最高齢女優長岡輝子さん102歳大往生
ドラマ「おしん」などで知られる日本の最高齢芸能人で、女性演出家の草分けだった女優長岡輝子(ながおか・てるこ)さん(本名・篠原輝子=しのはら・てるこ)が、18日午前0時22分、老衰のため都内の自宅で死去した。102歳だった。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は長男の妻の篠原純子(しのはら・じゅんこ)さん。
長岡さんは、90歳を超えても現役だった。02年にアニメ映画「アテルイ」でアマババの声を担当し、ライフワークとしていた同郷岩手県出身の宮沢賢治の作品を岩手弁で朗読する活動を95歳まで続け、全国を飛び回った。その後、都内の自宅から高齢者用マンションに移り住んだ。クリスチャンだった長岡さんは、YWCAのクリスマス朗読会に欠かさずに出演し、99歳の07年に続き、100歳の08年にも宮沢賢治の詩を朗読したが、これが最後の公の場になった。戦時中に再婚した実業家の夫、1人息子はすでに亡くなっており、3人の孫らにみとられて静かに息を引き取った。
時代の先端を行く女性だった。東洋英和女学校を卒業し、築地小劇場研究生だった28年に20歳でパリに留学。藤田嗣治、岡本太郎らと交流しながら演劇を学び、帰国後に夫の演出家金杉惇郎らと劇団テアトル・コメディを結成、フランス喜劇を紹介した。金杉と死別後の39年に文学座に入団。杉村春子らとともに舞台に立つ一方、当時は珍しかった女性演出家としても活躍した。三島由紀夫、福田恒存の作品を演出し、64年に演出・主演「大麦入りのチキンスープ」で芸術祭賞を受賞。71年に退団し座友になった。
女優としても映画「本日休診」「早春」などで個性的な演技が注目され、ドラマでは83年のNHK連続テレビ小説「おしん」でおしんが奉公する「加賀屋」の大奥様役を貫禄(かんろく)たっぷりに好演。同年のNHK放送文化賞を受賞した。また、CDブック「長岡輝子、宮沢賢治を読む」で宮沢賢治の詩と童話の朗読に取り組む活動で菊池寛賞を受賞。文筆活動も行い、主な著書に「ふたりの夫からの贈りもの」がある。
[2010年10月21日9時25分 紙面から]
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