きょうの社説 2010年10月22日

◎剰余金活用法案 「ねじれ国会」克服の試金石
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が抱える約1兆4500億円の利 益剰余金に関し、自民党が整備新幹線の延伸などに充当できる法案の提出を決めたことで、剰余金問題は来年度予算編成をめぐる今国会の大きな論点に浮上してきた。

 衆参の予算委員会では、自民党議員から剰余金を補正予算の財源に充てる主張が相次ぎ 、党内がまとまりを欠く印象を受けたが、新幹線など鉄道事業への活用を決めたからには、意思統一を図り、法案化を急いでほしい。

 今後は民主党の対応が焦点となるが、党内の新幹線推進組織も自民と同様の主張をして おり、政権党として整備新幹線への姿勢が問われる局面である。臨時国会で法案処理の展望が開けないなか、野党提出法案の対応は打開のかぎを握る。新幹線への剰余金活用は連立を組む国民新党も賛成し、与野党を超えた議論は十分可能である。「ねじれ国会」を動かす試金石にもなり得るのではないか。

 北陸など整備新幹線の未着工3区間については、「今夏まで」とされた着工判断が先送 りされている。最大のネックは財源問題と言われてきたが、活用可能な財源が目の前にあるなら、それをまず検討するのは当然である。

 今年4月の行政刷新会議の事業仕分けでは、鉄道・運輸機構の剰余金は国庫返納と判定 され、会計検査院も大半を国庫に戻すよう求めた。野田佳彦財務相が来年度予算への活用を表明したのも、そうした流れの延長線上にある。

 だが、事業仕分けでは、剰余金を機構に残すか、国庫に返還するかの選択しかなく、鉄 道事業への活用という視点はまったくなかった。会計検査院の検査にしても、剰余金を機構から切り離す論拠を示したことは評価できても、その後の活用は政治の判断である。

 最大の懸念は菅直人首相の推進姿勢が見えてこない点である。先の参院予算委で、菅首 相は整備新幹線に関し「高速道路がある部分に並行して新幹線が必要なのか」と慎重な物言いに終始した。理解不足の首相に認識を改めてもらうことこそ、党内の沿線議員に担ってほしい役割である。

◎食での地域おこし 地元の魅力を一品添えて
 石川県内で「食」による地域おこしの動きが広がっている。今年は小松市の「小松うど ん」などに続いて、加賀市でも新たに地元産食材や器などにこだわったメニューの認定に乗り出した。先行する金沢の加賀野菜を使った料理や能登の能登丼、白山ろくの白山百膳(ひゃくぜん)などは各地域で工夫を重ねて、認知度をより高める取り組みを続けている。

 北陸新幹線金沢開業に向けたアクションプランSTEP21の重点プロジェクトに「食 文化の魅力向上」が挙げられているように、石川の食文化は地域振興に大きな力となり得る。県は来年1月に「ご当地グルメ」を集めた食のイベントを開催して、県民への周知を図るほか、都内で開かれるイベントにも出展し、首都圏からの誘客につなげようとしている。県内の豊富な食材を生かした料理に、伝統工芸品の器や食にまつわる伝承などを組み合わせれば、料理の味わいも一層増す。その土地ならではの魅力を“一品”添えた食の地域ブランドを発信してほしい。

 加賀市の異業種交流会「加賀まれびと交流協議会」が計画している食の統一ブランド「 かがやき」は「加賀」の食材を「焼く」メニューで、地場産の器の使用、加賀にこだわる−など五つの定義を設けている。すでにカニやカモを使ったメニューの応募もあるというが、新たな趣向の料理を九谷焼や山中塗の器に盛れば、目でも楽しむことができる。加賀野菜と金箔(きんぱく)を組み合わせた品も生まれており、石川の食と伝統工芸のよさを実感させるアイデアを期待したい。

 さらに、「小松うどん」を芭蕉が称賛したというような食にまつわる逸話や風習なども 料理を通して伝えてほしい。食のストーリーは料理だけでなく地域の歴史や文化への関心を高めることになろう。

 「能登丼」はメニューの開発やキャンペーンなどを重ねて、能登を全国に売り込み、「 白山百膳」は南砺市五箇山との共同展開で、食を通した広域観光の取り組みを行っている。それぞれの「ご当地グルメ」が地域の資源を掘り起こして、石川の食の魅力を高めてもらいたい。