彷徨う亡霊という点では近い存在だ。
ただ、奴らの中には生者も存在している。
その者達の力は亡霊とは桁が違う、貴様らではまず勝つことは不可能だ」

「随分な言いようだな」

「事実なのは貴様自身わかっているのではないか?」

「ッ………」


美鈴さんは苦虫を噛み潰したような顔をする。

まあ仕方ない、これは相手が悪いとしか言えないからな、

操は草壁歴代最強と謂われる草壁二刀兵法を極めた者、

ぶっちゃけ実戦経験が違いすぎるだろう。


「他に聞きたいことは?」


菊理さんがスケッチブックに文字をカキカキ、


 ―黒騎士たちは何人いるんですか?―

「俺を除けば全部で6人だ」

 ―リルちゃんとは何故一緒にいるんですか?―

「困っている少女は漢(おとこ)として放って置けないだろう」

 ―優しいんですね―

「いやいやいや、そんなことないですよ。
まあ、今日はこのくらいにしてそろそろお開きにしましょうや」


そんな感じで、今日はお開きになった。

携帯番号も教えたし、用があるなら掛けてくるだろう。

菊理さんは流石に無理だろうけど、

そういえば、美鈴さんは携帯電話持っているのか?



そうこうしている内に、ここに残っているのは俺とリルの二人、

そして、もう一人。


「心配せずとも、俺からはお前のことを話したりはしねぇよ」


俺は独り言のように、背後の雑木林に語る。

声に答えるものは無く、風の流れる音が響くのみだった。


「うむ、俺達はこれから宿に帰るつもりだが、一緒に帰るか?」


やはり、木々のざわめきが聞こえるだけで答えるものは何もない。


「……そうか、ではまたな」


俺は背後に手をヒラヒラ振りながらその場から歩き出す。

リルも背後に一礼してから俺の後を追いかけてくる。



だれも居なくなった筈の雑木林、

風に吹かれて舞い上がる木の葉に混じり、銀の髪が舞ったように見えた。





話は飛んで次の日の翌朝、俺とリルは再び城砦跡に来ていた。

まだ日も昇って間もない時間、何故こんな時間にリルを連れて来たかというと、


「この前に赤い夜の時、俺は不覚にもリルと離れ離れになってしまった。
これから先もこんなことがまったくないとは言い切れない。
そんな訳で、リルには自衛手段を身につけてもらう」

「はい?」


リルは少々疑問顔だが、遭えて話を進める。

この事は俺の中ではすでに決定事項だ。

何が何でもやってもらうぞっ!!


「これからは自分の身は自分で護れるよう、ビシバシッ鍛えてやるから、覚悟しろ」

「……わかりました」


リルは戸惑いながらも力強く頷いてくれた。

どうやらリルにも俺の熱意が伝わったようだ。


「まず、何を覚えてもらうかを色々考えた。
リルにはおそらく魔術の適性がある。
そこで、古典魔術、現代魔術、陰陽術でも覚えてもらおうと思ったが、
残念ながら、そっち方面はまったくの専門外だ!
俺に教えることは出来ん。
そこで、リルには我が武、魔闘術を会得して貰うっ!!
これからは俺の事を師匠と呼び、
共に武の道を極めんが為に切磋琢磨して拳を交えるのだっ!!!」


俺はテンションを上げに上げて力説する。

それはもう周りをぶっちギル勢いで、


「え、え~っと……」


案の定、リルは付いて来れていないようだが、

俺は勢い落とすことなく、更に話を続ける。


「まずは魔闘術を知る為に、その成り立ちから話を始めよう。
嘗て悪魔が使う暗黒魔闘術という闘術があった」

「悪魔、ですか?」

「うむ、その闘術は魔力を圧縮し体表面に纏い闘う技だった。
俺の使う魔闘術はこの闘術を再現しようと俺が我流で編み出したものだ。
この闘術は魔力の代わりに『気』、つまり生命力たる『生気(オド)』を使う技だ」

「オド? ですか?」

「そうだ。 生気(オド)とはすべての生命に流れる力、『生命エネルギー』とも謂われる力だ。
魔術的に解釈すると、光精霊(エーテル)の力の一種に当て嵌まるらしいが、詳しくは専門外だ。
もっとも、この世界の人間の生気(オド)の総量は決まっているらしいから、この世界ではあまりそっち方面の技術は伸びていないようだな、俺に言わせれば鍛え方を知らんか鍛練足りんだけだと思うがな」

「???」


リルが少々混乱してきているようだな、少々話もそれた。

しかし、俺の話はまだまだ続く。


「兎に角、元は武術の域を出ないものだったのだが、この俺の武は日々研鑽し、進化しているのだ。
生気(オド)に魔力を混ぜ合わせることでその力を飛躍的に上昇させることに成功した。
今ではここに更に闇精霊(ラルヴァ)の力を合わせる事により、その力を今まで以上に更に倍増。
この三つの力を完全に制御するには並外れた精神力と修練が必要だろう。
掛け合わせるだけでも強力な力を更に圧縮して使うのだから、その力は危険極まりないものだ。
それ以前に一歩間違えれば楽に死ねる力だ。
しかし、俺自身まだまだ完璧とはいえないが、ある程度制御できるようになったのだっ!!」


うん、半分くらい自慢話になったな、

けど仕方ないじゃん、こっちに来てから今まで話せる相手いなかったんだから、

魔力と気を掛け合わせるのは、前の世界に居たときから練習はしていたのだ。

ほら、咸卦法とかやってみたいジャン。

成功した時はイリヤにかなり自慢して喜びを分かち合ったよ。


「それではリルには体を鍛えつつ、魔力の制御から始めてもらうぞ。
これから俺の弟子二号としてビシバシ鍛えていくぞっ!!」

「わかりました」

「返事は、 はい、師匠っ! だっ!!!」

「はい、シショウ?」


まあ、こんな感じで俺とリルの修行の日々が始まった。

もう俺はどこからともなく竹刀を取り出してやる気満々だ!

幸先不安な気もするが、テンションの上がった俺はまったく気にしなかった。











こんな感じでイーガスとリルの修行が始まりました。

次回は久しぶりの黒騎士たちの登場。

果たしてどうなっていくのか?

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




[11759] 久しぶりの赤い夜  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:650589d2
Date: 2010/10/02 00:11


あれから、俺とリルは魔力運用の修行を開始した。

俺が参考文献片手に魔力についての説明をしたが、

説明している俺も説明を聞いているリルも良く分からなかった。

だから実地で魔力がどんなものかを見せて、練習した。

結論から言って、リルは割りとあっさりと魔力の感覚を掴むことに成功した。

この調子で行けば、そう遠くないうちに魔闘術を習得できるかもしれない。

俺、習得に十年以上も修行して会得したのに……

記憶喪失でも800年生きているってことで納得しておくか、(泣き)

そして現在、魔闘術に必要な心・技・体を鍛えるべく綾女ヶ丘公園にジョギングして来たのだが、

天見 修とエンカウントした。

まあ、それはいい。別に構わない。

しかし、黒芝 かなえと一緒なのはいったいどういう了見だッ!!!!!

告白した吾妻を抛って置いて、休日に他の女と一緒とは不逞野郎だッ!!!

しかも相手が黒芝とはッ!!

貴様はミステリアスな女が好みなのかっ!?

同感だっ! いい趣味しているなっ! ってそういうことじゃない!!

まさかここで行き成りボスキャラと遭遇とはッ!!!


