チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[11860] 魔法少女シニカル★アリシア(A's編)
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/06/23 22:08
 前作『とある六課武装隊員の日々』応援ありがとうございました。
 Stsが終わってヤレヤレと思っていたところ、無印も書きたいなと電波が入ってしまいました。

 コンセプトとして
 ①無印ベースのオリ主ものである
 ②オリ主は管理局側の人間である
 ③オリ主というか、管理局の視線で無印を眺めていく
 ④公式だろうと納得出来ない設定は"修正"
 ⑤……テンプレ悪用、チート上等
 ⑥……StSに続くかは根性次第
です。

 複数視点の一人称小説は初めてなので変な処もあるでしょうが、まあひとつ、ヨロシクということで


履歴

2009/09/14 前書き、プロローグ、第一話同時投稿
2009/12/29 設定資料 投稿
2010/01/14 設定資料 追記 誤記修正
2010/01/18 無印完結 エピローグ追加 設定資料追記
2010/02/18 閑話1  追加 タイトル変更リリカル→シニカル
2010/03/30 A's編1話 投稿
2010/06/15 設定資料2 投稿



[11860] プロローグ
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/09/14 21:55

 at 次元空間内・時空管理局、次元空間航行艦船・アースラ


「みんなどう? 今回の旅は順調?」
 母さん、いやアースラの艦長がブリッジイン、艦橋クルーに聞く。
「はい、現在第3戦速にて航行中です。目標次元には今からおよそ、160べクサ後に到着する予定です」
「前回の小規模次元震以来、特に目立った動きは無いようですが……。二組の捜索者が再度衝突する危険性は非常に高いですね」
 アースラチームのスタッフは優秀だ。よどみなく答えが返ってくる。

 艦長はそれに満足した様に肯くと、エイミィからお茶を受け取る。
 えーと、エイミィ。砂糖何個入れた?
 旅よりも、母さんの糖尿への道の方が順調だと思う僕は、息子として失格なのだろうか?

「そうね……、小規模とはいえ、次元震の発生はちょっと厄介だものね。危なくなったら、急いで現場に向かってもらわないと…… ね、クロノ」
「大丈夫、分かってますよ艦長。僕はそのためにいるんですから」
 僕は自分のデバイス、S2Uを掲げて見せた。

 でも今回の件、気になっているは次元震だけではない。
 事件の発生現場は管理外世界、あの世界に縁がある人間が此処にいる。だから、
「しかし97管理外世界か……」
 僕は呟くと隣に立つ少女、自分を兄と呼んでくれる娘を見下ろした。




「しかし97管理外世界か……」
 クロにぃが呟いた。
 うん、そうだね。第97管理外世界だ。
 アタシに取って縁のある世界。
 一回行ってみたくて、でも機会がなかった世界。
 そしてアタシのルーツ、ルーツのヒントが在るかもしれない世界だ。

「ねぇ、リンディ姉さん、事件片づいたらちょっと観光とかしていい?」
 是非是非、色々見たい。この船に乗ってるのも、いろんな処を見てこいって義父さんに言われたからだし。
「シア、遊びに行くんじゃ無いんだぞ」
「ままま、クロノ君もそんな堅いこと言わないでも」
 クロにぃのお説教にエイミィが割り込んでくれた。エイミィもアタシの事情知ってるしね。

「アースラチームは優秀だよ、こんな事件チャッチャッと片付けて一休みしよう。ねぇ艦長」
「……そうね、まあ状況次第ね」
 二人に感謝、クロにぃも堅い顔してるけど反対はしてない。うん、みんな大好き。

「大丈夫ですよ、あたし達なら。何たってうちには『アースラの切り札』、クロノ君がいるんだし、それに……」
「うん、クロにぃが負けそうになったら、アタシが助けてあげるから」
 だから未来の義姉さんは安心してね。

「シア、君は……」
 だって模擬戦の戦績、アタシの方が勝ってるもんね。
「うん、期待してるよ『アースラの真のエース』さん」
 勿論、期待しちゃって♪
 捜索者なんてすぐ掴まえて、次元震なんてペペのペで押さえちゃうから。

 アタシはシア。
 アリシア・グレアム。
 時空管理局アースラチーム所属の嘱託魔導師、なのさっ!



  広い広い次元世界。
   その何処かにアタシのルーツがきっと在る。
    それを見たくて、でも知りたくなくて。
     それでもアタシは旅してます。

  嘘の体とほんとの心。
   魔法少女リリカル☆アリシア、
    始まるのさッ!!



PS1
 我ながら突っ込み所満載の魔法少女登場。
 さて何処まで突っ走ってくれる事やら。
 なお、ちゃんと女の子です、男の娘ではありません。二度ネタ禁止です♪

PS2
 グレアムってちゃんと名字として使えるんだね。名前の方だけかと思ってた。
 しかしアリシア・グレアム、自分で付けてなんだが据わりが悪い。

PS3
 アリシアの愛称ってやっぱりシアなんだろうな……
 私の別の作品のオリキャラに"詩亜"(神無月詩亜)が居るだけど。
 アリシアを親しい人にはシアと呼ばせようと思ってるんだけど要注意だな。

PS4
 次元空間をどうこうしているのに、何故に時空管理局。
 何処に"時"が入るんだ?

PS5
 アースラ初登場の時、後のとデザインが違いすぎる。
 もしかして変形するのか?




[11860] 第1話 最初ッからクライマックス、なのさっ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/12/27 17:42
 ブリッジクルー、みんなの視線がアタシに突き刺さる。むむむ、美少女は辛いぜ。未来のミス管理局は間違いなし。その時はサインしてあげるからね。

 ……うん、分かっている。分かってるんだ。
 みんなの視線はアタシと、スクリーンに映ってる捜索者の女の子とを行ったり来たり。
 みんなの目には疑問が、アタシの事情を知っている三人は辛そうな顔をしている。
 確かにこの世界には、アタシのルーツの手がかりがあると思ったよ。でもいきなりこれはないと思うのさっ!

 スクリーンに映し出されているのは二人の女の子。一人は白いドレスっぽいBJの子。
 もう一人は黒いマントを着ている子。
 そう、間違いない。あの子は     。アタシの だ。


「中心になっているロストロギアのクラスはA+。動作不安定ですが無差別攻撃の特性を見せています」
「次元干渉型の禁忌物品。回収を急がないといけないわね」
 報告を聞くとリンディ姉さんはアタシに向けていた眼を逸らす。その先にはクロにぃ。

「クロノ・ハラオウン執務官、出られる?」
「転移座標の特定は出来ています 命令があればいつでも」
「それではクロノ、これより現地での戦闘行動の停止とロストロギアの回収、両名からの事情聴取を」
「了解です艦長」
 クロにぃは口には何も出さず、アタシの頭を軽く撫でると転移装置へ歩いていく。無骨な優しさが嬉しい。
 そして、転送。

 アタシは一呼吸すると、ブリッジの後ろの方、リンディ姉さんの方に向かう。
 アタシが近づくのに気付くとリンディ姉さんは優しく微笑んで、招いてくれた。だからアタシはその胸の中に飛び込む。
 優しい感触と、暖かい匂い。

 今のアタシは、昔のアタシじゃない。
 部屋の片隅で膝を抱えて不安に震えてた日。本当を知ることが怖くて瞳を閉ざそうしていたあの頃。
 そんなアタシの扉を開いてくれたのが義父さんであり、リンディ姉さんやレティさん、クロにぃ達だ。
 だからアタシはそんなみんなの力になりたくて此処にいる。
 アタシはもう一度軽くリンディ姉さんに抱きつくと、体を離した。

「エイミィ、転送準備。アタシも出るのさっ」
 アタシの胸元のペンダント、アタシのデバイス、リニスが独りでに輝き出す。
≪バリアジャケット、セットアップ≫
 流石、相棒。言わなくてもちゃんと分かってくれる。

「あ、アリシア……」
 転送装置に向かおうとしたアタシを何故かリンディ姉さんが止める。振り返ると、
「気を付けてね」
 何処に持ってたのかハンカチフリフリ応援してくれる。ん、なんか気が抜けた。
 肩に変な入った力が抜けて、自然体。だから、
「はい、行って来ます」
 自然に笑ってアタシは現地に飛ぶ




 私は地面に降りてフェイトちゃんと向き合った。
 頭の上にはジュエルシード、でも、
「ジュエルシードには、衝撃をあたえたらいけないみたいだ」
「うん、夕べみたいなことになったら私のレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディシュも可哀想だもんね」
「……だけど譲れないから」
「私は、フェイトちゃんと話しをしたいだけなんだけど。私が勝ったら、只の甘ったれた子じゃないって分かってもらえたらお話、聞いてくれる?」
 フェイトちゃんは黙って、でも頷いてくれました。

 だから後は……
「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 レイジングハートとバルディシュを構えてぶつかろうとしたその時、二人の間に光が出現しました。
 光が消えた時、そこに居たのは一人の男の子。男の子はたった一人で私のレイジングハートとフェイトちゃんのバルディシュを止めていました。
「ストップだ、此処での戦闘は危険過ぎる」
 レイジングハートを動かそうとするんだけど、ピッタリ止められてしまってます。
「時空管理局執務官 クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」
 男の子の声を聞くと、フェイトちゃんの顔色が変わりました。なにか知ってるの?

「まずは二人とも武器を引くんだ。このまま戦闘行為を続けるなら……」
 地面に降りようとした私達ですが、

「フェイトぉぉぉ!!」
 突然の砲撃、撃ったのはアルフさんです。
 私も危なかったのですが男の子、クロノ君がバリヤ?を張って防いでくれました。
 でもその隙にフェイトちゃんが離れてジャンプ、ジュエルシードを取ろうとしました。そんなフェイトちゃんに向かって、
「させない、ブレイズ・キャノン!」
 クロノ君もドカンと魔法を撃ちました。それはフェイトちゃんに直撃して、あ、危ない。
 でも大丈夫、地面に落ちそうな処をアルフさんがキャッチ。

「逃げるよ、フェイトしっかり捕まって」
 逃げようとするフェイトちゃん達に杖を向けるクロノ君、だから私は、
「ダメっ」
 フェイトちゃん達を護るため、クロノ君の杖の前に出ます。
 このままフェイトちゃん達が傷ついて終わるのは、なんか違うと思うの。

 空に飛び上がったアルフさん。そのまま逃げようとしたところ、その目の前にまた光。
「ナイス、タイミング♪」
 そんな声と共にアルフさんが吹っ飛ばされました。




「ナイス、タイミング♪」
 アタシはリニスから伸びた魔法光で狼?、使い魔かな、をぶん殴った。
 良い手応えを残し二人は吹っ飛んだ。そしてこっちをキッと睨み、ポカンと口を開けた。
「アンタ……」
 ポカンと口を開ける狼、なんかプリティ。まあこっちはどうでも良い。大事なのはもう一人。

 金色の長い髪はポニーテールで纏められている。良いな、アタシは病院で邪魔だから切っちゃったんだ。
 ルビーの様な赤い瞳。華奢?とも言える細い体はマントとその下の水着? レオタード?のようなBJに包まれている。うん、なんか可愛くて良い。今度プログラムしてみようかな。
 現実逃避は置いておいて、一番大事なのはこっちをびっくりしたように見ている顔。
 アタシが毎日見ている顔、世界で一番可愛い顔。
 ……要するに、アタシと同じ顔なのさっ。

 覚悟してたことだけど、現実に目の前で見るとショックだ、流石に来る。色々来る。
 ふと下を見ると白いBJの女の子も驚いた顔でこっちを見あげている。まあ流石にそうか。
 だから一度深呼吸。目の前の少女に笑いかける。

「アタシはアリシア・グレアム。あなたの名前は?」
「あ、はい」女の子は眼をぱちくり、うん可愛い。「フェイトです。フェイト・テスタロッサ」
 テスタロッサ? どっかで聞き覚えが在るような? まあ、良い。次だ。
「フェイトさん、あなたにこんなことをしろって言ったのは誰?」
 要するに黒幕だ。
「誰って? 母さんだよ」
 かあさん? Carさん? かあSAN? いややっぱり、母さんか。……何でここでそんな単語が出る?
 この場面ではボスとかドクターとかマスターとか主とか大佐とか、そんな単語が出て欲しいんだい。
 アンタ、違法な     だろ?
 まあ、いい。次が一番大事なこと。
「えと、フェイトさんのお母さんの名前はなんていうの?」
「プレシアです。プレシア・テスタロッサ……」

 ……
 よく分からないけど、その名前を聞いた時、アタシの意識が一瞬飛んだらしい。
「シアッッ!!!」
 クロにぃの叫びでアタシが眼を醒ました時、目の前には大量の魔力弾!

 撃ったのは使い魔らしき狼。
 隙を付くような上等な動きじゃない、パニックで勝手に動いたと見た。
 だから威力はスカスカ、狙いも出鱈目。その全てをリニスが張ってくれたオートシールドが弾いてくれる。
 でも隙と言えば大っきな隙だ。
 その隙を突いて二人は、アタシとクロにぃから離れた場所を一目さんに逃げていた。

 だけど、甘い。
 アタシはリニスを構える。籠める術式はアタシの切り札、氷結属性付きの砲撃魔法。これなら二人纏めて落とせるのさっ。
 で、環状魔法陣が展開、アタシの大魔力を喰って……

「やめろ、シア!」
「あ、痛っ!」
 そんなアタシを止めたのはクロにぃだ。女の子の頭を殴るのは良くないと思うよ。
「彼等はもう封時結界を出た。外で使うには君のアレは強力すぎる」
「ちぇぇぇぇっ」
 滅多に撃てないからチャンスだったのに。ちゃんと手加減するのに。あの子に怪我させるつもりは無かったのに。
 あのアタシの を掴まえて、キチンとお話したかったのに……




 私とユーノ君の前に男の子と女の子が降りてきます。
 一人はクロノ君、もう一人は……
「よろしく、アタシはアリシア。アリシア・グレアムだよ」
 アリシアちゃんは、フェイトちゃんソックリの顔でニッコリ笑ってくれました。
 ……? なんか変だ?
「アリシア・グレアムちゃん?」
「ん? そうだよ」
 テスタロッサちゃんじゃないんだ。どうなってるの?

『まあ、細かい話は後にして……』
「うわっ」
 私の前にスクリーン?が浮かびました。映っているのは優しそうな女の人。

『クロノ、アリシアもお疲れ様』
 女の人がクロノ君とアリシアちゃんに話しかけた。てことは二人の知ってる人なんだ。
「済みません艦長、一組を逃がしてしまいました」
『まっ、戦闘行動は迅速に停止。ロストロギアの確保も終了。よしとしましょう。事情も色々聞けそうだしね』
 と、女の人、艦長さんは私を見てにっこり笑う。

『でね、クロノ。ちょっと事情を聞きたいから、そっちの子をアースラに案内してくれるかしら』
 アースラ? 聞き慣れない単語に私とユーノ君は思わず顔を見合わせてしまいました。




PS1
 なのは一人称が書きづらい。なのなの言わせれば言い訳じゃないし。

PS2
 ユーノに台詞言わせるの忘れた。まあいいかユーノだし。

PS3
 プロットではフェイトからプレシアの名前を聞き出すまで行かないつもりでした。プレシアが容疑者に上がるのは、ちと早いという判断です。
 ただし原作ではテスタロッサという名字からいきなりプレシアの名前が挙がっています。
 ……おい、次元世界、そんなに人が居ないのか? プレシア現役なのはクロノ生まれる前だろ。そんな昔の人間いきなり容疑者にするなよ。
 幾ら難でもおかしいのでプロット修正してここでプレシアの名前を挙げました。

PS4
 アースラが居るのは次元空間
 時の庭園が在るのは高次空間
 ……どう違うのは知ってる人、plz



[11860] 第2話 説明会とシュークリーム、なのさっ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/09/29 22:14

 変な図形、魔法陣が光ると私とユーノ君、それにアリシアちゃんは海浜公園じゃない別の場所に立っていました。
 変な色をした廊下が延々続いています。
 時空管理局とかいう建物の中なのでしょうか?

「ユーノ君、アリシアちゃん、ここって一体?」
「時空管理局の次元航行船の中だね」
 私が聞くとユーノ君が説明してくれます。

 次元航行船?
 アリシアちゃんが色々説明してくれましたが私にはチンプンカンプンです。いーですよ、わかんなくてもいいですよー。
 と私がいじけていると、いつの間にか傍にクロノ君が立っていました。
 私たちを何処かに案内しかけて、
「ああ、何時までもその恰好というのも窮屈だろう。バリアジャケットを解除しても平気だよ」
と言います。

「そうだね」
 とアリシアちゃんは黒いバリアジャケットを解除。
「そっか、そうですね。それじゃあ」
 私もバリアジャケットを解除しました。

「君も元の姿に戻っても良いんじゃないか」
 次にクロノ君はユーノ君に声を掛けました。元の姿?

「ああそういえばそうですね。ずっとこの姿でいたから忘れてました」
 ユーノ君が何故か光ると、姿が大きくなります。その姿はフェレットじゃありません。
「はあ なのはにこの姿見せるの久しぶりになるのかな」
 と笑った姿は私と同じくらいの歳の男の子。

 ………
 ……
 …えっっっっっっっっーーーーーーーっ!!
 うそ、うそうそ。ユーノ君ってフェレットじゃなかったの~!!!

 驚いた私にユーノ君は考え込んで、ポンと手を打ちます。
「ああ、この姿見せてなかったよね」
「だよね、だよね。良かった」
 じゃなくてじゃなくて、全然良くありません。着替えもお風呂も男の子と一緒にしちゃったよーーー。

「ふむふむ、なにやら面白い状況のようで。アタシにも教えてくれると嬉しいな♪」
「うん、アリシアちゃん、聞いて……、やっぱり聞かないで」
 こんなドジ、人には言えません。
「えー、いいじゃない……、痛っ!」
とアリシアちゃんの頭にクロノ君が拳骨。
「君たちの事情は知らないが、艦長を待たせているので出来れば早めに話を聞きたいのだが」
アリシアちゃんのツッコミ止めてくれて、クロノ君ありがとうなの。




「なるほどそうですか。あのロストロギア・ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね」
「うん、それで僕が回収しようと」
「立派だわ」
「だけど、同時に無謀でもある」
 クロにぃの一言で、どよんとスクライア君がしょぼくれる。

 アタシ達が居るのは艦長室。リンディ姉さんの仕事部屋だ。
 この部屋の内装はちょっと、アレだ。
 入った時、高町ちゃんとスクライア君もびっくりしていた。

 第79管理世界、この部屋はそんな世界のスタイルを取り入れている。
 ミッドの人であるリンディ姉さんがなんでこんなマイナーなセンスをしているのかは知らないけど、まあ意表を突くにはいいのかな。アタシもエイミィも最近慣れてきたし。
 アタシはお茶に砂糖を一つ。高町ちゃんが変な目で見るけどいいじゃん、このお茶苦いんだもん。

 いつの間にかリンディ姉さんとスクライア君が昔のロストロギア事件のことで盛り上がっている。
 違うか。隣で聞いてる高町ちゃんにロストロギアの恐ろしさを伝えて居るんだ。
 流石リンディ姉さん、こういう話術はうまいや。クロにぃも役割分担通り余計な口は挟まない。

 リンディ姉さんとクロにぃ。優しい人と怖い人。宥め役と怒り役。
 二人で尋問する時のマニュアル通りだね。出典はクロスフォード出版の『執務官への道、虎の巻・第二巻』よりなのさっ。
 この二人ならこの組み合わせがお似合いだね。
 クロにぃは本当は優しいけど玄人向け、アタシやエイミィクラスじゃないと分からないのさっ。

 でアタシはクッション役。高町ちゃん達も同じくらいの歳の子がいると安心だろうと言うこと。
 まあアタシとしては実際に尋問? 事情聴取? の現場を見られててラッキーなんだけどね。将来の志望の一つが執務官だから。


「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます」
「君たちは今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」
 リンディ姉さんが話を進め、クロにぃがピシャリと締める。でも、高町ちゃんは不満そうだ。

「でも、そんな!」
「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入して貰う次元の話じゃない」
「でも!」
「まあ、急に言われても心の準備が付かないでしょう 今夜一晩ゆっくり考えて二人で話し合って、それから改めてお話ししましょう」

 クロにぃが締めて、リンディ姉さんが諭す。こんなところが落としどころなのかな。
 一ヶ月一生懸命働いて、大人の都合でいきなり止めろ。これじゃあアタシだって納得できない。
 一晩ゆっくりと頭を冷やして考えてもらう。そして納得できなくても理解して貰う。これが大人の考えなのさっ。
 ……まあアタシも子供なんだけどね。
 でも、まあ、一晩ねぇ? ふむふむ。


「シア、二人を送っていってくれ」
 分かったクロにぃ。元の場所で良いよね? と、なにリンディ姉さん?
「アリシア、あなたも今日は色々あって疲れているでしょ。気分転換に外の空気を吸ってらっしゃい」
 ポンと渡された財布を見ると見慣れないコインや紙幣。現地通貨? 何時の間にゲットしたの?
 でも、確かに今ちょっとアースラに居たくない気分。リンディ姉さん、ありがとうなのさっ♪




 私とユーノ君は元居た海浜公園に帰ってきました。アリシアちゃんも一緒です。
 フェレットと人間の違いをお話して、仲直りして、ユーノ君は普段のフェレットの姿に戻って私の肩に。
 その間アリシアちゃんは物珍しそうに公園内をパタパタ走り回っていました。やっぱり違う世界の人には、この世界が変に見えるのかな。私たちがリンディ艦長の部屋を変だと思ったみたいに。

 一通り見て満足したのかアリシアちゃんが帰ってきました。
「ふう、なるほどねぇ」
「どしたの?」
「やっぱり世界が違うと空気が違うね。基本的なところは同じなんだけど、なんか匂いが違うというか肌触りが違うというか。やっぱりいいな、こういうの」
 アリシアちゃんは楽しそうに笑っています。その笑顔がフェイトちゃんに……ダブリません。
 同じなのに……。アリシアちゃんとフェイトちゃんは同じ顔なのに。

「ねぇ高町ちゃん、この街で美味しいモノって何かな?」
「美味しいモノ?」
「うん、お菓子とか。なんかお腹空いちゃった」
 ちょうど良いの。私はアリシアちゃんとお話がしたい。アリシアちゃんの事とかフェイトちゃんの事とか。なので、
「それじゃあ、家の店に来るの」
「家?」
「うん、家は喫茶店……ケーキ屋さんなの。家のケーキは美味しいって結構有名なの」
「へぇ、この世界のケーキかぁ……。うんうん、興味在る在る。さっさと行くのさっ!」
「こっちだよ」
 私はアリシアちゃんを案内します。
 ニコニコ顔のアリシアちゃん。だからそれに安心して、私は一番聞きたかったことを聞いてしまいました。

「アリシアちゃん?」
「なに?」
「えーと、アリシアちゃんとフェイトちゃんってどういう関係なの?」
 アリシアちゃんの顔から笑顔が消えます。冷たい沈黙です。だから、
「えーと、えーと、違うの。答えたくないなら答えてくれなくて良いの。
 ただ私はフェイトちゃんが寂しそうで、なにか私がしてあげられないかって。だからだから、アリシアちゃんが何か知ってたらと思って……」
 私は何言ってるんだろう。言葉がちゃんと纏まらないよ。そんな私を見てアリシアちゃんは溜息一つ。
「……多分」
 多分?
「もしかして、ひょっとして。まさかとは思うけど。それでも、でもどうなんだろう?」
 アリシアちゃんは色々言って、最後に一言、『妹かもしれない』と呟きました。




「いゃー、二人とも凄い娘達だね」
 わたしはピポピポっと二人のデータをスクリーンに出す。
「どっちもランクAAAの魔導師だよ。
 黒い娘の魔力値は143万、こっちの白い娘が127万。しかも最大時には三倍以上に膨れあがる。
 流石にシアちゃんには負けるけど、魔力値ならクロノ君を上回ってるね♪」
「魔法は魔力値の大きさだけじゃない。状況に応じた応用力と的確にに使用できる判断力だろ?」
 それはもちろんだよ。だからシアちゃんがエースでクロノ君が切り札。最後の最後で当てになるのはクロノ君。シアちゃんだってそれが分かってエースって名乗っている、筈だよね。

「確かに、凄い子達よね…… うちに欲しいくらい」
 いつの間にか艦長席でお茶を飲んでいたリンディ艦長がスクリーンを見つめていた。しかし欲しいって……
「……艦長」
「分かっていますクロノ。ここは管理世界じゃない。幾らミッドチルダの就業年齢が低いとは言え、管理外世界に
当てはめることは出来ない」

 えーとなのはちゃんだっけ? 管理外世界出身であんな子供、正式な入局はないでしょう。あって精々嘱託。
 あの子が義務教育を終えて、就職先に管理局を選んでくれるのがベストなんだけど。
 その為には管理局に好印象もって貰わないといけない。その点リンディ艦長は抜け目ない。なのはちゃんにシアちゃんを付けた。
 二人が仲良くなってくれれば自動的に管理局入りのフラグが立つのさっ♪ あれシアちゃんの口癖が移っちゃった。

「なのはちゃんはそれでいいとして、問題はこっちの娘ですよね」
 スクリーンに黒いバリアジャケットの娘を映す。名前は確か、
「フェイト・テスタロッサか」
 クロノ君の口調が苦い。まあ仕方ないか。
「この子が本当にシアの『妹』なら」
「そうね、背後にはそれなりの勢力が付いているでしょうね」
「エイミィ、この子が言っていたプレシア・テスタロッサという人物の洗い出しと……」
 はいはい、分かってます。ユーノ・スクライアの発言の裏付けね。
 ジュエルシードがユーノ君が言ったとおりに、ロストロギアの取り扱い許可を受けた研究所に運び込まれるはずだったのかを調査。

 運び込まれるはずのロストロギアが一ヶ月たっても届かない。なら研究所もスクライア一族も何かしらのリアクションを起こしているはず。でもその動きが見えない。
 なら何処かに疑うべき点が在るのかもしれない。
 ユーノ君の発言を疑う訳じゃないけど、これが大人の世界なのよね。
 なのはちゃんとユーノ君に一日あげたのは、この裏を取る時間が必要だから。ユーノ君が万一犯罪行為をしていても、なのはちゃんを置いてすぐに逃げることは無いだろうってこと。

「でもこんな調査してるって……」
「ああ、シアには見せたくないな」
「でも……」
「気付いてるでしょうね、アリシアは」
 うう、艦長空気読んでくれない、というか読み過ぎ。
「血こそ繋がってないけど、アリシアはあの人の娘さんよ」
 だから変な遠慮しないで、わたし達はわたし達のすることをする。だね。

 う~~ん、シリアスだよ~。ハードだよ~。大人の世界だよ~。




 う~~ん、どれがいいかな~。どれも美味しそうだよ~。どうしよ~。

 アタシはガラスケースの中のケーキをジッと見た。どれも美味しそうだ。
 ミッドチルダにも在りそうなモノ、見たことのないモノ。どれも美味しそうだ。なので、
「高町ちゃん、ここのお勧めって何?」
 お店の人に聞くのが一番さっ。
「なのはだよ」
 えーと、お勧めはなのはか。?見あたらない? 翻訳魔法の故障かな?
「私は高町なのは。高町ちゃんじゃなくて、なのはって呼んで」
「だが、断る?」
「にゃ、何で疑問系?」
 そっちかい。
「アタシは友達と仲間と家族しか名前で呼ばないのさっ」
「だから私たちもうお友達でしょ」
 ?何時の間にアタシは高町ちゃんとお友達フラグを立てたのでせうか? 恋人フラグで無いのを感謝すべきかな?
「さっき、フェイトちゃん達に逃げられた時だよ」
 言ってる意味がよく分からないんだけど?
「しっかり目を見て、名前を呼んだ。だから私たちはお友達だよ」
 ……ふむ、この世界独特の風習か。管理外世界に行ったらその世界の風習に合わせることも必要らしいが……。
「取りあえず、アタシは友達ってほど高町ちゃんの事を知らない。もう少し仲良くなったら呼ばせてもらう。これじゃダメ?」

 取りあえずの妥協案で高町ちゃんは引っ込んでくれた。
 で、高町ちゃんお勧めのシュークリームと珈琲が来るまで席で待つ。テーブルの向こう側には高町ちゃん。
 高町ちゃんはなんかチラチラとこっちを見ている。名前と友達の件であんなに強情だった思えない様子だ。というより名前で呼ぶのを断ったから、本当に聞きたいこっちの件を切り出せない、のかな?

 そういえば学校のクラスにもこういう子がいたっけ。
 嫌われたくなくて、良い子に見られたくて、変にオドオドして、一部の親友を除いてみんなに嫌われてた。
 高町ちゃんも実は親友は居るけど、友達は居ない子なのかな? さっきのお友達の件にしても、そうだとしたら納得できる。引くよ、普通。
 でも、まあ仕方がない。リンディ姉さんにも頼まれたことだ。管理局の好感度アップの為にもやることはやるのさっ。


「……アタシはね、拾われっ子なんだ」
 ガバっと言う感じ高町ちゃんがこっちを見た。凄い食いつき。

「アタシを拾ってくれたのが養父さん、ギル・グレアムって人」
 そう、四年前、第97管理外世界のイギリスって国の片隅で、ミッド語で肉声と念話で泣き叫いてた子、それがアタシだ。
 偶々養父さんの出身国であるイギリスにいたリーゼ達が、ミッド語で喋っている子供を不思議に思って管理局に連れ帰った。
 それから何やかんやあり、アタシは養女としてギル養父さんに引き取られることになった。でも、
「でもね、アタシには養父さんに引き取られる前の記憶がないんだ」
 管理局の医療スタッフが調べたところ、アタシは第97管理外世界ではなくてミッドチルダ人だそうだ。遺伝子とかミトコン……コウモン? とかがミッド人と一致するとのこと。
 ミッドチルダから第97管理外世界に移住した人のデータにアタシのものはない。だからアタシのルーツは不明だ。

「アタシに残っていたのはいくつかの欠片だけ。アリシアという自分の名前、リニスという優しい人の名前。
 そんなバラバラな記憶の中にあったのが妹が居たって記憶。それも名前も顔も覚えてない。ただ妹が居たことだけ」
 アタシにあるのは遊園地、湖、花畑。そんな断片的なイメージだけだ。

「でもでも、それじぁフェイトちゃんは?」
「アタシの妹かもしれないし、赤の他人かもしれない」
 そういうと高町ちゃんは泣きそうな顔でうつむいた。

 そんな高町ちゃんには悪いがアタシに取っては過去の、乗り越えた事だ。
 だからアタシはシュークリームとやらをパクリ。うーーん、美味しい。皮はサクサク、中はクリーミー。
 ミッドにはないタイプのケーキだな。お土産に買って帰ろ。
 珈琲は、これはミッドと同じか。苦いので砂糖を一つ二つ、クリームも忘れずに。
 近くに来たお姉さん、高町ちゃんのお姉さんだそうだ、に別のお勧めを聞いて頼む。こっちも美味しい。

「だからね、あの子、フェイトはアタシの妹じゃないかもしれない。でもアタシの妹かもしれない。
 ロストロギアを奪おうとするは悪いこと。妹が悪いことしてるならお姉ちゃんであるアタシが掴まえる。で、なんでそんな事をしているのか、させられているのか確かめる。
 これはアタシの仕事。高町ちゃんには邪魔して欲しくない」

 ケーキと珈琲がちょうど無くなった。この辺かな。落として上げる、のさっ。
「でも、高町ちゃんがフェイトと会いたいのなら、アタシが会わせて上げる」
 ガバって感じでうつむき気味の高町ちゃんが顔を上げる。

「アタシがあの子を掴まえた後、なんとか高町ちゃんと会えるようにリンディ姉さんに頼んであげる」
『出来るんですか、そんなこと?』
 この念はスクライア君か。だから、
『本当はダメ、でもね』アタシは二人にウィンク一つ。「管理局は泣いてる女の子のために、少しだけ見て見ぬふりをしてあげられる、そんな優しい集団だよ」

 ……多分、という一言は勿論口にも念話にも出さなかった。


 アタシはお土産のシュークリームを買うと店、翠屋か、を出た。
 日は暮れかけ辺りは真っ赤。この世界にも夕焼けは在るんだね。
 さて、色々言ったけど高町ちゃんには決定的な嘘をついた。アタシには妹が居たなんて記憶はない。ある筈がない。
 それでも、フェイト・テスタロッサ、あの子はアタシの『妹』なのだろう。
 失敗作であるアタシの後継として創られた。

 まあ、気にしても仕方ない。
 薄暗くなった街をアタシは一人ブラブラ歩く。リニス情報によるとこの街の治安はかなり良く、女の子が一人で出歩けるほど、らしい。
 そろそろ暗いのに車椅子の女の子とすれ違った。茶色の髪の、高町ちゃんやフェイトと同じくらい、アタシより少し年下の子だ。なんとなく視線が重なって、お互いに愛想笑いしてすれ違う。

 ……あんな子がこの時間に外に出られるのか。
 はは、確かに治安が良い。でも、なんか笑えない。ミッドチルダって色々治安悪からね。
 で、歩いていると見覚えのある場所に出た……見覚え?

 自慢じゃないけどアタシは頭が良い、そう創られたのだし。
 だから一回行った場所は大体覚えている。
 だけどアタシが此処に来たことがあるわけがない。いつものフラッシュバック、でもない?

 翻訳魔法のストレスで調子が狂ったのかな?リニスにも助けて貰ってるけど、マルチタスクの裏モードで常時稼働だからね。
 だからちょいと翻訳魔法を一時停止。
 養父さんの出身国の言葉、Englishというのは覚えている。でもこの国で使われているのは日本語とやら。表意文字で色々難しい。目から翻訳魔法は実は難しくてストレスが掛かるものだと幼年学校の先生が言っていた。文字と背景の切り出しが難しいとかなんとか。
 ちょいと休ませたので、再起動。で、試しに目の前にあった家の表札? を読んでみる。

 ヤガミ、?八人の神様か、贅沢な。
 しかし何故だろう? 八人の神様と読むべきなのに、夜の神様だと思ってしまったのは。




PS1
 なのはの性格が解釈しずらく、かなり苦戦。
  人の迷惑になりたくないの→我が侭を言わないの→人の役に立ちたいの→魔法で人の役に立ちたいの

  頑固一徹→『お話』なの→力(砲撃)でみんな押し通すなの
は根っこの部分で両立しないと思うんだが?
 なのはヘイトの場合、まだマシそうな上の性格が重視されるのが多いような。何故だろう?

PS2
 アースラ内部でのやりとり。
 『無謀』の一言でオリ主が良く切れる処だが、管理局的にはこんなところでないかい?

PS3
 艦長室。
 なんか間違えた日本文化と解釈されることが多いけど、似て非なる世界があると思う方が自然でないかい?



