また詳しい車両分類は後述するが、道路運送車両法上での排気量51cc~125ccの「原付2種」で近年、日系の車両ラインアップが強化されており、そこに若者層の一部が移っている。これは彼らにとっては「自動車の代わり」であり、結果として、世に言う「若者の車離れ」の一因になっている。
これら様々な社会現象の相乗効果によって、70年代後半に生まれた「庶民派小型オートバイ」という市場は、もはや日本には存在していないのだ。
海外メーカー主導による高級志向に
翻弄された日系メーカーたち
ハーレーダビッドソン、BMW、KTM、DUCATI等、展示ブースの大きさも展示車両のインパクトでも、海外メーカーの存在感が大きい。
この3月26日~28日に東京ビッグサイトで開催された第37回東京モーターサイクルショーでは、外車が主役、国産車は脇役だ。2009年10月の東京モーターショー(千葉幕張メッセ)では、海外メーカーは、ほぼ不在だった。日本国内のオートバイ市場は、乗用車市場と正反対の図式なのである。
今回、東京モーターサイクルショーでの出展者数は、2009年の146社者から136社へ。来場者数は26日が1万737,307人(前年比12%減)、27日3万6570人(前年比1486%減)、28日3万8427人(前年比3%増)となり、東京モーターショーと比べると「リーマンショック後の不況の影響」は少ないように思える。
だが、場内で日系、海外系のメーカー、日系チューニング系、各種物販などの関係者の声を拾ってみると、だれもが異口同音に「一昨年からの売り上げ減少に、下げ止まる気配がない」と、弱音を吐いた。
思い起こせば、90年代から2000年代にかけて、海外オートバイメーカーによる日本市場への積極的な商品展開/店舗展開が続いた。「ハーレーに乗るという生活…」などと、価格帯100万円級の大型オートバイが、いわゆるライフスタイル系媒体でもてはやされた。
レザーファッションのコーディネーションの楽しみも相まって、大型オートバイを繰る女性ライダーも増えていった。こうした海外メーカー主導による高級志向の上昇気流に、日系メーカーたちは翻弄された。本来、北米仕様としてきたモデルを日本向けにお化粧直しするなどして、欧米勢の日本市場侵略に対抗した。
そうしたトレンドのなか、「ゲンツキ」も高性能化・高額化が進んだ。排気量50cc車でも新車価格は14~15万円となり、さらに高級イメージの車両は同20万円前後に価格上昇。こうなると、「法定最高速度が時速60km」、「2人乗りOK」、「トンネルや陸橋、または1部の有料道路走行OK」である排気量125cc車両(30万円前後)と価格差がなくなり、結果として「自動車代わりに125ccを買う」または「50cc級ゲンツキを買わずに、(電動アシストを含む)自転車を買う」という顧客の流れが生まれた。