知らない人もいるかもしれないから、ネタバレになるが一応説明しておく。

黒芝 かなえ こと 黒羊歯 鼎(くろしだ かなえ)

「憤怒(ツォーン)」の名を持つトゥーレの一角。
『11eyes CrossOver』の「虚ろなる境界」で登場するボスキャラだ。
かつて日本人でありながら西洋魔術の研究に没頭し、第二次大戦以前に禁書目録聖省に滅ぼされた「黒羊歯一族」の数少ない生き残りらしい。
トゥーレに所属。「人工翠玉碑」建造による魔術律の調律(すなわち、世界中の魔術の基本原理そのものを自分の都合のいいように改変する)による魔術世界の支配を企んでいる。また、復讐などといった行為には興味がなく、あくまで自分とトゥーレのために活動している。


ついでに、魔術結社「トゥーレ」ついて、

ヒトラーをはじめとした神秘主義の政治家たちによって設立された「トゥーレ協会」を前身とした7人の魔術師による秘密結社であり、第二次世界大戦当時、唯一禁書目録聖省に対抗し得る力を持っていた。

構成メンバーは、

首領、「色欲(ベギール)」のリーゼロッテ・ヴェルクマイスター

「傲慢(ホッファート)」のヴァルター・ディートリヒ

「嫉妬(ナイド)」のソフィア・ミーズリー

「強欲(アンフォイシャイト)」の傳満州(フー・マンチュウ)

「怠惰(トレークハイト)」コルヴァス・メルクリウス

「憤怒(ツォーン)」の黒羊歯 鼎(くろしだ かなえ)

「暴食(フレッセライ)」アイナス・レーベンハイト

の7人だ。

建前上、7人に上下関係はないが、一応首領のリーゼロッテが一番発言力があった。
第二次大戦後、4名が除籍。コルヴァス、黒羊歯、アイナスの3人になったが、現在でも水面下で活動している。


大体こんな感じだ。

そして現在の状況だが、天見と黒芝は芝生の上に座り込んで話しに花を咲かせていたようだが、

二人とも俺たちに気付いているな、どうするか、

こっちはジョギングに来ただけだ、このまま無視して通り過ぎるか?

それとも、先手必勝ッ!!

虚ろなる境界編ラストバトルに洒落込むか?

リルのことが奴にバレたのは痛い。

いや、すでに知っていた確率は高いか、

しかし、俺が奴について知っていることまでは知るまい。

ここは何食わぬ顔で、さっさと立ち去ろう。



こちらの方を見ている二人、俺は天見の方を向いて腕を突き出し、

これ見よがしにサムズアップッ!

俺の顔は仮面で判らんだろうが、きっとすごくいい笑顔だ。

そして、リルを連れて走り去った。

驚いた天見が何か言っていた様だが、俺の耳にはまったく聞こえなかった。

そう、俺には聴くつもりが無かったから聞こえてはいなかった。





さて、予想外の邂逅はあったが、それから数日。

修行は割りと順調に進んでしまい、俺は少々涙目になった。

この涙はきっと弟子の成長に感激しているからだ。

そう、ほぼ丸一日修行するスパルタンなのも俺の感激ゆえだ。

魔力制御もある程度まで出来るようになり、

圧縮までは行かずども収束までなら出来るようになった。

まさに破格の進歩だな、普通なら楽に数年は掛かるな、

しかしだ、ここから先は難しいだろう。

魔術や呪術に詠唱が必要なのは、それだけ魔力の制御や術式の構築が難しいからだ。

詠唱により、魔力を制御し法則を与え術にいたっているのだ。

故に高位の術者は詠唱を省略或いは破棄できるのだ。

もっとも、高位の魔術は世界の理に干渉するような高度のものも多く存在する。

それ故に術式を構築し制御するのに詠唱が不可欠なものも存在する。

中には詠唱が自己暗示であるものも存在するが、

それは言霊にはそれだけ強い力と意思が宿るということだろう。

魔力をブッ放すだけなら俺にも余裕だが、

術式の構築やらはサッパリだから、

魔力に法則を持たせたり、魔力を変換したりは出来ない。

しかし、専門外だが俺も日々研鑽している。

陰陽術の基礎ぐらいならば、然るべき手順をふめば少々扱える。

だから、火を出したり水を出したりも多少は出来る。

話は大分それたが何を言いたいかというと、

リルは魔力の扱いには長けているだろうが、

俺には他者に才が在るかどうかなど判らないから、

格闘センスがあるかは微妙ということだ。

リルの性格もあるのかもしれないが、肉弾戦は向いてないかもしれない。

まあ、例えセンスが無かったり、向いていなかったりしても、

教えるからには何が何でも覚えてもらうがな!

赤い弓兵も剣才は無かったらしいが、修練と経験を持って無骨ながらも極めていた。

某梁山泊では達人とは落ちるものという名言が在った。

俺もそれに倣って、鍛えて行きたいと思う。

体格的な問題もあるが、

そこは短所を長所に変えるために相手の懐に飛び込むしかないかな?

それともそれを補う為には、やはり得物が必要になってくるのか?


我が魔闘術には、武具を使い戦う戦技、裏魔闘術も存在する。

原型になっているのは勿論裏暗黒魔闘術だ。

この裏暗黒魔闘術は自らの魂を使い武具を作り出す禁呪。

この技を使い続けるといずれ死に至るという奥義。

原作主人公は二つの強い魂を持っていたからこそ扱うことが出来た。

残念ながら、俺は自らの魂で武器を鍛造することなど出来ない。

っと言うか、そんな方法は知らない。

そこで、圧縮した魔力を固定して武具を創造作したのだ。

俺の予定では圧縮魔力を結晶化した強力な武具が出来ると考えたのだが、

世の中そんなに旨いことは行かず、

コントロールが難しい上に、精製に時間が掛かる、長持ちしない。

仮に精製に失敗したら、自分が吹っ飛ぶ可能性も高い。

更に完成が某霊剣とか霊波刀みたいになってしまう。

見た目、つまり器を何とかするべく、投影魔術を参考にしようとし、

専門家であるアーチャーにも聞いてみたが、サッパリだった。

現状では創った後に、槍投げの如く投げつける位にしか使えない。

着弾すれば壊れた幻想の如く破壊力は抜群だが、

接近戦ではあまり使えない。

俺としては最終的にG.Uのハセヲみたいに使えるようにしたいと思っている。

バッ!! と武器を出して必殺技繰り出すの、何かかっこいいし。


話がそれたが、現状裏魔闘術に付いて教えるかは一旦保留。

もう少し考えてからに結論を出したいと思う。

教えて即行使えるようになったらっショックで倒れそうだしな。






そして廻ってきた赤い夜。

今度はリルと共に侵入に成功している。

やはり、リルと一緒ならば出入りできるようだ。

出るときも一緒にいないと置いていかれそうだな、


俺たちは赤い夜になってからある場所に来ていた。

俺はここに用事があるからリルと分かれなければならないが、

今回ばかりは仕方がないだろう。

なるべく穏便に進めたいからな、


「では、俺は用があるからここで待っていてくれ、心配せずともすぐに戻る。
ほんの五分、いや三分ッ! でここに戻ってくるから――」

「分かりました。 気を付けてくださいね」


リルは少々心配そうに見つめてくるが、


「はっはっは、そんな心配はまったくない。
むしろリルの方が気をつけてくれ」

「――はい」


リルは少々俯きがちに返事をしていたが、


「金を引き出してくるだけさ、すぐ戻る」


そう言って、俺は銀行の中に入っていった。

その後に騒々しい音や破壊音が響いていたようだが、

俺は何ごとも無かったように銀行の外に出て行った。

因みに外に出るまでの時間は宣言よりも早かった。

何をしていたかは敢えて言わないが、

敢えて言うなら本職が泡を吹くほどの凄技だった。



銀行を出た後、俺とリルはすぐ栞に合流。

これからに行動ついて話し合おうとしたが、


「感じるか? どうやら悠長に話している暇は無さそうだな……」

「―――」


栞はその表情を崩すことなく、リルは体は小さくに震えている。

俺はポンポンと軽くリルの頭に手を置いてやる。

うむ、少しはマシになってくれたかな?