[11860] 第3話 特訓と将来の進路、なのさっ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/01/14 23:53
 僕たちを光が包み込むと、軽い浮遊感。次の瞬間僕たちは違う場所に立っていた。
 時空管理局の次元航行船、アースラの転送ポートだ。
「……いらっしゃい、高町ちゃん、スクライア君」
 そんな僕たちの前に待ちかまえていたのは金髪の女の子、アリシア。彼女は困ったような、咎めるような目で僕たちを見ている。
 うん、分かっている。僕らは彼女の忠告を無視した。嫌われても仕方ない。

 一晩二人で話し合って出した結論は、管理局に協力してジュエルシードを集めたい、だ。
 管理局のしようとしていることは、ジュエルシードの回収とフェイト・テスタロッサの逮捕の二つ。あの女の子となのはが戦うのは危険なので、僕としても止めて欲しいことだ。
 だから僕たちは、フェイトの方はアリシア、というか管理局に任せるにしても、ジュエルシードは任せてもらえないか、と提案した。
 こうすれば僕たちがジュエルシードを封印している間に、フェイトが襲ってきても対応できる。
 その提案にリンディ艦長は乗ってくれた。

 だから僕たちは、いや僕はこれからもジュエルシードに関わる事が出来る。
 最初、僕はジュエルシードから手を引くつもりだった。時空管理局が出てきた以上、素人の僕たちの出番は無いんじゃないかと思ったんだ。
 それに反対したのがなのはだ。何も出来ないかもしれないけど、でも何かしたい。みんなの住む世界のために役に立ちたい。なのはの思いを僕は否定することが出来なかった。

 だけどよく考えれば、僕の方こそジュエルシードから手を引くことが出来なかったんだ。つまりはジュエルシードの所有権だ。
 僕が中心になって発掘したジュエルシードは、今は僕たちスクライア一族に所有権がある。しかしこのまま回収を管理局に任せてしまった場合、所有権がどう転ぶか分からない。
 ジュエルシードの発掘には結構お金が掛かっている。最終的に管理局やその関連団体のものになるとしても、僕たちが売るのと、持って行かれるのとでは全然違う。
 管理局が回収したのだと所有権を持って行かれたら、僕は長老達にどんな目に遭わされるか分からない。

 ふう、アリシアはそんな僕らを見ると溜息一つ。となりを見るとなのはもバツが悪そうだ。
「あ……ちがうか」
 とアリシアは肩を竦め、二三回首を振ると表情を笑顔に変えた。
「うん、そうだね、これは違う。ここは、そう、いらっしゃい。なのは、ユーノ」

 え、名前? 僕となのはは思わず顔を見合わせた。彼女は友達と仲間と家族しか名前で呼ばない、と言っていた。だから、
「うん、よろしくなのアリシアちゃん!」
「よろしく、アリシア」
 僕となのはの返事にアリシアはチッチッチッと指をふり、
「アタシの友達はね、アタシのことをシアと呼ぶのさっ」

 うん、わかった。シア、これからよろしく。




「はい、そこそこそこそこっ」
「はい、はい、はい、なの!!」
 シアのコントロールする誘導弾をなのはが避けていく。上手い、魔法を手にしたばかりの子供とは思えない。

 正直素人がロストロギア集めに参加するなんて、僕は反対だ。だけど、これだけのモノを見せられると問答無用で反対とは言いにくい。
「おっきいの、いくよ」
 シアはリニスをグルリと一回転、その先端に砲撃の光が灯る。速い、僕とS2Uでは真似できない速さだ。

「なのはっ!」
 その砲撃をユーノの結界魔法が止める。前衛タイプではないとしても、彼のような補助系魔導師は居ると非常に助かる存在だ。
「今度はこっちの番。ディバィーーン・バスター!!」
 ユーノが作った時間で体勢を整えたなのはが砲撃。だがそんな見え見えの攻撃、シアに当たるわけがない

 シアは僕と同じくロッサとアリアの弟子だ。二人曰く『クロすけよりずっと鍛え甲斐がある』だそうだ。なんか兄貴分として色々情けなくなってくるので、この辺は考えるの止めよう。

 正直、シアには色々負担を掛けていると思う。
 シアもアレで暇ではない。シアは本来幼年学校の生徒だ。普段は学校に通っていて、今回のように戦力として必要な場合、艦に呼び出される。実際そんな生活だ。
 嘱託魔導師として活動する時は、公休扱いとは言え学校を休むことになる。
 出席日数はそれで何とかなるとは言え、問題は学力だ。管理局での仕事が学業に影響がない、成績が学校の上位をキープしている、それがシアが大手を振って嘱託魔導師を続けられる条件だ。
 だから艦に呼び出されても、時間がある時はプリントや課題に取り組んでいる。兄のひいき目ではないが、僕の妹分はかなり頑張り屋なのだ。

 ただし今回は勝手が違ってくる。
 艦のメンバーは基本的に自分達の役割を持っている。なのでなのは達の面倒を主に見るのは、分担の無い嘱託のシアと言うことになる。
 つまり自分の自由になる時間がかなり狭められてしまっているのだ。

 更に今のような戦闘訓練だ。
 素人の民間人を戦闘空間に連れて行く。それは僕らプロフェッショナルから見ると悪夢のような状態だ。だけど艦長との約束、ジュエルシードの封印を任せる、を考えると思考停止している場合ではない。
 さらに相手の戦力だ。今出てきているのはフェイト・テスタロッサとその使い魔だけ。だけど向こうの手勢がそれだけとは限らない。あの『フェイト』がシアの妹だとすると、一人とは限らないのだ。万が一『フェイト』が4人以上出てきた場合、今のアースラでは手が足りない。なのはにも戦って貰う事になる。

 だからそんなことになっても、なのは達が取りあえず怪我をしない程度に仕上げる必要がある。
 なのだが、実際悪夢のようだが、なのはとユーノに戦闘訓練出来るのはこの艦で艦長と僕、それにシアしかいない。
 武装隊の隊長クラスの人間は確かに彼女たちに対抗できるのだが、負けない勝ち方とか、実力を出させないで勝つとかそんな方法だ。なのは達を鍛えるベクトルの戦い方ではない。
 そんな場合に借り出されるのもシアだ。自力で勝り、不慣れではあるが戦闘方法を教える能力を持っている。
 本人は楽しいから気にしてないと言うけど、保護者である僕らとしては気にしてしまう。

 そんな事を考えている間に勝負は決まっていた。

「にゃ、にゃ、にゃに?」
「なのは、なんとかする。少し待って」
 いつの間にか、なのははバインドに捕らえられている。ユーノが解除しようとするがタイムアウトだ。
「どっかーーん!!」
 シアの放った砲撃がなのは達に直撃。パーーンとばかりにはじけ飛ぶ。
 見かけだけのなんちゃって砲撃。派手だけどダメージ0、シアとの模擬戦で何回か見せられた。
 当てられたなのはとユーノは目をパチクリさせている。

「さてと、なのは。敗因は分かるかな?」
「えーとね、……にゃははははは」
「だからね、何度も言うけどなのはの動きは単純すぎ。砲撃なんてただ撃つだけじゃ当たってくれないの」
 誘導弾で牽制、バインドで動きを止め、砲撃で止め。シアの言う通り、これが砲撃系魔導師の正しい戦い方だ。
「あと大事なのはね、防御かな」
 逆のパターン、自分が捕まった場合相手の砲撃を受けることになる。バインドを外すのも大事だが、その場を耐えることが必要だ。
「レイジングハートは出来る子だよ。だからそんな場合はレイジングハートを信じてまずは守りを固める。で守りきったら反撃開始」
≪Believe me Master≫
「……うん、わかった。シアちゃん、レイジングハート」
≪Thank you≫
「ユーノ、あんたバインド系は得意だよね」
「まあね、僕は結界魔導師だから」
「じゃあなのは、バインド関係のこつはユーノに聞いて。後は空いてる時間で誘導弾の訓練かな」
「うん、わかった」
「じゃあ今日はここまで。後で一緒にご飯にしよう」
「うん」
「はい。じゃあ、後で」

 トレーニングルームから出てきた二人は僕に気付くと一礼、部屋に戻っていく。その後からシステムをダウンさせてシアが出てきた。
「あ、クロにぃ。見てたんだ」
「ご苦労様、シア」
「それは言わない約束でしょ」
 僕の渡したドリンクを口にし、シアは軽口。……そんな台詞何処で覚えたんだ?
 ふむ、思ったより消耗してないな。

 ん……、痛し痒しという処か。
 母さんの言うとおり、なのはとユーノの相手はシアにとって負担であると同時に気晴らしにもなっている。
 あのフェイト・テスタロッサの存在は、シアに相当のストレスをかけているはずだ。精神的にくたびれても仕方ない。
 そんな時に効くのが同世代の人間との何気ないやりとりだ。その点ではなのは達が今この船に居るのは悪いことばかりではない。
 母さんは其処まで考えて二人を……幾ら難でも気の回し過ぎか。

「どしたのクロにぃ? 変な顔して」
「いや、二人の調子はどうだい?」
「んーー、まあまあかな? 憑依体なら安心して見ていられる、ってとこ?」

 なら僕もシアの弟子のお手並み拝見、といこうか……




「そこっ!」
 なのはちゃんは叫んで鳥?さんの攻撃から飛び退いた。うーん、流石AAA。良い動きだねぇ。
 傍で見守ってるシアちゃんも良い表情してる。新しく出来た妹分が大事、って感じが良く出てるよ。
 で、バインド。クロノ君が解説してくれる通りの決まり手だね。だから次に来るのは、

「ディバイン・バスター!!」
 なのはちゃんの砲撃だ。で、
「ジュエルシード・シリアルナンバーⅧ、封印!」
 両手で構えたレイジングハートで鳥さんをぶん殴る。見事封印。

 で、封印は良いとして、
「あ、なのはちゃんピンクなんだ、うん良いセンスだね」

 バリアジャケットは魔法の一種、プログラムだ。
 女の子のスカートの下、それも勿論バリアジャケットだそうだ。本来のショーツとかでなくて見せパン? とかそういうモノ。
 この世界の娯楽番組的に言うと、見られても『パンツじゃないから恥ずかしくないもん』だね?

 なお、BJはプログラムだから、術式に余裕が在れば結構変えられるらしい。
 今日出撃する前にシアちゃんが『今日は意表を突いてクマさんなのさっ』とピラって見せていった。クロノ君が思いっきり僕は見てないって振りをしてたのが可愛いかったかも。流石にクロノ君、シアちゃんのお兄ちゃんだからね。

 ただね、シアちゃん。今の歳ならいいけどね、そういうことするのは恋人か、落とそうとする男の子の前だけにしなよ。
 なんか色々減るよ。乙女の価値とか神秘性とか、いろいろとね。




 戦闘とか終わってみんなでご飯。三人揃ってビスケットをかじります。美味しいんだけどなにか物足りない。ああ、翠屋のシュークリームが恋しい。

 と、ここでなのはが口を開く。
「でもシアちゃんもユーノ君も凄いね。私たちの歳でもう働いてるんだもん」
 働く? アタシは嘱託だよ、あくまでアルバイトなのさっ。
「それでもだよ。二人とも何で今の仕事しようと思ったの?」
 何でも学校の宿題で将来の進路を考えろ、と言われたらしい。なんか真面目に考えすぎ。アタシ達の歳なら将来の職業はお嫁さん、で良いじゃないの?
「ダメだよ、真面目に考えなきゃ」
 って、宿題出した先生も、まともな答えが返ってくると思ってないよ。

「まあまあ、取りあえず僕の場合は一族の仕事だからかな?」
 スクライア一族は一族揃って遺跡発掘をやっているとのこと。だからユーノも自然に手伝いから始まって本格的な発掘もしているとか。今回のジュエルシードはユーノが中心になって初めてした発掘だから責任バリバリ感じてると。
 なるほどユーノがやけに入れ込んでいる理由はそれか。

 で、アタシ。
「アタシは養父さんが管理局の人だから、っていうのも在るけど、実はちょっと違うのさっ」
 アタシはテーブルの向こうに座っているなのはとユーノに笑いかけた。
「ねぇ、アタシって可愛い?」
 アハハ、いきなり変な質問か。二人とも変な顔。
「えと、えと、えと、うん、可愛いよアリシアちゃん」
「あーーと、僕も可愛いと思うよ」
 ありがと、二人とも。なのはちゃんもユーノ君も可愛いよ。
 あわあわあわとなのなの慌てるなのはと、ちょっと困った顔のユーノ。やっぱり男の子に可愛いはダメかな?
 まあ、いい話を戻す。

「でもね、アタシの可愛いは、貰った可愛いなのさっ」
 変な顔をする二人。でもこれは正しい。いや、正しくは貰ったんじゃない、取り戻して貰ったんだ。
「アタシが拾われた時の話、したよね」
 記憶を無くして泣いていた話。泣いていたのは記憶の所為でも、寂しかったからでも無い。ただ単に痛かったんだ。
「養父さんに拾われた時、アタシの体はボロボロだったんだ」
 腫瘍?が体中に出来て、更に所々腐っていた。
 リーゼ達に拾われなきゃ、この管理外世界に居たらアタシは一ヶ月も持たないで死んでいた。
 あの時の姿を思い出して、アタシは思わず右の手で左の手首を掴んだ。大丈夫だ、ちゃんとある。

 アタシが捨てられたのはこの壊れた嘘の体の所為。アタシが捨てられたから変わりに妹が創られ……いや、これは別の話さ。
 リーゼ達や養父さんの力でアタシは管理局の病院に運び込まれた。半年以上お医者さんや看護師さんに助けられ、励まされ、アタシは無事に退院する事が出来た。
 アタシは、養父さんに『アリシア・グレアム』という今を貰い、管理局のお医者さんに健康な体という未来を貰った。そしてアタシは今を生きている。

「アタシは色んな人に助けて貰って、今こうして生きてるの。だから今度はアタシの番。アタシが助けられる、困っている人がいるなら助けてあげたい。力になりたい」
 でも無理はしないよ、出来る範囲でだけどね。
「アタシはまだ子供だから、出来ることは魔法で……戦うことくらい」
 でもね、戦う以外にアタシに出来ることが在るかもしれない。
「管理局は好きだし恩も感じてる」養父さんにも管理局に拘るなって言われてるしね。「でも他にアタシに出来ることが見つかれば、それをやってみたい。探してみたいんだ」

 航行艦付きの嘱託魔導師なら、色んな世界に行ってみる事が出来る。色んな世界、色んな人達。そんな色んながあればアタシの出来る、アタシのしたいが見つかるかもしれない。
 だからアタシは養父さんの部下で、色々融通を利かせてくれるリンディ姉さんの下で働いてるの。
 まあ言ってみれば学校サボって一種の社会見学してる、ってところかな。学校のみんなには悪いけど、世間様の役に立ってるので許してなのさっ。それに今のとこ、管理局入りが第一候補だし。

「なるほどね。シアの言うこと、なんとなく分かるよ」
 おや、分かってくれるのかね、ユーノ君。
「僕も発掘の仕事であっちこっちの世界に行ってるからね。確かに世界は広い。色んな世界があって、色んな人が居る」
「でしょ、でしょ♪」
「うん、僕は発掘ばっかりだったけど、色んな世界でなりたい自分を探すってなんか素敵だと思うよ」
「そんな、アタシが素敵なのは分かるけど、そんな褒めないでよ♪」
「いーや、別にシアが素敵とほめた訳じゃ……」
「ん、ユーノ・スクライア。このアタシが素敵じゃないって?」
「いや、そういうわけじゃ……」

「なんか、ずるいの!」
 ん、なに、なのは? 嫉妬? 別にアタシはユーノ取らないよ。
「ユーノ君じゃなくて!」
 おや、ユーノ君。なに落ち込んでるんだい?
「シアちゃんもユーノ君もなんかずるいの」
 ずるい? なにが?
「私も色々な世界、見てみたい。私にも魔法の力があるんだし、シアちゃんやユーノ君と同じモノが見たいの」
 うーーん、今のアタシ達の話にあんまり魔法は関係ないんだけどね。
「ねえ、シア。君と同じ嘱託魔導師ってなのははなれないかな。確か嘱託なら結構子供でもなれるんじゃない」
 確かにアタシは二年前から嘱託してるけどさ。なのはとユーノはアタシより一つ年下だから年齢的にはOK。でも、なのは……、キラキラした目でこっち見て悪いけどさ。

「残念、無理です」
「えーー、何でぇ!」
 なのはちゃん、食堂で大声は止めようね。
 なのはを嘱託に、というのはアタシも考えた。正しくリンディ姉さんがなのはを嘱託に誘うんじゃないか、だ。
 で、その可能性をエイミィに聞いてみた。リンディ姉さんやクロにぃでないのが味噌だ。
 結論、無理。

「だから、なんでぇ?」
 冷静になると簡単なんだ。
「なのは、お家を離れて一人暮らし、って無理だよね」
「えええ? なんでそうなるの?」
「通勤の問題なのさっ」
「あっ、そうか。転送距離!」
 そういうこと。
 なのはの世界、第97管理外世界とミッドチルダは遠すぎる。個人で転送出来る距離じゃない。仕事の度に航行艦に拾って貰う、というのも非現実的。
 ここから管理局本局まで転送出来るポートも在るんだけど、高価い。幾らAAAとはいえ、嘱託魔導師一人のために用意するのはお金的に無理。だから。

「魔法の力で仕事をしたいっていうなら幼年学校、こっちじゃ小学校と中学校だっけ、それをちゃんと出て、お父さんとお母さんの許可を貰った上でだね」
 それならアタシもエイミィも協力する。クロにぃも協力させるしリンディ姉さんは、考えるまでもないね。


「そういえばリンディ艦長ってクロノ執務官のお母さんなんだよね」
「ん、よく知ってるね」
「あのエイミィって人に聞いた」
 ほう答えたのか、てっきり黙ってるように指示があると思ったのに。
「ああ、シアちゃんてばクロノ君の事クロにぃと呼ぶし、リンディ艦長のことリンディ姉さんだよね」
 おや、落ち込んだなのはの気分を変えたかったのか。ユーノGJ♪

「リンディ姉さんやあの人の旦那さんがアタシの養父さんの部下でね」あとレティさんとかも。
「上司と部下っていうより家族ぐるみで交流があるのさっ」
 養父さんに引き取って貰ってからみんなには可愛がって貰った。まあアタシもグリフィス君とか可愛がってるからいいよね。うん、可愛がってるんだよ。なんか可愛がろうとすると逃げようとするけど……

 で、クロノはお兄さん分なんでクロにぃ、だからリンディさんは本当は小母さん何だけどそう呼ぶと……。
 止めよう!、この話題はここまで。
 ユーノ、あんたやっぱり空気呼んでない。この淫獣め。


 呼び方は兎も角、リンディ姉さんがアタシの狡いとか腹黒の師匠だというのは間違いない。

 だけどアタシもエイミィも、リンディ姉さんを舐めていた。まさかあそこまでやるとは思わなかった。
 リンディ姉さんがなのはをスカウトするため何処までやるか、アタシ達はこの半年後知ることになる。


PS1
 A’sで個人の転送距離には限界があるとかいう表現があったと思う。だからヴォルケンの出現場所から地球がベースに選ばれたと。
 また長距離転送ポートがありそうなアースラからは管理局(本局)へ転送できた、と思う。
 なので本文中の表現になった。
 ビデオメールなどの無機物はそれほど安全性を問われないので転送可能と言うことで。


PS2
 リンディさんが半年後何をしたか?
 つまりそれはハラオウン家の地球への引っ越しです。一介の嘱託魔導師には転送ポートは用意出来ないけど、提督の地位を持つ人には用意できる。そういう事です。
 ハラオウン家が地球に移住したのは、
  闇の書事件のベースキャンプが必要だった→あら、ここって第79管理世界に似てる→フェイトのお友達もいるからここに引っ越ししましょう(建前)
 ということ。つまり色々な意味で闇の書が悪い、ということで。

 裏道とか考えると、ギルさん達が秘密裏に設置していた転送ポートを接収した、もあるんだけど表向きはこういうことで。


PS3
 パンツ再び。というかなのは三作で変身以外のパ○チラって此処だけでないかい?
 なお、『パンツじゃないから恥ずかしくないもん』は前作品で言いたかった台詞。ミッドのクリスが言って良い台詞ではないので自重したのさっ。

 ……と、対鳥戦だけだと思っていたんですがA’s再放送一話でヴィータが真っ白なパ○ツを披露してくれていました。人の記憶は曖昧だ。


PS4
 Stsでは違法研究が主に問題視されていましたが、犯罪組織とか軍事組織とか法治組織にとってはその結果をどう使うかの方が重要だと思います。
 つまり"創る"為に作るのではなく、"使う"為に作る。
 "使う"為に作るのなら、一人ではなく量産した方がスケールメリットとして有利。この時点でフェイトのバックが不明なために、クロノが『フェイト』が複数出てくるのではないかと心配したのはそういうことです。
 原作三作においても、フェイトやエリオはワンオフ、ナンバーズはシリーズ展開だけど、ギンガとスバルというある意味量産型がいるし。

 しかし量産型フェイトか……、萌えアイテムとして一人欲しいかも。



[11860] 第4話 紫の雷は○○さんの味、なのさっ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/01/14 23:56
 空間スクリーンに写った光景。
 海上を吹きすさぶ嵐と、その中で暴れる六本の竜巻。

 その中で翻弄されてる……フェイトちゃん。

 地上でもうジュエルシードが見つからない。だったら海の中にあるのかもしれない。
 リンディさん達もそんなことを言っていました。でも上手く見付ける手段がないとか。

 それはフェイトちゃんも同じ。
 だからフェイトちゃんは儀式魔法とかで海の中に魔力を叩き込んで、強制発動させたとか何とか。私はよく分からないけどフェイトちゃんが無理をしたことは分かります。
 だから早く助けに行かないと。

「なんとも呆れた無茶をする子だわ」
「無謀です。あれは個人が出来る魔力の限界を超えている」
「あの、私、急いで現場に……」
「その必要はないよ。放っておけば彼女は自滅する」
 え? 自滅って。それって。
「私たちは常に最善の選択をしなくてはならないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実」
「クロにぃ、リンディ姉さん。……自滅するのは、困るんだけど」
 信じられない事をいう二人を止めたのは、私と同じ女の子の声でした。




「クロにぃ、リンディ姉さん。……自滅するのは、困るんだけど」
 口を挟んだのはシアだ。僕達の言ったことが気に入らなかったのか、その瞳には苛立ちと不快さがある。
「それだとジュエルシードが暴走するかもしれない。第一アタシはあの子には聞かなきゃならないことがあるの、だからエイミィ」
「はいはい、何かなシアちゃん?」
「転送の準備よろしくなのさッ。何かあったらすぐ飛べるように、術式展開しておいて」
「はいはい、了解なのさっ」

 それを聞いている艦長は無言、というかすぐにやれと言うような雰囲気。僕も依存はない。
 確かにシアの言うとおりだ。僕は犯人逮捕を優先して考えていた。だけどこの場合ジュエルシードの
暴走を押さえるのが先。優先度を間違えていた。少し反省。

「OK、座標固定ゲート準備ヨーソーローなのさっ……えっ?」
 エイミィの準備完了の声と同時に転送ゲートが起動する。なんだエイミィ?
「違うよ、わたしじゃ……」
「行って、なのは!」
 その台詞を吐いたのはユーノだ。まさか術式に干渉?
「なのはは僕を助けてくれた、今度は僕の番。行ってあの子を」
「うん、ユーノ君。ごめんなさい、高町なのは、指示を無視して勝手な行動とります」
 なのはが転送ゲートに飛び込むと、ユーノは手印を組む。それに従い、ゲートは作動。なのはは現場に転送されてしまう。
「ちっ」
 僕は舌打ちしてユーノを睨んだ。しかしその姿も転送の光の中へ消える。

 流れる視線の中に、一瞬シアの笑顔を入る。してやったりという意地の悪い笑顔。まさか、
「シア!」

「何?」
 さっきの笑顔が嘘のようなキョトンとした表情。クッ、こうなると女の子には勝てない。
 何故かクスクス笑うエイミィの声が聞こえた気がするが、これもいっても無駄だろう。

「で、リンディ姉さん、クロにぃ、どうするの?」
 どうする? つまり民間人であるなのはが現場に向かった以上、僕たちはどうするのか、と言うことだ。しかし指示を無視して勝手に動いた場合……。

「仕方在りませんね。アリシア、よろしくお願いします」
「しかし、艦長!」
「私たちがなのはさんとした約束、覚えていますね」
 なのはがジュエルシードを封印している間、管理局が保護する、それが本来の契約だ。
「あいなのさッ、リンディ姉さん。管理局嘱託魔導師・アリシア・グレアム、行ってきます♪」
 さっきと態度を一変、転送ポートへ飛び込むシア。光が弾けて転送。


「……艦長」
「ハラオウン執務官、分かっていますね」
 最善の策は途切れた。なら次善の策に移行するだけだ。
 メインはシアがやってくれる。なら僕は裏で僕のすることをする。だから、
「エイミィ……」




 白い服の女の子。たしかタカマチ・ナノハとか言ったっけ。
 タカマチ……、違うかこの国?流ではナノハが名前の筈。
 彼女は何を考えているのだろう。わたしとこの子はジュエルシードを賭けた競争者、いや敵だ。
 なのにこの子はデバイス経由でわたしに魔力を分けてくれている。
≪Charge complete≫
 ナノハのデバイスがそう言って来る。
 空っぽだった魔力がチャージされて、大体半分。わたしも半分、この子も半分。

「今はみんなでジュエルシードを押さえようで。で、私とフェイトちゃんで半分こ」
 半分こ。母さんに頼まれてるのは全てのジュエルシードを集めること。でもナノハの言う半分こというのも魅力があって。

 と、そこに光。二人の間に誰かが転送してくる。
 次の瞬間其処にいたのは、黒い服を着た金色の女の子。
 この女の子は知ってる。管理局の執務官と一緒に居た子。わたしにそっくりな子。確か名前はアリシアとか言ったっけ?
 あんまりそっくりなんで、この子を知らないか母さんに聞いてみた。だけど母さんはそんな子知らないと言ったきり。だからこの子はわたしと関係ない子だ。

「なのは、それにフェイト……」
「あ、シアちゃん、来てくれたんだ♪」
「来てくれた、じゃない」
 ポカ、アリシアはいきなりナノハの頭を叩いた。
「う、痛いよー」
 その顔があんまりにも痛そうだったので、
「あのー、暴力は良くないよ」
 そんな一言でみんなキョトンとわたしを見た。う、確かに最初にナノハを襲って怪我させたのはわたしだ。わたしが言っても説得力がない。

 はあ、とアリシアは溜息を付くと、左手で頭をガシガシかき混ぜた。
「取りあえず、アタシは管理局の人間で、テスタロッサちゃんを何とかしなきゃならなんだけど」
 ちろっとこっちを見る。このタイミングで彼女と戦うのは不味い。
「シアちゃん!」
 それを咎めるナノハ。彼女はわたしとアリシアの間に立ちふさがる。
「うん、分かってる。今大事なのは次空震を止めること。だから取りあえず先にアレを何とかしよう」
 と竜巻を指さす。で何故かナノハを避ける様にわたしの前に飛んできた。

「でもその前に、テスタロッサちゃんに質問3つ」
? なんだろ
「テスタロッサちゃんに姉妹は?」
 居ないよ、わたしは一人っ子。
「姉妹が居ないって『母さん』に聞いたの?」
 そうだよ。わたしには母さん……とアルフとリニス以外に家族はいない。母さんがそう言ってた。
「……最後、六歳より前の記憶はある?」
 六歳より前? 勿論……、あれ?
 二年前からアルフと一緒で、その前からリニスが居て。その前?
 そういえばわたしはいつから時の庭園に居たんだろう。みっどちるだ、あるとせいむ、わたしは其処に住んでいた。でもそんなところで暮らしていた時の記憶がない。なんでないの?
 違う、あたしはあそこにいた。あそこで母さんと……

 ポン。
 ?、ふと気付くと頭の上にアリシアの手。アリシアがわたしを撫でてて、この人はわたしの敵なんだからそんなことはダメで。
「変なこと言って、ごめんね」
と謝ってくれた。
「今は取りあえずジュエルシード封印しよう」
 その目が優しくて、でも悲しそうで。
 いつもなら噛み付きそうなアルフも遠くで黙ってわたしたちを見ている。
 何だろう。わたしは何か大事なことを見落としていたような。




 なのはとフェイトが散って、さて封印開始。ユーノとアルフ、だっけ? フェイトの使い魔が竜巻を拘束している。
 ミッションの最低条件はアレをみんな沈静化すること。要するに魔力ダメージでぶっ飛ばせばいい。
 では、お仕事お仕事。

「リニス」
≪了解、魔導師の杖・Type PD リニス展開します≫
 胸のペンダントが光り、解け、目の前で杖が再構成されていく。ガンメタルな、黒光りする飾り気のない杖。女の子の持つモノにしては寂しいけど、そのシンプルさがアタシは気にいっている。マスコットとかで飾りがいがあるのさッ。

 ミッションは対象の封印。なら最高レベルの広域攻撃魔法、あれが良いか。と、その前に
「リニス、これ封印して」
 アタシはリニスに右手を向けた。其処にあるのは金色の糸。フェイトの髪を梳いた時に、指の間に残った髪の毛だ。これを調べればフェイトが誰なのか分かる。
 少なくてもアタシと同じモノか分かる。ではマルチタスク、意識下で詠唱開始。

  『……悠久なる凍土』

 アタシは純粋な人間じゃない。クローンベースの人造魔導師、それがアタシの正体だ。
 フェイトがアタシと同じモノならあの子も人造魔導師という事になる。だけどさっきの話からするとどうも変だ。

  『凍てつく棺の内にて』

 フェイトは母さんの指示で動いていると言っていた。だから最初アタシ達はフェイトの母さんがアタシ達を創った組織の人間だと思っていた。
 でもフェイトは姉妹は居ないと言っている。もしかしてプレシアさんとやらは、何処かの違法組織から人造魔導師であるフェイトを買ったのかな? で、娘として育てたとか。

  『永遠の眠りを与えよ』

 ……とすると、アタシのルーツはここにはないの? まだ探さなきゃならないの?


「いっくよーー!! せぇのーーーーーっ!」

 勢い良いなのはの掛け声。悩むのは後、今は目の前の問題を片付ける。

「ディバイーーーーン!」
「サンダーーーーーッ!」
「エターーーーナルッ!」
 三人の声が重なる。そして一斉攻撃。

「バスタァーーーーッ!!」
「レイジィーーーーッ!!」
「コフィィーーー-ン!!」

 なのはの砲撃が竜巻を吹き飛ばし、
 フェイトの雷が竜巻を切り裂いて、
 アタシの冷気が竜巻を凍り付かせる。

 ……そして封印。


 アタシ達の前にはプカプカ浮かぶ六個の宝石、ジュエルシード。
 なのはが半分ことか三等分とか主張してるけど、さてどうしたモノでしょうか?
 ここでフェイトを逮捕する、って動くのはなんか空気読んでないような。フェイトの使い魔ですら空気を読んで黙っていると言うのに。
 だけど実際、アタシ一人でフェイトとアルフの二人を相手にするのはきつい。ユーノは兎も角、なのはは今回アタシの邪魔をする可能性大だ。さて……、ん、なにリニス?
 なにっ、次元跳躍魔法?

 アタシは慌てて空を見あげた。
 そこからあふれ出している気持ちが悪い魔力。なに、これ?
「か、母さん!」
 アタシの叫びがフェイトの声と重なる。それは母親に対する信頼とは裏腹の、怯えと諦め。
 くっっっ、仕方ない。

 アタシは高度を上げ、二人の上に出る。
「なのは、フェイト、アタシの下に入って。これはアタシが食い止めるのさッ!」
 えっ、と驚き顔のフェイトと、悔しそうな顔で彼女を引っ張ってアタシの下に入るなのは。
 今のなのはのシールドじゃ自分を守ることが出来ても、他人を守るまではいかない。有効範囲が狭いんだ。

「ラウンド・シールド、大規模展開」
≪OK、ラウンド・シールド展開します≫
 リニスの返事と同時にシールドが展開される。向きは上。と同時に次元の壁が打ち砕かれた。
 落ちてくるのは雷撃、まるで雷の津波。それはこの封時空間全てを覆うように広がって……、収束した。

 見られている。何か、憎しみ? 怒り? 苛立ち?
 そんなものを含む視線。

 それに操られるように雷が集まって、それはつまり、アタシに向かって。
 不味い、こんなモノ耐えきれない。

「リニス、非常時なんでリミッター解除! シールド最大出力!!」
≪OK.... HyperDrive Start≫

 体中の魔力が吸い取られる気分。全力で張った障壁は、紫色の雷の直撃に耐え、そして砕け散った。
 でも雷の余波だけでも十分強力で、
「きゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 アタシはそれに吹き飛ばされた。




「シアちゃん!」
 海上に落下していくシアをなのはが追って飛んだ。ボロボロだけどBJも何とか機能している。ならシアは大丈夫な筈だ。僕は僕の仕事をする。
 ジュエルシードの元へ短距離転送。何故かアースラとの回線が切れているので個人転送。しかしこの程度問題ない。
 で、そこで固まっていた女の子にS2Uを向ける。
「フェイト・テスタロッサ、時空管理局だ。ロストロギア強奪犯としてその身柄を拘束する。抵抗しなければこちらも危害は加えない。大人しくして貰おう」
 こちらを見るフェイトの目には明らかな怯え。でもこれは僕に向けられたモノじゃなくて?
 だから僕は反応が一瞬遅れてしまった。

「フェイトに触るんじゃない!」
 それは横から飛んできたパンチだ。気付かなかった僕はそれに殴り飛ばされて海面に。
 上を見あげると、僕を殴ったのは使い魔のアルフか。だけど、甘いね。
「みっつ?」
 叫ぶとアルフはこっちを睨み付けてくる。だから僕は確保していた3つのジュエルシードをかざしてみせる。
 きっちり半分こだ。僕だって空気を読むのだ。

「うわわわわわっっっっ!!」
 アルフは悔しそうに叫ぶと、こっちに向け砲撃。それに気を取られた瞬間。アルフとフェイトの主従の姿はこの空間から消えていた。

 アースラで追って貰いたかったんたけど、今は何故か連絡が取れない。それより今はシアだ。
 なのはが抱き留めて呼びかけているけど……




 消えゆく意識の中で、アタシは夢を見る。

 紫色の雷、あれはあたしの母さんの色。
 あたし? あたしは誰?

 遊園地、あの人と男の人。
 湖、あの人とボート。
 花畑、あの人と冠。

 アタシの中でカチリと音がする。
 あたしでアタシが、アタシであたしとかみ合った音。
 そうか、分かった。アたシは……



PS1
 シアが自分の正体をカミングアウト。まあ見え見えだったけどね。
 一応管理局側の認識を纏めておくと
 第1話 シアは違法研究者が創った人造魔導師の失敗作。完成版とか居るはずだ。
 第2話 シアの完成版発見。フェイトもきっと人造魔導師だ。
 第3話 フェイトのバックが違法研究者グループなら量産型がいても不思議ではない、要注意。
 第4話 フェイトのバックは個人? 違法研究者グループじゃないかも。

PS2
 娘を生き返らせるため、F。なんて突拍子もないこと、この頃の管理局は考えません。
 第一、この時点でFは一般的でないはず、というかプレシアの個人研究結果がなんで流出したのか不明。
 時の庭園の残骸から管理局がデータ回収して、アングラに流したのか。
 執務官なフェイトもなんでFのデータが出回ったのか考えろよ……

PS3
 次元空間内のアースラに跳躍攻撃が出来るプレシアさん。
 Stsのゆりかごの売りって、管理局の戦艦では出来ない次元空間での戦闘ができるってこと、でなかったけっけ? 管理局の航行艦船よりブレシアさん強いの?
 スカさんもプレシアさんを人造魔導師として量産した方が良かったのでないかい?

