|
木下昌明の映画批評「玄牝」〜すべては「お産」から始まった | ||||||
Menu
おしらせ
●レイバーネットTV 視聴ページ
●立山学「国鉄分割民営化の罪と罰」第1回・ 第2回・第3回(2010/7/16) ●「木下昌明の映画の部屋」を更新しました (2010/10/21) ●ニュースレター (No.39・pdf) をアップしました (2010/9/27) ●連載「飛幡祐規 パリの窓から」第12回 (2010/8/12) ●連載「黒鉄好のレイバーコラム・時事寸評」第7回 (2010/9/12) ●連載「江藤正修の眼」第2回 (2010/3/16) ●物品販売コーナーをご利用ください。 ●物販コーナー参加ご希望の方は 物販プロジェクトへ! ●韓国の情報は韓国の労働運動のページへ!
|
●映画「玄牝」 すべては「お産」から始まった 男なのに出産の映画には強くひかれる。昔、亡くなった妻が妊娠したとき、医師に「逆子」といわれ、逆立ち体操をくり返した。それが原因?で総胆管がつまり、緊急手術をして娘を早産した。以来、出産は命がけの仕事だと思うようになったからだ。 河瀬直美監督の「玄牝」は出産に関する基本を教えてくれる、男性も必見のドキュメンタリーだ。映画のトップシーンでも、妊婦たちに囲まれた主人公、吉村医院の吉村正院長が「お産の異常のいちばんの原因は不安です。普通の病院は『逆子は怖い、怖い』といっていろいろ体操をやらせて直せというが、やればやるほどみんなおかしくなっていく」と現代文化─その医療のあり方を批判している。 愛知県岡崎市にあるこの産婦人科医院の院長は「自然分娩」の大切さを妊婦に訴え、妊婦たちにそれを実践させる。病院の隣の古民家を開放して、全国からきた妊婦たちと出産を巡って語り合う場を設け、互いの不安を解消させていく。また、板戸をぞうきんがけするスクワットや庭のマキ割りなどで労働する喜びと筋力をつけさせる。なんと臨月の女性がマキ割り名人のように軽々とオノをふりおろしているではないか。 河瀬には「垂乳女」という自分の出産を撮った作品がある。その体験を生かして、今度は妊婦たちにカメラを向ける。なかには身をさらし私生活まで打ち明けてしまう者も。 圧巻はお産のシーン。うーんうん唸る妊婦に夫と幼子が付きそっている。赤ん坊が生まれると、汗まみれの母親は「ありがとう」を連発する。見守っていた幼子は涙をぬぐう。この子にとって生涯忘れられない体験となろう─人間はこのように生まれてくるのだ、と。よしもとばななは映画のチラシで「野性の獣みたいに美しい」とたたえている。命は、自然の移り変わりと同じように巡り巡っていくのだという河瀬の意図が画面ににじみ出ている。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年10月24日号) *映画「玄牝」は11月6日から東京・渋谷のユーロスペースでロードショー、ほか全国順次公開。(C)Kumie Created bystaff01 and Staff. Last modified on 2010-10-21 15:01:24 Copyright: default このページの先頭に戻る サイトの記事利用について |