俺的には安心するような気を放っているつもりだ。

なんせ俺の顔は仮面で表情が無いからな、


その時、栞が俺たち二人をじっと見ていることに気が付いた。

う~む、俺はなんとなく反対の手で栞の頭の上に置き軽くなぜた。

……………

表情変化はまったく無し、反応もまったく無し、

いや、僅かに疑問の眼差しを向けているような気がする。


「なんとなく?」


俺自身疑問顔で頭から手を離す。

リルは少々残念そう、栞はよく分からん。

俺はそのまま腕を組み話を進める。


「どうやらこちらに三人、美鈴たちの方に一人か、
俺たちはこのまま迎え撃つとして、美鈴たちには警告の一つも入れてやった方がいいか?」

「どうやって、ですか」

「リル、念話で呼びかけてやってくれ」


確か原作ではそんなことをやっていたような気がする。

ここで全滅されたら話しにならんからな、


「ねんわ? えっと、それはいったい何なんですか?」

「時間もないし、実際にやってみるか、成せば成るだっ!!
瞳を閉じて意識を集中するんだ」


俺はリルの頭に手を置いて集中する。

リルも瞳を閉じて集中する。


「よし、美鈴たちに意識を傾け、胸の内で強い意思を持って呼びかけろ」

『聞こえますか……、わたしの声が……聞こえますか……?』


頭に響いてくるような声、思った通り、おそらく成功だ。

修行の成果が出たな、予想よりすんなり言った。


「よ~し、いい感じだそのまま続けて……」

「はい。『私はリゼット・ヴェルトールです。この声が聞こえていたら……答えてください』


リゼットの呼びかける声が脳裏に響いていく。

しばらくしてリゼットに反応があった。


「―――!」

「反応があったか?」

「はいっ。『美鈴さんですね! すぐにそこから逃げてください! 黒騎士の一人があなたたちのところに!』


リルの声には焦燥が混じってきている。

当然だろう。黒騎士はすぐそこまで迫っているからな、

そしてそれはこっちも同じだったりする。

伝えることをさっさと伝えねば、


「失礼するぞ。『相手はグラ、動きは鈍重だが戦鎚の破壊力は強力だ。気をつけろ』


俺はリルを通して、急いで敵の情報を教えたが、

どうやらタイムアップのようだ。

もうこっちにも敵が着ている。


「リルは後ろに下がっていろ。決して前には出るな」


そう言って俺と栞は、前に出る。

リルは俺たちを心配しながら、「気をつけてください」っといい、

後方に下がっていった。


「さて、こうやって肩を並べて戦うのは初めてだが、仲良くやろう。
相手さんと話がしたいなら止めはしないが、アレは速攻しかけてくるぞ」

「どうやら、そのようですね」


栞も目録を胸に持ち、構えた。

俺達の目の前には三人の黒騎士たちがその姿を現した。

こうして戦いを前にすると、胸が滾ってくるな、










あとがき

久々のバトル、対黒騎士次回はどうなるのか、

それでは次回展開予告、


1、即行黒騎士凹って、駆たちに加勢。

2、後がめんどくさい、とりあえず目の前の三人は抹殺。

3、まさかの展開、リルが強奪されたっ!!


この内どれかの展開で行きたいと想います。

それと裏暗黒魔闘術をリルが使えばいいという意見が有りましたので、

私自身は使わせるつもりは無かったのですが少々アンケートを取りたいと想います。

裏暗黒魔闘術がいいという人は A と、

参考までに扱う得物が何が良いかを入れてくれるとうれしいです。

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




[11759] 栞との共闘?  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e ID:650589d2
Date: 2010/10/18 00:21

俺の前には三人の黒騎士、何者かは聞くまでもないが、

イラ、インウィディア、アケディアの三人だ。

しかし、ここは戦士として名乗りを上げ、名を問うのが礼儀だろう。

俺は力を解放し魔闘術を発動、気と魔力を合わせた混合魔力を体表面に圧縮し、纏いながら問う。


「我が名はイーガス。 我が武、魔闘術を極めんとする闘士。
汝らが戦士であるならば、己が名を名乗れッ!!」


俺は覇気をぶつけると共に名を問う。


「よかろう。名乗られたからには答えねばなるまい。
我が滅びの御名は『イラ』。この名を心に刻み込み逝くがいいッ!!」


イラは名乗りを上げて速攻、俺に仕掛けてきた。

前回ぶっ飛ばされたのが余程頭に来ているのか?


「オオオオッ!」


イラが繰り出す正拳突きに、俺は身を屈め一歩踏み込みイラの拳を紙一重でかわし、

カウンターを叩き込むが、イラも俺の拳をもう片方の腕で受け止める。

もっとも、俺の拳は防御の上からでもイラを吹き飛ばす。

正に交差した瞬間の一瞬の攻防だ。


「グアアアァァァ!」

「イラッ! おのれ、貴様ァアアッ!!」


俺に対して地面を削りながら高速で迫るインウィディアの蛇剣。

人間の反射神経を凌駕する速度で繰り出される軌跡を読ませぬ刃、

普通なら見切ることは難しく、掠るだけでも致命傷に至るだろうが、

この俺には効かんッ!!


「ハアアアアッ!」

「なにぃッ!?」


俺は両腕に圧縮魔力を集中させて、奴の蛇剣を正面から受け止めた。

例え蛇の如くに変幻自在に動く蛇剣だろうと、

捕まえてしまえば脅威はないッ!!


「ウォォオオオッ!」


俺は全力で蛇剣を引っ張り、

自分を中心にしてインウィディアを振り回し、

イラが吹き飛んだ方に投げ飛ばす。

その直後、アケディアの魔術がレーザーの如く俺を襲う。

俺は襲い来る魔術を手の平で受け止めようとしたが、


「「!?」」


前面に魔法陣が現れ、攻撃を防いだ。

俺は一瞬驚いたが、この場でこのようなことが出来る者は、


「私のことを忘れて貰っては困る」


今まで静観していた栞は無表情でそう言い放つ。

そして、栞の翳した左手より展開される魔方陣、

そこからを高速で撃ち放たれる先のアケディアが放ったものを上回る強力な魔術。


「バカなっ、貴様、魔術師(マグス)かッ!?」


アケディアは光に飲み込まれながらも、防御魔方陣で受け止めたが、


「魔闘術奥義、魔神烈光殺ッ!」


一気に間合いを詰めた俺が壊れかけの魔法陣を叩き割り、

奴の提灯顔(ちょうちんズラ)を殴り飛ばす。


「があああああーーーッ!!」


叫び声を上げながら吹っ飛んでいくアケディア。

あんな隙だらけの奴を俺様が放って置くわけがないだろ。

しかし、流石栞、アケディアとは魔術師(マグス)としての格が違う。

戦うところは初めて見るが、これは背中が頼もしいな。


「別に俺一人に任せてくれても良かったぜ?」

「これは私の戦いでもあります」


俺の軽口に栞は答えるが、その視線は吹き飛ばされた敵を見つめている。

真面目ですね。 まあ、あの程度では仕留めるには至っていないだろうから当然か、

視線の先には起き上がり、こちらに近付いてくるイラとインウィディア。

その後方にはよろよろと浮かんでいるアケディア。

インウィディアには、殆んど傷は無さそうだが、

イラは俺の拳を受け止めた左腕を負傷しているようで、黒い煙が立ち上っている。

アケディアは一番重症のようで、その顔面からもうもうと煙を放っている。


「それなりの実力はあるようだが、闇精霊(ラルヴァ)の力を完全に制御できてはいないな」

「禁書目録聖省(インデックス)の使途ともあろう者が、この程度とは――」


俺と栞の痛烈なる感想。

まあ、俺は事実を言ったつもりだがな、


「おのれぇ、舐めるなぁッ!」

「我らの力、侮るなッ!」

「貴様、キサマラァァアアアッ!!」


俺たちは無言で構え、敵を睨みつける。

双方共に、正に一触即発の雰囲気だ。

膠着したのがおかしいぐらいの何時飛び掛って来てもおかしくない状況だ。

俺としてはインウィディアとアケディアが突っ込んでこないのはかなり意外だが、

そうしないのは、まだ理性が残っているからか、

それとも本能で勝てないのを感じ取っているからか、

ひょっとしてイラに止められたからとか?