PS4
 SS定番ではこういうシュチではプレシアがフェイトに姉妹がいるとか何とか吹き込むところ。しかしフェイトも最低3年程度、自分の記憶が在るんだから疑えよ、ってとこ。
 ただしプレシアとしたら、アリシアと名乗る失敗作の存在は絶対に許せない筈。なのでシアに攻撃集中、とこうなりました。




[11860] 第5話 目覚めしモノはアタシ、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/12/27 17:40

「これが私の全力全開」
 周囲に満ちた魔力が光となってなのはに集まる。それはまるで星の光、スターライト。
 その正体はシアが気付き、教えた、なのはが先天的に持っていた技能、収束だ。周囲の魔力を集め、自分の持つ魔力以上の魔力が使える特殊技能。
 別にレアスキルの様に希少価値がある訳ではない。ただ取得レベルが高く、覚えにくい技能だ。ちなみに僕は使えない、……シアは使えるけど。

 レイジングハートの前に魔法陣が構成、収束された魔力が桃色の魔力光として広がる。そして……

「スターライト・≪ブレィカー≫ぁぁぁぁぁっ!!」
 なのはの放つ桃色の光柱がフェイトの体を包み込んだ。


 回収が終わったジュエルシード。だからフェイト達が更なる数を集めようとするなら、僕たちから奪うしかない。
 だから誰かが囮になり、フェイトを呼び寄せ、可能なら逮捕する。これは本来シアがやるべき仕事だ。
 だけどシアはあれから目を覚まさない。ドクターが言うには意識の混乱が在るとのこと。レム睡眠、夢にうなされ翻弄されているらしい。ドクターも経験のない症例で、だから起こしたほうがいいのか分からない。だから放置だ。

 そのシア達を襲った攻撃、あれの本命はシアではなかった。本命はアースラそのもの。
 次元跳躍魔法を受けたアースラはシールドを破られ右往左往。その為逃げるフェイト達の追跡が出来なかった。
 シア達を襲ったのはその片手間に行った攻撃に過ぎない。

 先日のフェイトの行動を『個人が出来る魔力の限界』などと言ったが、僕の不明だ。
 次元空間内の航行艦船を行動不能に陥らせるほどの攻撃、これこそ『個人が出来る魔力の限界』だ。フェイトの言った『母さん』、プレシア・テスタロッサはデータに依ると大魔導師の称号を持つという。彼女が本当にプレシア女史ならこんな攻撃が出来るかもしれない。


 海中に落ちたフェイトをなのはが回収。……良かった生きてる。現地に医療スタッフを飛ばさないで良いみたいだ。
≪Put out≫
 そのフェイトのデバイスからジュエルシードが吐き出される。主人の顔を立てる良いデバイスだ。と、

「来ます、次元跳躍魔法です」
 エイミィが叫んだ。予想通り。だからすることは決まっている。




「ようし、捕まえた♪」
 別次元からの跳躍魔法、それは躊躇わずにフェイトさんを襲い、ジュエルシードを持ち去った。でも我々もむざむざ奪われはしない。
 戦闘空域に集中していた監視魔法がジュエルシードの転送先を突き止める。先程の次元跳躍魔法、あれは先日ほどの威力はない。プレシア女史が回復していない証拠だ。
 だから次に命じることは決まっている。

「アースラ武装隊出動、ロストロギアとプレシア女史の確保を行って」
「はっ!」
 敬礼を残し武装隊の面々が転移していく。目標は時の庭園、玉座の間。
 戦力は十分、武装隊で大丈夫なはず、念のためにクロノは残しておく。


「いらっしゃい、フェイトさん」
 庭園内で武装隊員が展開する最中、フェイトさんがなのはさんに連れられブリッジにやってきた。これはクロノの判断? いずれにせよ、正直これは失敗だ。
 母親を慕っているフェイトさんには、彼女が逮捕されるシーンは見せたくない。だからこの時点では船室内で大人しくして欲しかった。これは明確な指示を出さなかった私のミスだ。

 だからここはなのはさんにお願い。
「母親が逮捕されるのを見せるのは忍びないわ。なのはさん、フェイトさんを貴女の部屋へ」
「うん、分かりました。フェイトちゃん私の部屋にいこう」

 ……だけど、僅かに遅かった。


『プレシア・テスタロッサ。時空管理法違反、及び管理局艦船への攻撃容疑で貴女を逮捕します」
 ブリッジに展開したスクリーン上、玉座の間へと侵入した武装局員達が、プレシア女史へ宣言する。フェイトさんはその光景に足を止めてしまった。
『武装を解除して、こちらへ』

 その呼び掛けに、玉座らしき椅子に座っているプレシアは何も答えない。
 しびれを切らした武装局員達は、プレシアを取り囲む。

『待て! この裏に何か有るぞ!』
 なに?、なにかあるの?
 武装局員が見付けた広間の奥の扉、それを開けるとその光景がスクリーンに映し出される。
 ポット、無数のカプセルが並ぶ空間。そしてその先にソレはあった。いえ、居た。

 一際大きなカプセル、いえ生体ポット? その中には培養液らしい液体につけられた一人の少女。
 年の頃は5・6歳というところか。呼吸さえなくシリンダーの中で膝を抱えるように浮かんでいる。
 そしてその顔は……

 そう、そうなの。コレがアリシア、いえシアが探していた彼女のルーツ。


『こ、これは……』
『……私のアリシアに、近寄らないで!』
 武装局員が紫の雷撃に吹き飛ばされた。
 すがりつくようにプレシアはアリシアと呼んだ少女の前に立つ。

『くっ、撃てぇぇぇっ!』
 プレシアの抵抗に後続の武装局員達もプレシアを狙い撃つ。しかしそれはプレシアの作ったシールドに阻まれ届かない。

『うるさいわね……』
 その一言、それだけでプレシアの手にに膨大な魔力が集まっていく。あれは不味い。
 避難を命じようとしたが遅かった。 一撃、プレシアの放った一条の雷撃に武装局員達はなぎ倒されていた。

 ……レベルが違いすぎる。プレシアは疲弊していると判断した私のミスだ。
「エイミィ、転送。武装局員達の送還を」
 バリアジャケットに守られているものの、みんな戦える状態ではない。すぐにも手当が必要だ。


『でも、もういいわ。終わりにする。
 この子を亡くしてからの暗鬱な時間も、この子の身代わりの人形を、娘扱いするのも……』

 サーチャーはいつの間にか乗っ取られていた。だから今は双方向。アースラブリッジの声も、反応も
向こうに届いている。
 こちらの戸惑いをあざ笑うかのように、プレシア女史の独白は続いていく。

 まあ、こっちが聞かなくても事情を説明してくれるのはありがたいんだけど。

 それにしても死んだ娘の復活。馬鹿な話だ。
 私だって人の親だ、プレシア女史の悲しい気持ちは分かる。クロノやシアが死んだら……、いえ、縁起でもない考えは止めましょう。
 でも幾ら悲しんでも、死人は死人だ。例え魔法の力でも死者を生き返らすことは出来ない。私たちの使う魔法は、テクノロジーであってファンタジーではないのだ。

 プロジェクトF.A.T.E。人造生命体、おそらくは何かを強化したクローン体。それに記憶を移し込むことで死者の再生を図る。
 無理だ、例え同じ体でも、言ってみれば年の違う双子にしかならない。記憶を移してもダメ。記憶と人格は違うもの。例え同じ記憶を持っていても、それは違う人間にしかならない。

 挙げ句の果てにアルハザード? それは伝説というよりおとぎ話。
 正気の沙汰とは思えない。

 いえ、もしかしたらプレシア女史は狂っているのかもしれない。娘を失った悲しみから。
 でも彼女の行いが許せるはずもなく……
 一瞬考え込んでしまった私は、プレシア女史が最悪の台詞を吐くのを許してしまった。

『いいことを教えてあげるわフェイト。あなたを創り出した時からね、私はずっとあなたの事が大嫌いだったのよ!」

 その瞬間、フェイトさんの手からデバイスが零れ落ちた。それを追うように彼女の体も崩れ落ち……
 だけど彼女の体が床に伏すことは無かった。いつの間にか現れた人物が彼女の体を抱き留めていたから。それは、
「あのさぁーーー、あんまりアタシの妹、虐めないでくれるかな。か・あ・さ・ん」
 それは此処にいないはずの、彼女の声だった。




『あのさぁーーー、あんまりアタシの妹、虐めないでくれるかな。か・あ・さ・ん』
 スクリーンに映ったのは、あのアリシアの名前を語る失敗作。殺したと思っていたのに。その失敗作がよりによって私を母と呼ぶなど。
「っ、私を母と呼ぶな、この出来損ないがぁぁ!!」
『出来損ないって呼ぶってことは……、あんた、アタシの事知ってるんだ』

 そう、"今"のフェイトを創る前の話だ。アリシアの素体となる体を培養している時、未完成だった処置のため、いくつかのボディをダメにした。
 でもそのまま捨てるのは無駄、アリシアの為に実験に使わせて貰った。リンカーコア強化、ダミー人格入力、記憶転写。データを取り終わってリニスに廃棄するように命じたけど、あの子は直接殺すようなことはしなかった。
 私の目の届かない世界に強制転移。リニスに取っては助けようとしたみたいだけど、無駄だと思った。あの体じゃあすぐにのたれ死ぬだけ。
 まあ失敗作には興味が無かったし。
 それがおめおめと生き抜き、よりにもよってアリシアを名乗るなんて……? でも、なんでよりにもよってアリシア?

「そうよ、お前は単なる失敗作。アリシアでも、フェイトですらない只のゴミ。お人形にもなれなかった出来損ない」
『き、貴様っ!』
『いいから、まかせて、クロにぃ』
 激昂して叫ぶ黒いの、確か執務官をアレが止めた。なにか言いたい事でもあるの? 恨みごと? 聞くには聞いてあげましょう。

「なにか私に言いたい事が在るのかしら?」
『そうそう、それ。フェイトに面白い事を言ってたね』
 スクリーンの向こうでアレがニコリと笑う。アリシアの顔、フェイトの顔。其処に浮かんでいるのは、何処か媚びるようなフェイトの笑顔とは違う真っ直ぐな笑顔。
 何だろう、この表情。酷く苛立つ、でも気になる。

『アリシアの記憶をあげた、だっけ』
 そう、私はアリシアから抽出した記憶をフェイトに与えた。でもそれは失敗。フェイトに写ったのは漠然としたイメージだけ、質の悪いインプリティング。
 それは客観的な断片知識。人格形成に必要な主観的な光景どころか、俯瞰的な情報すら移せなかった。それはアレも同じはず。記憶転写は結局成功しなかったんだから。


『……それって、こんな感じの?』

 あの子が笑う。なに、あの笑顔?

 ---遊園地。あたしがいて隣に母さん。もう一人金髪の男の人、背が高くて、あたしの手を握ってくれて。
    ジャットコースターには乗れなくて、泣いて、替わりに肩車。

 えっ?

 ---湖。ボート。水の中に魚が居て、のぞき込んだら目の前で跳ねた。ボートが揺れて落ちそうになって、後で母さんに怒られた。

 それは……あの時の

 ---研究所。一緒に遊ぶ幼馴染み。時間になっても母さんが出てこなくて。泣きそうな私を慰めてくれる紫の髪の男の子。

 彼のことまで?

 ---お花畑。走り回るあたしを呼んで、王冠。かあさんの手作り。


 アレは閉じていた目を開いて、こっちに目線を向けた。そこには、はにかむような笑み。あれはどこかで……
 そうだ……思い出した。アレはあの笑い顔はアリシアの……

 …………まさか?
 まさか、まさか!
 まさか、まさか、まさか、まさか!!
 まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか!!!
 そんなことって!

「……あなた、もしかして、アリシア?」
『そうだよ、アタシはアリシア』
 あの子は右の人差し指で顎を一撫で、ニッコリ笑う。アリシアが成長した姿そのモノで。
 ………アレはあの子の癖。記憶、表情、癖。みんな同じだ。

 でも、嘘よ、そんな馬鹿な。
 でも……。
 プロジェクトF.A.T.Eはもともとアリシアを復活させる為のモノ。あの子にも記憶転写実験はしている。だから可能性は、でもそんなことって……。


『アタシの名前はアリシア』
 スクリーンの向こうでアレがギュッと左手を握りしめる、何故かそれがはっきりと分かった。
『……アリシア・グレアムだっ!!!』
 アリシア・グレアム!?

『養父さん……ギル・グレアムがアタシの父さんで、リンディ姉さんとレティさんが母親で、クロにぃが兄さんで!!』
 あ、アリシア、なんで?

『だから、アンタなんていらない! あんたなんてアタシの母さんじゃない!! どっか行っちゃえ!』
 アリシア、アリシア、なんで?




「だから、アンタなんていらない! あんたなんてアタシの母さんじゃない!! どっか行っちゃえ!」
 フェイトちゃんに抱きつくように、シアちゃんが泣いてる。
 わたしがシアちゃんの知り合ったのは大体三年くらい前。女の子同士ということで、クロノ君に力になって欲しいと頼まれた時以来だ。
 あの時からシアちゃんは明るく闊達で、でも飄々としてどこか素の表情を見せない女の子だった。そのシアちゃんがこんなあからさまに感情を見せるところ、初めて見た。

 それはブリッジクルーみんな同じ。低い声で毒づく声が聞こえる。当然だ、みんなの怒りはフェイトちゃんの時の比ではない。
 フェイトちゃんは確かに可哀想な女の子だ。だけど、他人で犯罪容疑者だ。
 でもシアちゃんは違う。アースラに乗るようになってもう一年。言ってみればアースラクルー全員の妹分だ。妹泣かした奴、ほっておける訳がない。

 はあ、気を取り直し。koolに行こうねエイミィさん。
 でも、いや、そういえば記憶ね。

 前にシアちゃんに相談された事がある。人造魔導師で最初から6歳児程度に創られたのに、それ以前の記憶っぽいものがあると。
 一緒にドクターとも相談したんだけど、初期人格設定時に紛れたデータじゃないかって。
 さっきの話だと、プレシアがアリシアちゃんの記憶をシアちゃんとフェイトちゃんに入れて……、この前の雷のショックで一気に表面化した、とか?
 ……ムービーとか小説では良くあるパターンだよね。


『な、なんでなの、アリシ……』
「プレシア・テスタロッサ」
 なんか抜かそうとしたあの女の台詞を艦長がぶった切った。なに?
「貴女は確かに正しいことを一つ、言いましたね」
『……なんですって?』
「"アリシアは時々我が儘も言うけど、私達の言う事をとても良く聞いてくれる"、そう、確かにその通りね」
 うわーー、艦長キツ。あの女息詰めてる。

「確かにそうだな」
 をを、今度はクロノ君?
「貴女の言うとおりだ、"アリシアは、いつでも私に優しい"。そうだね、シアはいつも僕たちに優しい」
 うわーーー、クロノ君黒い。でも今日は良し、良く言った、GJだよ。


「……そうか、そんなのがあるからいけないんだ」
 ふふふふ、なんか変な笑い声。追っていくとシアちゃん
「アタシのルーツ? 知った事じゃない。
 待ってなさい小母さん、あんたとっ捕まえて、そこの生ゴミどっかにポイ捨てしてやる!」
『生ゴミ?、小母さん?、貴女、なにを?』
「死人は死体だ、変なカプセルに入れたって死体は死体。人形以下の、腐りかけの生ゴミだよ!!」

『っ! ……やはり貴女、いえ、お前は違う。お前はアリシアなんかじゃない! 私のアリシアはこの娘だけ』
 うわー、カプセルに顔すり寄せてるよ。あれ冷たくないのかな?
『私たちは旅立つの、失われた都”アルハザード”へ』
 プレシアを取り囲むように、アレはジュエルシード? うわっ、起動してるよ、あれ。
『私たちは旅立って、私は取り戻すのよ。失われた時間を、失われた全てを!』

 ちょっと、これ?、なんか不味い反応が。これって次元震?
 だけじゃない、庭園内に魔力反応が多数。
 不味い、これは不味いよ。




 繋がっていた双方向スクリーンが勝手に切られた。
 だからアタシは溜息一つ、辺りを見渡す。
「シア?」
「……シアちゃん」
 色々聞きたそうなクロにぃになのは、リンディ姉さん。でも細かい話は後で。今は生ゴミ捨てにいかないと。
 でもその前に。

 アタシは落ちていた三角、バルディシュだっけ? を拾う。魔力を掛けるとリカバリー、罅が自動修復していく。やっぱり姉妹、アタシの魔力と相性が良いようだ。で、
「フェイト」
 アタシは腕の中の『妹』に声を掛ける。だけど返事はない。だけど分かる、聞いてはいる。意識が完全にない訳じゃない。

「驚いた?、怖かった? 傷ついた、よね。
 アタシも……そうだった」
 あれはアタシが養父さんに引き取られてしばらくたった時。学校に編入する前の話だ。
 アタシは自分が普通の人間じゃない、人造魔導師と呼ばれる作られた存在だと知らされた。さらに使えない失敗作で、ゴミの様に廃棄されていたとも。
 人ではないことに驚いた。戦うために作られた体が怖かった。失敗作といわれ心が傷ついた。でも、

「この世界、日本って国の言葉でね、ヒトの事は『人間』って言うんだって」
 ヒトとヒトの間。つまりヒトの繋がり。
「アタシが落ち込んで、つぶれそうになった時、支えてくれたのがこのヒトの繋がりだったんだ」
 養父さん、リーゼ達、リンディさんにクロにぃ。みんなアタシを支えて、励ましてくれた。

「フェイトだって同じじゃないかな。フェイトと繋がって、支えてくれるヒト、居るんじゃない?」
 こっそり後ろに目配せ。なのは達はハッと我に返ってくれた。
「フェイトちゃん!、わたしフェイトちゃんと友達になりたいって言ったよね。それは今も同じだよ。フェイトちゃんと繋がって、友達として支えたいんだ」
「フェイト、君たちとは色々あったけど、ボクもなのはと同じだ。君の友達になりたい」
「ああ、アタシだって。アタシはフェイトの使い魔で家族だよ。何時までもフェイトと一緒さ」
 みんな良い子だ。だからアタシも、
「勿論アタシもだよ、アタシはフェイトのお姉ちゃんだからね」

 だからきっと立ち直れる。アタシという証拠が此処にいる。
 ……しかし今考えると養父さん凄いスパルタだったな。君なら立ち直れると確信していた、って後からいわれてもねぇ。

「だから、今はお休みなさい。ゆっくり寝て、目を覚まして元気になったら、プレシア・テスタロッサの娘じゃない、一人のフェイト・テスタロッサいう人間として、自分を始めること。
 お姉ちゃんからのお願いだよ」
 アタシはバルデッシュをフェイトに持たせる。糞ババァの攻撃で出来た罅はほとんど消えている。ただコアに残ってる罅一つ。うん、これはフェイトが直すべきかな。バルデッシュGJ♪
「だから、後は任せて。ここはアタシがやっておくのさッ」
 アタシはフェイトを使い魔、アルフだっけ? に渡して立ち上がる。


「リニス、ありがとう。良いタイミングだったよ」
≪ワタシはシアをサポートする為に創られたインテリジェント・デバイスです。当然のことをしたまでです≫
 うん、でも感謝。本当に良いタイミングで起こしてくれた。あのまま寝てたら出番が無くなるところだよ。……少し痛かったけど。でだ、

「バリアジャケット、セットアップ」
≪了解、シア≫
 パジャマが消え、アタシの体は黒いBJに包まれる。でもこれは違う。
「リニス、違うよ」
≪違う? いつものデザインですよ≫
 アタシが着ているのはいつもの黒いBJ、クロにぃとお揃いのデザインで、下はスカート、ノースリーブの女の子仕様。でも今日は、
≪なるほど、こっちですね≫
 BJが分解して、別のBJが包み込む。黒いレオタードにも似たボディスーツ、ロングブーツに手袋。要所要所を縛る赤いベルト。止めに背にはマントがひらめく。
 要するにフェイトの着ていたBJだ。なんと無く気に入ったので、こっそりプログラムしていたのさッ。
 糞ババァの処に殴り込み掛けるなら、これでないと。

「シア、行けるのか?」
 うん、クロにぃ、行くよ。誰が止めたって行く。
 さあ、殴り込みだ。



PS1
 シークレット解禁。今回のテーマはアリシア再生に成功していたら、でした。
 『再生に成功』っていっても見た目だけです。シアはアリシアではありません。
 アリシアの記憶に引きずられ、アリシアっぽい人格に成長した別人です。
 詳細は早期投稿予定の裏設定を参照してください。
 この辺は本来、本編で説明するべきなんですが、一人称小説なので全体俯瞰して理解できる人物がいないんですよ。えっ紫の髪の幼馴染み? さて、なんのことでしょうか。


PS2
 プレシア独演会。SSでは普通に会話してオリ主が啖呵を切ったりするシーンですが、本来片方向でないか?
 時の庭園に飛ばしたサーチャーを通じてアースラからは現場の状況が見えているだけ。アースラの状態が分からないからプレシアさんはフェイトに聞こえているか確認しているかと。
 でもブリッジのクロノの台詞にプレシアさん反応してるんですよね。音声だけ双方向?
 このSSではプレシアさんがサーチャーの回線に割り込んで映像・音声共に双方向回線にしたと思ってください。



[11860] 第6話 決戦、時の庭園、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/01/14 23:57
第6話 決戦、時の庭園、なのさッ!


 時の庭園に転移した私たち。
 そこで私たちを待ち受けていたのは鎧? ロボット? クロノ君が言うには傀儡兵、の大群でした。
 広間一杯の傀儡兵。プレシアさんのところに行くにはこの子達をなんとかしなくちゃいけません。だからここは一番、私はレイジングハートを構えます。
「いくよ、ディバイン……」
「待て、なのは」
 そんな私を止めたのはクロノ君でした。
「君たちがここで魔法を使う必要はない。ここは僕たちに任せるんだ」
 僕たち? 私とユーノ君は思わず見つめ合いました。

「ブレイズ・キャノン!」
 前に出たクロノ君は砲撃一発。傀儡兵の注意を引きます。近寄ってきた敵さんの間に飛び込んで、
≪Stinger Ray≫
 誘導弾を連射、近くの傀儡兵を倒します。そしてジャンプ。一際大きい傀儡兵の頭に飛び乗ると、そのまま手を突いて、
「ブレイク・インパルス」
 乗っていた傀儡兵が吹き飛びます。

「凄い、凄いっ」
 私の戦い方とは違うけど、クロノ君が凄いのはよく分かります。クロノ君がちゃんと戦うところ初めて見たけど、やっぱり執務官って強いんだ。
「ね、シアちゃん♪」
 と、シアちゃんを振り向くと、その口元にはニヤッとした笑い。右手を真っ直ぐ上に伸ばして……あれ、何?
 シアちゃんの手の先、上の方には剣が沢山。黒光りする、アレって魔法剣?魔力弾? それが何十本も浮いていて……
 あれってどっかで見たような……、あ、フェイトちゃんのファランクスシフトに似てる。てことは……

「行くよ、クロにぃ!」
 シアちゃんが叫ぶとクロノ君はジャンプ。それを追ってくる傀儡兵に向けて、
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」
 シアちゃんが魔法を放ちます。

  ズドドドドドドドドドーーーーー!!

 ここに居た傀儡兵のほとんどが剣?、魔法弾?の直撃と爆発に巻き込まれて動かなくなります。幾つか動いていたのも在りますがクロノ君がちゃっかり潰しています。

 うわーーーー、やっぱりシアちゃん強すぎです。


「ここは僕に任せて、なのは達は駆動炉に向かって」
「駆動炉?」
 クロノ君によると、庭園の動力も使って次元震を起こすとのことです。だから次元震を止めるには駆動炉の封印もして欲しいとのこと。
「シアもなのは達に付いていってくれ」
「えーーーーっ」
 シアちゃんはあくまで不満顔です。えーーと、アリシア……ちゃんをそんなにポイしたいのでしょうか?
「君も分かっている筈だ。僕たちの切り札は君とリニス。道は僕が切り開いておく。だから今は……」
 クロノ君はチラリと私とユーノ君を見ます。それにシアちゃんも気付いた感じ。人差し指で顎をひと撫で。つまらなそうに頷きます。

「むぅ、分かった。この二人を途中まで届けたらそっちに回るのさッ」
「頼む」

 で、私たち三人は顔を見合わせて頷きます。
「さあみんな、行くのさッ!」
「うん!」
「ああ!」


 駆動炉へ向かう途中、アルフさんと合流。手伝ってくれるとのことです。
 四人に増えた私たちが途中の広間?、回廊?に出たところ、ああ、沢山。
 沢山の傀儡兵です。
 最初の広間より数は少ないですが、その分大きくて強そうです。

 だから今度は、
「ディバイン・バスターぁぁぁっ!」
 思いっきり砲撃を叩き込みます。う~ん、こういう時って快感って言うんでしたっけ?

 そんな私に別の傀儡兵が突っ込んできます。でも砲撃直後で私は動けません。まずっ、ピンチ!
 でもそんな私の耳に飛び込んでくる彼女の声。

「アーク・セイバー!」
 雷をつれて金色の刃が傀儡兵を切り跳ばします。でも、この魔法って!?
「フェイトちゃん?」
「フェイト!」
「フェイト?」

 其処にいたのは黒いマントに身を包んだ金色の女の子。振り切った大鎌を元に戻し、はにかんだように微笑みます。
 フェイトちゃんが来てくれた。私たちの処に。それはとっても嬉しいけど、でも、それって……

「ふーーん、っと」
 誘導弾を撃ちまくりながら、シアちゃんがツーーっと滑るようにフェイトちゃんの前に来ます。
 同じ顔の二人が顔を見合わせて。
 睨むようなシアちゃんと、俯くようなフェイトちゃん。
「アナタは誰? その答えは、見つかったの?」
「いいえ、まだ見つかりません」
 フェイトちゃんは一瞬目をそらし、でもその後真っ直ぐシアちゃんに顔を向け言いました。
「でも、その答えを見付けるためにここに来ました」
「……そっか」
 シアちゃんはフェイトちゃんに手を伸ばし、それにフェイトちゃんはビクリと体を竦ませます。でもシアちゃんの手は止まらず、フェイトちゃんの頭に。

 フェイトちゃんの頭を撫でるシアちゃんの笑顔が優しくて。それに照れたように返すフェイトちゃんも可愛くて。
 なんだかとっても良い光景です。でも私はちょっと焼き餅かも。
「フェイトぉ~、姐さぁん~」
 なんだかアルフさんも感激してます。

 と、そこに空気を読まないお邪魔虫。広間の壁がベギベギと崩れ落ちます。そこから出てきたのは一際大きい傀儡兵。
 大きな腕を構えてフェイトちゃんとシアちゃんに殴りかかります。
「アクセルシューター!」
≪スティンガーレイ≫
 咄嗟に撃った私の魔法とリニスが撃った魔法が傀儡兵に命中します。その隙にシアちゃんはフェイトちゃんの襟首を掴んで後退、一気に安全圏に飛びます。

 でも攻撃が直撃したというのに、あの傀儡兵はビクともしていません。つまり、
「この子には魔法は効きにくいみたいだ」
「うん、でも……」
「だけど二人、いや三人なら……」
 私達は一人じゃない、仲間が、友達が居るんだから大丈夫。

「シアちゃ……」
「アイシクル・ジャベリン!」
 でも、そんな私たちを置いておいてシアちゃんが魔法攻撃。変に大きいけどアレって誘導弾?シアちゃんの背中から飛んだ四つの魔法弾はグルリと弧を描いて傀儡兵に向かいます。
 一発は弾かれたけど三発が命中、相手に突き刺さります。でも、なんか効いてなさそうです。
「ブレイズキャノン!」
 で、シアちゃんは追加の砲撃。砲撃が当たった瞬間、突き刺さっていた魔法の槍はバインドに姿を変えます。
「!バインドの呪式を内包した多層式魔力弾?」
 それを見てユーノ君が驚き、フェイトちゃんが呟きます。なんか凄そうなことをしたみたいだけど、私にはさっぱりです。
 で最後。シアちゃんは右手を宙に向けて、さっき見た魔法剣を発生させて、
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフトッ!!」
 バインドで動けない傀儡兵に集中攻撃。
 大きい傀儡兵だけでなくてその周りでウロウロしていたのも一掃しました。

 で、何もなかったようにシアちゃんは一言。
「さあみんな、いくのさッ」
 ……シアちゃん。シアちゃんが強いのは分かったから、もう少し空気読んでなの。





 フェイトの案内でなのは達を直通エレベーターまで連れて行くと、アタシ達は反転、玉座の間に向かう。
 自分の家? だけあってフェイトの案内は的確。傀儡兵もほとんどクロにぃが倒したらしく、ほとんど遭遇しない。だから快調。スピードはフェイトの方が速いらしく、アタシは少し遅れ気味だけどなんとか付いていける。
 ……なんだけど。

「あっ!?」
 フェイトが不意にピタッと止まる。
「なに?」
 アタシが首を傾げるとフェイトは困ったように、
「えーと、この下、なんだ」
 なるほど一層間違えたのね。……この子って実は天然?
 まあ泣きそうな顔が可愛いので良し。お姉ちゃんは責めないよ。こうすれば良いだけ。
 アタシは右手を床にのばし、妹に頷く。フェイトも分かったようで肯き返してくる。
 だから姉妹の初合同魔砲。

「ブレイズ・キャノン!」
「サンダー・レイジ!」

 二つの魔法は床を吹き飛ばし、階下に通じる穴が開く。其処に飛び込んでいく女の子。
 下にいたのはクロにぃとあの女。なにやら激しく対峙している。
 うーーん、なんだかクロにぃの名台詞、聞きそびれた気がする。なんか気になるんで、後でS2Uのログ調べてみよう。うん。
 で、それは置いておいて、アタシはアタシの準備を開始なのさッ。


「何をしに来たの……、もう貴方に用はないわ」
「……、貴女に言いたいことがあってきました」
 クロにぃを下げ、あの女と対峙するフェイト。
 さて、フェイト。貴女の答え、フェイトという自分の答え、聞かせてもらうのさッ。

「わたしは……、わたしはアリシア・テスタロッサじゃありません。貴女が創った只の人形なのかもしれません。だけどわたしは、フェイト・テスタロッサは、貴女に生み出して貰って、育ててもらった貴方の娘です」

「ふふふふふっ、はははははっ。だから何? 今更、貴方を娘に思えと言うの?」
「……、貴女がそれを望むのなら、そう望むのなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からも、貴女を守る」

 フェイトは一歩、二歩前に出る。
「わたしが貴女の娘だからじゃない。貴女がわたしの母さんだから」
 そして手を伸ばす。あの女に。

 プレシア・テスタロッサの娘ではなく、プレシア・テスタロッサを母に持つ一人のフェイト・テスタロッサという人間として。
 一見同じだけど、主体が違うと意味が替わってくる。
 フェイト、それがアンタの答えなの?

 そのフェイトの精一杯の言葉を、
「下らないわ」
 あの女は一刀のもとに切り捨てた。

「き、貴様。フェイトの、娘の精一杯の言葉にお前はっ!」
 流石に頭に来たのか、クロにぃが怒鳴り込んだ。
「五月蠅いわねぇ、私の娘はこのアリシアだけ。もうお人形さんはいらないの、私たちはアルハザードへ行って取り戻すの、世界を! 全てを!!」

 ああああ、もう聞いてられない。お前達をアルハザードなんかに逃がすか。何故ならこっちはもう準備完了してるんだから。

「分かった、なら実力行使だ。力尽くで君たちを止めてみせる」
「あら、どうやって? おチビの執務官さん」
「……、こうやってだ!、スティンガーレイ」
 クロにぃが一瞬口籠もり、誘導弾を産む。実はおチビが突き刺さった?

「行け!」
 魔法弾はプレシアの方には飛ばず、こっちに来る。アタシの目の前に着弾。床に空いた穴を広げる。
 よし、射線が通った。

「なぁに、ソレが貴方のいう実力……えっ!」
 こっちを見あげたあの女の顔が驚愕に染まる。フェイトが飛び降りた床の穴、そのすぐ傍、プレシアからは死角になる位置でアタシはずっと準備をしていたんだから。
 六連装の魔力バレルと六重の術式制御用環状魔法陣、すべて安定。砲撃準備よし。あとは撃つだけ。
≪……ゼロドライブ!≫





≪……ゼロドライブ!≫
 リニスの合成音が広場に響き渡る。

 動き出したロストロギアを止めるには主に二つの方法がある。
 一つは動作中のロストロギアに匹敵する魔力をぶつけること。魔力の流れを阻害して、結果として動作をストップさせる。
 いまのジュエルシードは大魔導師プレシア・テスタロッサの制御下にある。これに魔力をぶつけて制止させるなど、それこそ以前プレシア本人が見せた次元干渉魔法並の大魔法が必要になる。この手は使えない。

 もう一つの方法は強力な凍結魔法でロストロギア毎凍りづけることだ。
 励起状態の魔力を基底状態に落とし込むことで、無理矢理動作を停止させる。
 これも普通なら無理だ。稼働中のロストロギアを凍り付かせるなど、Sクラスの魔導師でも容易なことではない。ましてや複数同時起動している今のジュエルシードなど、管理局の最強クラス魔導師でも難しい話だ。

 だけどそんな無理を可能にする組み合わせがここにある。
 シアとリニスだ。

 リニスは凍結魔法行使を前提に創られているデバイスだ。
 そしてそれを使うシアには、リニスの能力を100%活かせるだけの魔力がある。
 シアとリニスの組み合わせ、僕たちは彼女たちを使って、数回もロストロギアを押さえてきたのだ。

 更にこの場合、シアにはもう一枚切り札がある。なのはと同じ『収束』だ。

 ジュエルシードが放つ余剰魔力、それがシアに引き寄せられていく。そして溶ける。シアの魔力、黄金の光の中に。
 その金色を更にリニスが染めていく。氷結の光、蒼。眩い金を、深い蒼に染めていく。
 それは寂しさ隠す、一途な思いのようで。

 母(プレシア)に魔砲を向ける娘(アリシア)の気持ちはどうなのか
 それは僕には分からない。でも、止められない。止まらない

「凍って、砕けろ!」
 リニスの砲口の前で巨大に膨れあがる魔力の固まり、それはなのはのスターライトをも上回る。
≪ABRAHADABRA≫
 僕はフェイトに飛びかかるとシールド全開、更に床に伏せる。それを確認したのか、シアの叫び。
「ゼロドライブ・≪ブレィカー≫ァァァァァッ!!」

 圧倒的な蒼い咆哮がプレシア女史とジュエルシード、そして『アリシア』を飲み込む。
 そして最後にシアの呟き。
「……昇滅」





「……昇滅」
 最後のコマンドワードと共にアタシは残心を解いた。
 ゼロドライブが打ち抜いた先を見ると、おお、見事に凍り付いている。流石アタシ、褒めてあげましょう♪

 念のためロストロギアの反応確認、消滅。よし、ちゃんと凍ったね。

 で、あの女は……。あ、指が動いた。凄い!、生きてる。
 Sの文字が一杯付くランクの魔導師って、あれで死なないのか。覚えとこ。
 管理局のどっかで、魔力ダメージだけで人を傷つけない魔法って研究中らしいけど、そんな術式勿論入っていない。まあ、実用化されても使う気はないけどね、目には目をなのさッ。
 知り合いの局員さんもみんなそう言ってるし。そんなもの導入したら現場はパニックだよ。

 それはおいといて、取りあえず下に降りてクロにぃと合流しないと。
 飛行魔法で降りる途中、ピシリって何かが割れる音。何?
 ああ、生ゴミ入りのポットにヒビが。当然か。水は凍ると体積が増えるから内圧で割れるはず、と学校で
習ったし。
 ついでにポットを支えてた魔法が切れて、床に落ちる、と。
 ゼロドライブで床が凍って、傾いて……あれ?
 ……虚数空間が残ってる。
 その虚数空間を目指すようにポットが滑っていく。

「ア、アリシア」
 滑っていくポットに手を伸ばすあの女。ほんとに凄い、この状態で喋って動ける。でも本当に驚いたのは次の
瞬間だ。
 女の顔色が変わる。生ゴミポットが滑る先に虚数空間が在るのに気付いたようだ。
 顔が絶望に歪み、
「アリシアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 飛行魔法でポットに飛びついた。
 しかし現実は非常だ。ポットは止まらず虚数空間へと滑って、アレも一緒に……!!


「母さんっっっっ!!」
 叫び声を挙げたのはフェイトだ。クロにぃの手を振り切って高速でダッシュ。虚数空間に堕ちようとするプレシアに手を伸ばし、しかしプレシアはそれを掴まない。女が見るのはポットの中身だけ。

 ポットとプレシアが虚数空間に堕ち、そして、
「母さんっっっっ!!」
 フェイトも虚数空間に飛びこんだ。馬鹿が!!

 アタシは二人を追って全力飛行。
「止めるんだ、シア!! 君まで落ちることは……」
 制止するクロにぃの叫びを聞いたが、無視。アタシも、
「母さんっっ!!、フェイトぉぉ!!」
 魔法が使えない虚数空間に突っ込んだ





 わたしの視線の先にいるのはわたしの母さん。
 わたし達は虚数空間に飛び込んで、そのまま落ちていく。
「母さんっっ!」
 わたしが叫んでも母さんは私に振り向いてくれない。かあさんが見るのは白く凍り付いたポット、アリシアだけ。
 わたしは、わたしは……

「母さんっっ!!、フェイトぉぉ!!」

 そんなわたしの耳に届いたのはあの人の声。
 わたしと同じ人。姉さん?

 上を見あげる。虚数空間のゲートから飛び込んで来た、あの人。
 なんで?

 あの人は母さんを否定した。あの人にとってわたしは同じコピー体でしかない。
 わたし達を追って、此処に、死にに来る必要はない。なんで?

「フェイト、手を伸ばして!」
 あの人はわたしに手を伸ばす。一瞬躊躇ったけど、わたしもあの人に手を伸ばす。
 伸ばした手が繋がる。あの人は握った手を思いっきり引っ張り、わたしを上に。
 反動であの人が落ちるスピードが上がる。あ、母さんに追いついた。

 ポットにしがみつく母さんを剥がそうとして、暴れられて、お腹にパンチ!
 気を失ったみたいだ、動かなくなった。
 そのまま両足で母さんにしがみついて、わたしの方を向く。違う! 上の方、ゲートの方だ。

 あの人は左手を伸ばし、真っ直ぐ上を向いて、
「クロにぃぃぃぃぃ!!!!」
 左腕を…………、発射した。





「クロにぃぃぃぃぃ!!!!」
 虚数空間のゲートの向こうからシアの叫び。念話じゃない、肉声だ。
 虚数空間の上空で待機していた僕は、ゲートから飛び出してくるソレを辛うじて避けた。
 こんなもの直撃を受けたらノックアウト、僕まで虚数空間に落ちてしまう。

 僕はシアの左腕から伸びたワイヤーを確保、左手を手元に戻してS2Uを握らせる。そのままロック。
 これで良し。

 シアの左腕は義体だ。生身の腕は彼女の治療中、どうにもならずに切断した。
 今の彼女の左腕には、リーゼ達がどこからか持ってきた、戦闘機人の腕が付いている。
 なにをどうやったのか、シアが成長しても大丈夫なように数種類、数セットという突っ込みたくなる豪華セットだ。
 肘の先から飛ばせる今の腕は、シア達お気に入りの一品。
 そんなギミックいらないと僕や母さんは思うんだが、こんな風に時々役に立つから強く言えない。
 グレアム提督までなんとかダイザーみたいで良い、と言うんだから、なんだろう。


 S2U経由で義手にアクセス、ワイヤーを巻き取りに掛かるのだが、なんだ、これ重すぎ。女の子二人分の重さじゃないぞ。
 このままだと僕まで虚数空間に……
 そんな時に援軍が来た。

「クロノ君、フェイトちゃんとシアちゃんは?」
「フェイトはどうなったんだよ」
 なのは、ユーノ、アルフ、ちょうど良いところに。これなら彼女達を引き上げられる。


 右腕にフェイトを抱き、両足でプレシアを確保したシアが引き上げられたのはこの五分後だった。
 ジュエルシードは確保。次元断層どころか大規模な次元震もなし。主犯であるプレシア・テスタロッサも確保。

 これで状況終了。ベストとは言わない。だけど十分ベターな結果だ。



PS1
『あの女』に平然と砲口を向けるシアと、『母さん』を必死で助けるアリシア。
 この矛盾と葛藤の所為でシアは精神的に成長、シニカル化?

