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【コラム 撃戦記】リスクを恐れてはダイナミックな技は生まれない2010年10月20日 ◆世代交代進まぬ2つの極真極真空手の最大勢力、松井章圭館長率いる極真会と、緑健児代表率いる新極真会が、それぞれ主催する「全日本空手道選手権大会」が迫っている。私は同大会のOBだが、両団体とも分裂前の第1回大会を引き継ぎ、今回が42回大会。新極真は今月30、31日に107人が出場、極真会は11月20、21日に128人が参加し、ともに東京体育館で熱戦を繰り広げる。 両団体とも来年の世界大会選考を兼ねるが、世界の強豪と戦える若手が育っていないのが実情だ。新極真は塚本徳臣(36)や塚越孝行(33)、鈴木国博(40)の古豪が健在。極真会は田中健太郎(29)を軸に若手への期待があるが、今大会から外国人も出場し、どんな戦いになるかふたを開けなければ分からない。 そこで、である。極真OBとして思うことがある。ルールも改訂が繰り返されて安全面が強化されたのはいいことだが、反則を恐れるあまり、技にロマンがなくなっているのが物足りないのだ。 たとえば、新極真の塚本が得意とする前方回転の胴回しけりは、思い切りのいい技だが、バランスを崩しやすい“捨て身技”でもある。倒れた相手への攻撃は反則行為だとはいえ、捨て身技を繰り出すには勇気がいる。 塚本はどんな体勢からでもこの技が出せ、連発もできるが、最近はスピードと切れがなくなっている。塚本に続くスーパーテクニックの実力派が出てきてほしいが、リスクを恐れてはダイナミックな技は生まれない。一向に進まない世代交代が歯がゆいのはそのためだ。若手の奮起に期待する。 (格闘技評論家)
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