三人の中では一番冷静そうだ。

或いは大穴でアケディアの上半分、スコラスティカとか?

しかし、連中相当キテいる間違いないようだな、

向かい合って感じ取れる奴らの憎悪と怒気は相当なものだ。

奴らの力の高まりを感じ取ることが出来る。

次は真名を紡いだ殲滅線になるか、っと考えたが、


「北帝勅吾―――千鳥や千鳥、伊勢の赤松を忘れたか――」


周囲に声が響き、俺と栞に襲い掛かる式紙の群れ。

俺は一歩踏み出し、栞の前に立ち、


「HAAAッ!!」


覇気と共に混合魔力を前面に開放、式紙全てを弾き飛ばす。

俺達の前方に姿を現したのは、


「スペルビアッ!?」


インウィディアが現れた者の名を叫ぶ。

そう、現れたのはスペルビアこと草壁 操さんだ。

近くに来ているのには気付いていた。

この赤い夜で俺がもっとも警戒すべきは使徒4人よりも、

こいつと虹のゲオルギウスの二人だろう。


「スペルビアッ、我らの邪魔をするなッ! そこを退けッ!!」

「今のお前らの実力では、あやつらには倒すことはできない。今は退く―――」

「くッ………」


流石の操さんもここでいきなり手駒を全て失うようなことは避けたいと見える。

もっとも、今ここで退いて体勢を立て直しても、結果は変わらないと想うがな、

仮に今ここで操さんが連中に加わって戦うことに成っても、

俺が操さんの相手をすれば、栞一人でも他の三人を相手に出来るだろう。

いや、ここは操さんの相手を栞に任せて、他の三人は俺が瞬殺するか、

そうすれば操さんも仕留めることが出来るかもしれない。

無理だな、よく考えれば、栞は役割的には砲撃支援だろう。

俺が前衛を務めるから結局は4対2で戦うことに成るのか?

連中が今は引くならいくら考えてもせん無いことだ。

俺の予測が正しければ奴の目的は現状維持、

刻の終わりを少しでも引き伸ばすことのはず。

自分が戦うことは可能な限り先送りにしたいだろうが、

俺とリルが相手では話は別だろう。

奴も自分でないと俺達の相手は勤まらないと解っている筈。

それにイレギュラーである俺は出来るだけ早く排除したいはず、それが実力者なら尚更。

本来ならここで俺は無理でもリゼットだけは殺す。

でなければ確保して置きたい筈だろうが、それだけは俺がさせん。

スペルビアがわざわざ出てきたのも、俺が奴に殺気を放ち牽制していたからだろう。


「一度、体勢を立て直す」


スペルビアが術を放つが、それは唯の目くらまし、

俺は放たれた術を難なく弾いてみせる。

奴らは黒い霧に包まれながら陽炎のように消えていった。


「どうやら、本当に引き下がったようだな」

「………」


栞は無言、その表情からは何を考えているか、

今の俺には読み取ることは出来なかった。


「ご無事ですか?」


戦いが終わったことを感じ取ったのか、

後方にいたリルが俺たちに駆け寄ってきた。

危なげな場面など無かったように思うが、

リルは俺たちのことを心配してくれているようだ。


「心配せずとも怪我などしていない」


俺は安心させるように軽く声を掛ける。

そしてこれからの行動だが、やはり美鈴たちの加勢に行くべきか、

向こうはまだ戦闘中のようだ。


「俺たちは美鈴たちの加勢に行こうと思うが、栞はどうする?」

「私は後方から観察させてもらいます」

「そうか、では俺たちは一足先に行かせて貰うぞ」


俺はリルに手を差し出し、人差し指と中指を額に当てる。

別に指を当てなくても出来るのだが、こちらの方が集中できるのだ。

それではいざ、跳ぶッ!!


――ピシュンッ!――


俺とリルが瞬間移動して出た先には、戦鎚を振り回すグラ。

そして、防戦一方の美鈴さん。

その巨体での攻撃、さながら嵐のような猛攻だ。

戦鎚を振り上げ今にも叩き付けんとするグラに、

美鈴さんは防御を固めるが戦鎚はフェイントッ!

手の甲を使った裏拳が叩き込まれる。

美鈴さんはかろうじで刀を楯に防御したが、

後方に吹っ飛び、叩き付けられた電柱を圧し折った。


しまったッ!!

活躍の場面、出のタイミングを完全に見逃した。

ここで助けに入っていればフラグが立ったかもしれないのに……


グラの背中からは赤く光る管が突出している。

っということは、すでにバーサークモードに入っているということか、

しかし、その程度のことでやられる俺様ではないわっ!


ダメージで身動きの出来ない美鈴さんにグラが追撃しようとするが、

両手、両足、胴に鎖が巻き付き動きを止める。

その鎖はアブラクサスが樹木を経由してはなったものだ。

なるほど、普通にやってはパワー負けするからな、

しかし、それも長くは持たんだろう。

もっとも、俺が一撃を叩き込むには十分すぎる時間だ。

敵は動かん木偶、ここは俺の新技を試すいい機会だ。

俺はグラの眼前まで一気に駆けた。


「「「「!!?」」」」


周りの連中がいきなり現れた俺に驚愕しているようだが、

勿論、俺はそんなことに構うことはない。


「終わりだ。我が糧となるがいい―――魔闘術奥義、御魂喰らいッ!」


俺の必殺の右腕がグラの胸を貫く。

グラの体は、黒い霧となり崩れていくが、

霧は四散することなく俺の腕に吸い込まれていく。

集束され一点に集まる。

集束させた闇を更に圧縮し、俺は自らの内に取り込んだ。

俺の新技・御霊喰らいは草壁の術を参考に創り上げた技。

敵の魂砕き喰らい尽くすという奥義。

今回は最悪、リーゼロッテを相手する可能性があるからな、

虚無(クリフォト)の魔石を砕くために編み出した。

正直、砕くことが出来るかは判らないけど………


とりあえずグラは倒し、一段落か、

俺は振り返り、周りの連中を見回す。

うむ、リル以外は驚愕呆然っといった感じだな。

俺はグラに殴り飛ばされた美鈴に声を掛ける。


「大丈夫か?」

「ああ」


美鈴さんは近付きながら声を掛ける俺に、

警戒しながらそう答える。


「そうか、それは何よ―――ッ!」


俺は腕を横薙ぎに振り払う。

甲高い音を立てて弾け跳ぶ側面から飛来したナイフ。

俺はゆっくりと、横へ振り向く。

そこに立っていたのは、弾き飛ばしたナイフを受け止める広原 雪子。

彼女は溢れんばかりどころか、溢れまくっている殺気を俺に向けている。


「何のつもりだ、貴様――」

「………」


雪子は無言、留まる事のない殺気を俺に向けてきている。

常人なら倒れてもおかしくないくらいの殺気だ。

もっとも、それは常人の話で、俺にとっては大した事はない。

しかし、鬱陶しい事には変わりない。

これから殺り合うなら、心地いいものだが、

一方的に向けられているとストレスが溜まる。


「殺り合うつもりなら受けて立つぞ。
売られた喧嘩は高値で買う主義だ」









あとがき

雪子と一触即発、こんな感じで今回は終了。

この状態のまま次回に続く

それでは次回展開予告、

1、懐のでかさを見せるイーガス。スルーで水に流す。

2、ここは上下関係を明確にする為にも一戦やらかす。

3、沸点が低いイーガス、敵対者はぶっ殺す。

この内どれかの展開で行きたいと想います。

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




[11759] イーガス VS 雪子  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e E-MAIL ID:650589d2
Date: 2010/10/18 23:15


「殺り合うつもりなら受けて立つぞ。
売られた喧嘩は高値で買う主義だ」


俺は今まで生きてきた中でも余り経験のないことに、

内心冷や汗を、大量に掻いていた。

今までの人生全部振り返っても、少女とガチで殺り合うなんて、

正直初めてじゃないだろうか、

しかし、ここまで来たらもはや後には引けん。

俺は例え相手が女子供でも一度始めてしまえば、止める事は出来んッ!!