 というか、コレって所謂『二人で一人の魔法少女』?
 Wも良いけど個人的にはスカルの方が格好いいと思うんだ。そういえば英国紳士のグレアムさんは帽子が似合いそう。
 で、次回『魔法少女リリカル☆アリシアW』最終回、
 「さあプレシア・テスタロッサ、お前の罪を数えろ、なのさッ」


PS2
 『蒼に染めてく』なのね。ずっと『蒼に溶けてく』だと思ってた。
 『蒼に溶けて流れてく』のはAsだし。
 歌詞カードを確認して良かった、恥かくとこでした。

 ところでリリなのでイメージカラー蒼って誰?どっかの鉄は二次だし……


PS3
 裏設定でも挙げたけど、当時の現場の人間が非殺傷をどう思っているか書いてみた。この先の流れとして
①非殺傷術式完成
②人権団体?の強いプッシュで強制採用
③現場の人間が一斉反発、大量退職
④『魔法は殺傷ありという常識』を知らない者達、年少者を大量採用
⑤ベテラン不在により人手不足が深刻化
⑥JS事件へ

・管理外世界の人間、なのはやはやてもこの流れに沿って入局。
・ベテラン不在により二十歳前の小娘が大エース扱いになる。

 というのはどうでしょうか? なかなか在りそうな感じがするは作者だけ?



[11860] エピローグ、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/01/18 20:53

「そんなの簡単だよ。名前を、呼んで」
「……うん、…………な、なのは」
「うん! フェイトちゃん!」


 向こうではなのはとフェイトが名乗り?を挙げている。
 しかし名前を交わして友達になるとは変わった風習だ。この第97管理外世界は第79管理世界と似ていると思ったのだが、やはり色々違うようだ。

「う~ん、感動的な光景だねぇ」
 そんな僕の横から金色の頭がひょんと飛び出した。
 と、手にした茶色っぽいモノをハムハム囓る。

「シア、君はまた……。向こうに行かなくてもいいのか?」
「だーいじょぶ、アタシは別れは済ませてあるのさッ」

 ニコっと笑って紙袋に入った焼き物? お菓子か? をみんなに勧める。
「おい、勝手に現地で買い食いは……」
「まあまあ、クロノ。一ついただくわ」
「じゃあ僕も」
「うううう、ふぇいとぉ。あ、あたしも」
 アルフ、泣きながら食べるなよ。仕方がないから僕も一つ。
 魚の形をして、中には餡。シアが言うにはタイヤキというもので、この公園の名物だそうだ。
 僕には少し甘いかな? しかしシア、何処でそんな情報仕入れたんだ?

「あっ、美味しい」
「ううううっ」
「う~ん、あっさりしてて良いわね。もっと甘いほうが好みだけど」
 母さん、僕はなにも言いません。


 シアの働きでジュエルシードの暴走は押さえ込めた。このため次元震は発生しなかったので航路はクリア。この世界に足止めされることなく、アースラは旅に戻ることが出来る。
 虚数空間がまだ残って危険な時の庭園は、時間をおいてから専門の調査員が調べることになっている。プレシアのデバイスや研究室のデータは吸い上げたので、裁判にかける分は問題無いだろう。
 だから僕たちはまた定期航路の巡回に戻る。

 そんなアースラがこの世界を離れる前、なんとかとれた再会の時間。
 拘留したばかりで、ほとんど取り調べを行っていないフェイトを艦の外に出すのは、本来は出来ない相談だ。だけど、そこをシアが押し切った。
 なのはとの約束とか、フェイトの精神安定のためとか、妹達の我が侭聞けぃとか、この前のケーキまた買ってくるからとか……。 結局母さんが折れたのだが、どれが効いたのだか?


 そんな魔法の時間もこれで終わりだ。
 で、別れの時間。涙はあるが、泣き顔はない。

「なのはさん、また会いましょう」
「それじゃあ」
「じゃあね、なのは。今度は普通に遊びに来るのさッ。クロにぃ、よろしく」
「うん、僕もスクライアへの報告が終わったらまた来るよ」
「……、ああ、その時はアースラの転送ポートを貸してやる」
「あんたには世話になったよ。元気でね」
 で、

「……なのは」
 なのはと見つめ合うフェイト。二人を何故かワクワクと見るシアと母さん。お願い、自重して。
「なのは、また、会おう」

「うん、フェイトちゃん。シアちゃんもユーノ君もまた会おうね」

 それじゃあ、また、だ。





 そして囚人は牢獄に戻る。
 冷たい鉄格子と堅いベット。
 食事は一日一回、パン一切れと薄いスープだけ。

「ねぇ、フェイトぉ」

 唯一の楽しみは時々面会に来る家族だけ。それも段々回数が減ってきて……

「ねぇ、フェイトってばぁ」
 もう、なにアルフ?

「このムービーつまんないよ、別のにしようよ」
 むう、これから面白くなりそうだったのに。
 しかたない、ディスクを取り出してアルフが差し出してきたのに変える。

「はぁっ」
 わたしは溜息をついてソファにゴロリ、横になる。
 わたし達の待遇は悪くない。ロックはされているが普通の二人部屋が与えられている。
 食事はクルーと同じモノが出るし、誰かに付き添って貰えば船の居住区なら自由に歩ける。

 ただ、母さんに会えないのが心配だ。
 母さんはあれから目を覚まさない。ずいぶん前からお腹の中がボロボロで、気力だけで動いていたってことらしい。状態が安定したら本局とかいう処の病院に転送するそうだ。
 その前に一目で良いから会いたい。


「ああ、フェイト。そんなに落ち込まないで。なんとかなるよ」
 アルフはずいぶん楽観的だ。精神リンクからもアルフが落ち着いているのが分かる。
「リンディさんもいい人だし、第一、姐さんがいるじゃないのさ」
 姐さん、あの人。
「姐さんの父さんも力を貸してくれるって話だし、あたしたちは大船に乗ったつもりで任せりゃいいんじゃないの」

 アルフはあの人のこと心から信じている。
 あの人。わたしと同じ人。わたしの『姉』と呼べる人。

 わたしはあの人の何なんだろう。
 わたしはあの人をどう思えば良いんだろう。

 あの人はわたしと同じ、母さんに創られた人で、わたしと同じに捨てられた人。
 でもあの人は、わたしがあんなに欲しかった母さんとの繋がりを持っていて、そしてそれを否定した人。

 わたしはどうしたら良いんだろ。

 あの人を、
 愛せばいいのか、憎めばいいのか?
 妬めばいいのか、慕えばいいのか?
 受け入れるべきなのか、嫌うべきなのか?

 ……わからない。

 でもひとつ、こう思う。
 わたしがあの人とどうなりたいか決めた時、わたしは初めて『一人のフェイト・テスタロッサ』として始められるんじゃないだろうか、と。

 考える時間はある、だから今は……





 窓の外はマーブル色。
 この景色の先に時の庭園があるはず何だけど、いくらアタシの右目でも高次空間を越えて見るなんて出来ない。
 アタシが創られた場所、フェイトが創られた場所。アタシが捨てられた場所。
 アタシは創られて、実験してすぐ捨てられたらしいから、想い出なんか無い。
 あそこにあるソレは『アリシア』の記憶だけ。……馬鹿みたいだ。


「辛いの?」
 そんなアタシの前にカップが置かれる。中身はホットミルク、湯気が優しい。
 リンディ姉さんの声は暖かくて、だからアタシは、
「うん」
と首を縦に振る。
「そんなに辛いなら……」
 言いかけたリンディ姉さんに今度は首を横に振る。
 管理局の技術なら嫌な、要らない記憶を封印するのは簡単だ。犯罪被害者には時々やるらしい。でも、

 これはやっと掴んだアタシだけのあたしだ。いや、アタシとフェイトのあたしだ。
 否定はしない、でも肯定もしない。抱えてアタシは生きていく。

「そう。それじゃあ、聞かせて……、貴女は誰?」

 プレシア・テスタロッサを泣いて否定したアタシ。
 プレシア・テスタロッサを命がけで助けたあたし。

 貴女は誰?
 アタシはアリシア・グレアム。で、
 あたしはアリシア・テスタロッサ。だからアタシは、

「アタシはシア……、通称アリシア・テスタロッサ・グレアム、なのかな?」
 困ったように笑うと、リンディ姉さんが後ろに廻り、抱きしめてくれた。優しい感触と、暖かい匂い。


 兎に角だ。色々あっていろいろ疲れた。
 ポートから転送出来る範囲に入ったら、一回ミッドの家に帰ろう。
 家に帰って自分の部屋でゆっくり休んで、これからの事、フェイトの事、相談しよう。

 それからゆっくり甘えよう。それくらい良いよね。
 だってアタシは、養父さんの……、父さんの娘なんだから。



  広い広い次元世界。
   見付けたルーツはデタラメで
    手にした過去はオンボロだけど、
     それでもあたしはアタシです。

  アタシはあたしで、あたしはアタシ。
   古いのあたしを受け入れて、おニューのアタシを目指します。

  二つの心と一つの体、
   繋いだ二つのその先は……、きっと、

  誰にも想像できない物語のプロローグ。
   魔法少女シニカル★アリシア、
    始めるのさッ♪


                -- 魔法少女リリカル☆アリシア 完 --



PS1
 始めるのさッ♪、ってことで無印編終了。
『なのはとFateの新しい物語』が始まる前になんとか終わった。(しかしなんで両方とも1/23公開なんだ、フェイトでFateだからか?)

 それはおいといて、As編、需要あるのかな? シアの立ち位置からすると、かなりダークな話になりそうなんだけど。
 PVの割に感想が少ないんで、微妙だ。 ……感想plz

 取りあえず、一旦此処で終わりです。
 読んでくださった方、ありがとなのさッ!


PS2
 しかし、色々おかしい? テンプレ的に姉に甘える妹フェイトが書きたかっただけなのに、距離が微妙な二人になってしまった。
 何が悪かったのだろう?


PS3
 原作ではユーノは地球に残った。だけどスクライアの人間として一回報告に帰らないと不味いでしょ。
 と言うわけで帰しました。
 シアと一緒に時々地球に遊びに行く、ということになります。
 シアはビデオメールでは伝わらない近況とかで、なのはとフェイトを繋げます。


PS4
 なのはとフェイトのお別れシーン、あれって海鳴でやるよりアースラでやるべきでないか?
 一応容疑者のフェイトを外に出すよりマシだし。(絵的には公園が綺麗だけど)
 本作ではシアがケーキとタイヤキ買うために頑張りました。(海浜公園の名物はとらハ的にタイヤキでしょ)


PS5
 主犯であるプレシアが捕まり、時の庭園からデータを回収出来たので、フェイトの罪は原作より軽くなります。
(原作では本人達の口頭証言しか無かったため、信頼性が微妙に弱かった、ということで)



[11860] 設定というか雑記、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/05/11 19:48
 本編読むのには関係ない裏設定なモノを並べてみました。
 このSSでのオリジナルっぽい要素なのであまり突っ込まないでください。
 では想像というか、妄想というか、こういうのが好きな方は一つお好きに。

1.人物裏設定

・オリ主
 シア(アリシア・グレアム)
 時空管理局本局付き嘱託魔導師
 10歳相当 女性

 リリなのオリ主の定番、アリシアクローンでフェイトの姉妹機。失敗作として処分されるところをリニスに救われ、海鳴に飛ばされるのも、まあ基本。
 ただ一つ違っているのは、彼女には中の人がいないという点。強いて言えば中の人はアリシア。

 "F"としてフェイトの鏡像であると同時に、グレアムの非保護者という点ではやての鏡像でもある。
 海鳴でリーゼ姉妹に拾われたのだが、彼女達が海鳴に居た理由を気付かれると不味いため、書類上イギリスで拾われたことになっている。

 "F"としてプリシアに創られるが、培養中のミスにより体のあちこちが腫瘍化(癌化)。このため廃棄処分となる。ただし廃棄される前に記憶転写の実験をされる。結果として思わしくないとされ、シア以降の"F"は別アプローチの記憶転写方式となる。
 ただし転写が定着するまで時間が掛かるというだけで、記憶転写という意味ではかなりの精度で実現している。
 また、アリシアの記憶は表面化しないで、潜在的に影響を受けている程度(4話まで、プレシアの雷を受けたショックで5話から表面化)

 "F"としてのフィジカル面ではフェイトが、記憶転写実験のサンプルとしてはシアが、この時点に置いて最高性能を持つ。
(エリオ達フェイト以降の"F"は、メンタル面ではシア方式、フィジカル面ではフェイト方式が取られている)
 "F"の詳細は後述

 身元引受人となったグレアムの要請で管理局にて治療を受けるが、彼女が受けたのは治療と言うより改造に近い。結果、全体重の20%以上が人造臓器に置き換えられている。通常の治療用の生体パーツだけでなく、この頃はギリギリ合法だった戦闘機人用パーツまで使っている。
 シアが管理局入りしないのは、身体がまだ安定しないのも理由の一つ。
 またシアが高度治療を受けられたのは管理局の好意ではなく、幹部であるグレアムがごり押ししたからと悟っている。このため親身になってくれた医師達にはともかく、管理局自体にはあまり感謝していない。

 フェイトより一年ほど前に創られたモノであり、要するにフェイトより一歳年上。彼女たちの間に別の姉妹がいたかまた別のお話。
 なお、フェイトはアリシアクローンとしての"F"の完成品ではない。言ってみれば最終ロットというのが正しい。"F"によるアリシア再生を諦めた時、手元に残っていたモノがフェイトである。

 電気変換能力はないが、逆に魔導師としての総合力はフェイトより高い。
 その基本スペックの上、一歳年上(この頃の一歳差は大きい)。更に人造臓器による強化にリーゼ姉妹による指導。チートデバイス、リニスの性能もあり純粋戦闘能力において手が付けられない強さを誇る。

 魔法はフェイトと同じタイプを使うようなイメージがあるが、クロノと同系列の魔法を使う。フォトン系では無くスティンガー系? 師匠が誰かと思えば納得できる。

 明るく闊達な奔放な性格にしようと思って、なのさッなどという口癖を付けたのになんか成功した気がしない。
 なんか飄々というか一歩引いたというかクールというか……、リリカルでない。A’sまで続いたら”シニカル★アリシア”とタイトルを変えようかと密かに考え中。略称"シニしあ" "カルしあ"?


 本筋には関係するか知らないけど微妙なギミックあり。

・左手
 本編で言ったように義手。所謂ロケットパンチ。
 日本人はあまり知らないかもしれないけど、マジ○ガーシリーズのグレ○ダイザーは当時ヨーロッパでめちゃくちゃ流行ったアニメらしい。なのでグレアムさんも大好き、ということで色々……
 また簡易デバイスとしての機能を持ち合わせ、単一魔法に限るが魔法術式をインストールして、タイムラグ無しで発動可能。変更する場合リニス経由でアクセスする。
 通常バインドブレイクかシールドブレイクがインストールされている。
 バインドブレイクが入っている場合、シアは止まらない、止められない、チートな存在に成り上がる。

 シアが成長して、体が安定した時点でクローン培養した生身の腕に換装予定。なんだけど……便利なんでどうするんだろう。予定ということで。

 なお五話でリニスがシアを起こした痛い起こし方というのは、左手の制御にリニスが割り込みを掛けて、頭を叩いて起こしたという端から見て笑える方法だったりする。(逆に言うとそれのアクセス権を許すくらいシアはリニスを信じている、ということ)

・右目
  何のことかな?

・女の子
  遺伝的には問題ない。テロメアも寿命からすると誤差範囲。
  子宮とかは在る。卵巣も片っぽ在るのでちゃんと子供は産める。


 シア専用オリジナル魔法

・ゼロドライブ・ブレイカー
 氷結属性付きの砲撃魔法。シアの切り札、というか得意技。一話でフェイトを撃墜しようとしたのがこの魔法。
 なのはのスターライト・ブレイカーと違って、リニスの機能を使って威力は落ちるが収束なしでも使用可能。というかディバイン・バスターと同じスピード(溜め)で撃つことが出来る。(だから、これを実現するリニスはチートデバイス)
 本来は対『闇の書』用封印魔砲(の簡易版)。エターナル・コフィンは小範囲攻撃魔法で本来の『闇の書』用ではない。
 リミッターにより本来の魔砲は作動できないようになっている。対『闇の書』用の場合、名称に追加されるフレーズあり。
 なお同じ術式がデュランダルにもインストールされているが、クロノでは魔力値不足、かつ収束技能が無いため使用できない(……現実ってこんなことばっかりさ)

 もとネタは某『魔を断つ剣』のライバルメカ?の必殺技。本来の名前もそこから推測できる。ネタは振ってるし。『しょーめつ』

・アイシクル・ジャベルン
 小型槍状の誘導弾。
 多層式魔力弾で複数の術式を単一で実現している。『とある六課の~』でクリスがティアナに教えているシーンがあるが、あの時点でも『復層式』ではない『多層式』はレアという制御の難しい魔法。
 この時代でこれを使えるシアは普通でない、エリートというかチートキャラ。
 誘導・貫通・固定・維持・バインドの五種の魔法を同時実現している。Sts時には更に非殺傷が付く。
 なお、維持を解放してバインド機能を解放するためには時限式を設定するか、術者の魔力で刺激する必要がある。
 難易度の高い魔法ではあるが結局、相手の動きを止めて決め技である砲撃に繋げる為のモノ。これに繋がる砲撃が如何に怖いモノかこれからも分かる、というシロモノ。
 Asで痛い目になる予定がヴィータだったりする。

・ゼロドライブ・インパクト
 ブレイク・インパルスの氷結属性付き強化版。詳細は秘密。
 Asで痛い目になる予定がシグナムだったりする。


2.デバイス
 リニス(Type PD)
 シアの個人持ちデバイス。親馬鹿ギルさんから送られたモノ。その正体はプロトタイプ・デュランダルである。

 ピーキーな特性を持ち、扱いが難しかったPデュランダルのAIを強化しインテリジェンス化。それにより反応がマイルドになり全体的なバランスがアップ、ピーク性能は劣るが全般的に扱いやすいデバイスになった。

 魔導師の杖としての本来の機能、術者の演算補助を重視したタイプ。基本的に形状変換はしないが、それはそんな事をしなくても良いだけの基本性能を持つからである。

 通常モードでは形状変換はしないが、近接戦闘用に先端から魔法剣を発生し長刀のように使ったり、高速機動補助に魔法光翼を生成したりはする。(要するにACSが出来る)

 プロトタイプとは言え、管理局の技術の粋がつぎ込まれていて、扱いやすいインテリジェンス・デバイスとは言え現状のシアではその機能を使いこなせない。この為、通常時はリミッターが掛けられている。
 しかしこの状態に置いても、某一族が子供のお守りに託すモノ(レイジングハート)や、優秀とは言え正規のデバイスマスターではない一介の使い魔の作品(バルデッシュ)、更に原形が百年以上前のアームドデバイス(レヴァ剣とかハンマー指輪)とは隔絶した性能を誇る。
 A’sに置いてマリーにより改修され総合能力が強化された二機だが、その時点でも性能は数段劣る。また管理局の規格により製造されたリニスはパーツの互換性も高く改造しやすいため、Sts時に置いてさえ二機より優秀。

 魔法プログラムを起動するための強力無比な演算能力に加え、氷結専用の回路をハードウェアとして装備している。その為、簡単な氷結魔法ならワンアクションで実行可能、ブレイカー級の魔法も手順を幾つか省いて速射が出来る。
(デュランダルも同様に氷結専用の回路を持つ。このためA’s本編でクロノはデュランダル入手後練習なしにエターナル・コフィンが撃てた、と思う)
 またベルカ式デバイスのカートリッジ・システムに対抗するため、魔力コンデンサー・システムを試験的に導入、瞬間魔力の上昇を実現している。(こういった色物を搭載しているからこそのプロトタイプである)

 形状は杖、シルエットはデュランダルというより管理局の汎用デバイスに近い。(あしゅ○男爵とかが持っているバードス○杖、という感じ)
 基本色はガンメタルで所々が金色。待機形体はペンダント。

 リミッターによりオミットされている演算能力をAIの強化に使っており、これにより他のデバイスとは違い流暢に日本語(正しくはミッド語)を喋る。
 逆に言うとリミッター解除時には英語? になる。



3.プロジェクトF.a.t.e
 SSではよく”記憶転写型クローン”と認識されているようだが、これは違うと思う。この為、このSS的に再定義。

 プレシアが行っていたのは『使い魔を越える人造生命体』の研究。
 だけどプレシアの目的は娘の再生。アリシアを再生するだけなら"F"などにしないで単純にクローン再生すれば良い。
 "F"として再生しなければならなかった理由として、考えられるのは記憶の転写方法。
 念話の応用か何かで記憶転写を行うとして、その前提として相手側が無垢な状態で念話が出来るほどの強力な魔導師である必要。
 これならアリシアを魔導師として再生させるため"F"を研究する理由となる。
 SSではアリシアは非魔導師扱いが多いけど、原作ではその辺には触れていない(闇の書の中でアリシアも魔法の勉強をしていることになっていたけど、これはフェイトの想像かと) まあもしアリシアが魔導師だとしても能力不足でかさ上げが必要だった、ということで。

 人造魔導師とか戦闘機人とかの製造プロセスはこんな感じで。

 ①素体をクローン培養。このとき必要に応じて遺伝子を弄ります。
 ②培養中になにやら色々に処理を。
 ③赤子状態を越え、在る程度まで育てます。電気ショックなどで筋肉を刺激して運動させます。
"F"の場合
 ④真っ新な状態の頭脳に基礎人格を入力します。
 ⑤真っ新な状態の頭脳に記憶を転写します。

戦闘機人
 ④真っ新な状態の頭脳に基礎人格を入力します。
 ⑤機械とか色々入れます。
 ⑥人格とか色々調整します。

 ……しかし人造魔導師にしても戦闘機人にしても④が出来ないと意味が無いんですよね。
 記憶転写より人格転写の方が難しい気が。まあ古代ベルカとか技術が残っていてこの辺の手順は確立しているとかで。基礎人格だけで細かい部分はいじれない、とか思ってください。
 これがないといろいろやっかい。培養プラントから出されたら赤ん坊状態、というのは問題ありすぎでしょ。
 スカさんはナンバーズの人格を調整している様ですが、これは基礎ではなく応用レベルということで。

 なお、シアは③の段階でミスして腫瘍化しました。ただ組織レベルの問題で遺伝的には問題なし。
 フェイトは⑤が結果的に失敗した、ということで。本編PSでも書いたけど、自分の名前をアリシアではなくフェイトと認識している以上、記憶転写が成功したとは思えない。



4.シアと"F"
 勘違いする人いるかもしれないけど、シアはアリシアではない。
 潜在的に持っているアリシアの記憶の影響を受け、精神がアリシアっぽく引きずられているだけの他人である。
(転生という可能性は否定しないが、転生は魂の問題であり別人だから関係ない)

 記憶と人格は別。プレシアが望んだのはアリシアの人格の方。本人のコピーに記憶を入れれば本人の人格も蘇るだろう、と追いつめられたプレシアさんは錯覚したと。
 この辺はまるっと冥王なゼ○ライマー。マサキ(原作)というかマサト(OVA)が記憶と人格の差に苦しんだように、シアも五話あたりで苦しんでます。(この辺の整合をとるため眠り続けていた、と)
 で、なんか悟ったキャラになってシニカル化?

 一応、アリシアっぽいモノの作り方
 ①アリシアベースで"F"の素体を培養します。
 ②①に基礎人格を入力します。
 ③②にアリシアの記憶を転写します。
 ④③をオリジナルに近い状態で育てます。人格の成長に③の記憶が影響を与えるように注意しましょう

 という感じで。なお、一番大事なのは④の人格を育てる過程。

 シアは③が成功して、④で色んな人に可愛がられて愛情一杯で育ちました。なのでアリシアっぽくなった。
 フェイトは③が失敗して、④で母親に虐待して育てられた。なのでアリシアとは似てもにつかない性格になった。
 よーするにプレシアがアリシアに似てないフェイトが嫌いなのは、育て方を間違えた本人が悪い、ということ。



5.その他
 裏設定というかグチというか

①プロジェクトF.A.T.E
 スカさんが基礎研究、プレシアさんが引き継いで完成させたそうな。
 つまりプレシアさんの個人研究、ということだよね。実験データは時の庭園にしかないはず。庭園と一緒に虚数空間に消えたはず。
 なんで流出してるのさ?
 考えられる理由として
 ・管理局暗部が虚数空間からサルベージ。
 ・行方をくらます前、地方研究所で研究中の不完全なデータから誰かが(スカ?)完成。
 ・アリシア再生に失敗したので興味を無くして誰かに売った。
 ……本編では3番目、かな~

 なお、このSSでは4番目、
『時の庭園が虚数空間に堕ちなかった。なので普通に管理局調査隊がサルベージした』
でした。
 オリジナルデータがある為、エリオ君達は原作よりちょっと強力になったりして……。


②違法研究
 Sts時に於いて人造魔導師の研究・作成は違法のようだ。
 しかし"F"は研究時に違法ではなかったみたい。
 プレシアは違法研究していたという話も在るみたいだけど、それは中央を放逐された時の話(ヒュードラ関係)。
 放逐後の研究は言及されていない(研究内容が管理局のデータにあるくらい堂々と研究しているし、プレシアも違法研究による犯罪者扱いはされていない)
 依って違法化されたのはプレシア失踪後~Stsの間、ということか?
 これは戦闘機人にも言える事。倫理関係で禁止になった、という表現があったが、禁止になる前は合法的に研究されていた筈。(前述したが、シアには違法化前の公開技術が使われているという設定)

 つまりスカさん達の研究は始めた頃は合法で、違法になったから地下に潜った、とか。スカさん不幸かも。

 しかし人造魔導師が違法なら、使い魔もある意味人造魔導師なので違法でないかい? ここを突っ込まれたくないからStsにアルフが出なかったのか。
 また守護騎士達プログラムはどうなんだ。あれこそ人造魔導師?

 えーーと、使い魔持ちのフェイトさんの感想を聞きたいところ。犯罪者とか上部にここを突っ込まれたくないからアルフを引退させたとか。

追記
 考えてみれば更に問題なヒトがいる。それはリインフォース・ツヴァイ。
 自律して、意志があり、魔法が使え、さらに可愛い♪
 ユニゾン・デバイスの分類にはいるのだが、『はやての家族』だったり曹長の階級を持ってたりすると、人として扱うべきでないだろうか。その場合やっぱり人造魔導師でないかい。
 さらにアギトと違い現在の技術で創られたリィンはロストロギア扱いとかもできない。

 製造コストは高いだろうけど、ユニゾン機能をオミットして、量産すれば廉価版ができるのではないか?


③非殺傷
 なのはで非殺傷という温い概念が持ち込まれたのは何時だっけ?
 少なくとも無印、A’sでは殺さないように手加減している、という表現がある。これは非殺傷あーたらとは意味合いが違うみたいだ。
 またフェイトvsシグナムとかで結構流血している。
 もしかしてStsになって導入された概念? 魔法技術が進歩してそういうことが出来るようになったとか。(カートリッジシステムが一般化したとか、確かに魔法技術は進歩してるし)

 とすると無印、A’s時には非殺傷仕様はなかったことになる。
 なので"アリシア"に於いて非殺傷と言う表現はしないことにした。結果、無印はいいとして、A’sになると……シャマル涙目。


④リニス
 リニスは本来フェイトの教育用に、アリシアのペットの山猫をベースに作った使い魔。
 つまりフェイト製造後に作られた筈で、シアの代には居ない筈。
 アリシアのペットだったんだからアリシアのこと覚えてそうなんだけど、使い魔になったらアリシアのこと覚えてなさそ。でフェイトがプレシアの実の娘と思いこんでる様子。
 ……所詮ぬこか。

 この話ではブレシアが地方研究所を辞めた後、助手として作ったことにしています。
 でSSではテンプレのようにFの失敗作をばらまいています。そのうち第二第三のシアが現れたら……いやだな。


⑤デバイス
 レイジングハートとバルディッシュはワンオフの一級デバイス。
 でもこの話では管理世界の水準から見て優秀なデバイスだけど、一流の性能を持つとはしていません(五段階評価でB+辺りか)

 主人公メカ?だから即一流というのはなんか違うと思う。
 理由は前述を補足して、
・レイジングハート
  スクライア一族が子供のお守りに託すレベルのモノ。
  大して偉くない筈のユーノの独断でなのはに所有権譲渡出来る程度のモノ。

・バルデッシュ
 優秀とは言えデバイス作成の教育を受けたことも、製造経験があるわけもない一介の使い魔が見よう見まねで作った物。
 という感じ。

 A’sからStsの間に段階的に強化されていき、最終的には超一流のデバイスになる、と。要するにマスターと相棒的に一緒に成長していく、という感じ。


 リニスはこの逆。無印の時点でStsの第一線で活躍できる性能を持つ、と。(五段階評価でS-辺りか)
 A’sからStsの間にカートリッジシステム積んだりするけど、目に見えた強化はなし、という感じ。


⑥質量兵器

・最近色々話題のアースラのビーム砲

 …………まあ考えられるのはこんなところか?

①荷電粒子なんでほとんど質量がないから質量兵器ではない、と言い張る。
②魔力炉から持ってきた魔力をデバイスで魔法にして撃つからこれは魔法のビーム砲、と言い張る。
③管理外世界だから問題ない、と言い張る。
(管理外世界で質量兵器つかっちゃダメと本編では言っていない)
④質量兵器がどーとかはStsでの話だから無かったことにする。

 スタッフの本音は④だけど②と言い張るのか?

・考察
 ところでACSみたいに誰かがぶっ飛んでいるところを考えましょう。で、デバイスから手を離して、デバイスだけぶっ飛んで相手に当たりました。これって質量兵器?
 得物を魔法で加速して相手に攻撃するのが魔法攻撃と言い張れるのなら、魔力カートリッジと玉で銃弾を作って銃で撃つとどうなるんだろう。(勿論、魔力カートリッジの爆発で玉は加速)

 つーかヴィータって鉄球をハンマーで叩いて誘導弾として撃ってるよね。あれって質量兵器でないか?
 あの鉄球が実は魔法塊で魔法扱いなのか?


⑦魔導師の強さ関係
 本作での魔導師の強さ関係はこんな感じです。(相性とかは無視で)

 プレシア>>リンディ≧シア>クロノ>なのは≧フェイト>アルフ≧ユーノ>一般武装隊員

 フェイトが弱いですが、フェイトの魔法戦闘の先生はリニス。
 でもリニスも戦闘魔導師と言う訳ではなく、誰かに指導を受けたことも、実戦経験も無いはず。(このあたりデバイスと一緒)
 だから何処かからトレーニングメニューのようなものを取り寄せて、それに沿って教えたはず。
 つまりフェイトは綺麗で上手いけど、実戦経験不足な分、脆くタフさがないという感じ。

 なのはは実はフェイトより実戦経験(憑依体戦とか)があり、シアに鍛えられた為にフェイトより強くなった、と言うことで。


⑧スターライトブラスター、とか
 なのはの魔法は『祈祷型』のデバイスであるレイハさんに元々インストールしてあったものだけの筈。つまりスクライア系の魔法。収束前提のSLBなんてある訳ない。
 誰かが教えないと『収束』技能なんで気付かないしSLBなんて覚えられないはず。シアが教えたとすれば矛盾は少ない、ということで。
 感覚で魔法を組むと言うのも基本を押さえたもっと先の話でしょう。、

 ん?、この理論でこのSSなら、スターライトって氷結なしのゼロドライブって事か?ふむ。



[11860] ざ・むーびー・せかんど なのさッ
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/02/09 21:01

「力を貸して……欲しいんだ」
「……フェイトちゃん」


   病床の母プレシア・テスタロッサ。彼女を救うため、二人の魔法少女は空を翔る。


「闇の書?」
「そうなのさッ、大昔にベルカで作られた魔法記録特化型デバイス。
 あれには古今東西の魔法がぎっしり詰まってるらしくてね。ただやっかいなことに……こらフェイト、お姉ちゃんの話の途中でどっか行くな!」


   母を救う可能性。古の忘れ去られた奇跡。
   それを手にするため、少女達は動き出す。


「お友達?」
「そう♪ 八神はやてちゃんって言ってね、この前図書館で知り合ったんだ」
「ふーん、はやてちゃん、ね」


   偶然に次ぐ偶然。お約束とご都合主義。
   二人の魔法少女は闇の書の主と邂逅する。


「なんでや、なんでわたしらにこんな事するんや!?」
「答えても、多分意味がない」


    激突する赤と白


 桜色の砲撃が赤い服の幼女に向かう。幼女はシールドで耐えようとするが、ピンクの魔砲は盾毎彼女を吹き飛ばす。
「こ、この悪魔め!」
 幼女の悲鳴に近い将来、魔王と呼ばれる事を運命づけられた少女は、冷たく返す。
「悪魔でも魔王でも冥王でも良いよ。悪魔らしく言うこと聞いて貰うから」


    ぶつかり合う炎と雷


「主の身は、この烈火の騎士が命にかけて守る!」
「……譲れないから」
 ぶつかり合う力と力。
「紫電一閃!!」
「プラズマ・ザンバー!!」


    そして意外な決着


「闇の書、貰っていきます」
「待ってや、それはわたしの……」
 少女の叫びも虚しく、奪い去られる闇の書。しかし、

「そーはいかないんだなッ」
 次の瞬間バインドで拘束されるフェイト。後ろ手に固められるなのは。
 それをなしたのは同じ顔の二人の女性。ついでに言うとネコミミ・尻尾付き。
 闇の書はフェイトの手からこぼれ落ち、それを拾い上げるのは第四の魔法少女。

「……姉さん」
「……シアちゃん」


    何故と問う妹達にシアは冷たく答える。


「管理局にとって闇の書の封印は、なによりも優先する」


    13本の量産型デュランダルによるThirteen-Drive Breaker。
    絶対零度を超える虚無の魔法で封印されるはずだった闇の書。
    しかし……


「ダメです、システムが完全に掌握されています!」
「これは内部の者による犯行か!?」
「……流石ですね、グレアム統括執務官」
「な、なにぃ。お前は!」


     裏切り、それは闇の書の力を狙う管理局上層部の罠。


「ネコさん、なんでネコさんが……」
 瀕死のグレアムを抱きかかえるシアに、巨漢の管理局執務官は冷たく笑う。
「ボクのスポンサーは闇の書の中身にご執心でね。コレも宮仕えの辛い立場なのだよ」
「マリヤ、アンタまでそっちなの?」
 親友の咎める声に、古きベルカの騎士は目を背ける。
「ごめんシア。でも自分の願いの為には、古代ベルカの叡智、闇の書が絶対必要なんだ」


     解析される闇の書。
     しかし其れは管理局最強の666プロテクトさえ喰らい暴走。
     そして、解放される『闇の書の闇』、夜天の書の奥底に封じられた基幹システム。
     それは嘗ていくつもの宇宙を滅びに導いたモノ……


  --我は伝承の書。我は集める、全ての知識を。
     全ての記録、全ての魔法、全ての叡智を。
      我らが王、神帝○ゥアーの名の下に--


     解放され、ミッドチルダの大地を犯しながら巨大化していく『伝承の書』

     それに立ち向かうのは、四人の少女。


「世界を救う、そんな大それた事はよーわからんわ。
 わたしは唯、わたしの家族を取り戻したい。だからみんな、力を貸してや」
「でもわたし達は……」
「いいんや、誰にも譲れない思い。在るはずやから」
「……はやて」
「フェイトちゃん」
「はい」
「なのはちゃん」
「……うん」
「シアちゃん」
「……父さんの敵は、取らないとね」


     重なる手が、聖なる形--クロス--を作る。
     この時、次元世界の命運は彼女達に託された。


「全力全開! スターライト……」
「雷光一閃! プラズマ・ザンバー……」
「響け、終演の笛! ラグナロク……」
「凍って砕けろ! ゼロドライブ……」


     劇場版『機動少女リリカル☆アリシア The Movie 2nd
The Book of Darkness』

     闇よりもなお深きモノ。其は何ぞ?


