コースはあるけど……施設は未完成。
主催者の謝罪で始まったF1韓国GP。

尾張正博 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Masahiro Owari

photograph by Getty Images

コースはあるけど……施設は未完成。主催者の謝罪で始まったF1韓国GP。

「このような不完全な状態でグランプリを開催しなければならなかったことに関しては、個人的に情けない気持ちだし、観衆に対して申し訳なく思っている」

 韓国初のF1グランプリ開幕を翌日に控えた10月21日木曜日。霊岩(ヨンガム)に建設された韓国インターナショナルサーキットの記者会見場に姿を現したKAVO(韓国オート・バレー・オペレーション)のCEO、チャン・ユンチョは詰めかけた海外メディアの前で謝罪した。

 チャンCEOがそう語るのも無理はなかった。

 心配されていたコースの視察は日本GP直後に行われ、韓国GPは開催1週間前にようやくゴーサインが出された。しかし本コース以外の準備を後手に回してしまったために、サーキット全体としての完成度がこれまでのどんな国の初グランプリに比べても相当に見劣りするという、大変みすぼらしい状態でのこけら落としになってしまったからである。

不安なままサーキットを訪れると……本当に未完成だった。

 11万人収容できるはずのスタンドの半分はイスが取り付けられておらず、一部のスタンドは骨組みだけの状態。ホームストレート上に架けられた韓国式建築を模したブリッジでは、瓦を一枚一枚固定する作業が日暮れまで続けられていた。

 サーキットの施設内においてでさえこのような状態なので、サーキット外の準備は推して知るべし。

 関係者用にあてがわれたホテルとサーキットをピストン輸送するシャトルバスの運行スケジュールは大幅に乱れた。また、関係者用ホテルの多くはビジネス用には相応しくない歓楽街の宿泊施設であったため、欧米人の多くが戸惑いを隠せなかった。

 その状況をチームスタッフから聞いたベッテルは、木曜日のFIA記者会見で思わずこう漏らしてしまったほどである。

「僕らドライバーは問題ないんだけど、チームのメンバーやジャーナリストの皆さんのホテルをどうにかしてほしいよ」

<次ページへ続く>

【次ページ】 不自由を楽しむタフな精神を持つF1サーカス団員たち。

筆者プロフィール

尾張正博

尾張正博

1964年、仙台市生まれ。93年にフリーランスとしてF1の取材を開始。98年から2001年まで、F1速報誌の「GPX」誌の編集長を務めた後、02年から再びフリーランスとしてF1グランプリを全戦カバー。グランプリ・トクシュウ(ソニー・マガジンズ)、F1速報、週刊オートスポーツ(いずれもイデア)、東京中日新聞などに寄稿。主な著書に「トヨタF1、最後の一年」(二玄社)、「F1事情通読本」(東邦出版)がある。


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