俺は向ってくるなと祈りながらも雪子と対峙したが、

俺の思いは通じることなく、雪子は正面から掛かってきた。

その尋常ならざる動き、正にゼロトップと呼ぶに相応しい。

初動無し、ほぼノーモーションから、

一気にトップスピードに至る凄まじき瞬発力。

瞬間移動のごとき速度で俺に間合いを詰める。

俺は正拳突きで迎え撃つ。


「はあっ!」


雪子は俺の正拳突きを身を屈めて紙一重でかわし、

擦れ違いざま、その手に持つ大型ナイフでの連撃を繰り出す。

その攻撃は全て人体急所を切りつけた。


―カキカキカキカキカキンッ!!!―


「――ッ!!」


その攻撃は機械の如く寸分違わず正確無比だったが、

連撃は全てこの身に弾かれた。


残念ながら、その程度の攻撃では俺の装甲に傷一つ付けられんッ!

俺は後方にいる雪子に対し、身を捻り裏拳を叩き込む。

雪子は俺の攻撃を二本のナイフをクロスさせ受け止めたが、

後方に吹っ飛んだ。


「――?」


しかし、雪子は空中で宙返りし、見事に着地して見せた。

やはりな、今の裏拳、インパクトの瞬間の感触が妙だった。

恐らく拳があたる寸前、自ら後方に跳んで威力を殺したな、

やはり相当なる体捌きだ。

この身体能力にこの技量、少々厄介ではあるが、


「ふむ、なるほど、確かに相当なる技量ではあるが、その程度か――」


俺はあからさまな挑発を口にする。

俺の思考は今はまだクールだ。

もっとも、冷却装置なんてものは積んでないから、

一度熱くなってしまうと止めるのに苦労する。

だからこそ、ここは余裕を持って振舞うべきだろう。


「少々遊んでやろう。 格の違いというものを教えてやる」


俺は自分の冷静さを保つ為に更に相手を挑発。

カモンッと指を来い来いと余裕を見せる。

戦い続けると、どうしても熱くなるからな、

特に雪子の場合は殺気がなかなかのモンだから、

うっかり加減を間違えるかもしれん。

だからこそ力を防御に集中して、

装甲密度を普段よりも更に上げているのだ。

この面子の前で、スプラッタを披露するわけにはいかんからな。

まあ、雪子は平気かもしれないけど、

そう考えると気が楽かもな。

俺としては戦いはガチに殴り合いが好みだ。


雪子は再び俺に突撃してきたが、今度は構えたまま待ち受ける。

雪子は構わず身を低くして、懐に滑り込みナイフを振るうが、


「――ッ!!!」


俺はそのナイフを両手の指で挟んで受け止めた。

そして、看破入れずに雪子の腹に膝を叩き込む。


雪子の攻撃はその正確さが仇になる。

普通の人間なら、気付かぬ間に切り刻まれるだろうが、

俺にはしっかり見えている。

そして、その攻撃の軌跡に虚実は無く、急所に向って最短を真っ直ぐ突っ走る。

ぶっちゃけ、攻撃がどこに来るか楽に読める。

これではいくらスピードがあっても、俺には通用せん。

流石に見えんぐらいのスピードになってくるとそれも無理かもしれんが、


雪子は吹っ飛び塀叩きつけられたが、すぐに立ち上がる。

そして、疾風のような速度で俺の周りを駆け回る。

攪乱のつもりだろうが、俺は瞳を閉じて雪子の気配に集中する。

雪子は俺の後方から仕掛けてきたが、俺は尾で迎撃する。

鞭の如く振るわれた尾を跳び上がる事でかろうじで回避したが、

身動きの出来ない空中にいる相手を俺が逃すはずも無く。

俺も追撃に飛び上がり、雪子を更に上空に蹴り上げる。

空に蹴り上げた雪子を、宙を飛び先回り、

両手を組み合わせ、頭上から叩き下ろす。

雪子も身を捻りナイフを叩き付け迎撃したが、

勢いのままに雪子はコンクリートの地面に叩きつけられた。

俺は砕けた地面を見下ろしながら、ゆっくりと地面に着地する。

そして、陥没した地面からゆっくりと雪子が起き上がる。

雪子の姿は、血濡れでボロボロ、手足が在らぬ方向を向いている。

怪我は全身粉砕骨折レベルだと思ったが、その傷は徐々に治っていく。

しかし、問題は別のところだ。

それは、服がもう殆んど残っていない……

グラとの戦いですでにボロボロだったのに、

俺と戦って、引きずったり叩きつけたりしたから、原形を留めていない。

ほとんど下着だけに近い。

そして、かろうじで手に持つナイフも、

片方は刃が欠けているし、もう片方は柄の根元から折れている。

これ以上の戦闘は不可能だろう。

俺も体が熱くなってきたからな、

言っておくが戦意が向上して来たという意味でだぞ。

変な想像をした奴は頭をカチ割るぞ。


「もうこのぐらいでいいだろう。
これ以上やっても、俺には勝てん」


俺は闘いの終わりを告げる。

雪子はまだ再生の途中だが、構えをとろうとする。


「よもや貴様、自分が不死などと思ってないだろうな。
これ以上続けるなら、本気(マジ)でその魂、喰らうことになるぞ」

「………」


雪子は無言のまま動こうとしない。

動こうとしないのは怪我が治りきっていないからか、

それとも……

俺は溜め息を吐いて辺りを見回したが、

その時俺はふと気付いたことがあった。

駆や美鈴たちは警戒したまま動いていない。

リルは心配そうにこっちを見ている。

俺は気付いたのはそんなことではなく、

地面に転がる何か、小物入れか何かのケースに見える。

俺の殆んど足元に落ちている。

雪子の方を見る。

額から流れる血で見えづらいが、よく見れば目が左右を動いている。

何かを探しているようだ。

そして、先ほども言ったが、服は殆んど残っていない。

下着が原形留めているのが奇跡を通り越して作為的に見える。

なるほど、つまりこれは“メガネケース”だ。

俺は足元にあるそれを拾い、


「――ほれ」


雪子に向って、軽く投げた。

雪子は折れたナイフを捨てて、それを受け取った。

もう片方の残ったナイフをかろうじで足に残っているホルスターに収め、

ケースから眼鏡を取り出して、身に付ける。

アレだけ派手に遣り合ったら、

例えケースに入れてあっても中の眼鏡は砕けてそうだが、眼鏡は無傷だ。

そして、雪子は……


「あは☆ おじさんすごいですね。わたしここまでされたのは初めてですよ」


そんな感じの、第一声だった。

その一声に俺は即行言い返した。


「おじさん言うな、俺の名はイーガスだ。
そして呼ぶならせめてお兄さんと呼べ」


俺はタオルを取り出して雪子に放り投げる。


「あはは、そんなに怒らないでもいいじゃないですか」


雪子はタオルを受け取りながら、そんなことを言う。

ありがとうございま~す。といいながら体を拭き始める。


「それにしても珍しい眼鏡を持っているな」