「「「「ブレーカぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」


     同時上映『とある六課武装隊員の消失』



































「という夢を見たんだ」
「……ドクター、疲れてらっしゃるんですね」
「というか、色々混じってます」
「妹もそれはないと思うぞ」
「そもそもですわね、シア嬢ちゃまがあんなテンプレに裏をかかれるわけがありませんわぁ」
「うわ、クアット○。お前そっちか?」
「そう言えばクアット○はアリシアお嬢様と仲が良かったな」
「ノンノンノンですわ、シア嬢ちゃまはアリシアお嬢様でないからこそ素敵なんですぅ」
「ああ、そうなのか」
「そういうト○レお姉様はフェイトお嬢様と仲がよろしい様子」
「仲が良いわけではない、ただフェイトは私のライバルなだけだ」
「ああ、そうですか…………このブレードハッピー(ボソ)」
「あーーーっ、好き勝手言って、君たちはコレがすばらしいとは思わないのかい。
 このストーリなら我々は原作みたいに10年待たずに活躍出来るのだよ。例えば私なら通りすがりのマッドサイエンティスト役でシア達に協力するとか」
「マッドなんですか」
「マッドなんですね」
「マッド、ですわね」
「兎に角、通りすがるのは置いておいて、○○○」
「なに? ウ○ノママ」
「ドクターをお部屋にお連れして、休んでもらって」
「えっ?、わたしは今の話、面白いかなーって……」
「……この話、実現するとアナタの出番、無くなりますよ」
「パパ、さあベット行こう。大丈夫、変な夢見ないように『お話』してあげるから」
「ち、ちっと待ちたまえ○○○!」
「さあ、コレで大丈夫」
「「「「……ふう」」」「ちッ」
「「「「えっ?」」」

































「という夢を見たんだ」
「……先輩、それは無いでしょ」
「ううん、ティ○。凄いよその話。なのはさんもフェイトさんも八神部隊長もちっちゃくて可愛くて強いし。
 ……ところでシアさんて誰?
 先輩、消失するんですか?」
「もーーーっ、先輩もス○ルも二段落ち禁止っっっっっっーーーーっ」



PS1
 ごめんなさい。やってしまいました。
 "The Movie 1st"というフレーズから、何となく電波が湧きました。
 As編はこうならないと……?。コレはあくまで劇場版なので……


PS2
 ドクター達はAs終了直後のイメージ。
 で、初期起動組って5番まででしたっけ? ちと自信がないや


PS3
 The Movie 1st 見ました。で、感想。
 ネタバレしたくない人は以下読まないように。


全般
・ディバイン・バスター、グリップにトリガーは流石に止めてくれ。魔砲だぁ!
・なのはのBJ、スカートの下はレオタードみたいだ。だからパ○チラなしということで。
 (某美少女戦士と同じ)
・フェイトになんか違和感あると思ったら、腰の前掛け? が無くなってる。……あれないと色々と危ないよ。
・どこが魔法少女? 魔砲少女や機動少女でも飽き足らないあの破壊ッぷり。どー見ても魔王少女。
 ついでに言うと、非殺傷、それって美味しいの? どー見てもそんな温い設定無いぞ。
・なのはにしてもフェイトにしても、ハアハアあえいでいるシーンが多いのはHっぽいのでいけないと思います。
・スターライト・ブレイカーがディバイン・バスターのバリエーションでなくなってしまった。
 魔法構築、クロノに手伝って貰ったのか?
・プレシアさん、なんとなく顔つきスカに似てないか? 実は遺伝的に近い?
・庭園ラスト。プレシア母さん、微妙にまともな人にならないでよ。テンプレすぎる。
・ラストシーン、どう見てもなのはがフェイトの嫁。タ○とネ○が違うだろ。


このSS的に
・Fを『記憶転写型クローン』と明確に言われてしまった、………クスン。設定頑張ったのに……
・フェイトに明確なアリシアの記憶が在るらしい。個人認識のみフェイトと欺瞞されるシステムになっている模様。
 またアリシアは左利き、フェイトは右利き。これは重要らしい。
 なおシアは本来左手利きだけど、生身の腕を無くした為強制的に右利きに矯正されたという経緯有り。
 まあ、シアは癖とか表情のレベルまで再現されているからね。


 周知になってない設定の隙間、グレーゾーンを突いて成立させたのがこの『アリシア』なんで、映画版で明確にされて色々困った。
 某マクロスみたいにTV版と映画版は違うモノだと言い張って進めるか? 
 さもなきゃ
 『④公式だろうと納得出来ない設定は"修正"』
でいくか。
 さて……




[11860] プレA's1話 シニカルに始めるのさッ
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/02/18 23:10

 とある商業ビルの一階。アタシは親友のマリヤとのんびりグタッとお休み中。
 仕事には早いし、どっかに行くには遅いし、軽くオヤツの時間です。
 アタシはアイス、マリヤはクレープ、ビルの軽食コーナーで買ってきたんだけど味は今ひとつ。

「やっぱ、アレだね」
「まあ、仕方在るまい。ここは自分らのような若輩者がいる場所ではないし」
 それで子供向きの味じゃないのか。……でもその口調、相変わらず堅いよマリヤ。

 と、そんなマッタリな気分を邪魔するように、ドヤドヤドヤと乱入するおっさん達。
 手に手にデバイスを持ち、やる気満々で突入してくる。

 その先頭に立っている悪役面の小父さん、……ストライクアーツのヒールにピッタリ、がアタシ達を見た。
 こんなビルに居るのには似つかわしくない可憐な美少女。其れを見てどう思うのか……

 と、ネコさんはニヤッと笑う。
「シア嬢、マリヤ。状況開始!」
 アタシはマリヤと目を見交わし、
「OKっ! ドライブ……」
「イグニッション!!」
 次の瞬間、アタシの体を包んでいたのは黒をベースにしたバリアジャケット。クロにぃの執務官服の女の子ヴァージョン。
「どっち?」
≪あそこ、です≫
 リニスの指示に従ってあっちを見ると、ふむ、隠しドアか。なのですかさず、
≪Blaze Cannon≫
 砲撃をぶっ放す。
 そこに躊躇わずに突っ込むマリヤ。勿論騎士甲冑は展開済み。

「確保!」
 ふむ、敵さんいないのか。追ってアタシも隠し通路に飛び込む。右目に出ている建物の地図からするとあっちだ。
「スイッチ!」
 アタシは相方に合図一発。左手で狙う方向を教える。
「了解、ティルビング!」
≪Ja!≫
 マリヤはすっ飛んで行って隠し扉のドアをぶった切る。その先にあるのは暗い空間。エレベータだ。だからアタシは、
≪Stinger Snipe≫
 誘導弾を発射、暗い空間に突っ込んで、よし、敵影無し。
 アタシの誘導弾は優秀なのさッ。90度いきなり進路を曲げたり出来る。なんで下に向けて一直線。運が良いことにゲージは上だし。
 伏兵が無いのを確認してアタシ達はエレベーターシャフトに飛び込む。目標は5層下。今の内にリニス経由でティルビングとリンク。視界情報を確保。

 スティンガーでエレベータのドアをぶっ飛ばし、その隙にマリヤが突撃。
 居た! 傀儡兵が5、6、7、8、一杯。その後ろには機械人形? なんか質量兵器っぽい銃を持っている。
 さらに広間の奥に祭壇っぽいスペースと白衣のおっちゃん。祭壇にあるのはマーブル色したでっかい卵? 要確保のロストロギア。
 なるほど、アタシが呼ばれる筈だ。あのロストロギア、動き出してるよ。暴走寸前。つまり、そっこー制圧か。

「チッ!」
 マリヤが舌打ちして前に出る。マリヤのデバイス、ティルビングは剣型デバイスだ。突っ込んでぶった切るのがその本領……。
 えーと、デバイス、だよね。剣じゃないよね。マリヤに色々聞いてるけど、ベルカのデバイスってアームド・デバイスぶっちぎって、こう、あれだよね。まあ取りあえず、アタシはアタシの仕事をしよう。

「リニス、行くよ。ウィング全開!」
 アタシの声をトリガーにリニスから二対四枚の羽根が展開する。高速移動用の二枚と姿勢制御用の一対。ついでリニスの声。
≪はい、ドライブ全開≫
 四枚の飛行用の翼に火が入る。本来こんな狭い場所で使うものじゃないけど、今は時間がもったいない。
「アクセル、チャージ!」
 リニスの先から剣、じゃなくて魔力で構成された杭、パイル?が伸びる。
 準備完了。さて行くのさッ。
≪了解、A、C、S、ドライブ≫
 アタシ達はマリヤが開けた穴から突入した。

 マリヤにぶった切られて、敵さんはそこそこ減ってる。だから辛うじて進路は確保できてる。後は広げるだけ。なので、
「マリヤ、スイッチ!」
「OK、任せた!」
 マリヤは一歩引くと剣の鞘を引っこ抜く。ティルビングにクロスするように乗っけるとガタンゴトンと変形。ボウガン状に形を変える。これがティルビングのシューティングモード。
 だから背中は任せられる。

≪A、C、S、クォート・ドライブ≫
 一対の魔光翼の推進力と、それを制御するもう一対。これが在れば追いつけるモノはない。……妹にスピードで負けたアタシが産み出した、アタシなりの最速。

 なんか悲鳴とか脅しとか上げている博士君は無視。目標はロストロギア。
 突っ込んで、なんかバリアっぽいのに遮られて、でも力で押し切って、届いた。
 パイルの先がロストロギアに突き刺さる。あとは……

≪Zero Drive≫




 あー、終わった終わった。アタシ達は一階ロビーに戻って一休み。
 氷結な杖の使い手なアタシも、凍り付いた実験室を見て楽しむ趣味はない。同じく凍り付けのロストロギアとマッドも同じ。
 なんでロビーに戻ってきたんだけど、管理局の局員さん達がバタバタとビルの封鎖とかしてるんで、どーも落ち着かない。時々知り合いの局員さんが良くやったと声を掛けてくれる。まあこれは悪くないかな。

 どっか落ち着ける処行こうかなって考えていると、ヌッと大きな影。見あげるとおっきな男の人。で悪人ヅラ。
「ご苦労さん、シア嬢、マリヤ」
 と、ボトルに入ったお茶を渡してくれた。なので、
「どーいたしまして、ネコさん」
「ケンこそお疲れ様です」
 アタシ達が返事を返すとネコさんは笑って返す。悪人ヅラだけど笑い顔は愛嬌があってなかなか良い。


 ケン・ネコムラ執務官、今回の一件の責任者だ。アタシとマリヤはネコさんの依頼を受けてここ、第23管理世界にやってきた。
 某企業が隠し持っているロストロギアが暴走する可能性があるとかなんとか。それにマッドな違法研究者がからんでどうのこうの。こまかいことは責任者のネコさんの仕事なんで、聞かせて貰ってない。
 ネコさんは父さんの部下で、嘱託魔導師のアタシは時々世話になっている。……アースラだけがアタシの仕事場じゃないのさッ。というか最近アースラ以外の仕事が増えてる気がする。
 まあ、アースラはふだん定期航路の巡回なんで、嘱託の仕事、ない時は本当にないんだよね。

 でも良いチャンスかな? 今回の事件の詳細はともかく、最近起きてる事件でちと気になる事があるんだ。
「ところでネコさん、なんか最近の事件ちょっと気になってるんだけど」
「ん、なにかな?」
「最近、ロストロギアとか生体研究とか、違法研究からみの仕事が多くない?」

 そうなのだ。嘱託仲間で話していると、守秘義務に逆らわないレベルで自分達の仕事の中身を話したりする。前線で戦う面子にとって仕事内容は重要なのだ。ドンパチするにもギャングやマフィアと研究所じゃ戦い方が違ってくる。
 ついでに言うと、違法研究捜査なんて本来『陸』の仕事だ。規模が大きそうで実は小さいし、秘密基地を管理外に作るにしても資材を持ち込む手間とか考えるとムダが多い、らしい。
 それが今回のように『海』の執務官に回ってきている。てことはそうとう多い?


「多いねぇ」
 即答だ、おい。
「えっ、ほんとに多いんですか?」
「ふ~ん、なんか原因があるとか?」
「うーん、アレだ」
 ネコさんはちと考えてるようだ。

「……連中、違法研究者、マッドか。あいつらの中に有名人、というかチャンピオンみたいなのが居てね」
 ふむふむ、そいつが派手に動いているから刺激を受けて、他のマッドどもが負けないぞと動いてる、と。
 ……迷惑な話だ。ルーツ探しが終わったおニューのアタシは気にしないけど、半年前のアタシならイラつく事、間違いなしだ。
「で、そのマッドチャンプって誰なの?」
 念のため一応きいておくのさッ。

「ああ、ジェイル・スカリエッティって男だ」
 …………、はあ?

「え、ジェル?」
「ん? どうかしたのか、シア?」
「んーと、ジャル? ジュエル?」
「ジェイル・スカリエッティだよ。何でも犯罪者じゃ無ければ、次元世界最高の頭脳とまで言われる男らしい」
「ほほーう」
 ネコさんの説明にアタシは空返事。

 ……、おかしい。
 ジェイル・スカリエッティって、ジェルだよね。アイツが管理局に追われる訳がない。
 アイツは管理局のお偉いさんが作った、『管理局の備品』だった筈。本人が言ってたので間違いない、と思う。
 細かい事言えば、アルハザードファイルを応用して作った人造生命体とのこと。アイツのことがあるから、母……、あの女もアルハザードの存在を信じて、行こうなんて馬鹿な真似をしでかした訳だし。

 ……しかしなんでアタシって、あたしなら忘れてそうな、こんな細かい事覚えてるんだろう。焼き付けられた記憶を持ってる"F"、だから?
 ふん、つまりアイツと同じ人造生命体……。なら、もしかしてジェルは、アタシに取って兄と呼べる存在だったりして。……ごめん、堪忍して。


 ……落ち込みそうになるから話を元に戻す。
 えーと、管理局がイリーガルとはいえ管理局の中の人間を犯罪者扱い? お偉いさんがもみ消すだろ、普通。
 それとも局から脱走でもしたのかな? それで罪をでっち上げられて?
 ちと気になるな。きな臭い?

「えーと、ちょっとそのマッドチャンプ、ちと気になるのさッ。仕事でぶつかるかも知れないんでデータ貰えないかな?」
「ああ、自分も気になります。知らずにそんなのに当たる可能性があるかも知れないし」
「んーー、そうだな機密レベルの高い情報は削って、君たちレベルのものなら渡せるが」
「はい、結構です」
「そんなに急がないのでヨロシク。でも!」
「でも?」
「昨日言った貸しはこれと別なのさッ」
「シアぁぁっ……」
「あはは、肝に命じておくよ」

 今回の仕事は急過ぎたんだい。色々予定を放り出しての出動。友達との約束破ったので、ミッドに帰ったら色々おごらされるのさ。
 でもそれはリカバーできるし、一番大きいのは間に合ったのさッ。
「なんとか間に合ったしね」
 大事なので二回言おう。


「間に合ったって……まったく。でもケン、確かに早く終わりましたね」
「確かに。予定だと踏み込むのは明後日だったからね」
「うん、早く終わって良かったよ。これで旅行キャンセルしないですむのさッ」
 明後日までに移動しないと、アースラに転送してもらえないんだ。
「旅行、たしかボスの出身世界だっけ? 97管理外」
「そうなのさッ。父さんの生まれた処とは違うけどね。日本って地方なのさッ」
「97管理外の日本か……、確かボクの世界と似てるってリンディが言ってたな。どんな感じだい?」
「と言われても、アタシは79行ったことないし」
「なるほど、道理だ」

 アタシ達の会話にマリヤは何か引っかかったらしい。
「ん?、そう言えばシアは何でわざわざ管理外へ旅行?」
「フェイトと一緒に友達に会いに行くのさッ」
 裁判が落ち着いて、フェイトに外出許可が出た。判決はまだだけど、ほぼ無罪で数年間の保護観察の予定。更に嘱託の資格とったんで、奉仕活動すればもっと短くなる。色々相談に乗ってくれた父さんにレティさん、感謝。

「フェイトというと、噂のシア嬢の妹? 嘱託資格で魔導師ランク空戦AAAとった天才少女」
「……そそ、それ」
「ん、シアに妹? アレ? 聞いたこと無いかも? それも……AAA?」
 マリヤはちと渋い顔。あはは、マリヤはアタシより年上だけど空戦Aだからね。陸戦ならAAらしいけど。
 アタシ? アタシは総合AA。魔法は戦うためだけのものじゃない、子供の頃から高いランクを取るのは心の成長を歪める元になる、というのがグレアム家の家訓?
 フェイトの場合は奉仕活動にハッタリに効くから特例だい。

「嘱託なったばっかで、ついでに天然なんで面倒くさいかもしれないけど、仕事が一緒になったらよろしくなのさッ」
「勿論♪ クロ坊のAAA+に次ぐAAA、当てにさせて貰うよ」
「お手柔らかに♪」
「それじゃあ、折角再会できた妹ちゃんとの旅行なんだ、楽しんでおいで」


 ……再会か。当たり障りのない言葉だね。
 PT事件の実行犯であり、現在拘留中のフェイト・テスタロッサがアタシの妹ってことは、最小限の関係者にしか知らせてない。裁判が終わってから関係者には公開予定。ネコさんは父さんの部下で、アタシは信用してるけど、話は行ってない筈。ネコさん、クロにぃと仲が悪いんだ。
 でも、ネコさんは嘱託の件まで知っていた。きっとそれ以上の情報も握っているはず。例えばアタシ達が人造魔導師で、同じ素体から創られた事とか。
 流石に情報集めるのが上手ね。直接戦うのは苦手だけど、こういう頭を使う仕事は父さんの部下の中でも最高。
 まだまだ甘いクロにぃと違って、リンディ姉さん並に油断ならない人だ。

 なんで、そんなネコさんに今回貸しを作ったのは大きいかな。色々情報回して貰えたり、アタシやフェイトの情報操作してもらったり。あとはジェルの追加情報とか。
 まあ細かいことは旅行から帰ってから。


 フェイトになのはにユーノ、それからアルフ。みんな一緒で会うのは半年ぶりだ。翠屋のケーキに公園のタイヤキも楽しみ。
 短い期間だけど、思いっきり楽しもう。



PS1
 今回はオールシア視点。
 A's本格的に始まったらシア視点は激減する予定なので今の内に、と。


PS2
 シアの急な嘱託仕事。
 この黒幕はグレアムパパだったりします。
 娘に危険な97に行って欲しくないという親心。


PS3
 スカを『管理局の備品』呼ばわり。このもとネタはガンパレです。念のため。
 しかしスカは本来、最高評議会直属の不正規研究者。逮捕歴が在るわけでもなく、被害届がある筈もなく、研究内容を学会に発表したわけでも無いのに、なんで罪状認定されてるんだ?
 本人が行ったという証拠、ないよね。


PS4
 気付いた人いるかも知れませんが、シアは6話で『お前達をアルハザードなんかに逃がすか』
と吠えてます。
 つまりアルハザードの存在は否定していません。その理由はこういうことです。




[11860] プレA's2話 その日のグレアム家、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/08/23 19:39
≪朝、朝ですよ。シア起きなさい≫
「ん~~、あとぉ、五じかんっ」
≪ベタなギャグは禁止、です。立派なレディ、なれませんよ≫
「けちぃ、とにかくあと5分」
≪その台詞は5分前、聞きました≫
「む~~っ」

 仕方がない。無情なデバイスの声にアタシは渋々布団から這い出る。
 枕元には蒼く輝くペンダント。ベースの色は黒と銀。なかなか渋い。我が相棒、インテリジェンス・デバイスのリニスだ。

「おはよう、リニス」
≪おはようございます、シア。本日の予想最高気温は18度、降水確率は……≫
「ああ、いらないよ。今日は外でないから」
 でも取りあえずカーテンは開ける。外は快晴。絶好の旅行日和だ。家の外には出ないけどね。

 ここはアタシの家、というかグレアム邸。ミッドチルダの地方都市、ハーヴェイ市にある。
 父さんは時空管理局のお偉いさんだけど、中央本部があるクラナガンに住んでる訳じゃない。父さんの仕事場は次元空間の本局。自宅から転送通勤しているからミッドの何処でも一緒なんだ。
 ……正直クラナガンは治安が悪いから住みたくない。

 カーテンを一旦閉じて、着替えて、また開ける。
 で、アタシは一階へ。おっとリニスを忘れちゃいけない。しっかり首に掛けないと。


 階段を下りてダイニングに入ると、
「おはよう、シア」
「お、今日は早いね」
 声を掛けてくる渋い小父様とお姉さん。アタシの養父であるギル・グレアムとその使い魔リーゼロッテだ。もう一人の使い魔、リーゼアリアはお仕事でお出かけ。
「もうすぐご飯だよ。顔、洗ってらっしゃい」

 洗面とか色々して、テーブルに着くと朝ご飯。
 トーストとスクランブルエッグにサラダ。そして飲み物は勿論、紅茶。ついでにミルク。女の子だもん、色々と大きくなりたいんだい。
 三人揃って十字を切ってからいただきます。食事の前にお祈りするのは父さんの出身地の風習、ミッドでは普通しないんだ。
 ……しかし今日も三人、アレだ。

「どうしたんだね、シア?」
「う~~ん、あのね」アタシはちょいと首を傾げる。「最近、家族四人揃ってご飯ってあんまり無いね」
 父さんは基本的に朝居るんだけど、ロッテとアリサが揃うことが無い。仕事なんだから仕方ないんだけど微妙に気になる。家族だから。

「そう言われると、そうか。確かに寂しい思いをさせてたかもしれないね。
 でももう暫くの辛抱だ。もう少したつとフェイト君も来るし、にぎやかになるよ」
「ん~~、フェイトは良いんだけど、あたしとしてはアルフがねぇ」
 ネコの使い魔のリーゼ達は犬……じゃなくて狼のアルフには思うところがあるらしい。でも仲が悪い訳じゃない。というかアルフを一方的に子分扱い? ベースはアレだけどリーゼ達の方が圧倒的に強いから。
 まあ、アルフは良いとして……。

「フェイトかぁ、それなんだよね~~」
「なんだ、まだフェイト君とは?」
「……うん」
 あの事件からずっと、フェイトからは距離を取られている。クロにぃやリンディ姉さんも何とかしてくれようと力を貸してくれるんだけど、どうもね。
 どれもこれも入院中のあのババアが悪い。お見舞いに来たフェイトの顔見て一発、アリシアと呼ぶな! 精神病院から二度と出て来んなっ!!

「そうか。ならやはり、リンディ君が言ったように、一時的に誰かに預かって貰った方がいいのかもしれないな」
 フェイトは保護観察官である父さんの元、つまりこの家で暮らす予定だった。だけどフェイトと距離があるアタシと一緒では問題があるかも知れないとのこと。

 候補としてレティさんかな。グリフィス君もいるから一人じゃないし。
 いや、いっその事ネコさんって手も。ネコさんとこの小母さんは専業主婦だし、あそこの子達も良い子だからフェイトも仲良くなってくれたらいいかも。友達増えるのは良いことだよ。

 リンディ姉さん? あの人は問題外。提督で航行艦の艦長なリンディさんは基本的に家にいない。そんな人に預けてどうするの? アルフと二人で家に放置? 意味無いでしょ。
 仲間内の話ではクロにぃがグレずにまともに育ったのが奇跡と言われてるんだよ。

「まあ、旅行中に何とか出来るように頑張ってみるのさッ」
 今回の日本行きの旅はアタシとフェイトの二人じゃない。クロにぃは少し年が離れてるけど、ユーノも居るし向こうにはなのはも居る。
 みんな力を借りて二人の仲、なんとか出来たらいいな。アタシはあの子のお姉ちゃんなんだから。



「では私たちは出掛けてくる。シアも良い旅を、気を付けるんだよ」
「はい、行ってらっしゃい、で行ってきます」
 アタシは父さんと軽くハグ。でほっぺたに行ってらっしゃいと行ってきますのキス。父さんの次はロッテとも。うん、人型だけどやっぱりネコっぽい匂いがする。

 挨拶を終え、父さん達は簡易ポートで出勤。アタシは朝ご飯の片付け。お皿を洗って片付ける。
 この後アタシも本局に転送、本局の転送ポートでアースラに行くことになっている。だけどまだ少し時間がある。なので、


「……お邪魔します」
 こっそり入り込んだのは父さんの書斎。
「さて、調べますか」
≪了解≫

 机の上、引き出し、本棚。怪しいモノは無し。
「リニス、そっちは?」
≪特記すべきモノはありません≫
 電子的なものを調べていたリニスの返事もよろしくない。
「う~~ん」
 アタシは父さん愛用のチェアーに腰を下ろす。
 ……父さんは何か隠している。アタシに対してだけじゃない。多分局に対してもだ。

 アタシがそれに気付いたのは偶然だ。
 いつの間にか処分されていた父さんの個人資産。
 家に時々掛かってくるよく分からない通信。不自然なリーゼ達の動き。アタシが居ない時を見計らって家に出入りする男達。
 話をするだけじゃ、まるで父さんが脅されてる様な感じ。でも雰囲気は真逆、父さんに気を使っているのがなんとなく分かる。

 ついでに言うとアタシに対してもだ。
 父さんの友達の弁護士を紹介され、父さんに何かあった場合相談するよう言われた。こっそりと作られていたアタシ名義の口座には、体のメンテ費用を考えても10年近く暮らせる金額が入っている。

 管理局の顧問官である父さんが隠れてやること。

 何とか掴んだキーワード、それは『デュランダル』
≪ワタシの完成型……ですね≫

「…………ふん」
 完成型? なにそれ?
「要らないよ、アタシにはリニスが居てくれればそれで良い。完成型? リニスは十分完全型だよ」
≪……ありがとう、シア≫
「ふん」
 兎に角、氷結の杖であるリニスの兄弟機か。とするとロストロギア絡みなのかな? 分からないな。


 多分、父さんがやろうとしているは、法律とかルールに反したこと。
 でもきっと、誰かがやらなきゃならないこと。うん、父さんはそういう人だ。

 決められたルールを破ること、それはみんな悪いなんて思うほど、アタシは子供じゃない。
 何かを犠牲にしてもやらなきゃならないって事、きっとある。

 ほら、なのはに借りた日本のムービー。あれにもあった。
 罪のない沢山の人を殺し、それでもその何千倍の人を助けた『正義の味方』。父さんのしようとしていることは、そういう事かもしれない。

 アタシは子供で、ただの嘱託で、このちっぽけな力で戦うことしかできない。
 だから父さんもリーゼ達も打ち明けてくれない。

 でも、アタシは父さんが正しいと信じてするなら信じるし、世界中の全ての人が非難して、敵に回ってもアタシは父さんを守る。
 そしてアタシの力が役に立つのなら、協力させて欲しい。アタシはアタシの全力全開の力で手助けする。

 これはアタシが父さんの養女だからじゃない。
 あの人が、ギル・グレアムが、アタシの父さんだからだ。



   救われたアタシと
    見捨てられたわたし
     それは真逆のようで、でも似ていて

   求めたのは永遠の炎
    手に執るのは正しい間違い
     大人の夢想と子供の達観。

   聖なる夜に輝く深紅の星
    闇と夜と天の先
     アタシはもう一人のわたしと出会う。

   魔法少女シニカル★アリシアA's、始まるのさッ



PS1
 取りあえず、A'sでのシアの立ち位置公開!
 グレアムの養女でプロトタイプ・デュランダルのオーナー。それはこの方向に持っていくためのモノでした。意外かな? だからA'sはダーク展開と言ったでしょ。

 今回はこの方針のアドバルーンとして掲載。感想願います。


PS2
 『③オリ主というか、管理局の視線で無印を眺めていく』、
も実はこの伏線。
 管理局の本音としたらグレアムの行為は間違ってないと思います。
 A'sは実際ご都合主義で、結果的に闇の書を何とか出来ただけ。グレアムを批判したクロノも代案を持ってないんだから。


PS3
 グレアムの立場を補強するため、このSSでは闇の書の設定を一つ追加。

 前回の闇の書事件、アレは闇の書の封印が解ける前とします。つまりヴォルケンズが出現する前。
 封印中でも闇の書が危険と自己判断すれば暴走すると。
 つまりはやてを説得して闇の書をどうかしようとしても結局暴走してしまう、なので対応策無しということでグレアムが泥を被る決意をした、というのがこのSS。
 この辺もう少し補足があるけど、それは別途『設定』で説明。『設定』公開後、PS3は削除予定


PS4
 FでF.A.T.Eなシアにとって『正義の味方』とはアレでしょ。


PS5
 前回、プレA's1話と『とある六課』番外編を並べて同時投稿したんだけど……、PVも感想もほぼダブルスコアで負けている。色々ショックだ。
 この所為では無いけど、本編掲載はちと先になります。『★アリシア』版StSのアイディアが出たんで整合をとろうと考え中なんです。



[11860] A's編1話 ベルカの通り魔、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/04/08 22:38
☆Side Alicia★


「さて、それじゃあミーティングを始める」
 クロにぃが重々しくなく宣言。
 フェイト、アルフ、ユーノも多少緊張しながらも頷く。

 ここは定期航路巡回中のアースラの一室。
 三日前、アタシは本局の転送ポートからアースラに送ってもらった。で、次元空間をアースラで移動中。そろそろ第97管理外世界……、面倒くさいから以降”地球”、に転送できる距離に入る。

 ミッドチルダから地球に一気に移動できるなら便利なんだけど、長距離転送ポートは色々な意味で高い。製造コストだけじゃなくて、運用コストも維持コストも高い。リースするにも提督権限でもないと無理。
 また、あらかじめ指定したポート間でしか使えないのも不便。だから艦に普通に積んであるのは汎用転送ポートだ。移動距離に制限はあるけど使いやすいのさッ。


「今回はアルフにも被告席について貰う」
「わかった」
「で、証人として立つのは僕とフェレットもどきだ」
「うん。……おい! 誰がフェレットもどきだ」
「気にするな、場を和ます軽いジョークだ」
 …………クロにぃ、和んでないよ、空気が凍ってるよ。クロにぃジョークの才能無いんだから無理しないで。

 アタシはベンチを一つ占領して四人のミーティングを聞き流す。
 フェイトの裁判に、アタシが立つことはない。幾らなんでも、証人席に被告人と同じ顔が並ぶのは不味い。裁判官に勘ぐられても不思議はない。だからアタシに出来るのは資料を纏めたり、草稿を書いたりするだけだ。つまりアタシが裁判に手を貸せる分は終わっているのだ。

 なので手持ちぶさたなアタシは、手持ちの端末で管理局の内部ニュースを閲覧中。
 ふむふむ、『次期主力次元空間航行艦船開発開始』か。現行がアースラとかのL型だから……、どうなんだろ。アースラってL型の中でも初期製造らしいけど、結構元気そうなんだけど。まあいい。船のことはわかんないよ。

「…ァ」

 『地上本部のゲイズ少将が養子縁組』? なにこれ、ゴシップ記事? ワイドショーじゃ無いんだからこんなニュース入れないでよ。
 て、10歳で空戦AAAの天才少年? 将来の希望は首都防衛隊? なるほど『陸』のプロパガンダか。
 ゲイズ少将って、……会ったことあるよね。確か父さんと一緒に中央本部のパーティに行ったら顔を合わせて。仲良かったみたいだけど?
 あれ、あの人娘さん居なかったっけ。娘さんいるのに養子貰ったのか。将来のお婿候補?

「……ア」

 えーと、『連続魔導師襲撃事件』。あ、これまだ犯人捕まってないんだ。
 被害範囲が辺境からとうとう管理世界にまで広がる。模倣犯の仕業か? ふーん、非魔導師の魔導師へのテロの
可能性?
 嘱託のアタシは捜査活動は出来ないから関係ないか。ネコさんがんばれ♪


「……アリシア・テスタロッサ・グレアム!!」
「は、はい?」
 気が付くと四人の視線がこっちに。なんでしょう?
「君は人の話聞いていたのか?」
「ごめん、まったく聞いてなかった」
「君って娘は……、妹の裁判の準備だっていうのに」
「姐さん……」
「……シア」
「兎に角、やりとりに何処か不備がないか、聞くだけ聞いておいてくれ」
「あははは、ごめん」

 ……『妹』って単語を聞いた時、フェイトの視線が僅かに伏せられる。あーーーー、もう。まずったかも。
 さて、話題を逸らすか、えーと……

『……クロノ執務官、グレアム嘱託魔導師、テスタロッサ嘱託魔導師』
 タイミングがいいのか悪いのか、スピーカから全体放送。この声はエイミィ?
『緊急事態です、至急ブリッジに上がってください』
「?」
 アタシ達は顔を見合わせた。この状況で緊急事態、いったい何?


☆Side Amy★


「あああああ、もうわかんないよぉ!!」
 スクリーンに映るのは謎の広域結界。管理局で使われている魔法とは術式がまるで違っている。それがやけに固くて中の様子を見取ることが出来ない。

 わたし達がこの結界に気付いたのは偶然だ。
 PT事件の時、海鳴市にばらまいたサーチャーが、異常な魔力反応をキャッチ。それをアースラに警告してきた。最初はなのはちゃんが魔法の訓練でもしているのかと思ったんだけど、それにしては魔力値の上下動が乱暴すぎ。まるで戦闘をしているみたい。
 で、サーチャーから画像を送ってもらうとこの通り。海鳴市を正体不明の結界が覆っていた、ということ。

 結界内に紛れ込んだサーチャーが最後に送ってきた画像。それは正体不明の女の子に襲われるなのはちゃんの姿だった。だけど……
 この女の子が使っている魔法、これが分からない。ミッド式の環状魔法陣とは違う三角形の魔法陣。
 リンディ提督も知らないってどういうこと? なのでアースラがどう動くかはリンディ提督とクロノ君の判断待ち。

 クロノ君、シアちゃん。お願い、はやくブリッジに来て。


☆Side Alicia★


「なんだ、この魔法は?」
 クロにぃが開口一発叫ぶ。……をい、本気で言ってるのかな?

「クロノ、すぐに助けに行かないと」
「いや、だが……」
「何故? なのはが襲われてるんだよ!」
 すぐにでもアースラを飛び出したいフェイトと、躊躇うクロにぃ。フェイトはクロにぃが何故躊躇うのか分からないため苛立って責め立てる。

 うーん、クロにぃが何で躊躇うのか、分からないでもない。
 時空管理局が動くのは、基本的に3つのパターンだ。
 一つ、管理世界で起きた事件である。
 二つ、管理世界の人間が起こした事件である。
 三つ、ロストロギアが関わっている。
 時空を管理するなんて言っても、無制限に関わることは出来ない。無制限に関わるなら、管理外世界の質量兵器を使った戦争にまで介入しなくちゃならないことになる。

 PT事件の場合、ロストロギア・ジュエルシードが関わっていた事もあるけど、事件に関わっていた魔導師、フェイトもなのはも管理世界で普通に使われているミッド式の魔導師だったから、という点もある。ミッド式の魔導師だから、管理世界の住人だろうという判断だ。

 しかしあの幼女が使っているのは明らかにミッド式じゃない。魔法文明を持つ世界は全て管理世界に属している訳じゃないんだ。
 なのはは管理局に登録している魔導師だけど、管理世界の住人ではない。管理局のルールじゃ、管理外世界の住人同士の私闘に口出しできないのだ。
 ……なんだけど。

「エイミィ、リンディ姉さん、クロにぃ。ホントにアレ、知らないの?」
「えっ?」
「シアちゃん、アレ知ってるの?」
 二人の真面目な返事にアタシは頭を抱えた。マリヤが怒るはずだ。ベルカ式はもっと評価されるべきだって。

 マリヤはアタシの親友で嘱託仲間、ついでに言うと聖王教会のお偉いさん家の出で、ベルカ式魔法の使い手。ベルカ式魔法の評価を上げるため、なんて理由で管理局の嘱託なんてやってんだけど…… あはは、アタシもマリヤと知り合うまでベルカ式魔法なんて知らなかったし。

「あれはベルカ式の魔法だよ。ミッド式の前に流行ってたヤツ。今じゃほとんど廃れてるけど、聖王教会の一部じゃまだ現役」
 地上本部にも使う人がいるらしいけど、その人の話をしようとするとマリヤが怒るから詳しく知らない。なので、
「アレックス、検索よろしく。キーワードは『ベルカ式』、『聖王教会』、『騎士』」
「了解、シアちゃん」

「と言うわけで、クロにぃ」
「ああ、あれは管理世界の住人が起こしている可能性が高い、と?」
「そういう事」

 クロにぃは力強く頷くと、
「エイミィ、地球はまだ転送可能範囲外のはずだが、行けるか?」
「OK、安定係数ギリギリだけどなんとか飛べる。ただし結界の傍じゃなくて、かなり上空に出ることになるよ。バリヤジャケットしっかり着ていってね」

「よし、シア、フェイト、アルフ。行ってくれるか?」
「もち」
「はい!」
「あいよ」
「僕も行く!」
「でも、君は……」
 ……ユーノ、そんなに出番欲しいの。アンタ嘱託でもないし、局とは関係ない人だよ。
「あの結界破るのはアルフ一人じゃ無理だよ。それに僕もなのはの友達だ。行って助けなきゃ」
 前言撤回。ガンバレ、男の子♪
「よし、じゃあ四人に頼む、僕は状況を管理し、必要なら出る」


☆Side Nanoha★


 ……痛い。

 あの子に吹き飛ばされて、ビルに叩き付けられた。そのまま壁を壊して、中を転がってやっと止まった。
 私はなんでこんな目に遭っているの?
 あの子に恨まれることでもしたの?

