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【芸能・社会】なぎら フォーク歌手デビュー40“執”年 「四六時中お前ら恋愛しかないのか」2010年10月21日 紙面から
フォークシンガーなぎら健壱(58)が20日、初の自転車本「なぎら健壱の東京自転車」(作品社)を出版した。愛車で実際に回った14コースのユニークなガイドだ。ちょうどデビュー40周年だけに、記念の作品かと思いきや、「全然」。もっと早く出す予定が延びてしまっただけとか。9日には、「40執念コンサート」を終えたばかり。ひょうひょうと生きてきたかに見える、しぶといオッサンの哲学を聞いてみた。 節目のコンサートは、今回も東京・有楽町のよみうりホール。なぎらと同世代を中心にほぼ満員の約1000人が集まった。全アルバムの中から必ず1曲は歌うという2部構成で約3時間半。この日のために作った「時代のG・1972年」に現役シンガーの心意気を込めた。 記念のコンサートには、いつも「執念」の文字を使う。「フォークソングという言葉が死語になりつつある時代に、執念でくいついてきた」意味だ。今、そのフォークの世界はどう見えているのだろうか。「若い人も出てきてますけども、私から言わせるとあれはフォーク調であって、フォーク風」と手厳しい。 同世代のシンガーは、ほとんどが途中で辞めずにどうにかこうにか続けている。「スゴイと思いますね。つまり生き方ですから、そこから歌をとるわけにいかないんでしょうね」。そして「ただのアコースティックというわけじゃない。そん中で喜怒哀楽や時代を歌ったりしてますから、そういうのが今のフォーク調には希薄だなと思うんです」。 さらにJポップに話を広げると、「詞が聞こえないな。それから、四六時中お前ら恋愛しかしてないのか、と。それも歌のテーマではあるんでしょうけど、もっと違うことあるでしょ」。今も歌い継がれる坂本九さんの「上を向いて歩こう」を引き合いに出して、「(今の流行歌は)残るのかなぁ」と首をひねった。 70年の中津川フォークジャンボリーに飛び入りデビューして40年。食えない時代には建設現場で働き、意に沿わない仕事でも事務所が入れたスケジュールを黙々とこなした日々もあった。「いろんなことをやらしてもらったから、そういう意味では短いのかもしんないですね」と振り返った。 長続きの秘訣(ひけつ)は、「出会い」という。「ここへついていけばオレは今の歌をもっと楽しく歌えるとか、新たな発見があるとか。結局、出会いと興味がうまく合体してくれたんでしょうね」。酒や街歩きなどの趣味が、近年の昭和レトロブームを見越していたようにも映る。「若い人も知ってるんですよ、今が面白くないって。パソコンは便利だけど、何か違うぞと。そうすると、あの時代はヒューマンで富んでたから、そこに今と違うものを求めるということで、みんなが気が付いてきてくれたかっていう感じじゃないかな」とサラリと言った。 カメラ、落語、プロレスに加え、これからも趣味の領域は広がりそうだ。今後の道筋は、「そんなに変わんないと思いますよ。やっぱり詞を大事に歌っていきたいし」とあくまでフォークシンガーが根っこだ。大好きな酒を友に、「風に吹かれる稲穂のごとくいきたいですね」。 (本庄雅之)
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