「あは、わかるんですか?」

「まあな、その眼鏡、強力な暗示が掛けてあるな、
貴様の今の人格は擬似的に作られたものということか」

「一目見ただけでわたしの秘密を見抜くなんて!」


雪子は驚愕ッ! という顔をしている。

まあ、初めから知っていただけなんだが、

そんなことを話しているうちに周りの連中も気を取り直したようだ。

そして俺の傍ら来たリル、


「スイさん」

「見ての通り、まったく平気だ。
とりあえず、リルも挨拶したらどうだ?」


俺は雪子を指差しリルを促す。

リルは早くも慣れてきているのか普通に挨拶する。


「リゼット・ヴェルトールです。 スイさんからはリルと呼ばれています」

「因みにスイさんは俺の愛称だ」

「はいはい、わたしは広原雪子でございま~す。
わたしは可愛くユキちゃ~んと呼んでくださいね♪」


そんなことを交わしている内に、

空間が静止するような感覚が駆け抜ける。


「あ、まずいかも……」


っと雪子の声、俺は傍にいるリルの頭に手を載せる。

そして、赤い夜が硝子の如く砕け散る。

いつもどおりの日常の姿が目の前に広がった。

そして雪子の姿は、下着の上に血塗れで真っ赤なタオルが一枚。

俺はジャケットを取り出し、頭から被せる。


「わあ☆ 見えません見えません、前が見えません」


明らかにふざけているな、

まあ、別にいいけどな、これ以上居ると面倒になりそうだし、


「じゃ、俺たちは行くわ。 まあ、仲良くやれや」


それはしゅたっと美鈴たちに手を上げてこの場を後にする。

リルの手を引き、すたこらさっさと逃げていった。





それからまた数日、今日は修行も午前中で終了。

今は休息、町に出て、ぶっちゃけ遊んでいる。

レジャワー、昼間からゲーセンで遊んでいる。

暫く前は最新作らしい、『メルティ・キス・イクゼクス』をプレイしていたが、

混んで来たから退かせてもらった。

向かい来る奴をバッタバッタと返り討ちしていたが、

流石の俺も連戦していたら一回くらいは負ける。

常人を遥かに越える反射神経と直感で勝負していたが、

少々技量が足りなかったか、一撃決まったところを連続コンボでキルされた。

それ以降はリルと一緒にメダルゲームやクレーンゲーム・etcで遊んでいる。

メダルゲームはメダルを持ち前の反射神経と力を使って、

ガッポガッポと稼いだ。

クレーンゲームは、かなり苦戦したが、

最終的には力を使って、ぬいぐるみを穴に落としてしまったりとか、

ガラス越しに軽く衝撃波を飛ばすのは、かなり難しかった。

他にも色々やったな。


今はゲーセンを出て、クレープを食いながら歩いているが、

どうも妙な気配を感じるな、どうやらイベントが起こっているようだ。

そんなことを考えていると、栞の魔力を感じた。

どうやら高速で移動しているようだ。

おそらく先ほど感じた気配の場所に。

しゃあない、これは俺たちも行くしかないか、


「行くかリル」

「わかりました」


どうやらリルも、気配を感じていたようだ。

徐々に度胸もついて来ているようだし、これは行幸だな、

幸い場所はそれほど遠くない。

俺たちはすぐに駆け出した。


俺たちがたどり着いた場所には、

天見や栞、紅野と対峙する同じ姿の少女が二人。

長いロングのピンクブロンド?の髪が特徴的な少女、

吾妻 汐音がそこに居た。

他には、驚愕している活発そうな雰囲気の奈月 香央里、

サル面、でもないが、やはりサルみたいな印象が強い照屋 匡。


しかし、吾妻は歪な笑みを浮かべた片方が、もう一人の方を後ろから捕まえている。

そして天見たちは吾妻を周囲から包囲している。

考えるまでも無く、状況は見たまま、後ろの捕まえてる奴がドッペルゲンガー。

っていうか、あんな歪んだ顔の奴が一般女学生で堪るかッ!!


「面白いことになっているな」


そう言って俺は栞の隣に並ぶ、リルは後方待機。

全員が俺の方を見るが、軽く答える。


「相手が木偶なのは物足りないが、助太刀してやろう」

「ふふふ、ははははは……ッ!」


いきなり壊れたように笑い出す木偶。

訳のわからん奴だ。

少女の姿じゃなかったら頭カチ割っているぞ。


「Mirror(ミラー) Maze(メイズ)……ッ!」


笑いをやめた奴の紡ぐ呪文と共に放たれた眩しい閃光。

その光に対して、携帯を開き駆ける天見、


「Yatezirah(イェツィラー) Code(コード)! Baldanders(バルトアンデルス)!」


現代魔術で人体強化し跳び掛るが、カウンターをくらい吹き飛ばされる。

今のは魔術が発動していなかった。

閃光から姿を現したドッペルゲンガーの姿は、

手足の長い、マネキンのような木偶。

そのあとも紅野が攻撃魔術を放とうとするが、

やはり魔術は発動しなかった。


「お前たちは蜘蛛の巣に掛かった虫のようなもの。
この娘を供物に捧げた後は、ゆっくりとお前たちの生気(オド)を選別してやろう」


そう言ってこの場から奴が立ち去ろうとする。


「栞、イーガス……!」


天見が最後の希望を託し、俺と栞の名を呼ぶが、

栞はまるで死体のように動かなくなっていた。

その姿はまるで最初から生きてはいない、人形のようだった……


「し、栞ちゃん……!? 栞ちゃんッ!」

「ど、どうなっちまってんだよ……ッ!」


栞を支えながら奈月と照屋が叫ぶ。

ドッペルゲンガーは笑い声を響かせながら、

吾妻を抱えて去っていった。


「汐音ーーーーーーーーーっ! ……汐音……」


紅野の叫びが周囲に木魂する。

そして今の俺は、


「スイさん……ッ!!」


地面に膝を突き、リルに支えられている。

そして全身からは黒い霧が噴出している。


「ま、まずい……」


今にも体が分解しそうだ。滅茶苦茶油断していた。

俺の体は生身じゃなくて、魔力や生気(オド)、闇精霊(ラルヴァ)で実体化している。

どうやら、ここでは俺の存在を維持するのは無理そうだ。

いったいどうするッ!?










あとがき

雪子との戦闘を終えたイーガスは虚ろなる鏡界編、

ドッペルゲンガー戦に突入かと思ったら早くもピンチ。

いったいこれからどうなるのか?

それでは次回展開予告、

1、俺の力を舐めるなーッ! 根性で存在維持。

2、まさかここでリタイヤ!? リル、結局俺はお前に何もしてやれなかった。

3、戦略的撤退ッ!! 次元の壁をブチ抜き逃走!

4、遂にやるときが着たか、リルとのユニゾンをッ!!

5、栞暫く体を間借りさせてもらうぞッ!