 あの子は私に恨みはないって言った。ならなんで私はこんな目に遭っているの?

 明日はみんなが、フェイトちゃんにシアちゃん、ユーノ君やアルフさんが遊びに来る日。
 アリサちゃんやすずかちゃんにも紹介して、みんなで遊ぼうってずっとずっと楽しみにしていたのに。

 赤い服の女の子が近づいてきた。
 私より少し年下か。赤いドレスに似た服、ゴスロリ調? さっきまで被っていた大きな帽子はない。

「これで終わりだ!」
 女の子は私に向かってデバイス? ハンマーを振り上げて。
 これで終わりなの? 私はここでこのまま……

 振り下ろされるハンマー。私は目を瞑って。でも……
 私の目の前で激突音。私を■す筈だったハンマーはこなくて。
 そして私が目を開けると、目の前には止められたハンマーと、黒い斧。
 黒い斧を持つのは私の大切な友達、金色の女の子。
「……フェイトちゃん!」

「ごめん、なのは。遅くなった」
 私を後ろから抱き止めてくれたのはユーノ君。私の大事なペッ……男の子。

「ちっ、仲間か?」
「……、友達だ」

「はい、そこまで」
 私の隣にはもう一人、別の女の子。金色の髪、フェイトちゃんとお揃いのバリアジャケット。私の頼りになる友達で、魔法の先生。
「シアちゃんも」
「久しぶり、なのは」シアちゃんは一瞬こっちをみて、赤い女の子に目線を戻します。
「時空管理局、アリシア・グレアムです。管理外世界における魔法使用と傷害の現行犯で拘束します。抵抗しなければ貴女には弁護の機会が与えられます」
 次になんか嫌な感じでニヤリと嗤い、
「まあ、個人的には抵抗して欲しいかな。人の可愛い妹分、虐めてくれた礼をしないと。……腕の二本や三本、覚悟するのさッ!」



PS1
 なんか短い。でも原作一話分で切りが良いから終わってみた。次回アリシア無双。


PS2
 シニカル開始で、作風を少し変えてみた。
 シアはまだ10歳。
 なのでリリカルの時はあまり難しいことを考えさせるのは可笑しいと思い、サラっと流して欄外(PSや設定)で補うようにしていた。テンポは良いんだけど欄外が多くなってなんか微妙。

 シニカルになったんで、シアの地の文でも色々喋らせるようにした。したんだけど……
 これってなんだかリナ・イ■バースっぽくない? 一人称があたしとアタシの違いがあるけど。
 そういえばシアの相方って、髪が長くて、黒い衣装で、露出が激しくて、マント付きで、ボケ役だよね。で、中の人はSRWサガの新作で高笑いしてるし。
 BJの肩にクロノのようなトゲトゲ付けさせようかな……



[11860] A's編2話 ベータなんてやっつけろ、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/04/08 22:42
☆Side Vita★


 不味い、管理局の奴らが出てきやがった。
 ベルカの騎士に1対1で負けはない。だけど奴らは3人。女が2人に男が1人。
 管理局と言っても普段の雑魚なら問題はねぇ。だけどこの女2人……強い。
 同じ顔に同じ黒のバリアジャケット。同じような馬鹿でかい魔力。こいつら、後ろの白い魔導師と同じくらいの力を持ってやがる。
 本来ならこんな魔力持ちは大歓迎だ。喜んで闇の書の餌にしてやる。
 だけど流石のアタシも3体1で勝てると思うほど、自惚れちゃいねぇ。
 指示無視して動いてた所為で、シグナム達に応援だすわけにゃいかない。だから、

(ザフィーラ、なにやってやがる。早く応援に来い!)
(すまんがこちらも交戦中だ。使い魔らしい女に捕まった)
(ちっ、何なんだよこいつら!?)

 アタシの焦りに気付いたのか、髪の短い方がニヤリと嗤う。
「気付いた? 外の犬っころ、使い魔もどきはこっちのアルフが押さえてる。さて状況が分かったんならとっとと降伏するそさッ」
「くそっ、そうは行くかよ!」
 アタシはビルから飛び出した。アタシは、アタシ達はここで捕まるわけにはいかねぇんだ。


☆Side Alicia★


「くそっ、そうは行くかよ!」
「待ちなさい!」
 牽制の一撃を残し赤ッ子はビルを飛び出していった。それを追うフェイト。なのはを傷つけられてすっかり頭に血が上っている。
 フェイト1人だと不安だし、アタシも行くか。で、その前に。

「久しぶり、なのは」
 アタシはなのはの頭に手を置くと、ボサボサになった髪を手櫛で整えてやる。
「……シアちゃん。にゃははッ、シアちゃんだぁ!」
「うん、シアちゃん姉さんだよ、なのは。で、えーとだ、取りあえず、何がどうしたの説明してくれる? あの赤ッ子はなに?」
 現状確認は大事なのさッ。

「わかんないの。いきなりあの子が襲いかかってきて、お話も聞いてくれなくて」
 ……なのはの『お話』を聞いてあげないのは、普通として。
 辻斬り、というか通り魔? いずれにせよ、非は向こうか。なら構わない、思いっきりヤルだけなのさッ。
「わかった、行ってくるのさッ」
「うん、がんばって」
「ユーノはここでなのはを守って。伏兵とかいるかもしれない」
「分かった、シアも気をつけて」
「OK♪」

 と、アタシも空を翔る。今日のアタシのBJは時の庭園に突入した時のバージョン。フェイトとペアルックなのさッ。
 で赤ッ子と妹を捜すと、居た。
 赤っ子は逃げようとするが、高速魔導師のフェイトを振り切れない。一見フェイトが有利なように見えるが、実は間違いだ。赤っ子が攻めずに引いているのでそう見えるだけ。
 なのでアタシは2人の元に飛びながら念話で注意。

(フェイトもアルフも戦いながら聞いて。敵はベルカ式の魔導師。ベルカ式っていうのはミッド式みたいな汎用性を捨てて、対個人戦闘に特化したスタイル)
(はい)
(なるほど、個人戦、ね)
(戦闘スタイルはデバイス……というか武器を魔力強化しての攻撃、基本的にクロスレンジが強くて、ミッドが普通。だから距離に気を付けて戦って)
(……)
(……)

 返事がない? ……ああ、フェイトにしてもアルフにしても、クロスレンジ主体なんだ。ベルカ式の間合いと重なってるのか。
(最後、ベルカ式のデバイスならカートリッジ・システムが入ってるかも知れない。これ注意)
(カートリッジ・システム?)
(魔力の詰まったカートリッジを使って、一時的に自分の魔力を上げるシステム。普段より段違いに強い攻撃が来るから注意して)
(それって……)
 なのはから念話。
(覚えがあるの?)
(うん、あの女の子のデバイスから変な音がして……)
(分かった、聞こえたフェイト? 注意して、アタシもそろそろ追いつく)
(はい)


☆Side Fate★


(分かった、聞こえたフェイト? 注意して、アタシもそろそろ追いつく)
(はい)

 もうすぐあの人が追いついて来る。そうしたらこっちの勝ちだ。あの人はわたしより強い。
 この子を捕まえて……

 この子はなのはを、わたしのたった一人の友達を傷つけた。許せない。
 でもこの子にも『あの時のわたし』と同じような理由があるとしたら。いや考えない。今はこの子も捕まえることだけ考えよう。

「なんだよぉ、お前は!!」
≪Blitz Action≫
 わたしは高速移動の魔法で、女の子の一撃を避ける。わたしの強み、それはこのスピード。スピードなら誰にも負けない。あの人にも、だ。
 だからこんな大振り当たらない。そしてお返し。

「はぁぁぁぁぁぁーーーっ!」
 大鎌状にしたバルディシュで女の子に斬りつける。一撃、二撃。
「当たるかよぉ!」
 女の子はデバイス? ハンマーを振るってそれを弾く。でも全部じゃない。何発かバルディシュの刃が女の子に当たっているはず。なのにわたしの攻撃が通らない。

 つまり今のわたしの攻撃じゃ、この子の防御は抜けないってこと。
 そうだ、この子はなのはと戦っている。なのはの砲撃をうけて無事ってことは、そうとうに固いということ。

 どうする?
 女の子から思わず距離をとったわたしの視界の隅を、ピンクの何かが走る。それは真っ直ぐわたしに向かってきて、振りかぶった。
 敵!? ダメ、避ける隙がない。

 ソレは覚悟して身を竦めた私に向かい、
「スティンガー・ボム!!」
 そして、吹き飛ばされた


☆Side Alicia★


「スティンガー・ボム!!」
 フェイトに不意打ちを掛けようとしたソレ、ピンク髪の女に咄嗟に炸裂弾を撃つ。
 向こうとしても不意打ちの一撃、それはカウンター気味にぶち当たり炸裂。見事ピンク髪を吹き飛ばした。
 これはクロにぃも知らない魔法。炸裂弾、習っておいて良かった。

 と、目の前に落ちてくる何か。何とはなしに拾ってみると……ヌイグルミ?
 なんか目つきが悪いというか、キモ可愛くないというか、どういう趣味なのか。
 まさかこれって、学校で噂に上がってる臓物アニマル? 地球でもブーム? というか、なんかなのはやフェイトの声で喋りそうで怖い。
 でも取りあえず戦利品。バインドの要領で左腕に固定。
 まあ、それは良いとして。


 炸裂弾の爆発で吹き飛ばされたピンク髪が帰ってきた。赤ッ子と並んで宙に浮く。
 フェイトはいつの間にか赤ッ子から離れてあたしの隣に。あと2人。アルフと、犬ミミ尻尾付きもこっちに来ている。

「通り魔で辻斬り。で、不意打ち、だまし討ち。最近のベルカ者はなってないのさッ。聖王教会はどんな教育をしてるの?」
 取りあえず挑発。フェイトの勝負に割り込もうとしたの、結構怒ってるのさッ。

「聖王教会? なんのことだ?」
「なんのって? 今時ベルカ式の使い手なんて、聖王教会の絶滅危惧種ぐらいじゃない?」
 ごめん、マリヤ。でもベルカ式を聖王教会の伝統芸能ってグチったのはアンタだよ。


 アタシの親友で嘱託仲間のマリヤ。アイツと知り合ってからベルカ式魔法というものを調べた事がある。……学校のレポートのネタにしたという説もあるが。
 もともとミッド式が主流になる前に流行っていた魔法。なんども言うけど、汎用性を無くして対個人戦の威力を上げた魔法。というかぶっちゃけ、戦闘用と戦闘補助用の魔法しかない。
 大昔のベルカ式には日常生活に役立つ汎用魔法もあったらしいんだけど、戦闘に走っていつの間にか無くなっていったらしい。
 次元世界で戦乱が続いている間は良かったんだけど、平和になったらさあ大変。戦うことしかできないベルカ式は、平和な魔法文明に寄与できず見る見る衰退。

 管理局なんて戦闘ばっかりしている組織にいるとわかんないけど、魔法って決して戦うだけの手段じゃない。クリーンなエネルギーとして文明を支えて居るんだよ。
 管理局もこの魔法文明の一角でしかない。数で言うと管理局外の魔導師の方が圧倒的に多いのさッ。
 戦闘特化な魔法体系なんて管理局にでも入るか、犯罪に走るかしないと使い道がないし、つぶしも利かないし。だから使い手も減っていく。

 聖王教会のベルカ式伝承者? のマリアはそんな現状をなんとかしようと管理局にアピールしてるんだけど、効果無し。
 確かに純粋に戦闘でメリットは在るんだけど、わざわざ乗り換えるほどのものじゃないし。

 ついでに言うと需要の少ないベルカ式のデバイスは高い。数が捌けない種類のデバイスなんで、カスタムメイドっぽくなるので仕方ないらしい。
 ミッド式のデバイスでベルカ式をエミュレートしようという研究もしているらしいけど、ベルカ式のお偉いさんが『邪道だ』とかいって進まないそうだ。
 ……リニスの処理能力ならベルカ式のエミュレート出来るんだけど……あんまりアタシ向きじゃない。相性の良い術式を幾つかストックしただけなのさッ。


 とか古い記憶を思い出している内に、アルフがアタシ達の後ろに付く。同様にあっちの使い魔も同じ位置に。

「ふむ、何か誤解があるようだな。我らはベルカの騎士、ヴォルケンリッター。聖王教会とやらの人間ではない」
「じゃあ、何処の人?」
「我らは……、ん、ああ、わかっている」
 ? なんか念話が入ったのか。ちっ、情報とり損ねた。といいうか別働隊あり、情報その1。
 で、今の内に、
(ユーノ、アルフ。今の内に結界の解除、よろしく)
(うん、もうやってる。アルフ、サポート頼む)
(わかった。姐さん、時間稼いで)
 OK♪ ネコさん仕込みのトークショーといこうか。


「ふ~~ん、騎士、ね。民間人への暴行、辻斬り、不意打ち、1対1の戦いへの乱入。
 流石♪ 騎士様のする事は違うわね」
「てめえら、アタシらを馬鹿にする気か!?」
「アタシはアンタ達がしたことを、正直に言っただけ。それが騎士らしくないなら、アンタ達がソレらしくないって事、じゃない」
「てめえ!」
「やめろ、ヴィータ」
 食って掛かろうとした赤ッ子をピンク髪がとめた。ふむ、なんか聞きづらかったけど、あの赤ッ子はビー?、 んんん、ベータか。情報その2♪

「ふむ」ピンク髪がこちらを、アタシを見る。その目は冷たく、揺らがない。「確かに我々の行為、それは正しく騎士の道とは言えぬ。犬畜生にも劣ると罵られても仕方ない」
 む、後ろの使い魔が動揺したぞ。あれは犬の使い魔か。情報その3。
「だが我らには我らの義がある。その義を違えぬ限り、我々は騎士であり、騎士を名乗る責がある」
 ……? なんか変な理屈だな。うーーん、まるで自分達が騎士であるというフォーマットを外れられないとか。んーーー、ここは覚えとこ。

「その義の為に、アタシ達の友人を襲った、と」
「お前達の、友人?」
 ピンク髪はチラリとベータを見た。ベータはバツが悪そうに首をふる。なるほど、なのはを野良魔導師かと思ったか。
「そうだよ。アタシ達の友人、第97管理外世界所属・時空管理局登録魔導師、高町なのはを襲ったのはその義とやらの為?」
「ちっ、あの女、管理局の関係者だったのか!」
「ヴィータ!」
「わかってるよ」
 交渉はピンク髪か。なら名乗ろう。

「アタシは時空管理局、アリシア・グレアム。高町なのはを襲った理由、騎士としてやらねばならぬその義とやらについて伺いたい。付いてきて貰えませんか?」
『騎士として』というのがミソ。プライド高いヤツほど逆らえないという。だけど、

「残念だが、今管理局に捕まるわけにはいかん。この剣にかけて押し通させて貰う」
 はあ、結局そうなるか。
「私はヴォルケンリッターの将、剣の騎士シグナム。そちらの将は貴公と見た。手合わせ、願おうか」
「待て、シグナム! アイツとはアタシがやる」
 何かエキサイトしているベータさん。ん、なにかアタシに因縁でも? こっちを睨む視線を追うとアタシの左腕に。 ん? この臓物アニマル欲しいの?

「姐さん、あたしはあの男と……」
 向こうの犬が頷くと、2人はこの場を離れる。

 んーーと、何で1対1が前提になってるのかな? 管理局の教本だとチーム戦が基本でしょ。嘱託試験のテキストに載っていた筈だよ。
 ……でもまあ、仕方ないか、この面子で集団戦の訓練はしてない。なら『騎士団』であるアイツらと集団戦は拙い。
 ならベータ、アンタの相手はこのアタシだ。


☆Side Fate★


 わたしは女の人、シグナムさんと向き合った。
「……我々は残り物になってしまったな」
「そうですね」
 わたし達は苦笑を交わし、そして向き合う。

「再度名乗ろう、剣の騎士シグナムだ」
「……時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサです」
「テスタロッサ?」
 シグナムが首を傾げる。同じ顔、同じ服。だけど違う名前。だからわたしは答える。
「わたしはあの人の妹、そういうことになっています」
「……そうか」
 シグナムは私たちの間になにかあると、悟ってくれたようだ。だから言葉は尽きた。後は、

「行くぞ、テスタロッサ!」
「はい、シグナム!」


☆Side Alicia★


「この野郎、待ちやがれっ!」
 アタシは普通にベータと空中戦。これが美形の男の子だったら、『まて~!』『いや~ん!』と色々アレなのだが相手はロリ・チビ。楽しくも何ともない。
 ベータはハンマーを振り回し、アタシはそれを避ける。ベルカ式を相手にした場合のおそらく典型的な構図。
 マリヤと模擬戦をした場合、大抵こういう構図になる。だから……少し舐めていた。

「そこだ!」
 活きよい良く振られたハンマー、ソレを避けて、
「おし、いけ!」
 返しの一撃を避け損ねた。わずかな差、それに左手が引っ掛けられる。ソレによる微かな痛み。
 ……まさか、これって。
「リニス?」
≪左腕フレームに歪みが発生。戦闘力3%減少≫

 をい、かーぼんふぁいばー・セラミック複合材……、面倒くさいから以降”リリカリウム合金”、の義手は馬鹿みたいに丈夫なはずだよ。それが一撃で破損?
 ……うん、分かった。腐っても衰退しても絶滅危惧種でもベルカの騎士だ。余裕こいて勝てる相手じゃないのさッ。

「リニス、リミッター解除申請。リンディ姉さんやクロにぃがダメなら強制発動」
≪了解。それとフェイト、アルフ、戦況監視はどうします? ワタシのリソースの10%を使用しています≫
「継続して。妹の一人も守れなくてなにが姉?」

≪……結界外との通信途絶。自己判断により優先パターンと照合。敵対勢力推定AAAオーバー、条件クリア……
HyperMode Drive Start!≫
「OK♪ フルドライブ起動。行くのさッ!」
 さて、本気で行こうか。


☆Side Nanoha★


「ユーノ君、どうなってるの?」
 空の上ではフェイトちゃん達が戦っています。私はユーノ君の回復結界の中で治療中。
 悔しいな、みんなが戦っているのに、私一人こんなところなんて。

「3人とも今のところ無事。フェイトとアルフは押されがちだけど、シアは互角……、という押し出した」
 さすがシアちゃん、私の魔法の先生だ。でも……。

「ユーノ君、結界はどうなの? 破れそう?」
「……だめだ。術式は見えるんだけど解法がわからない、ベルカ式、だっけ? ベースになる法則がみつからないから……」
「じゃあ……」
「うん。解法、ブレイクするんじゃなくて力任せに破るしかないみたいだ」
「それって……」
≪.....Master≫

 そんな私達に話しかけてきたのは、レイジングハートでした。


☆Side Alicia★


 失敗した。
 ユーノにベータを押さえさせて、アタシは結界破壊をするべきだった。
 なのはの組んだ、結界破壊効果付きの改悪型スターライト・ブラスター+、その情報は貰っている。で、アタシのゼロドライブ・ブレイカーにも組み込んだ。
 フルパワーのあれならこんな結界、あっさりすっきりさっぱり破壊できるはず。
 今からチャージ、無理だ。ベータはそんな甘い相手じゃない。なら……、
 とっとと潰そう。その為のフルドライブ、ハイパーモードだ。

 リニスには形状変換はない。だからフルドライブといっても見かけ上の変化はない。
 ただ、より強力に、より精密に、より高速に、より強靱になるだけ。だから今のアタシは四乗、強い。つまり、
「スティンガー・レイ」
 基本の直射魔法。さっきは弾かれたソレが、
「なっ、痛っ」
 ベータの防御を抜き、突き刺さる。

「この野郎!」ベータは背後に下がって、「喰らいやがれ!」
 ? その鉄球どこから出した? ハンマーでぶっ叩いて、
≪Schwalbe Fliegen≫
 打ち出した。

 ちょいと待て、それって実体弾? そんなの当たったら下手すりゃ死ぬよ。仕方ない、迎撃だ。
≪Stinger Snipe≫
 アタシは誘導弾を2発発射。向こうは4発、その内2発を打ち落とす。
 で、残りの2発は交わすんだけど、アタシの後ろでコース変更。チッ、誘導弾か。ベルカ式の癖に生意気な。
 こっちのスナイプを曲げて後ろに。2発共打ち落したんだけどエネルギー切れ。ベータへの攻撃に使えなかった。

「くっそー、こうなりゃ!」
 誘導弾が効かないのが分かったみたいで、ベータはハンマーをグルグル振り回しだした。
≪Raketen Form≫
 ハンマーが変形してドリル? が出てきて、反対側に噴射口? が出来る…… えーーと、なんと言えばいいのか? 噴射口から火が伸びて……
「ラケーテン・ハンマー!!」
 ベータがクルクル回りながらこっちに突っ込んでくる。

≪Stinger Ray≫
「効かねぇ!」
 取りあえず直射弾を撃ってみるが、ハンマーで弾かれる。だろうね、分かってた。
 なのでアタシはギリギリまで引きつけて、

≪Flash move≫
 高速移動魔法で右に飛ぶ。だけど、
「甘ぇっっ!」
 ベータは回転軸を縦にして、横回転の勢いで追ってくる。
「アンタがね」
≪Flash move≫
 アタシはもう一回高速移動。今度は前に。
 ベータから見ると自分が来た方向になる。ある程度慣性を操れるみたいだけど、完全逆ベクトル。勢いが付いた分追ってこれる訳がない。
 ベータは明後日の方向に吹っ飛んで行って、燃料切れのようにヨタヨタ止まった。

 さて、そろそろかな?
「いい加減投降するのさッ。そろそろカートリッジも終わりじゃない。カートリッジ無しのアンタじゃアタシの敵じゃないのさッ」
「うるせい! うるせい!! うるせい!!! いい加減に潰れろ!!!!」
 ベータのハンマーからガチガチ、カチャンという異音? 最後の1回、音が変。カートリッジ切れだね。よし♪

「豪天爆砕!」
 ベータはハンマーを振り上げた。それが……あれ? 巨大化?
 …… をい、をい、をい、をい。なに、あのハンマー。車、というか下手なビル並のサイズ。あんなの当たったら普通死ぬよ。

「ギガントぉぉぉぉぉぉぉッ……」
 振り下ろされる巨大ハンマー、左右に逃げても後ろに逃げても追ってきそう。だけど、
「……馬鹿なのさッ」
 あんなでかいハンマー振り回すならその支点、ベータは反動で動かないように空間的に固定している筈。つまり攻撃しても避けられない。なので、

「アイシクル・ジャベルン」
 自慢の特殊誘導弾発射。次、ハンマー回避。

「……シュラークぅぅぅぅぅぅッ!!!」
 上下左右背後に逃げられないなら穴は一つ。だからアタシは前に向かって飛ぶ。
 後ろの方に逃げたなら、ハンマーの柄を伸ばせば届く。でも逆に寄られた場合、手はない。ハンマーの柄を短くするなら、ハンマーの遠心力に対抗してアレを引っ張らなきゃならない。ベータの腕力じゃいくらなんでも無理。

 アタシの脇をハンマーの柄が通り過ぎていく。それを横目に、
≪Stinger Ray≫
 直射弾を連発。これだけじゃカートリッジ付きベータの防御は抜けない。けど、問題ない。目的は防御を削ること。
「効かねぇよ!」
 吠えるベータの死角から、
「貫け」
 ズブッ!
 さっき放っておいたジャベルンが突き刺さった。

「あ、グッ。テメェっ」
 4本全弾命中、ベータがなんかうめくが無視。で、
「ブレイズ・キャノン!」
 砲撃で追い打ち。ベータは吹き飛ば、なかった。これがアイシクル・ジャベリンの売り。仕込んである拘束魔法、バインドが展開。その場にベータを固定する。
 その手からハンマー、なんか元のサイズに戻っている、が落ちるがそんな事気にする必要はない。これで詰みだよ。

 アタシは右手を掲げ、宙に開く。その先に浮かぶのは魔法の剣。
 1,2,4、8……64本。 単体殲滅ならこんなものかな?
「スティンガーブレイド……」


☆Side Bet....Vita★


 ……痛ぇ。

 あの女、アリシアの誘導弾を突き刺されて、バイントで固定された。
 あの誘導弾はまだ突き刺さりっぱなし。結構深く刺されている筈なんだけど、血がでねぇ。というか冷たい。体の奥が凍らされてるみてぇだ。
 なんでアタシはこんな事になってるんだ?
 なにか悪いことでもしたのか?

 アタシは、アタシ達はただはやてに笑っていて欲しいだけなのに。
 なんでこんな目にあわなきゃならねぇ!

 アリシアがかざした手の先、そこに浮かぶのは無数の魔法剣。ざっと見たところ、一発一発に並の騎士なら戦闘不能になる威力がありそうだ。
 ああ、ダメだ。あんなの喰らったら、いくらアタシでももたねぇ。

 別に死ぬのが怖い訳じゃねぇ。守護騎士であるアタシらは死んだら情報に還元され、闇の書に戻るだけだ。主の命が在ればすぐに復活出来る。
 でもソレじゃあダメだ。
 アタシらの復活にはそれなりのページが必要だ。折角集めた闇の書のページが減っちまう。
 はやてが元気になるのが遅くなっちまう。

 この世界じゃこんな時、神様仏様とか言うらしい。神様でも仏様でも聖王様でも。誰かアタシを、いやはやてを助けてくれ。

 その時だ、奇跡が起こった。
 勝ち誇るアリシア、その胸元から白い腕が突き出していた。


☆Side Alicia★


 なに、これ?
 アタシは胸元を見下ろした。
 胸の中心から伸びる腕。アタシの腕じゃない。
(あら、間違えちゃいました)

 ソレと接触しているからか、何故か念話が届く。イメージからすると若い女の人っぽい。
 腕は一旦引っ込み、そしてまた突き出された。
 同時に体を襲う凄まじい脱力感。突き出された手の先を見ると光る球体、あれは……

 --リンカーコア--

 魔導師の魔力の源。魔力誘導器官。
 抜き出されたアタシのリンカーコアから流れ出す、アタシの魔力。この手は何らかの方法でアタシの魔力を奪っている。

 ……、
 …………、
 ………………、コノ手
 ……………………、ソウカ。コノ手ハあたしヲ傷ツケル手ダ。

「……、リニス。アイス・エッジ、セット」
≪OK Ice Edge Ignition !≫

 リニス先端の打撃専用のパイルが消え、氷の刃が形成される。
 アタシは左手で胸から突き出した腕を握りしめた。うん、幻じゃない。しっかりとした実体だ。
 で、アタシは左手に力を込め………、その腕を握りつぶした。

(き、きゃゃゃゃゃゃゃゃーーーーっっっっっっ!!)
 頭の中に響く絶叫。
 アタシの左手は半分機械だ。普段押さえているけど、その力は大人の何倍もある。人の腕を握りつぶすなんて平気で出来る。だけど、これで終わりじゃない。

 アタシは右手でホールドしたリニスの先端を、左手で握りしめた腕に当てる。
(!!!!!!!!!!!!!)
 案外軽い手応えだった。
 声にならない絶叫を残し、腕の残りが引っ込んでいく。
 残ったのはアタシの左手に握られた、『腕』の半分。切り落とされた先だけだ。


「て、手前ぇ!!」
 声の主を見ると拘束していた筈のベータ。手にハンマーは無く、素手で殴りかかってきている。
 流石にエクスキューションシフトは解除されている。全身を襲う脱力感に迎撃する気力はない。
 どうする?

 一瞬悩み、アタシは反射的に左腕に手をやった。そこに止めてある臓物アニマルを掴み、
「ほーれ、いけっ!」
 下に向け放り投げた。


「なっ!!」
 ベータの目が見開かれた。その目がアタシとヌイグルミを見比べ、
「畜生っ!」
 ヌイグルミの方に飛びついた。


 そこで轟音。
 視線を上げると空に向かう桜色の光。あれはなのはのスターライト・ブレーカー。
 あの子ってあの状態で収束砲撃ったの? というかレイジングハートは無事?

 スターライトの音と光が切れると、街の音と光が戻ってくる。つまりベルカの結界が消えたと言うこと。

「まだ、やるのかな?」
 アタシはベータにリニスを突きつける。
 ここで弱みを見せちゃいけない。妹分が頑張ったんだ。虚勢でもいいから隙をみせちゃダメ。

「……、わかったよ。シグナム」
 向こうは念話をしていたよう。こっちを噛み付くように睨むとクルリと背中を見せる。
 そして全速力。

 アタシに追撃する気力はない。近くのビルの屋上に着地すると……
 その場でアタシは意識を失った。



PS1
 シャマル先生のリストカット?
 無印の頃、非殺傷の有無について悩んでいたのはこのシーンの有り無しをどうしようかと考えていたためです。
 結局この時代には非殺傷はない、という事にしましたので……、シャマル先生、哀れ。

PS2
 『とある六課』・番外編で予告した四タテ、その一を回収。ヴィータ戦にシャマル介入も予定通り。
 ついでにシャマル・トラウマ、その1も回収。あと二回か。シャマル先生、哀れ。

PS3
 ベルカの現状はオリジナル設定です。近代ベルカという概念はこの時点ではありません。
 この辺、別途『設定』で書く予定だったの本編に持ってきました。なのでシアが理屈っぽい……
 原作では闇の書の術式を得たベルカが近代化して盛り上がるルート、なのですが……、このSSではさてどうなるか? それ以前にはやては生き残れるか?

PS4
 徹頭徹尾、上目線のヴォルケンズ。SSでは何故か清廉潔白な扱いを受けてたりしてるけど。
 でも、やっていたことは今も昔も、最初から最後まで、辻斬りで通り魔(リンカーコア採取)
 A'sで、はやてとの約束破ってごめん、はやてを助けてありがとう、は在っても、襲った相手に対しての謝意は一切、全く表明してないのは作者の気の所為か?
 こういうのを組織に組み込んで、しかも士官に取り立てるって管理局正気か?
 ついでに言うとSts時のシグナムの本来の所属は首都防衛隊、『陸』のエリート部隊、レジアスの下だよ。レジアス、何考えてる?



[11860] A's編3話 ポットの中でぽーっと休み、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/04/21 22:55
☆Side Signum★


「どうだ、シャマル?」
「ええ、シグナム。もう少し待って」
 シャマルはアリシアに切られた右手を修復中だ。怪我の治療ならともなく、丸ごと切り落とされた腕を修復するのには、闇の書のページを必要とする。時間を掛ければ自己修復も可能なのだが、主はやてに気を使わせることは出来ない。

「くっそーー、あの女。今度会ったらアイゼンの消えない染みにしてやる!」
「止めろ、ヴィータ!」
 私は考え違いしているヴィータを諫めた。
 我らが主はやて。その道を血に染めぬよう我らは不殺を心に決めている。
 それだけではない。これは我らで話して決めたこと。
「ヴィータ、何故この世界で蒐集しようとした?」

 この世界は主の世界。この世界でリンカーコアを蒐集する、それはこの世界に管理局の目を向ける事に繋がる。
 この世界は管理外世界ではあるが、それなりに文明の進んだ世界だ。なので管理局の駐在員などが居ても不思議ではない。
 現役引退した魔導師が、辺境や管理外世界で駐在員として過ごすというのは昔からあった習慣だ。またこのレベルの世界なら管理局の協力者が居ても不思議ではない。
 そういった連中に目を付けられないため、この世界での蒐集は禁じていた。蒐集するにしても最終的な段階、闇の書のページが埋まるギリギリまで待つ、というのが我々が決めたルールの筈だ。しかしヴィータは、
「だってよー、仕方ないじゃねーか。アイツをヤルだけで30ページは埋まる筈だったんだ」
 ……分かっていない。

「だからと言って、管理局の目を引く愚は犯せん!」
「シグナム、なに言ってんだよ! はやてが、はやてが苦しんでるんだぞ!」
「それは我らも分かっている」
「だったら、1分1秒でも早く!」
「ヴィータ、何度も言った筈だ。この世界の諺にもあったはずだ。急がば回れ、と」
「だってよぉ」
「ザフィーラ、お前もお前だ。お前が付いていながら何故?」
「すまん……」
「大体……」

「シグナム、待って」
 腕の修復を終えたシャマルが私を止めた。流石に顔色は悪いが問題なさそうだ。
「今はそういう話をしている場合じゃないわ」
「ああ。確かに、そうだな」
「兎に角、これ以上この世界に管理局の目を向けさせるわけにはいかないわ。この世界での募集は禁止。目をくらませるため出来る限り遠い世界で蒐集を行うこと」
「妥当な判断だな」
「ちっ、分かったよ」
「了解した」

 後々考えるに、この時の私の判断は間違っていなかったと思う。
 だが、問題はやはりヴィータだった。
 ヴィータはよりにもよってこの世界、しかもこの鳴海市に調査に訪れていた管理局の人間を尽く襲っていた。
 管理局内でも捜査が続いていた『連続魔導師襲撃事件』。その調査の為にこの世界に派遣された管理局の人間を。
 それを襲った故に発生する厄介事、それは偶然でなく必然だった。


 ところで、
「シャマル。お前の腕を直すため、書のページをどれくらい消費した?」
「えーと、6ページよ」
「……、クーラルヴィントと併せて?」
「……、8ページ、よ」
「今回アリシアから蒐集できたのは?」
「…………ご、5ページ」
 1人の人間から蒐集できるのは1回だけ。成功しても中断しても失敗しても1度のみだ。つまり、

「………………赤字、か」
「くっそーーー、アイツやっぱりアイゼンの消えねぇ染みに!!!」
「やめろ、ベータ。暴れるな!」
「ああっ、誰がベータだっ!!」


☆Side Nanoha★


 頬に当たる優しい感触と消毒液の臭い。
 ……消毒液?
 私はぼんやりする意識のまま、目を開けました。其処に在ったのは……

「知らない天井なの」
 現代日本人ならこの台詞は外しちゃいけないの。で、周囲を見渡すとそこに居た女の子と目があった。
 金色の女の子。私の大切なお友達。……フェイトちゃん、だ。

 フェイトちゃんの私を見る目が驚きから安堵に代わります。で、飛びつくように私の元に。
「なのは、目を覚ましたんだ。どうかな、何処か痛いところはない?」
 痛いところ?
 私は何が在ったかちょっと思い出します。
 ああ、私は、……ハンマーを持った赤い女の子に襲われて。あれ、それで、此処って何処なの?
「此処は時空管理局、その本局」
「時空管理局、本局?」

 フェイトちゃんによると、私はあの時スターライト・ブレーカーを撃った直後に気を失って倒れたそうです。
 倒れた私を放っておく訳にもいかず、シアちゃんと一緒に本局の病院に搬送したとのこと。
 お医者さんの診断では、襲われて追いつめられた精神的ストレス、友達に助けられた安堵感、それが結界が破れて安心したところで緊張の糸が切れた気を失ったんだそうです。
 あの子に傷つけられた怪我は治療ズミ。体には何の問題も無いはず。
 目が覚めて痛いところが無ければすぐ退院して大丈夫だって。なんだかちょっと恥ずかしいです。

 でも、あ、そうだ。大事なことを忘れていました。
「……フェイトちゃん」
「なのは、どうしたの?、何処か痛いの?」
 違います、フェイトちゃん鈍すぎ。
「ううん、フェイトちゃん。助けてくれてありがとう。また会えて、とっても嬉しいよ」
「あっ」
 フェイトちゃんの表情が固まります。それがゆっくり綻んで、満面の笑みに。
「うん、わたしもなのはに会えてとっても嬉しい」

 ……私達はいつの間にか抱き合っていました。私の腕の中に大事な友達が居る。
 ビデオメールの中の映像じゃない。それが嬉しくて……


「なのはちゃん、起きた?」
 ガチャリと音を立てて、ドアから顔を出したのはエイミィさん。
 エイミィさんは私達を見ると驚いたように固まり、そして咳払い一つ。

「どうした、まだ起きてないのか」
 エイミィさんの影から顔を出したのはクロノ君。私が目を覚ましたのに気づき、安心したように表情を緩めます。

「ちょっとクロノ君。君も気が効かないなぁ~。ここは若い2人に気を使って出て行くシーンだよ」
 エイミィさんが変な事を言い出します。
「じゃあわたし達はちょ~~~~~っと席を外すから、後はごゆっくり♪」
 ウィンク一つ残し、クロノ君を引っ張って外に出ようとします。
 私はフェイトちゃんと顔を見合わせて、
「「?」」
 ごゆっくりってどういう意味でしょうか。クロノ君も分からないという顔をしています。

 三人の視線がエイミィさんに集まり、
「えーーと…… あは、あははははっ」

 三人とも、そのまま純真でいてね、ってどういう意味でしょうか?


