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成年後見制度10年 依然、普及に壁 必要なはずが、大半未利用 (1/3ページ)
判断能力が不十分な認知症の人や障害者を、法律や生活面で見守る「成年後見制度」。介護保険制度とともに高齢社会を支える“車の両輪”としてスタートして10年を迎えた。しかし、必要とするはずの大半の人が未利用だ。高齢者の所在不明が相次いで判明し、高齢者を取り巻く状況が問われる中、国内で開かれた世界会議では、現行制度の課題が浮き彫りになった。(草下健夫)
「人口8200万人のドイツで130万人が成年後見制度を利用しているのに対し、1億2千万人の日本では16万9千人。日本はもっと対応しなければ」
今月2〜4日、横浜市で開かれた「2010年成年後見法世界会議」で登壇したドイツ連邦司法省のトーマス・マイヤーさんは、成年後見の成功例とされる自国の現状を報告するスピーチの冒頭、こう指摘した。
◆医療受けられぬ?
最高裁の調べによると、昨年1年間の成年後見の申立件数は計2万7397件。制度が始まった平成12年度の9007件から大きく伸びたが、200万人規模とみられる認知症高齢者数に比べ、制度利用はあまりに少ない。
国内で利用が進まない背景の一つに、制度がニーズに応えきれていない実態がある。大きな課題とされるのが医療現場。現在の仕組みでは、後見人が、高齢者など本人の治療方法について医師から同意を求められても、答える権限がない。この点について、世界会議では赤沼康弘弁護士らが「制度の大きな不備。判断能力のない人が医療を受けられない事態が放置されており、早急な改善が必要」と強調した。
ただ、現実には治療が必要な人を放置できないため、後見人が同意せざるを得なかったり、医師がやむを得ず治療を進めたりするケースがあり、現場に困惑が広がっている。