この内どれかの展開で行きたいと想います。

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




[11759] イーガス怒りの咆哮ッ!!  ×11eyes
Name: Nameless’◆cab9bd9e E-MAIL ID:650589d2
Date: 2010/10/21 18:38
ま、まずい。

今俺たちがいる場所は「憤怒(ツォーン)」の黒羊歯 鼎が造り出した固有結界の中だ。


固有結界―――あえて説明は必要ないかも知れないが、一応説明しておこう。

この世界の固有結界はFateの固有結界とは別物だからな。

魔術師が作り出した別の空間……組み上げる方法によって、異なる特性を持たせて作り出された空間。

これを固有結界と呼ぶ。


とりあえず仮称として、“ミラーワールド”と呼ばせてもらう。

この固有結界・ミラーワールドは、その仮称どうり全てが反転した鏡の中のような世界だ。

そして、この世界では一切の魔力、魔術が使えない。

正確には使うためには条件が存在する。

この世界は黒羊歯が創り出した人工翠玉碑が核になっている。

この人工翠玉碑を造るのに特定の因子を持った人間の生気(オド)が使われている。

そして、この人工翠玉碑は今はまだ未完成で、

特定の因子を持った人間一万人の生気(いのち)を生贄に捧げることで完成する。

現在の生贄の数は9998人、後二人の生贄で完成。

そして、この特定の因子を持つ生気(オド)を使えばこの固有結界内でも魔術を使えるようだ。

もっとも、この特定の因子を持つ生気(オド)を持ってたらしい、

“銀十字のアガタ”は生贄に捧げられ負けたらしいが、理由は不明なままだ。

この使徒、十四聖候補だったらしいが、ヘボかったのか?

口で言うほど簡単じゃないのか、何か他にも条件がいるのか?

それとも黒羊歯が無効化したのか? 真相は謎。

他には人工翠玉碑の端末である魔石を使えば魔力・魔術を扱えるらしい。

もっとも、この世界の法則を作っているのは黒羊歯だから、

時間は掛かるらしいが、法則を変えることもできるらしい。



そんなことを解説している内に、力がどんどん抜けていく。

このままでは、体が分解する。

どうする。

残りの力を全て使えば、この固有結界に穴を開けられるか?

しかし、破れなければ俺の存在は消滅する。

博打にはリスクが高すぎるか?

こうなれば、已むを得まい。

生き延びる為にも、この魂、他の体に移すしかない。

デビデビの主人公たちは一つの体に二つの魂で共存できていたし、

ヴァルター・ディートリヒは肉体が滅び魂だけになっても、

他者の肉体に摂り憑き生き延びていた。

少々(かなり)種類は違うが、この手のことはイリヤも得意としていた。

やってやれない事はない筈だッ!!


候補は現状二人、傍にいるリルか意識が殆んど無い栞。

リルならば俺の意識を受け入れてくれるかもしれない。

普通なら栞レベルの魔術師(マグス)相手に出来ることではないが、

今ならば成功する確率が高いだろう。

どちらにするッ!?

今の俺に悩んでいる時間など無い!

しかし、栞の義体を作ったのはソフィア・ミーズリー。

狂人でその名が知れ渡るマッドサイエンティスト。

ひょっとしたら、それ相応の細工がしてあるかもしれない。

他にも栞意識に弾き出される可能性も存在する。

両方とも俺なら耐え切れるかもしれないが、

万が一そうなったら、どちらにしてもアウトだ。

ここは説明・説得できるリルを選んだほうが無難か?

そうだ。

ここはリルの信頼を信じるしかないッ!


「スイさん―――ッ!!」

「ッ!!?」


傍に居るリルの叫び声、振り向く俺、

そして、その目に写る、瞳から輝き零れ落ちる涙ッ!!


「ガァ―――ッ!!」


俺は宙に彷徨っていた手を地に拳を叩きつける。

地面に罅が入るが、そんなことには構わん。



何てことだッ!!

この俺様が少女を泣かし、あまつさえ助けを求めるだとッ!!

何時から、そんなに日和ったッ! オレェエエエ―――ッ!!!

違うだろ、俺はそんな奴じゃねぇ!

俺は今まで死に掛けたこと何ざ、腐るほどあっただろッ!

其の度に血反吐を吐いて立ち上がったッ!!

全ては更なる力を求める為にッ!

イリヤやリルと一緒に居るのが楽しくて、そんなことも忘れたのかッ!

俺が死に掛け、逃げずに尚、立ち上がり、生き足掻き、更なる力を求めたのはッ!

サイヤ人だったからじゃねぇッ!!

迎い来る運命を叩き潰すという、俺の意思だッ!!!


「きゃッ―――!」

「GUッGOOOOOO、GAAAAAAAAAAAァァァ―――ッ!!!」


俺はリルを突き飛ばし、吼える。咆哮する。

大気がビリビリと震えるほどに、喉が裂けるほどにッ!

大地に亀裂が走るほどにッ!


今だ嘗て無いほど、俺の心が真っ赤に燃え揚がり、

理性を失うほどに、怒りに狂うほどの憎悪が全身を掻き回す。

荒れ狂い渦巻く、燃え滾る焔の如き憎悪は、


紅(あか)を通り越し、真っ黒に染まっていく。


これほど自身が不甲斐無いと感じたのは初めてだッ!

自分を殺したい、八つ裂きにと思うほどの憎悪、

自分の信念だけは曲げる事はしないと、生涯を貫き通した俺様が、

それを曲げるようなことを考えるとは、

そこまで腐ったかッ! オレェエエエ―――ッ!


俺はこの世界に来た時に誓ったはずだ。

リゼットを助けると、この誓いだけは絶対だッ!!

それが生きたいが為にリゼットに助けを求めるなど、

更に自らの心を欺き理由を付けるなど、

これは信頼ではなく、唯の依存だッ!!

そんなこと在っていい筈無いだろオオオオオ―――ッ!


「HAAAaGAAGAAAgAaRRRRAaAAAA―――ッ!!」


まだだッ! 俺はまだやれるッ!!

俺の体は、俺の力は、俺の意志はまだ存在している。

やってやる。思い出せ、俺ッ!

もう一度立ち上がれッ!

次こそは道を踏み間違わず、前に進めッ!

そして限界まで、

いや、限界を超えろッ!

泣き言など、全ては自ら倒れ伏してからにしろッ!!





この混沌に渦巻く黒き闇、燃え滾る憎悪を力に変えるんだッ!

裏暗黒魔闘術ッ!!

この燃え滾る魂で、器たる肉体を創り出すんだッ!

その行いこそ第3魔法に当るものかも知れないが、遣ってやるッ!!

イメージしろ、イメージするのは最強の自分。

そして、サイヤ人たる俺の最強の姿は、

超(スーパー)サイヤ人4ッ!!


「HAAアアAaアァァAAAァァAAAああAぁAAaa―――ッ!!」











時は少々遡る。

side リゼット・ヴェルトール


「いいか、戦いで一番大事なのは、何度も言うが心構えだ。
熱く滾る心に、氷の思考これが出来て一人前だ。
そして、状況に応じて素早く切り返られる思考、冷静な判断力こそが大切だ。
どんな予想外な事態が起こっても、冷静でなくてはならない。
例えどんなに動揺しても、すぐに切り替え対応できる柔軟性が必要だ。

そんな訳で、今から遊びに行くぞッ!」

「はい――?」


今日は午後から、私とスイさんは町に遊びに出かけました。

スイさんによると、


「偶には息抜きも必要だ」


ということです。


「そんなこんなでやって来たのは、ゲームセンター、略してゲーセンだ」

「ここが、げいせん?」

「そのとおりだが、何故にひらがな?」

「ひらがな??」

「いや、いい。気にするな。
おそらくどっかの誰かがひらがなの方が可愛いとか、そんな下らん思考をしたのだろう」

「???」


今日は“げいせん?” という所で、いろいろな“げーむ”と言うものをしました。

私は最初スイさんがしているのを見ているだけでしたが、

スイさんが、


「見ているだけでは詰らんだろう」


といろいろとやらせてくれました。

私は見ているだけでも面白かったのですが、

“てれび”の中で人が光ったり、跳ねたり、回ったりしているのは、

見ていて飽きませんでした。

私もやらせて貰ったのですが、結局よく解りませんでした。

他にもいろいろやったのですが、

“てれびげーむ”というのは私はスイさんがやって見せてくれるほうが楽しかったです。

他には“るーれっと”や“めだるげーむ”、“くれーんげーむ”というのをやりました。

スイさんは“くれーんげーむ”でお菓子やぬいぐるみを取ってくれました。

ただ、スイさんはクレーンを使わずに景品を落としていました。


「魔術や気は一般人には知られてはいけない。
俺はプロだから、他者に気付かれずに使用出来る」


と言っていました。

クレーンを使わない理由にはならないような?