 エイミィさんの不明行動は兎も角、クロノ君から今回の件の説明です。

「闇の書?」
「そう、今回の一件は特一級ロストロギア、『闇の書』絡みと見てまず間違いはない」

 魔力を集め、最終的にはその世界を滅ぼしかねない危険な魔導書。
 ……なんだか怖いモノです。
 私を襲った女の子、彼女は『闇の書』の『守護騎士』。名前はベータちゃんというらしいです。

「で、この『闇の書』事件。我々アースラチームが担当することになったのだが……」
「手伝わせてください」
 間髪いれずにフェイトちゃん。
「リンディ提督やクロノには色々お世話になってます。恩返し、というわけではないですけど、力になりたいんです」
 フェイトちゃんはなんか必死です。
 私は……、私はどうしたいんだろう。あの女の子、ベータちゃん。

 怖かった。殺されるかと思った。
 必死な目で。でも、私に対する敵意はなくて。
 今聞いた話によるとベータちゃんは私の魔力が欲しかっただけで、私を傷つける必要はなくて。だから、

 ……うん。そうなの。

「私も、お手伝いさせてください」
「なのは?」
「君は管理局の人間でもないし、これは管理世界の問題だ。管理外世界の君が……」
「違うんです」
「違う?」
「私は……、私はあの子ともう一回話してみたいんです」
 悲しそうな目をした女の子。あれはあの時のフェイトちゃんと同じで、だから私はあの子ともう一度お話してみたい。ただ、それだけなの。


☆Side Fate★


 わたしはなのはとクロノと一緒に病院内を移動中。目的地はあの人の病室。
 リンカーコアを抜かれたあの人は地球から本局まで長距離ポートで搬送。わたし達もそれに付き合った。
 で、治療中の筈だけど

 なのだけど、……?
 管理局の病院は母さんのお見舞いに何度か来たことがある。だけど此処はなんか印象が違う。病室というより……、研究室?
「ああ、その部屋だ」

 クロノが指さすと、ちょうどその扉が開く。出てきたのは……女の人、だよね。
 私たちより幾つか年上そう。クロノより年上に見える、と言ったらクロノ怒るかな? 背も向こうの方が頭半分以上高い。でも、胸はない。

 女の人はわたし達、特にわたしに驚いたように立ち止まった。そしてクロノに向き合うと、
「失礼ですが、クロノ・ハラオウン執務官でしょうか?」
「ああ、そうだが。君は?」
「申し遅れました、自分はマリヤ・キャンベル。管理局嘱託魔導師でシア……アリシアの友人です」
 あの人の友達?

「ああ、シアから話は聞いてる。君がマリヤか。よろしく、クロノ・ハラオウンだ」
 握手する2人。
「高町なのはです。私もシアちゃんの友達です」
「よろしく、高町さん」
「むっ」
 なのはとしては名字で呼ばれたのが不満そう。で、最後はわたし。
「フェイト・テスタロッサです」
「よろしく、……テスタロッサさん? ところで失礼だけど、君がシアの妹さん、という事で良いのでしょうか?」

「君が何故それを知ってる?」
 わたしが答えるより早く、クロノが声を荒げた。うん、そうだ。なのはは意味が分からないようで首を傾げているけど、わたし達の関係は秘密になっているんだ。あの人が秘密を簡単に口にするとは……、思いたくない。
 ……あっ、わたし、あの人の妹だってシグナムに言っちゃった。う、拙い。落ち込みそう。

「ああ、この前の事件の時、ケンに聞いたんですよ」
「ケン? ああ、てっ、ネコムラかぁ!!」
 ネコムラ、誰? なんかクロノ苛立ってるけど、知ってる人?
「マリヤ嘱託魔導師。分かっていると思うが……」
「話は聞いてます。騎士の誇りに掛けて公言はいたしません」
 マリヤは胸に手をあて、約束してくれました。その真面目な態度が更に私を落ち込ませる。

「頼む」
 はい、と頷くとマリヤはわたしに手を差し出した。なので握手。
「君のことはシアからも聞いてる。嘱託で一緒になったらよろしく頼む」
「はい、お願いします」
 マリヤの手は固く冷たく、でも掛けられる言葉は優しい。なのでなんだか気が楽になった。……あの人がこの人を好きなのがなんとなく分かる。

「お時間を取らせて申し訳ありません。アリシアはさっき目を覚ましました。まだ起きてると思います」
 マリヤの言葉に押され、わたし達は部屋に入った。


 暗めの部屋に沢山の機械。たしかに病室というより研究室っぽい。
 部屋の奥にはカーテン。あの人はこの先?

「シア、起きてるか?」
 クロノはそう言い、カーテンを開く。その先に在ったモノは……

 ……カプセル。

 半透明のカプセル。中には液体と、その中に浮かぶ裸の女の子。
 金色の髪が泳ぎ、その顔は伏せられている。あれは……
「あ、……アリシア!?」


☆Side Crono★


「あ、……アリシア!?」
「フェイトちゃん!」
 呻くような声とともにフェイトが倒れ込んだ。それを慌ててなのはが支える。
 何やってるんだ僕は。
 治療ポットの中のシア。それは正に時の庭園に居たアリシアを彷彿させる。
 今のシアをフェイトが見たら動揺するに決まっている。

『ん、どうしたの? フェイトがどうかしたの?』
 そんな時に聞こえてきた声。それはシアのモノだ。彼女はポットの中で首を傾げこっちを見ている。
『もしかしてクロにぃ、なんかフェイトに悪戯でもしたの? だめだよ、エイミィに言いつけるよ』
 などと言いながら、シアは僕にこっそりウィンク。
「なにを言うんだ、僕がそんなことするはずないだろ!」
 話題を振ってくれることはありがたいのだが、なんでそこにエイミィの名前が出てくるのだろう。

「シア、ちゃん?」
 フェイトを支えながら、なのはの視線はシアとテーブルの上のデバイスの間で揺れている。
 まあ、無理はないだろう。ポットに入っているシアが喋れるはずはない。今のシアの声の出所はリニスだ。
 シアとリニスの間は特殊な回線で繋がっていて、サポートしあっている。例えば今のようにシアが喋れない場合、代わりにリニスを使って喋ることが出来る。
 なお合成音声はシアのもの。普段のリニスの声で喋る訳ではない。リニスの容量が大きい為なのだが、ムダに高性能なデバイスだ……。別にうらやましい訳じゃないぞ。

「大丈夫、フェイトちゃん」
「うん、平気だ」
 と、そんなやりとりしているとフェイト復活。なんとか持ち直してくれたようだ。
 で、次ぎに心配するのはシア。

「シアちゃん、大丈夫なの?」
『まあ、特に問題はないみたいなのさッ。でも、今日明日はポットに浸かっていなきゃダメだって』
 壁のホワイトボードを見る限り、ついでに定期メンテも行うらしい。

 ドクターから一応報告は受けている。今回のシアの不調。それはリンカーコアが一時的に抜かれた所為で、体内の人造臓器に影響が出たモノだ。
 シアの人造臓器はその動力源として彼女の魔力を利用している。リンカーコアを抜かれた所為で一時的に魔力供給が途絶え、機能に影響がでたとのこと。
 本来ならこんなことはあり得ない。命に関わるものだ、セーフ機能は何重にも付いている。
 ただシアのような子供に、こんな高度の人造臓器を複数乗せている例は少ないそうだ。そのため全体システムが複雑になり、干渉し在ってこんな結果になったとのことだ。
 僕は専門家というわけではないので、この辺はドクター達に任せるしかない。

『と言うより、左腕がね』
 ポットに浸かったシアには左腕がない。
 生身より丈夫な人造骨格とはいえ、結局シアの、少女の体格だ。細い。
 なのであの騎士、ベータか、の攻撃でフレームが歪んでしまった。で、外して修理中だ。……僕としてはこの際、変なギミックのない普通の腕に換装して貰いたい。

「まあ、元気そうで安心した」
「うん。ちょっと驚いたけど。安心かな」
「そうだね」
『ありがと、なのさッ♪』


「でもね、シア」うん、これは言っておかないといけない。「実は今回の怪我は、君のミスだ」
『へっ?』
「え、なんで?」
 呆気にとられたシアと納得出来ないなのは。フェイトは意味が分からないようで中立。
「リニスのログを見せて貰った。それをマリーに見せたところ色々分かった。今回君は、予備のセカンダリィ・ジャケットを使用しているね」

 バリアジャケットは単純な防護服じゃない。対魔法、物理干渉だけでなく、恒常性を保つための環境調節、気圧、温度変化、細菌、化学物質などにまで対応する。
 その一つとして対空間防御というものが在る。転送をベースとした空間を隔てた攻撃に対する防御だ。
 実はこれ、結界術式をベースとした防御術式で簡単に実現できる。だが、シアのセカンダリィ・ジャケットはこの処置が不十分だった。
「普段のBJだったらあんな攻撃は通らなかった筈だ」

(……普段の状態じゃないBJだったら通った、てこと?)
 相変わらず鋭い。うん、その通りだ。
(あの空間跳躍攻撃の本来のターゲットは、おそらく)
(BJを壊された、なのは)
(だと思う。だがベータのピンチに一か八かで目標を君に変えた。でBJの不備で攻撃が通ってしまった、ということだ)
 こんなことはとても声に出せない。なのはは色々背負い込むタイプだ。この事に気付くとそれを全て自分の所為だと思ってしまう。だから僕にしてもシアにしても念話での会話だ。
(ふふふふっ、アタシの妹分を狙った、ということね。アルファめ)
(アルファ?)
(ベータの仲間だからアルファなのさッ)
(……使い魔じゃなくて、守護獣は?)
(犬!)
 即答か。しかし犬は兎も角、アルファは捜査チームで広まりそうだな。
 まあ、犬がガンマでも良いとして、状況の整理。さっきフェイト達にした説明をシアにもする。


『闇の書、ねぇ?』シアは思案顔。『確か闇の書って、あれ、だよね』
 シアが僕の顔を見る。その顔は彼の魔導書と僕の関係を差していた。やはりシアは知っていたか。しかし、
「関係ない。僕は管理局執務官として任務を全うするだけだ」
『はいはい。クロにぃは真面目だから、ね?』
 と少し笑う。で、空気がゆるんだところでここからが本番。

「アリシア・グレアム嘱託魔導師」
『はい?』

「アースラチームに加わり、『闇の書』事件の捜査への協力を依頼したい」
『ん?』
 シアは首を傾げた。次いでくる念話。
(なんでこんな固ッ苦しく依頼?)
 そう、普段はこんな形での依頼はしない。もっとフランクに行っている。ただ今回は理由があって、

(君が負傷したことを、グレアム提督が気にされていてね。捜査への参加にいい顔をしなかったんだ。勿論、最終的な判断は君に任せると言っておられたが)
 提督が心配されていると聞いて、なんかシアはすまなそうな、しかし嬉しそうな顔。この親子、血は繋がっていないが、本当に仲が良い。……実の親子の僕と母さんより絶対良い。
「分かった、協力するのさッ」
「えっ、いいのか?」
 てっきり断るか、少なくとも躊躇うかすると思っていた。

 でも納得している自分も居る。この親子は仲はいいがベッタリではない。自分の意見、自分の意志を立てて、そして立っている。信頼し合う親子であって、共に歩く友人であって、やっぱり仲の良い父娘だ。

 僕達にとってシアの参戦は嬉しい誤算だ。
 今のアースラチームには、シアの力が絶対必要だ。なのは、フェイトがいれば守護騎士に対抗は出来る。だけど決定力に欠ける。ベータを圧倒する戦闘力を持ち、更に状況を判断して動けるシアは、僕たちに執っての切り札たり得る。
 ……最近、僕たちの指示を無視して暴走する事があるけど。叱責はしてるけど、結果論として最善の手を執ってるから、強く責められないけど。
 うん、だからこれは全部ネコムラが悪い。アイツが甘やかしているのが悪いんだ。
 だからこんな台詞がでてくるんだ。うん、僕はこんな物騒な台詞、聞いてないぞ。

「ふふふふふっ、アタシのリンカーコア抜いてくれたアルファ。アレにお返ししてやらないと気が済まないのさッ」
 シアにとって、腕一本切り落としたのは報復の内に入らないみたいだ。敵とはいえ、アルファ、哀れ。


☆Side Nanoha★


 入浴中? 入院中? のシアちゃんが私達に合流するのは4、5日先とのこと。私達はお別れの挨拶をすると本局内を移動中。
 なんか廊下が延々と続いて窓とか在りません。この外はどうなっているのでしょうか?

 兎に角フェイトちゃんに従って移動。レイジングハートに会いにデバイスルームというところに行きます。
 待機中のレイジングハートに大きなヒビ。なんだかとっても痛そうです。
 フェイトちゃんのバルデッシュも同じ。シグナムさん? の剣と打ち合ってかなり傷ついたそうです。

 心配して2人を見ていたところ、マリーさんという人がちゃんと直してくれると言ってくれました。
 少し話をしたところ、マリーさんはエイミィさんの後輩だとか。だからアースラチームと仲が良く、クロノ君のデバイスやシアちゃんのリニスの面倒も見ているとのこと。そういうことなら一安心かな。


 デバイスルームを出て、私達はまた移動。何でも私に会いたい人が居るって。
 エレベータで上に登ると、なんか違う雰囲気。壁とかは代わらないんだけど、足下はタイルじゃなくてカーペット。所々に警備のお兄さんが立っています。なんかTVで見た、社長さんとか偉い人が居る場所みたい。
 こんなところに呼び出す人って?
 フェイトちゃんは警備の人にパスの様なモノを見せ、通っていきます。私もおっかなびっくり一緒に。で、あるドアの前に立つとノック。
 返事が返って私達は部屋に入ると、其処にいたのは男の人。
 銀髪の格好いいおじい……おじさん。なんか映画に出てきそうな。こういうのってナイスミドルっ言うんだっけ? 誰?

「ギルさん、なのはを連れてきました」
「ありがとう、フェイト君。さて立ち話も何だ、掛けたまえ」
 で、私達はソファへ。歩きっぱなしだったから嬉しい。うん、いい座り心地です。
「さて、君が高町なのは君だね。私はギル・グレアム。アリシアの父親だ」

「えっ、シアちゃんのお父さん?」
 ……管理局の偉い人に知り合いは居ないと思ってたんだけど、そういえばシアちゃんのお父さんって、偉い人って言ってたっけ。忘れてた。取りあえず立ち上がってご挨拶です。
「えーと、高町なのはです。シアちゃんには色々お世話になっています」
 アタフタする私にギルさんは優しく微笑んで、座るように促します。うー、恥かいたよ。

「わざわざ呼び出して済まなかったね。私は一度君と会って話がしてみたかったのだよ」
 ギルさんが言うにはギルさんも私と同じ地球、イギリスの出身。若い頃に管理局の人のお手伝いをして、そのまま管理局に入局したとの事です。
 紅茶を飲みながらそんな世間話。

 ギルさんに淹れて貰った紅茶は本格的で美味しい。翠屋の売りはコーヒーですが、紅茶もなかなかのモノです。でもギルさんの紅茶は家のより美味しかったです。なんか悔しい。

 で、フェイトちゃんの話に移って、
「裁判が終わったらフェイト君は家で預かる事になっているだよ」
「じゃあ、ギルさんはフェイトちゃんのお父さんに成るんですか?」
「ぶっ?」
 何故か咽せるフェイトちゃん。顔が真っ赤です。
「私としてはそれで構わないのだがね」フェイトちゃんに安心するように笑いかけ、
「だが、プレシア女史の事もある。当面はギルでも小父さんとでも好きに呼びなさい」

 はい、と小さく頷くフェイトちゃん。ギルさんいい人みたいだ。
 その後、私は長距離ポートで地球に移動、フェイトちゃんとは別れました。
 ところで、ギルさんが最後に言った、出来ればオジ様と呼んで貰うと嬉しい、という台詞。あれってどういう意味でしょうか?


☆Side ??????★


「アースラチームが『闇の書』事件の捜査に当たる、か。皮肉なことだ」
「ええ、本来なら遺恨のあるクロノ達に回るはずはないんですが、彼等が第一発見者の上に人手不足で」
「艦付きの執務官でもAAA以上の魔導師は数少ない。『闇の書』を相手にするには、最低でもAAA+以上の魔導師が必要。今あの件で教導隊を動かせない以上、アースラに回っても不思議はない。
 ふう、私があの場にいたら止められたのだが」
「しかし『闇の書』の騎士達、思った以上に愚かでしたね」
「そうだな。地球で蒐集を行うのは最終局面まで待つと思っていた。だから今回の地球行きを許可したというのに」
「所詮はプログラム、と言うことですね」

「2人とも何言ってるのさ! 問題はあの娘だよ。あの娘も捜査に協力するって言ってるんだよ!」
「確かに問題ですね。お父様、いっそのことあの娘にこの計画のことを教えてはどうです」
「そうだよ、お父様。あの娘ならきっと喜んで協力してくれる。というか協力させろと言ってくるよ」
「あの娘をプロジェクト・デュランダルにか?
 ……それは、出来ない」
「何故ですか? あの娘は私達が極秘に動いていること、プロジェクト・デュランダルの気配に気付いていますよ

「え、嘘?」
「貴女はうちの娘を舐めすぎです。あの娘は私達と同じ、お父様の娘ですよ」
「そう。だからだ。だからあの娘をプロジェクト・デュランダルには入れないのだよ」
「?」

「一度はあの娘を『闇の書』に関わらぬよう遠ざけた。しかし彼女は接してしまった。あの娘を引き取った当初、考えていたように。
 運命、正にFateか。あの娘とフェイト君の銘の様に。
 そう、今の状態、この状況こそ、私が本来望んでいた姿なのだよ」
「えっ、どういう事ですか?」
「私にせよ、彼等にせよ、『闇の書』に関わり、囚われた人間だ。
 理性に従い執った筈の最善の手。だがそれに書への感情が無いとは誰にも保証できない」
「それは……、確かにそうかも知れませんが?」

「だが、あの娘は違う。直接『闇の書』を思う拘りはない。
 お前達の言うようにあの娘は聡い子だ。だからその場の感情に走らず、上辺の正義に溺れず、冷静で必要な判断をしてくれる筈だ。
 そしてあの娘の手の中には『闇の書』を封じる手段がある」
「……」
「それだけではない。あの娘なら、私の自慢の娘ならば、それ以上の、我々の見いだせなかった第三の選択を探し出せるかもしれない」
「……お父様」
「老人の夢想と笑ってくれるかな?」
「いえ、お父様。私も、私達もあの娘を信じましょう」
「そうだね、でも」
「ああ、そうだ。もし、あの娘が敵に回るなら、その時は……」


PS1
 手助けしたい娘と、自主判断して欲しい父。複雑な人間関係に。
 この後、もう少し複雑になります。
 この辺の詳細は『設定』のプロジェクト・デュランダル・予備計画で。


PS2
 頭の良い獣は自分の巣の近くでは狩りはしないそうで。
 グレアムとシャマルが考えていたことは同じ。(なので旅行の許可を出した)
 で、このSSでは、なのは襲撃はヴィータの勇み足ということにしました。
 A's一話で海鳴らしき街で管理局員を襲っているのもヴィータ。馬鹿だろ、コレ。

 ヴィータじゃなくてベータで十分、ということで。
 アルファもがんばれ。


PS3
「………………赤字、か」
はA'sやるなら是非入れてみたかった台詞。どうかな?


PS4
 初めてシア視点の無い回。なんか思ったより難産。
 シアってちゃんと主人公なんだね。シアが説明すべき項目は次々回説明します。



[11860] A's編4話 欲望との遭遇、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/06/15 21:16
☆Side Alicia★


≪警告、警告! ラボ内に侵入者!≫

 ポットの中でぽーっと眠っていたアタシは右目からの激痛にたたき起こされた。そんなアタシにリニスからの警告。
≪ラボ内に未登録の侵入者です。駆動音、推測される重量より戦闘機人である可能性90%。また非常回線に異常、発生しています。警備センターへ繋がりません≫
(登録パターンは?)
≪管理局登録戦闘機人に対象なし≫

 ふーん、きな臭いことになってきたのさッ。
 ここは管理局の特殊医療センター、管理局本局の結構奥にある。外部から簡単に進入できる処じゃない。それに運用試験中の試作センサとか置いて、馬鹿みたいな警備体制取ってるんだよ。
 見回りとか在るけど、高度な研究をしているところだけに、登録してないガードマンは居ないはず。じゃあ、

 アタシは眠気の残る頭を戦闘用に切り換える。マインドセットは戦闘魔導師にとって基本の一つだよ。
 さて、この状態で使用可能な魔法は、と?
 ゼロドライブ系、無理。
 スティンガー系、ブレイド、ボム以外可能。
 キャノン系、ブレイブ可、フレイズ不可。
 ジャベルン系、なんとか。
 エッジ系、OK。

 痛いのが左手、だね。まだ修理から帰ってきてない。いっそのこと別の腕に付け替えようかな。
 あとはリニス。直接手に持ってないけど、この距離ならある程度演算補助が受けられる。なら、なんとかいけるかな?

(追加情報は?)
≪光学検証に異常。なんらかのスクリーンを張っていると思われます≫
 ようするに変装? まあ、普通素顔で進入はないか、スパイ映画じゃないんだし。

 と、カーテンが開かれた。
 そこに居たのは一人のお姉さん。普通に陸士服を着て、手には通信装置?
「こんばんは、アリシアお嬢様。アポ無しの夜分の訪問、この無礼をお許しください」
 と言ってお辞儀一つ。なんか調子が抜けた。
『はい、こんばんは。で、こんな時間に知らない人がなんのご用ですか?』
 微妙に棘を含ませ返す。なんの用か知らないけど、こんな時間に起こされるのは迷惑なのさッ。

「申し訳ありません。我々の主人が貴女との面談を希望しております。なにとぞお受けください」
 主人? 面談? なんかきな臭いな。いったい誰?
『で、主人って、一体誰なのさッ?』
「はい、貴女の古い友人とのことです」
 ……古い友人? うーーーん、心当たり無いな、でも。
『まあいいのさッ、えーと、そのスクリーン?』
「はっ、少しお待ちを」
 つーか、シチュエーション的に断れそうもない。気乗りしないけど話してみるしかなさそうだね。

 女の人は通信機を操作。……通信だけにあんなサイズはいらない筈。そうなると専用回線? 秘匿通信? いずれにせよ、まともな相手じゃなさそうだ。
 待つこと十数秒、通信機上にスクリーンが広がり、1人の男を映し出す。年齢不詳、二十歳過ぎ?の長髪の男。なんか目つきが逝ってるッぽい。紫の髪の……、あれ?
『やあ、アリシア。久しぶり。初めまして。さて、どちらだろうね?』
『…………、どっちもちがうのさッ。アンタの場合、こんばんわ、じゃなかったのかな?』
『な……。まさか、そんな記憶まで!』
 スクリーンの向こうでジェル、ジェイル・スカリエッティが絶句した。


☆Side Jaell★


『…………、どっちもちがうのさッ。アンタの場合、こんばんわ、じゃなかったのかな?』
『な……。まさか、そんな記憶まで!』
 まさかと思った。まさか其処まで記憶が再現出来ているとは、ボクでも想像できなかった。


『……、こんばんわ』
『ちがうでしょ。こういう時はね、初めましてって言うんだよ』


 今思うと少し間抜けな会話。でもこれがボクと彼女、アリシア・テスタロッサとの初めての会話だった。

 ボクの名はジェイル・スカリエッティ。
 管理局上層部がアルハザードファイルを利用して産み出した知能強化型人造生命体。管理局にとって有用な研究をする為に創り出された存在だ。
 そのように産み出され、知能強化型などというと、なんでもすぐ研究、開発出来る様な気がするが、決してそういうことはない。持っている知識を使う為の思考力、知力が必要と成る。

 そのため、産み出され、初期調整が終わった段階でボクはあちこちに連れ出されるようになった。学校などの教育機関ではない。実際の開発現場に行き、開発業務に携わり、思考プロセス、パターンを磨くためだ。
 そんな中、ボクはある民間研究所に回された。最先端の魔導動力炉の開発機関。その見学と称して。

 その開発メンバーの一人、プレシア・テスタロッサ女史。開発チームの主任で面倒見のいい人だった。
 詳しい事は覚えていない。ただ、ボクは彼女に連れられて、彼女の部屋を訪れた。
 そこで出会った一人の少女。アリシア・テスタロッサ。

 プレシア女史としては、見学チームの中で浮いているひとりの子供を元気づけたかったのだろう。だが元気づいたのはアリシアの方も同じだ。
 郊外にある研究所。当然研究所の関係者しかいなく、アリシアと同年代の子供はいない。職員のマスコットとして可愛がられていても、寂しかったのだろう。
 彼女はボクに構い、見学メンバーも生暖かくボク達を見守ってくれた。

 別れる時2人でワンワン泣いたのも、今では懐かしい思い出だ。
 後になって思う。アレがボクにとっての初恋だったのだろうと。


 アリシアの死を知ったのは数年後。ボクが自分の研究室を与えられてからだ。
 管理局の研究に必要な情報しか与えられなかったボクは、ヒュードラの事故の事を知らされなかったのだ。

 色々手を回して、事故の責任を取らされて、地方研究所に回されたプレシア女史と再会した。再会してその変わりようにボクは目を疑った。
 落ち込んで壊れそうなプレシア女史。禁忌と知りつつ、ボクは彼女に一つのデータを渡した。
 それは魔力同調による脳内情報転写技術。アルハザードファイルに記載された遺失技術。
 ただしそれは不完全で、再現というより初めから作るに近いレベルの情報でしかなかった。

 それを受け取り、プレシア女史は人が変わったように研究に打ち込み始めた。
 例えばその一つが転写に必要な魔法素体、F.A.T.Eと呼ばれる、使い魔を越える魔導生命体の研究だ。

 その後、技術交流ということで何度かお会いしたが、この3年ほど足が遠のいていた。ボクもボクの研究、というかスポンサーの依頼が忙しかったのだ。

 PT事件の事を知ったのは管理局の広報でだ。
 相手は一応恩のある女性。アリシア復活に失敗した彼女がなにをしたのか気になり、事件の事を調べた。局内のデータベースの秘匿情報も併せてだ。
 その中に浮かんだ一つの名前、アリシア。アリシア・グレアム。
 ドゥーエに命じ急ぎデータを集めさせると、そこに在ったのは懐かしい顔。更に彼女が乗る船のスタッフが漏らしたという言葉。記憶の再生。

 とすれば、会わないという選択はない。

『どしたの、ジェル? ぼっーーとして。まだぼける歳じゃないでしょ』
「いやいや、君との再会に感激のあまりに、ちょっとね」
『……再会、ね』
「違うのかね?」
『違うのさッ』
「ほう。違う、ね?」
 彼女とは違う、どこかシニカルな口調。だがスクリーンとポット越しの同じ仕草に同じ表情。違う人間、か。

『アタシはアリシア・テスタロッサじゃない。アリシア・テスタロッサ・グレアム。
 アリシア・テスタロッサの記憶はあるけどアタシはアタシ。アリシア・テスタロッサ本人じゃない』
 レポートの通りか。ますます興味深い。
「記憶の再生と人格への影響を受けても、自分は自分だと」
『そういうこと、なのさッ』
「なるほど」
 記憶に流されず、アリシア・グレアムとしての意識を保つ、か。
「では、改めて名乗ろう。アリシア・テスタロッサ・グレアム嬢。ボクはジェイル・スカリエッティ。
 アリシア・テスタロッサ同様、友達に成ってくれると嬉しい」
『友達? アンタ、違法研究者じゃないの? アタシは管理局関係者だよ』
「それは大丈夫。君も知っているとおり、昔同様ボクもまだ管理局の所属だよ」
 その辺はあの時アリシアに教えた。今考えると迂闊なこと極まりないが、当時ボクも子供だったのだよ。大好きな女の子と秘密を共有したかったのだ。

『……やっぱりそうか』
「そうさ」
『まあ、ならいいか。よろしくジェル? ううん、ジェイル?』
「ジェルと呼んでくれないか。彼女の様に」
『OKなのさッ、ジェル』
「よろしくアリシア。いや、シア」


 その後、近況紹介などしばらく話した。
 そして最後、

『ああ、ジェルってロストロギアは詳しいかな。古代ベルカの遺産とか』
「古代ベルカの遺産か。ああ『闇の書』の事かな?」
 最近シアが関わっている事件だった筈だ。
『そうそう。それで頼みが在るんだけど、『闇の書』の情報集めてくれないかな』
「? 『闇の書』の情報なら管理局にもあるんじゃないのかね」
『そういう表の情報じゃなくて、裏の』
「ふむ、我々違法研究者の持つアングラ情報が欲しい、ということかい?」
『そういうこと』
「なるほど」
 流石、目の付け所が面白い。
「『闇の書』についてはボクも興味がある。いいだろう、調べておくとしよう」
『サンキュー、なのさッ♪』


☆Side Uno★


 ドクターは上機嫌で通信を終えた。
 そしてスクリーンを広げ、先程の少女、アリシア・テスタロッサ・グレアム嬢ともう一人の少女のデータを呼び出す。
「パパ、もう良いかな?」
 其処に入ってくる1人の少女。彼女はドクターの見ている者に気付くと、膝の上にチョコンと座る。

「これが2人目と5人目?」
「そう、これが2人目。シア、アリシア・テスタロッサ・グレアム。
 彼女は、素晴らしいよ。アリシア・グレアムの意識と、アリシア・テスタロッサの記憶が融合せず、しかし離反もせず極めて高いバランスを保っている。この状態、これは一つの奇跡と言えよう。
 最初は無理にでもラボにお招きしようと思っていたのだが、止めて良かった。下手に手を入れるとそのバランスがどう転ぶか分からないからね。
 それより、このまま見守っているほうが面白い。彼女がどう変化していくか。見物だね」
 それに彼女には嫌われたくないのだよ、ドクターはそう嬉しそうに笑う。

「こっちの子は?」
「フェイト・テスタロッサかね。彼女もまた完璧だ。
 現在”F”としてフィジカル面で最高のスペックを持つのが彼女だろう。私の作った彼や、君よりも完成度が高い。管理局の医療データベースを覗いたが、あらゆるバイタル値が高い水準で纏まっている。
 流石プレシア女史。見あげた執念だ。無限の欲望としては、見習いたい気分だね」
「ふーーん、凄いんだ」
「ああ。時の庭園から引き上げたプレシア女史の研究データは見せて貰った。データ通りに作っても、彼女ほどの完成度を出すことは出来なかった。これ以上を望むなら、データベース化出来ない細かいノウハウが必要だ。
 その為には完成体である彼女を一度調べてみたいものだね」
「調べて、どうするの?」
「はははははっ! 彼女達のデータを元に、君を再調整するのだよ。そうすれば君はなれる、最強の人造魔導師に!」
「あたしが最強?」
「そう、ボクの娘である君が最強だ」
 彼女は嬉しそうににニッコリ笑うと、
「ウーノ・ママ。あたしが最強だって♪」
「そうですよ。ドクターに任せておきなさい。そうすればきっと貴女が最強になれます」
「うん♪」

「しかしだ」ここでドクターは少し考え込んで、
「その為には、此処で彼女達に何かあっては困るな。よし、済まないがトーレとクアットロを呼んできて貰えないか」
 彼女を膝から降ろしながらドクターが言う。
「トーレお姉ちゃんとクアット姉ぇ?」
「そう」
「うん、分かった」
 彼女は金色の髪を元気に揺らし、紅い瞳を輝かせ、何処で覚えたのか可愛く敬礼して見せる。
 ドクターを父と、私を母と呼ぶ娘。第3の金色の魔法少女。

「ドライ・テスタロッサ・スカリエッティ。お姉ちゃん達を呼んできます♪」



PS1
 ドライ・テスタロッサ・スカリエッティ。
 三番目の金髪少女には、やはりドライという名が良く似合う。


PS2
 シアとスカの再会? は当初A’s後の空白期に行う予定でした。なので『ざ・むーびー・せかんど』とは
食い違いがでてしまっています。
 何故変えたかというと、空白期ではトーレフラグとクアットロフラグが立てにくいから……
 なお『ざ・むーびー・せかんど』の全伏せ字の少女がドライです。


PS3
 スカの一人称は正しくは”私”。ですが”ボク”の方がらしいかと思ってこのSSでは変えています。どうかな?




[11860] A's編5話 この手、何の手、気になる手、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/05/26 00:11

☆Side Crono★


「どれに、し、よ、う、か、な♪」

 腕。
 僕たちの前には左腕が数本。

 魔力刀、伸縮槍、二連装魔力ガトリング砲、中距離制圧用複合魔導攻撃ユニット。それに……
「やっぱりドリルよね♪」
 レティ提督、なんでそんなに嬉しそうなんですか?

