外国人誘致で大田区景気↑　羽田新国際線

　羽田空港に４本目の新しいＤ滑走路（全長２５００メートル）が、２１日開業し、３２年ぶりに国際定期便が本格的に復活する。地元の東京都大田区では、あの手この手の外国人獲得作戦を練っている。旅館では割安の時間貸し、商店街発案の滑走路ハンバーグ、東京湾名物のアサリを入れたケーキも登場し、さらには銭湯では４カ国語に対応するなど、下町情緒あふれる独自路線で活性化を狙っている。

　羽田空港に近い萩中通り商店会で、国際化記念メニューが登場した。

　開店１８年目のステーキハウス「バッファロー」では「第４滑走路」なる創作ハンバーグをつくった。ガーリックライスを手ごねハンバーグで巻いた。総重量７００グラムで１８９０円。口の中で肉汁がほとばしり、仕込んだチーズの甘みも広がる。渡辺秀明店長（４９）は、六本木や新宿のディスコＤＪで活躍。両親の弁当店を受け継いで、９２年からステーキ店を開いた。ボーイング７４７をイメージして７４７グラムの飛行機型のジャンボバーグ（３１５０円）も商品化。「もうけは度外視。４カ国語のメニュー表をつくり、外国人のお客さんが指さしできるようにする」と話す。

　東京湾の名産アサリ＆シジミを使ったチーズケーキもできた。同商店会の谷口正樹会長（５６）の失言がきっかけだった。今年９月、羽田空港でのイベントで「アサリとシジミのケーキをつくる」と大見えを切った。心の中で「言っちゃった～」と冷や汗を垂らした。谷口さんは営業４１年目の不二家の店長。５度の試作を重ねて完成した。不二家ではオリジナルは商品化できないため、同商店会唯一の喫茶店「ラマージュ」と「バッファロー」で３００円で提供する。ラマージュの宮崎利幸店長（５２）は「おいしい」と絶賛した。

　都内最多の５７カ所の銭湯を有する大田浴場連合会では、羽田空港国際化をにらんで、３年前から外国人に入浴マナーを掲示した。今月からの新ポスターには、日本語、英語、中国語、韓国語の４カ国語で説明してある。同組合の近藤和幸会長（５９）は「銭湯の魅力を知ってほしい」と話す。以前から外国人は多かった。土足で入られたり、パンツで入浴、洗濯を始めるなどの珍現象もあり、ちょっとやそっとでは驚かない。

　都心の大型ホテルに対抗するのが、蒲田周辺に点在する旅館やホテルだ。区内３６の宿泊施設が委員会を設置。蒲田黒湯温泉ホテル末広では、朝６時のチェックインで正午までの部屋貸し、温泉入り放題で３５００円の料金設定をした。「マニュアルの時代じゃない。口コミで情報を広げる外国人に期待したい」と話す。

　羽田空港の地元ではありながら、素通りされてしまう不安もつきまとう。下町のアイデアが活性化への道を開こうとしている。【荒木俊晴】

　［2010年10月21日9時16分　紙面から］