取ってくれたぬいぐるみは、可愛い白のクマと黒のクマ。

ぎざぎざの歯をしてパンツを穿いた、尻尾が紐の変なネコ?とウサギ?



この後クレープを食べながら歩いていたんですが、

突然感じた異質な気配、不安になった私はスイさんを見ると。

スイさんも足を止めて、気配を感じる方を向いている。

そして別の方向から感じた強い魔力。

この魔力は栞さん!?

栞さんは最初に感じた気配の元に、高速で移動しているようです。


「行くかリル」


スイさんが声を掛けてきました。

何処に、とは言っていませんが、私にも何処に行くのかが解りました。

だから、私の返事は一言だけ、


「わかりました」


と答えました。

その後私たちは場所を感じた場所、

ランドマークタワーの方に向かいました。



目的の場所にたどり着いてみた光景は、

同じ姿の二人の少女を取り囲む、栞さんたち。

私にはどういった状況なのか全くわかりませんでしたが、

スイさんはごく自然に栞さんの隣に並びました。

私はその様子を見て、

少しだけ栞さんが羨ましく感じました。

今の私ではスイさんの後ろに居ることしか出来ませんから……


「ふふふ、ははははは……ッ!」


思考がそれていた私を現実に引き戻したのは、

不気味な、狂ったように響く高笑い声。

取り囲まれた少女の一人が、

歪なほどに口元を歪め、人の声とは思えないような、

いいえ、事実この声を響かせているものは人ではないはず、

人の皮を被っているだけの“人で無い何か”

伝わってくる気配から、それがよくわかる。

そして、これから戦いが始まるという気配も、


「Mirror(ミラー) Maze(メイズ)……ッ!」


“人で無い何か”が紡ぐ呪文から放たれる閃光。

私は眩しくて手で光を遮ったが、かろうじで見えた光に飛び込む少年。

眼鏡をかけた、確か天見さん、


「おおおおっ!!―――――ぐああああっ!?」


鈍い打撃音の後、吹っ飛ばされる天見さん。

光が収まった後に現れたのは、

今までに見たことも無いような不気味な外見をした人型の“何か”、

無機質でぬるっとした外見は、マネキン人情のように見える。


「汐音を……汐音を放しなさい」

「ふふふふ。はははははははは……!」


赤い髪の少女の声に、不気味な高笑いで答える異形の人形。

その手には、気絶した少女が抱えられている。

おそらく、彼女が汐音さん。


「何という僥倖か……。我が主人が望む供物が、一度に手に入ることになろうとはな」

「供物ですって……?」


赤い髪の少女の表情が、徐々に青褪めていく。

供物、それは確か供えモノのこと。

それが人であるなら、つまりそれは贄―――いけにえのこと。


「汐音を……放せぇぇぇええええっ!」


叫び声と共に人形に駆ける赤い髪の少女、


「Briah(プリアー) Access(アクセス)!
Yatezirah(イェツィラー) Code(コード)! Tesla(テスラ) Javelin(ジャベリン)ッ!!」


怒りを露にしたまま魔術詠唱、

攻撃魔術、射鷲雷槍(テスラ・ジャベリン)を放とうとするが、


「……! ……そ、そんな……?!」


振りかざされた手からは、何も放たれはしなかった。

射鷲雷槍(テスラ・ジャベリン)―――電撃を集束し、相手を貫く攻撃魔術。

それは風の属性に分類される、風精霊(シルフェ)の力を遣う魔術のはず。

しかし、それは発動の予兆さえ見えなかった。

魔力の流れ、気配をまったく感じることが出来なかった。

そして今は私自身の魔力も感じることが出来ない。

今この場で魔力の気配を感じることができるのは、あの異形の人形だけ、


「お前たちは蜘蛛の巣に掛かった虫のようなもの。
この娘を供物に捧げた後は、ゆっくりとお前たちの生気(オド)を選別してやろう」


異形の人形はそう言って、この場を去ろうとする。


「栞、イーガス……!」


天見さんが二人の名前を呼ぶが、

栞さんは地に倒れ、まるで人形のように動かなくなっていた。

その姿はまるで初めから生きていないかのような……


そしてスイさんは、

黒い霧を立ち上らせながら、今にも倒れそうなほどにふらついている。


「ス、スイさん……ッ」


私はすぐにスイさんに駆け寄り、その体を支える。

どうしよう、こんなことになっているなんて、

私の力ではスイさんの体を支えることは出来ず、

遂にスイさんは崩れ落ちるように、地面に膝を突く。


「スイさん……ッ!!」


体から噴出す黒い霧はどんどん勢いを増してきています。

苦しそうなうめき声を漏らすスイさんの手が、宙を彷徨います。


「スイさん―――ッ!!」

「ッ!!?」


私の声にこちらに振り向くスイさん、

私は宙を彷徨うその手を掴もうとしましたが、

その手は私に捕まえられることはなく、


「ガァ―――ッ!!」


拳を握りこみ、叫びと共に、地に叩きつけられました。

私は更に蹲るスイさんの傍に寄ろうとしますが、


「スイさ……、きゃッ―――!」

「GUッGOOOOOO、GAAAAAAAAAAAァァァ―――ッ!!!」


叫びを上げるスイさんに突き飛ばされました。

もう人の声には聞こえない叫びを上げ、咆哮するスイさん。

その姿は爆発的に噴出された黒い霧に蔽い尽くされていく。

スイさんを中心に暴風が吹き荒れ、大地に亀裂が走る。

そして黒い竜巻となったスイさん。

その竜巻には雷が奔り、その隙間から放たれ始めた黄金の光。

その光と雷は、次第にその色が真っ赤に染まっていく。

そして、一瞬にして一点に集束した竜巻は、

次の瞬間には世界の色を変えるほどに弾け飛びんだ。


消え去った竜巻、その中心から姿を現れたのは………











あとがき

イーガス怒り爆発ッ!! 次回どうなるのかっ! 後ご期待っ!

そんな訳で次回もよろしくお願いします。

今回は沢山の感想ありがとうございました。

やはり感想が多いとやる気も上がりますね。

逆にブーイングやパソコンが止まったりするとメッチャやる気が下がりますね。


今回いろいろ考えましたが、1番で行かせて貰いました。

しかし、次点の選択肢としては5番も捨てがたかったと思います。

作者に展開が予想できないという意味で。

フュージョンという意見も幾つか貰ったのですが、

11eyesにイーガスの相手が勤まる方は居ないでしょう。

かろうじで出来そうなのは、リルと栞のペアですが、

状況がまったく思いつかない。

とりあえずこの案は、保留で。

話は戻りますが、リクエストがあれば5番も書いてみようと思います。

比べて面白いほうをつづけるという選択肢もある訳ですし、

この話を越えることにはならず、ギャグに走る可能性が高いですが、

それでも興味がある方は、アンコールをお願いします。

このまま続けるならば、遂に姿を現すイーガス。

果たしてその姿はどうなっているのか!?

それではご意見・御感想そして、次回もよろしくお願いします。




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