身体障害者補助犬受け入れマニュアル<事業者編>
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7.トラブルとその対処

(1)ほかのお客様とのトラブルを防ぐために

 ほかのお客様と補助犬同伴者のトラブルを避けるためには、補助犬についてしっかり説明することが何より大切です。また、ほかのお客様が補助犬同伴者に直接苦情を言い、お互いに不愉快な思いをすることのないよう、施設従業員が間に入って説明をすることが望ましいでしょう。

    <お客様への対応例>

    1. お客様「なんで店のなかに犬がいるの? 入店禁止じゃないの?」
      スタッフ「この犬はふつうのペットではなく、介助犬(盲導犬・聴導犬)という身体障害者の方の手助けをする身体障害者補助犬です。補助犬同伴でのご入店(入館)は、身体障害者補助犬法という法律に則ってご案内しています。どうぞご理解いただけますよう、お願いいたします」
    2. お客様「犬って吠えたり、噛んだりするからいやなのよ。本当に大丈夫?」
      スタッフ「補助犬は使用者の方が責任をもって管理しています。また、公の場所でも迷惑をかけることのないようしっかりとした訓練を受けていますし、健康管理も徹底していますので、ご安心ください」
    3. お客様「まあ、とってもかわいい犬。頭を撫でてあげようかしら」
      スタッフ「申しわけございませんが、ただいま、この補助犬は仕事中でございます。仕事に集中できるようにあたたかく見守っていただけますよう、お願いいたします」
    4. お客様「私、犬が苦手なの。アレルギーもあるし困るわ」
      スタッフ「補助犬と接近することが心配など、不安や何か気になることがございましたら、スタッフに遠慮無くお申し出ください。双方が不快な思いをしないよう、場所を変えてご案内いたします」

    【犬アレルギーについての参考記事】
    犬アレルギーの原因は犬のフケと唾液と言われています。補助犬は十分な衛生管理されているので、これまで、航空機を含めて、補助犬の受け入れによりアレルギー事故が発生した事例の報告はありません。また、使用者も補助犬にコートなどの胴着を着せ、抜け毛対策に努めている場合もあります。しかし、犬アレルギーをもつ人にとっては、犬が清潔か否かの問題ではなく、犬の存在自体が精神的に大きな負担となることが考えられます。また現実にいかに犬が清潔であったとしても、個人によってはアレルギー発作の原因となるなどの事態も想定されます。アレルギーの有無は見た目では確認できませんが、アレルギーを申告されるお客様には施設側も配慮する必要があります。犬アレルギーのお客様が補助犬に出会ったら、アレルギーがある方にご自分から犬を避けていただくか、スタッフが間に入って、一時的にどちらかに別の場所に移動していただくようお願いします。

(2)もしも、補助犬による迷惑行為等があったら

 補助犬の衛生や行動の管理責任者は使用者本人です。補助犬がくさい/汚い/毛が大量に抜けている/座っている場所が邪魔になる/みだりに鼻をつけたりなめたりしている/落ち着きがなくて邪魔になる/激しく吠えるなど、万が一、犬による迷惑行為があった場合は、使用者にはっきりとそのことを告げてください。営業に支障を来すほど甚だしい場合はご本人に理由を告げた上で、補助犬法に則って「やむをえない場合」として同伴を断ることもできます。
 しかし、もし迷惑行為があったとしても、それは使用者個別の責任なので、補助犬使用者全体の判断にはつなげないでください。

※盲導犬使用者の場合は、状況がわからずに盲導犬を不適切な場所に伏せさせてしまっている場合があります。
そのことを使用者に説明して、適切な場所へ誘導します。聴導犬が吠えているのに聴導犬使用者が気がついていない場合は、本人に伝えましょう。

■雨の日の補助犬

 雨の日は、どうしてもしずくが犬の身体についてしまいます。使用者は、「ブルブル」(犬が身体を震わせてしずくをはらう動作)の指示を出して、なるべく迷惑がないところであらかじめ補助犬に身震いをさせるよう努力しています。
 それでも、補助犬が身震いしてしまうことは考えられます。周囲の迷惑も顧みずに、犬の身体についたしずくが飛び散ったり、施設内を汚したりするのは使用者のマナーの問題ですので、使用者に直接伝えましょう。「犬についた雨のしずくがほかのお客様にご迷惑をおかけしているようです。商品についてしまうのも困りますので、こちらで犬の体を乾いたタオルで拭いていただけますか?」「犬の体をタオルで拭くお手伝いをいたしましょうか?」などと声をかけて、ホールや階段の踊り場など、ほかのお客様の迷惑にならないところにご案内します。タオルは基本的には使用者が携帯していますが、貸し出しできる場合はそのことを伝えて必要かどうかを確認します。

(3)トラブルの相談窓口

 もしも、補助犬を受け入れたことでトラブルが発生した場合は、その原因が何であったかを適切に分析し、すみやかに対処しなければなりません。また、今後のためにも、トラブルはそのままにしないで、きちんと報告し、検討を重ねて解決を図ることが求められます。だれがどこに報告するか、あらかじめ内部連絡の流れ図を用意しておくことが望ましいでしょう。

トラブルの報告は、正しく補助犬が啓発され周知されていくためにも大変重要な問題です。
補助犬受け入れの際に起こったトラブルの報告や相談窓口は、下記の通りです。

このページは以上です。

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