②電動二輪車に対する過剰な期待は禁物
またもう1点、自動二輪の日本市場の今後を考える上で重要なことは、「電動二輪車に対する過剰な期待をしないこと」だ。
今回の東京モーターサイクルショーで、米国製大型電動スクーター「VECTRIX」の日本発売が発表された。価格は130万円(2年間保証)で、後輪をインホイールモーターで駆動し、シート下部に搭載されるのは、中国・香港のGPバッテリー社製のニッケル水素2次電池(容量3.7kwh)。最高速度は時速100km、時速0~50kmの加速は3.6秒、満充電(200V、80%充電で所要2.5時間)での航続距離は時速48kmの定地走行で88km、同72kmで72km、同80kmで56kmだという。蓄電池の需要は、充電回数1700回、10年間で8万kmと説明された。同車両は、すでに欧米での発売実績がある。
またヤマハのブースでも、昨年の東京モーターショーでも展示し、今年後半発売予定である電動バイク「EC-03」が、同社電動アシストバイクPASのスポーティモデル「Brace-L」と並んで展示されていた。
こうした電動二輪車の登場をうけて、日本の一般メディアは「日産リーフなど4輪車と同じく、日本でも電動二輪車の時代が来るかも!?」と、安易な報道を繰り返している。だが、VECTRIXは、発売元である名古屋本拠の海外四輪・二輪車輸入業「ホワイトハウス」社の企業イメージリーダー的存在であり、また130万円という高価格もあり、全国規模での大幅な拡販が進むとは思えない。
また、ヤマハ「EC-03」についても、このサイズ感の電動バイクは、高品質な台湾製品、さらには車両品質は別として、低価格な中国製品が多数存在するため、もし「EC-03」の需要が増えれば、ライバルから攻撃が一気に加速する。
また、電動二輪車全体を見れば、日本には台湾でのLEVを含む電動二輪車の総括的な国家戦略が存在していない。車両の国際基準化(台湾主導のe3など安全規定を含む)も未確定であり、さらに電動四輪車との連携は事実上協議されていないのが実情だ。
以上にように、日本の自動二輪(オートバイ)市場は今後、縮小しながら様々な問題に直面するだろう。
この100年間ほど世界各地で、庶民所有の乗り物が「自転車→オートバイ→自動車」へと変化することが、「後進国→新興国→先進国」へと進むなかでの正常プロセスであった。
だが、世界市場でのパラダイムシフトが起こり、環境社会の実現が叫ばれ、移動体の電動化の波が押し寄せているなか、製造業での超成熟期に突入した日本。戦後の日本を牽引してきたオートバイ産業を、今後、日本国内でどうやって軟着陸させればいいのだろうか。
その方策を見出すのは、あまりにも難しい。