 色々突っ込み所満載だが、これらは全てシアの左腕、それに搭載されたギミックだ。リーゼ達は本当にこれをどこから持ってきたのだろうか?
「う~ん、ドリルか。悪くないけど、女の子としてはどうもはしたない気がするのさッ」
 む、ドリルの何処が悪い。ドリルは漢の浪……、いや待て、僕。何を考えた? 僕まで毒されるわけにはいかないぞ。

「折角の武器使用自由なんだから、此処はド派手に、ド迫力に、ド優雅に逝きたいんだけどさ」
 行くの響きとか優雅は良いんだけど、派手と迫力はなんとかして欲しい。出来れば変なギミックの無いモノを。
 シアはデバイスとかの好みは凄くシンプルなのに、なんで自分の腕には変な仕掛けが欲しいのか?
「「「「それは、ヒ、ミ、ツ♪」」」」
 ……レティ提督、シア、ロッテ、アリア。声を揃えないでくれ。なんか僕が悪いことを言ったみたいじゃないか。


 そもそもの発端はシアの愛用の義肢……、ロケットアームが守護騎士に壊され、修理が必要になったことによる。
 普段は僕たちと縁の深いメカニック・スタッフ、マリー達に修理を依頼している。ただし今回はそうは行かなかった。
 レイジングハートとバルデッシュ、なのはとフェイトのデバイスの修理が優先されたのだ。いや正しくは修理ではない。ベルカ式カートリッジ・システム搭載を求める二機の要請を母さんが認め、それによる改造が必要になったのだ。
 ミッド式の精密なインテリジェンス・デバイスに、管理局では運用実績の少ないベルカ式のシステムを積み込む。それは相当な大改修となる。

 バルデッシュはまだ良いそうだ。バルデッシュはインテリジェンス・デバイスとは言え、その運用形態はアームド・デバイスに近い。
 またマリーが言うにバルデッシュは『経験の浅いデバイスマスターが金に任せて高級パーツでくみ上げたモノ』らしい。元々頑丈なフレームの所為で、簡単な強化とバランス調整でかなりの性能向上が見込まれるそうだ。

 問題はレイジングハートだ。
 レイジングハートは元々スクライア一族の備品だったのだが、その素性は不明で鬼子扱いだったらしい。そのため、ユーノの独断で所有権の委譲を行っても、さほど責められなかったとのことだ。
 デバイス・コア自体は相当優秀なモノを使っているが、杖としての基本設計が古く、カートリッジ・システムを搭載するには、フレームの基本構造から手を入れる必要があるとのこと。
 いずれにせよ我々のメカニックは二機の改造で手一杯。この為シアは、左腕を交換する事となった。

 で、冒頭の台詞に戻る。

「相手はベルカの騎士だからね。やっぱり奥の手は用意しておきたいのさッ」
「まあ、それは分からないじゃないけど」
「うーーん、と。ねぇ、クロにぃならこの中のどれが良い?」
 この中か? ギミックの無いシンプルなものはないか。なら槍かな? これならキュートハラオウン・ブレイカーなんて必殺技が……
 おい、僕。なにを考えた? 変な電波が入ったぞ。
「クロノ君?」
「クロ助、大丈夫?」
 レティ提督とアリアが頭を抱えた僕を心配してくれるんだけど、もっと別の心配をして欲しい。

 で、シアは結局、
「とすると、ん~~、やっぱりコレかな」
 シアは一つの腕をポンと叩いた。
「へぇ?」
「ほぉ!」
「わぁ!」
「でも、なんでそれ?」
 確かに強力な能力を持つけど、もっと凶悪なモノは幾つか在る。
「ん? これなのさッ」
 シアはソレのスペック表を叩く。その内容は……
「……そういう事か」
「そういうことなのさッ」
 確かに近接特化のベルカ対策にはなりそうだ。しかたない。僕も認めよう。

 医療技師を呼んで義肢を付けて貰う。ギミックの動作確認をして終わり。
 付き合って貰った、おもしろがって付いてきたとも言う、レティ提督とリーゼ達に別れを告げ、僕たちは本局・特殊医療センターから移動する。
 第97管理外世界、地球へと。


☆Side Alicia★


 長距離ポートでアタシ達は地球へ移動。
 海鳴じゃない、隣の遠見市へだ。
 遠見市には管理局でキープしている部屋がある。元々PT事件でフェイト達が使っていた部屋。それを管理局が引き継いだ、とのこと。

 地球にこんな部屋を用意しているのは時の庭園の為だ。
 PT事件のラスト、アタシ達が時の庭園に乗り込んだ時、次元断層対策で庭園の動力部を封印した。
 このため、時の庭園は地球近くの高次元空間に漂ったまま。予備動力はあるけど、それは管理中枢を維持する程度の出力しかないらしい。
 つまり動かせないということ、なのさッ。
 あんなものを中ぶらりんで置いておくことは不安だし、下手をすると次元犯罪者の隠れ家に成りかねない。それを定期的に監視するために、局員用に用意していた部屋とのことだ。

 時の庭園にあった、ジュエルシードによる空間の歪みもそろそろ安定。なので、動力部を直してミッドチルダの近くに持っていくことになっていた。
 アタシ達が使った遠距離ポートはその為のモノだ。修理のための技術者や資材を運ぶ為、一時的に管理局と地球を直通で結ぶために用意された。
 今回のアースラの任務には、この遠距離ポートを運ぶというものがあったんだ。
 ……最初に使ったのがアタシの病院搬送だったんだけどね。

 だけど、事情が変わった。
『連続魔導師襲撃事件』改め『闇の書事件』。

 病院で暇してる時、クロにぃの持ってきた資料を見た。襲撃の分布を見ると、確かにこの地球辺りを中心とした範囲で行われている。ほとんどの場合、地球から個人転送で行ける範囲。
 なら地球をベースにするのが手っ取り早い。

 リンディ姉さんの船、アースラは改修中。ただしくはアルカンシェルの積み込み中。
『闇の書事件』はアルカンシェルなんかの艦載魔導砲で『闇の書』を吹っ飛ばして終わり、というケースが多いみたい。今回の改修もその為なんだろうな。
 ……地球に向けてアルカンシェル撃つのは止めて欲しいな。なのはが泣く。『闇の書』の主とかベータ達をなんとかするだけで済ませたい。

 まあアルカンシェルは置いておいて、アースラ改修中、アタシ達チームは地球にベースを置くことになった。
 海鳴にね。

 海鳴にベースを置いたのは、なのはの家の近所ということも在るけどもう一つ大きな理由がある。
『連続魔導師襲撃事件』では地球にも捜査官が派遣されていた。その捜査官が結構返り討ちに合っている。特にこの海鳴・遠見辺りで襲われるケースが多い。
 つまり、この辺に守護騎士達のアジトがある可能性が高い。少なくとも頻繁にこの地を訪れているのは間違いないだろうとのこと。
 と言うことで、地球周辺は危険地帯と認定された為、庭園の修理は先延ばし。折角運んできたポートは『闇の書』事件対策本部で使わせて貰うことになった、というわけ。

 地球、遠見のセーフハウスに転送されると、見慣れたアースラ武装隊の人が迎えてくれた。ここは今武装隊の
詰め所になっているみたいだ。
 彼等に挨拶して、アタシはクロにぃと一緒に部屋から出る。で、公共交通システム、タクシー? を拾う。で向かうは隣の海鳴市。
 ……飛べば直ぐなのに面倒くさい。


 そういえばこの時間帯なら……
「そういえば君はフェイトが学校に通うことになったのを知っているか?」
「うん、なのはと同じ学校だよね。エィミィに聞いたのさッ」
 フェイト本人からでないのが重要……。
 こっちの世界で学校とは聞いてちょっと驚いた。
 勿論フェイトが家に来たらミッドの学校に入れるつもりだっだ。アタシの一年下になるのかな。お揃いの制服、ちょっぴり楽しみだったりする。のだが、

「それが僕にはよく分からないんだ……」
「分からないって、理由?」
「そうだ、フェイトがこの世界の学校に通う理由はない。シアならその理由が分かるはずと、母さんが言っていたんだが」
 フェイトが地球の学校に通う理由ね。確かに普通ならないのさッ。

 アタシ達が学校に行く理由は3つ。
 1つ目は勉強するため。いわゆる国語、算数、理科、社会。
 算数と理科はプログラム式魔導師のアタシ達は出来て当然。これだけならアタシ達は学校に行く必要はない。
 国語、ミッド人のフェイトが日本語覚えてどうする? 社会も同じ、地球の地理や歴史覚えてどうする?
 美術や音楽も共通項目がない。地球の美術品はミッドじゃ知られてないし、歌とか音楽も同じ。
 つまり意味がない。

 2つ目、社会の常識を覚えるため。
 人間社会で暮らすルールは、体で覚えなきゃ成らない。その為。……何だけど。
 アタシは嘱託仕事であっちこっち管理世界や管理外世界に行くことがある。だから身にしみて分かって居るんだけど、常識って世界によって微妙に違うよ。
 ましてや地球は魔法文明の無い世界。管理世界の常識とかなり違っている。
 ミッド人で素直なフェイトが管理世界的に変な常識覚えたら、後で色々苦労するはず。

 ついでに言うと、地域によって常識が違うのはこの世界でも同じらしい。なのでこの国の人間じゃないバニングスちゃんみたいな娘は、普通インターなんとかスクールに通うモノらしい。バニングスちゃんが日本人の学校に行ってるのは、このなんとかスクールがこの辺にはないからだって言ってた。

 3つ目は友達を作るため。
 これは大事。エイミィ情報によるとフェイトはなのはだけでなく、月村ちゃんやバニングスちゃんとも仲良くしているとのこと。
 まあ、これは普通にいい話なんだけど……痛し痒しということ、なのかな? ミッド人のフェイトは事件が終わったらミッドチルダに帰らなきゃならない。
 友達が出来るのは良いけど、直ぐに別れなきゃならない。まして此処は管理外世界。そうそう気軽に遊びにこられる場所じゃない。あまり親しくなるのもどうかと思う。
 アタシもミッドチルダ以外にも友達居るけど、あの子達は管理世界の子だし。

 という訳で、普通ならフェイトが地球で学校に行く必要はない。でもリンディさんは通わせた。かなり無理をして。経費がかなり掛かったとエイミィは苦笑していた。
 何故なら、
「なのはの護衛なのさッ」
「え?」
 守護騎士の結界、レイジングハートのログによるとかなり特殊なモノらしい。通常空間から魔導師だけを隔離してしまうとの事。つまり学校でなのはが襲われた場合、孤立してしまう公算が高い。
「なるほど、そういうことか」
「フェイトはちゃんと魔法の勉強はしているからね。バルディシュが無くても、なのはと一緒に逃げることくらいは出来るはずになのさッ」
 デバイスは魔導師の演算補助の道具だ。ちゃんとした魔導師ならデバイスがなくても在る程度の魔法は使える。
「確かにその通りだ。僕は変な考え違いをしていたようだ」
 とクロにぃは苦笑。
 少し考えれば分かるんだけど、クロにぃその辺コンプレックス在りそうだから考えたくなかったのかな? 学校に夢を持っている? この人、普通学校中退だから。

 そんな会話をしつつ、ホテルに着いてチェックイン。荷物を置くと再び移動。
 で、やってきました、臨時本部。

「来たよぉ♪」
「あっ、シアちゃん。いらっしゃい♪」
 数日ぶりのエイミィが迎えてくれた。
「あ、リンディ提督は外だよ。色々挨拶回りとかしてる」
「あいなっ」

 臨時本部は普通のマンションの一室。ここにクロにぃ達は住んでいるそうだ。アタシは一緒じゃなくて、さっきのホテルで一人暮らし。
 なんせ此処、リンディ姉さん、クロにぃ、エイミィ、フェイトにアルフが住んでいる。アルフはフェイトと同室として4部屋。会議とかはリビングで良いとしても、いろいろな機材設置用に1部屋は必要。アタシの住める部屋はない。
 エイミィと相部屋って話もあったけど、執務官補佐のエイミィの部屋には秘密な書類とかもあるので問題になるらしい。


 何かあったら連絡するから、とエイミィからお許しを貰って、アタシは海鳴の街をブラブラ探索。で、まずは此処でしょ。

「……どうも」
「いらっしゃいませ……アレ?」
「どーも♪ 月村姉さん、なのは兄」
 翠屋に入ったアタシを迎えてくれたのは美男美女のウェイターにウェイトレスさん。
 ボンキュボンで髪を伸ばした美人さんが月村ちゃんのお姉さん。無口で隙が無いのがなのはのお兄さん。
「アリシアちゃんじゃない。何時海鳴に来たの?」
「ついさっきなのさッ」

 翠屋というか、なのは関係者とは何回か会っている。アタシはPT事件の後、なのはの処にビデオレターを届けたり、遊びに来たりしていたのだ。なので、
「もう、私のことは忍さんで良いって言ってるのに」
「これがアタシのキャラなのさッ」
 などとお約束の会話が出来たりする。
「と言うわけで月村姉ぇ、注文よろしくなのさッ。いつものね。ママさんのシュークリームとマスターのコーヒー」
「はーい、オーダー入ります」

 コーヒーとシュークリームを堪能した後、アタシは翠屋を後に。
 なのは兄がアタシに何か聞たそうにしていたのは無視。多分、この前のなのはの入院、というか無断外泊のことだろう。その辺はアタシじゃなくてリンディ姉さんに聞けいッ。
 で、クロにぃには聞くなッ。誤魔化せないから、あの人。


 次に向かったのは図書館。情報収集のまあ、基本かな。
 途中、図書館から出てきた車いすの女の子とすれ違う。アタシ達と同じくらいの娘かな? ふむ、この世界はちゃんとバリアフリーがされてるんだね。感心感心。でもあんな子1人って……
「あ、シャマル」
「はやてちゃん、お待たせ」
 後ろの方で声。お迎えが来たらしい。なら良し。アタシは振り返りもせずに図書館に。

 探すならタウン情報とか回覧板っぽいものかな?
 キョロキョロしながら図書館を彷徨いていると、
「あれ、フェイトちゃ……、アリシアちゃん?」
「ん?」
 声の方を向くと、どっかで見た女の子。
「ああ、月村ちゃん」
「もう、私のことはすずかで良いって言ってるのに」
 姉妹そろって同じ台詞だ。取りあえず知り合いなので世間話。フェイトと仲良くしてくれているそうだ。お姉ちゃんとしては感謝。
「で、月村ちゃんは今日は1人なの?」
 この娘達、いつも4人、今は5人一緒なのかと思ってた。
「ううん、私は本借りに来ただけだから。
 あ、ええとね。さっきまでお友達といっしょだったんだ」
 ふーん、なのは達以外にもちゃんと友達居るんだ。結構なこと。姉貴分として、なのはの交友関係の狭さ、気にしてるんだ。なのはにも紹介してやって欲しいな。

 月村ちゃんの案内でタウン情報誌をゲット。見てみると……
『天を貫く桃色の光柱』、『空飛ぶオレンジ色の犬』、『スク水を着た死神』

 うん、見なかった事にしよう。



PS1
 今回は悩みました。
 テンプレというか鉄板の、オリ主聖祥転入。
 フェイトと一緒にシアも転校、というのも考えたんですが、ミッドで学校行ってるシアの聖祥入りはないでしょ。


PS2
 フェイトの聖祥転入。この話ではこういう理由にしました。
 原作で何故リンディさんがフェイトを転入させたのか? 強いて言えばフェイトをハラオウン家に取り込む為の懐柔策か?
 フェイトを養女にして、娘のためという理由で海鳴に家を構えると、提督権限で長距離転送ポートを用意出来れる。そうすればなのはも管理局に取り込めるから、てか?
 シアも言っているように、リンディさん腹黒ですね。


PS3
 バスで通う私立小学校。
 一見良さそうな環境ですが、実は巨大な問題が。
 家の周りの子供コミューン(公立校の子供が主)と縁が薄くなるのです。近くに同じ学校の子が居ないため、遊んだりしにくくなる。
 運転手付きのアリサやすずかは気にならないだろうけど、なのははね。(とらハ3ではフィアッセが高町家の運転手をしてたけど)
 リリなの設定の、なのはの孤独感を煽るための設定だとしたら秀逸なのですが、ちがうよね。
 とらハ3でも、なのはには近所には友達居なくて、だから久遠に拘ってた様だし。


PS4
 お金持ちのすずか嬢。
 そういうお嬢様って庶民向けの公立図書館に行くものなのだろうか?


PS5
 シアの義手が脆い、という意見を結構貰いました。
 これはデバイス強化によるパワーアップを見込めない、シアの為の強化フラグでした。
 さてシアが選んだのは何かな?



[11860] A's編6話 第三勢力? 仮面の男デルタ出現、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/06/23 22:08

☆Side Amy★

 スクリーンの中には赤い女の子、『闇の書』の騎士のベータちゃん。
 それに使い魔のガンマ、シアちゃんは犬で良いって言ったんだけど可哀想なんでわたしが命名。だって犬って言うとアルフがなんか傷ついた顔するんだもの。

 スクリーンが映しているのは海鳴上空。
 海鳴近辺で魔導師が襲われるケースが多いんで、念のため多めにサーチャーを撒いてみた。ダメもとだったんだけど、結果ドンピシャ♪ 見事守護騎士を捕らえることに成功。
 もしも今回ベータちゃん達を逃がしても、また海鳴に網を張れば捕まえられるかも。なら今回の件、意外と早く解決出来るかも。

 いやいや、そんな心配しなくても、今回彼女達を捕らえればOKだね。
 今回はクロノ君、シアちゃんと共に武装隊員一個中隊を送り込んだ。武装隊員の人たちには全員で強層結界を張ってもらっている。
 中隊規模の人数で張っている結界だからそう簡単には破れない、筈。あとはクロノ君たちが頑張れば何とかなるよね。

 でも……
「傷口から血が一滴もでてない……」
 クロノ君の切り札、スティンガーブレード。エクスキューションシフト。ガンマはこれの直撃を受けたはず。なのに健在。ブレードが幾つか突き刺さっているけど平気そう。流石疑似生命体ってとこ?
 でもクロノ君には悪いけど、これってクロノ君じゃあのガンマを倒せないって事なのかな。
 ならシアちゃんが?
 違う! 2人だけじゃない、良いタイミングだよ。
「みんな、頼もしい助っ人が届いたよ!」


☆Side Alicia★


『みんな、頼もしい助っ人が届いたよ!』
 ん、エイミィから通信が来た。

 アタシはクロにぃと一緒に守護騎士退治に出撃中。クロにぃが先制仕掛けたんだけどダメ。エクスキューションシフト耐えられた。
 ……アタシもエクスキューションシフト使うんだけど、アタシの威力もクロにぃのと大差ない。この犬、なんて固いんだ。砲撃チャージの時間は貰えないだろうし、どうしようと考えていた、そのタイミングだ。
 2人じゃ確かに辛いけど、助っ人って誰?

≪シア、結界内に転送あり。下30度、ビルの上です≫
 ん? そっち、ビルの屋上を見ると二つの人影。あれって
「フェイト! なのは!」
 アタシの妹と妹分だ。2人は一瞬こっちを見あげると、手元に視線を戻す。あれって、2人のデバイス?
 直ったの?

 2人はデバイスを掲げ
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディシュ・アサルト!」
「「セットアップ!!」」
 デバイスからの魔法陣が2人を包み込む。それは通常のセットアップとは違って……

 ……おい、、ちょっと、アレってセットアップじゃないよね。デバイスの初期設定シークエンスだよね。てことは改修した後、動作確認しないで来たの? ちょっと無謀じゃない?
「リニス、どう思う?」
≪マリエル女史は優秀、です≫
 あっそ。デバイスがそう判断するならいいか。当てにさせて貰うのさッ。

 いつの間にか向こうはシグナムが合流して3人。……しかしこの結界、外から入る分はフリーだね。
 こっちもアルフが合流してるから文句は言えないけど。
 5対3。これなら勝てるかな。と思っていたら、

「私たちはあなたたちと戦いにきたわけじゃないの。まずは話を聞かせて」
「闇の書の完成を目指している、その理由を」
 あれ、バトルじゃないの? そんな2人に対しベータは、
「あのさ、ベルカの諺にこういうのがあんだよ。和平の使者は槍は持たない、って」
 ……? あれ、確かそれって。
「話し合いをしようってのに、武器を持ってやってくるヤツがいるかってんだ。このバーカ!」
「良いんだけどさッ、いや良くないんだけど。今の台詞って小咄の落ちじゃなかったっけ?」
「ああん、そんな訳ねぇだろ!」
「いや、彼女の言うとおり、それは小咄の落ちだ」
 だよね。年末の隠し芸大会でマリヤが使ったネタだよ。ちなみにあまり面白くはなかった。
 男? 犬?……うん、ガンマと呼んであげよう、ナイスフォローなのさッ。

「……そんなことどうでもいいんだよ!」
 あ、ベータ誤魔化した。

「そう、そんなことどうでも良いの。みんな、手を出さないで。私はあの子と一対一!」
 あの、なのは…… どうでも良いの?
「わたしもシグナムと」
 おい、妹……
「あたしもさ」
 おいこらアルフ、お前もか……

「えーーと」
 アタシとクロにぃが口を挟む隙もなく始まる、一騎打ち×3。
「しかたない。僕とシアはこの隙に闇の書の主とアルファを探すんだ。騎士達が揃っている以上、主が近くにいる可能性は高い」
 クロにぃ、珍しく空気を読むね。なんて事思いつつ辺りを見渡すと、


「私はなのは、高町なのはだよ!」
「だから何だッてんだよ、高町なにょは!」
「あーーっ、なにょはじゃないよ。なのはだよ! ベータちゃん」
「誰がベータだ!、この高町なんとか!」
「なんとかじゃなくて、なのはだよ。ベータちゃん!」
「アタシをベータと呼ぶんじゃねぇっっっっっっ!」
「ちゃんとなのはって呼んでぇっっっっっっっっっ!」
 ……なんか楽しそうだな。色んな意味で

「はぁっーーーーーーっ!」
「たぁぁぁっーーーーっ!!」
「其処です!」
「なんの、まだまだ!」
「うぉぉぉぉーーーっ!」
「ふっ、やるな」
「まだです。今日こそ貴女を倒します!」
「剣の騎士の名にかけて、そう易々と倒されるわけにはいかない!」
「ふっ、ふふふふふっっっ」
「はっ、ははははははっっ」
 ……2人ともなんか嬉しそうだな。これに割ってはいるのって無粋?

「たぁぁぁぁっ」
「おりゃゃゃゃゃゃっ」
「なんの!」
「甘い!」
「うううっっッッッッーーー、ガフガフ!」
「バフバフ!」
「ウーーーー、ワンワン!!」
「ギャンギャン!!」
 ……あれに割って入るのは、人としてどうだろう?

 しかたない、『闇の書』の主はクロにぃに相手して貰うとして、アタシはアルファでも探そ。あの時の借りを返さねば。


☆Side Crono★


「今は待て、いずれそれが正しいと分かる時が来る」
 仮面の男は僕をバインドで拘束するとアルファに向き直った。


 守護騎士をフェイト達に任せ、僕らは捜索を開始。よくよく考えるとこの状況は悪いモノではない。
 僕たちの勝利条件は『闇の書』、もしくはそのマスターを押さえることだ。フェイト達は別に勝利する必要はない。彼女達が騎士達を押さえてくれるなら、僕とシアはこっちに集中できる。

 エイミィとユーノのサポートを受け周辺捜査して数分、僕はそれらしい反応をキャッチした。気付かれないように近づくと其処にいたのは一人の女性。
 緑色の服に金の髪の若い女の人。そして抱えられているのは一冊の本。黒い表紙の魔導書。おそらくアレが『闇の書』だ。
 あの服装は確かなのはが襲われた時にスクリーンに映っていたモノだ。ならアルファなのか?
 彼女が主かアルファかは正しくは分からないが、これで詰みだ。彼女を押さえれば全てが終わる。
 僕はそっと彼女の背後に降り立つと、S2Uを突きつけた。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。『闇の書』の関係者だな。その書を引き渡し、投降して貰おう」
 彼女は怯えた顔でこちらに振り返る。これでやっと終わる。そう思った瞬間だ。

  ドスッ!! 
 
 完全な不意打ちだった。
 どこからか現れた男の放った蹴りに、僕は吹き飛ばされていた。対面のビルにめり込み掛け、薄れそうになる意識を鼓舞し、僕はソレに向き直った。

 茶色の髪に見たことのない白い服。そして顔を隠す白い仮面。怪しい、というか分からないと言うか。
 騎士達の仲間の守護獣に、エイミィはガンマというコードネームを付けた。だとするとコレはデルタと呼ぶべきか?
 一瞬そんな事を考えた僕にデルタは突進し、パンチ。辛うじて避けるがその隙を足で掬われ、はね飛ばされる。しまったと思うまもなくバインドで固定。
 ……? このバインド、オリジナルか? ブレイクしようにも魔力の集中がうまく行かない。

 そして訳の分からない台詞を残し、デルタはアルファに向き直った。
「書を使え」
「え、なに?」
 なんだか様子が変だ。アルファはデルタを警戒している。この2人、仲間じゃないのか?
「ページはいずれ稼げばいい、今はこの場を……」
 デルタは最後まで台詞を言うことは出来なかった。何故なら、

≪Flaze Cannon!≫
 蒼い砲撃がアルファの体を凍り付かせたからだ。


☆Side Alicia★


≪Flaze Cannon!≫
 よし、命中。アルファ仕留めたり♪

 S2Uからエマージェンシーを受けたアタシは現場に急行。相手からはキャッチしにくい距離で一旦停止。様子をうかがった。
 左目を瞑って、右目のズーム機能で望遠、望遠♪
 ふむ、緑の女と白い服の男。て、クロにぃバインドで捕まってる? 負けたの?
 どっちかが敵、それとも両方?
 よく見ると緑が白を睨み付けている様子。味方同士ではなさそうだね。
 ふむ、あの時の念話からするとアルファは女の筈。で白い方は……何、あの仮面? 顔隠したいなら普通に変身魔法使えばいいのに。でも……あの服ってどっかで見たこと在るような。
 えーと、えーと。困った時はコレに聞く。
「リニス、あの白い服、どっかで見たことない?」
≪……検索、……検索。ワタシのデータベース中、類似度が尤も高いのは、旧教導隊男性隊員服になります≫
 おお、それだ。父さんのアルバムにあったんだ。モデルチェンジする前のヤツ。アレ着た父さんが格好良くて覚えてたのさッ。
 てことはあの仮面は味方? 管理局OBかなにかかな?
 ならすることは1つ。と言うことで、アタシはリニスを構えて砲撃したのさッ。


 そんなこんなで アタシはビルに降り立つと、
「クロにぃ、情けないな。で、こっちの人は?」
「シア、危ない!」
 ギリギリのタイミングだった。
 仮面の男の一撃を辛うじて交わす。
「なに、コレ? 敵なの?」
「分からない。だが、騎士達に味方しているのは事実だ」
 ほう、なら敵か。うん、クロにぃがアルファに負けるとは思ってなかったけど、うん、思ってなかったよ、こっちが相手だったのか。
 で、戦うと確かに、強い。魔砲撃てる距離じゃないので接近戦。
 右の拳、受けてよろけたところに蹴り。これは避ける。で、引き足を狙うけど、かわされた。
 牽制の抜き手、弾かれてパンチ。こっちも弾く。
 その隙に魔力スフィア展開。直射弾狙うけど、カード? 男が弾いたカードでスフィアが潰される。

 うーーんと、強い。強いんだけど、なんかアレだ。戦い易い?
 アレだ、何でか知らないけどタイミングが読みやすいんだ。それにコイツの動き、どっかで見たような?
 右腕を引き、インパクトの瞬間、一旦腰を落とす。そうと知ってなければ見落とす動き。
 ……ん? アレって、バリツ?

 一瞬の疑念が隙になった。男は滑るようにアタシの懐に。アタシを背に載せるように、投げ。
 密着し、はね飛ばされるまでに届く、微かな体臭。……これって? 

 投げ飛ばされたアタシはクロにぃ同様、バインドで固められた。そんなアタシに、勝ち誇ったように落とされる言葉。
「何をすべきか、今は考えろ。お前の出番はまだ先だ」
 ……。
 ………。
 …………、へぇ~~っ。


☆Side Crono★


「何をすべきか、今は考えろ。お前の出番はまだ先だ」
 シアに落とされる男の台詞。……シアが負けたのか。
 男として、兄貴分として情けないことだが、数分という短時間に限ればシアは僕よりも強い。魔法戦でも格闘だもだ。持久力に欠けるが、一撃で全てを切り裂く氷の刃。それが僕たちのシアのイメージだ。

 シアも負けたのがショックの様で顔を落としたまま答えない。

 男はそんなシアに満足したようにアルファに向き直った。
 しかし……シアのフレイズ・キャノンで見事に凍り付けになっているな。魔導プログラムとは言え、平気なのか?
 男はなにか声を掛けるが当然の様に返事はない。舌打ち1つすると、なにかカードの様なモノを取り出し、アルファに掲げると……
「なにぃ?」
 アルファを閉じこめていた氷が一瞬のうちに無くなっていた。

「おい、起きろ。起きてページを使え。このままでは貴様らは捕らえられるぞ」
「う、うううううっ、冷たいです。寒いです」
「寝ぼけるな、湖の騎士!」
 男の慌てようからすると、フェイト達はまだ戦闘中のようだ。このまま待っていれば周辺世界に出していた武装隊員達も到着する。そうすれば、やりようもあるか。

 そんな事を考えた僕の前を光がよぎった。あれは魔法の光、魔力素の欠片だ。
 周辺の魔力素が一カ所に集まっていく。その行く先は、

「まさかっ!」
 男も気付いたようだ。魔力の向かう先。それはまるで流星のように……
「逃がさない!」
 シアが吠え、一瞬のうちに男の体をバインドで絡め取る。
 さっきからずっと黙っていたのはコレを狙っていたのだろう。バインドで縛られながらも掲げるリニスの先端には、巨大に膨れた魔力光。
 だがまだ足りない。シアの切り札を撃つには。だからシアは、
「リニス、コンデンサー解放!」
≪了解、魔力コンデンサー、解放≫
 魔力光が一気に膨れあがる。これなら、いける。

「くっ!」
 バインドで固められた男は解こうと暴れ、無理と気付いたのかシアとリニスを見、一瞬僕を見る。そしてもう一度もがく。そんな努力を笑うかのように、
「凍って、砕けろ!」
 シアの詠唱が終わる。だが、
≪ゼロドライブ≫
「甘いっっっっっ!」
 シアのバインドが弾かれた。しかしまだ砲撃を外されたわけではない。僕は男をバインドで止めようとするが、それより速く、シアの懐に入り込んだ男がリニスを跳ね上げた。
「えっ?」
≪ブレィカー!!≫
 発射体勢に入っていた収束砲は止められず、虚空に向け光が伸びる。天をうがった砲撃は、

 -- パリィィィィィィィーーン!! --

 一撃で強層結界を吹き飛ばしていた。

「このぉぉぉっ!」
「待てっ!」
 叫ぶシアと制止する僕、男は僕たちに一瞥を残すとアルファを抱え、何処かへ転送して行く。

 クソっ、今回は僕たちの負けだ。


☆Side ??????★


「あそこでゼロドライブ・ブレーカーが来るとは……ねっ」
「……そうね」
「……」
「しかも、結界破壊効果付きの改良型」
「うん」
「……」
「あのバインド、見かけは固そうだけど実はスカスカだったんだ」
「……みたいね」
「……うん」
「……」
「これってやっぱり……」
「……そうね」
「「ばれた、でしょうね(よね)」」
「拙いよ、どうする」
「どうするって、どうしましょう。取りあえずお父様に連絡しないと」
「そうか、そうだよね」
「取りあえずはあの子に期待。伝言は残したのよね」
「それは勿論」
「なら伝言通り、あの子が考えてくれるのを期待しましょう」


PS1
 立ち位置決定、これで4局。
 このSSを複数視点の一人称にしたのは、本話以降のシアの内面を表現しないためでした。ネタバレになるし。

PS2
 仮面の男の正体にシアは気付いてクロノは気付かない。これは距離感の問題。弟子でも男の子のクロノには彼女たちも気を付けていた、ということ。具体的には香水とか。

PS3
 シャマル、トラウマフラグ2成立、次は指の骨だっけ?



[11860] A's編7話 情報は大切に、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/07/07 20:54

☆Side Alicia★


「という訳だから、フレーム強化するまでフルドライブは使っちゃダメだよ。特にレイジングハート」
 エイミィの言葉にフェイトとなのはは「はい!」と元気に答えた。

 昨日の一戦が終わってミーティング、というか2人の新しいデバイスに付いての説明会。でもこういうモノって使う前に説明するもんじゃないの? まあそれは置いといて……
 レイジングハートって、なんで形状変換する必要があるんだろう?

 バルデッシュは、まあ分かるよ。形状毎に攻撃方法が変わってくるから。最近の訓練でフェイトが覚えた魔法、それを活かせるような形状に変形するみたいだからね。

 でも、なのはの魔法は射撃と砲撃、これだけだよね? 形変える意味ってあるの?
 射撃はスフィアが起点だし、砲撃だってデバイスのフレームに依存する訳じゃない。外部魔法陣と仮想バレルで撃つ訳だから、砲撃用の形態なんて必要ないんじゃない? 
 砲撃オンリーの特化型、キャノンモードなんていうのが在れば別だけど、実際戦闘するなら射撃と砲撃は同じ頻度で使う。
 だったら瞬間的に内部パラメータ変更して、モードを切り替えれば良いじゃない? 実際リニスはそうしているし。
 まあ砲撃する時、トリガーとグリップくらい在れば便利かな、と思わなくもないけど。

「実際、そこのところどうなってるのさッ?」
 便利な専用サポートメカに聞いてみると、
≪レイジングハートは祈祷型デバイスです≫
 そんな答えが返ってきた。
≪祈祷型デバイスの魔法は使用者のイマジネーションに左右されます。使用者が強い魔法だと思えば思うほど威力を増していきます≫
 ふむ。術者のメンタルの問題なのね、つまり、
「それって所謂『戦いはノリが良い方が勝つ』ってヤツ?」
≪大体そんなところです≫

 と、視線を感じて目線を上げると、
「あはははは」
 困った顔をしたエイミィと、なんとも言いようのない顔をしたなのはが居た。
 あはははは、なんか居心地悪い?

  -- PiPi --

 そんな処に着信音。おお、ナイスタイミング。一応断って通信にでると、
「あれ、マリヤじゃない?」


☆Side Amy★


 あはははは。
 確かになんでレイジングハートって形状変換するんだろう。なのはちゃんの魔法は射撃と砲撃がメイン。フェイトちゃんのバルディシュの様に、接近戦と遠距離用にモード切り替えが必要な訳じゃないのに。
 現にクロノ君のS2Uも、管理局最新デバイスのリニスも形状変換はしないね。リニスなんて形状変換しなくても、普通に突撃技のACSなんて使うし。
 おし、あとでマリーに聞いてみよう
 ……本当にノリだって言われたらどうしよう。で、

「はあ? 『闇の書』の捜査資料が欲しいって?」
 お友達らしい子と話していたシアちゃんが声を張り上げた。て、『闇の書』!? あっ、クロノ君が変な顔した。
「『闇の書』の資料なら公開データにある筈だけど」

 うん、公開している筈だ。
 今どんな事件が起きているか、誰が捜査してるかは管理局のデータベースである程度公開している。ただし捜査資料なんかは普通は非公開だよ。
 だけど『闇の書』事件のように広範囲で起きている事件は違う。別の事件を追っている執務官なんかがその事件と出会すなんて良くあること。そんな時、混乱しないように事件の在る程度の情報は公開されているんだ。
 今の『闇の書』事件でも、自然保護官からリンカーコアを抜き出された保護動物の情報が来たりしてるし。

『そうなんだけど、最近更新されてないようで……』
 マリヤちゃんの言葉にシアちゃんがわたしをジトっと見る。えっ、何、その目?
 クロノ君もリンディ提督も咳払いするの止めて。わたしはちゃんと本局に上げてるよ。更新されてないなら本局の事務の所為だよ。

「んーーーーーーーっ」
 シアちゃんは何か考え込んで、
「エイミィ、これマリヤに渡して良い?」
 と、データを渡してきた。開いてみると『闇の書』の資料。あれ、これってわたしが作ったんじゃないよ。
「うん、色々気になるんで、アタシなりに事件を纏めてみたんだ」
 へーーーっ。うん、凄く上手く纏まってる。シアちゃんこの件、真面目に取り組んでるんだな。もしかして昨日、デルタに負けたの根に持ってるのかな?
 取りあえず資料をざっと見て、次にマリヤちゃんのセキュリティ権限を確認。権限によって渡せる情報のレベルが違うんだ。
 本局のデータベースからマリアちゃん……マリア・キャンベルのデータを要求する

「で、『闇の書』の資料なんてもらってどうするのかな? 『ベルカの騎士』、様」
『自分としても、この事件色々と気になることがあるんだ』

 ……えっ! ベルカの騎士っ? 
 ああ、そうか。シアちゃんの友達で聖王教会の騎士ってこの子の事なのかな。
 あの『闇の書』の騎士達もベルカの騎士って名乗ってたっけ。そっか、現役のベルカの騎士としては、その名を語って犯罪犯しまくる『闇の書』の騎士って、気になる存在なんだ。なんか嫌な予感がするな。で、おっと、回答着た。

 うわっ、この子、本当に嘱託? 妙に権限高いよ。シアちゃんと同じくらい? 同じ嘱託で、実際に捜査に関わってるフェイトちゃんより上だ。
 ちらっと個人情報、公開情報だよ、見てみると確かに聖王教会の人。で、準騎士? 騎士見習いってことなのかな?
 ついでに言うとかなり偉いお家の出身。世が世なら貴族様というヤツだね。で、……むっ。
 そうか。なら、この子の事はマリアちゃんじゃなくて、マリヤさんと呼ばなくては。
 取りあえずマリヤさんの権限ならこの資料見せてもOK。なんだけど……騎士様、か。面倒なことになるかも。
 で、クロノ君を見る。なんか分からなそうに首を傾げる。
 リンディ提督を見る。軽く微笑むように首を横に振る。そうですか、止めないんですね。送ってOKですなんですね。わたしは知りませんよ。
 なんでシアちゃんに頷く。それを受けてシアちゃんがリニスを操作。

「ん、送ったよ。でもマリヤ、ベルカの騎士といってもアンタが気にする事じゃないよ。アレは人間じゃなくてモノなんだから」
『モノ?』
「そう。アレは疑似生命体、魔導プログラムというヤツなのさッ」
『魔導プログラム、聞いたことがある。古代ベルカのロストテクノロジー』
「そう、だから……」
『でも、自分はベルカの騎士だから』
 それにシアちゃんがフン、と微笑む。
 わたし達には見せない、おそらく友達だけに見せる暖かい笑顔。そんな顔が出来るシアちゃんが嬉しくて、少しうらやましい。

『兎に角、今日はありがとう。助かったよ、シア』
「アナタの為に、特別に♪ なのさッ」
 あの、シアちゃん。それって色々ギリギリな台詞だよ。


「さて、今シアが言ったように『闇の書』の騎士達は疑似生命体だ」

 シアちゃんの通信が終わると、クロノ君ががおもむろに切り出した。それを聞いたフェイトちゃんが顔を曇らせ、それに気付いたシアちゃんが動く。
「疑似生命体って、わたしみたい……痛っ!!」
 フェイトちゃの言葉の途中、シアちゃんがフェイトちゃんの頭を思い切りぶん殴っていた。

 涙目で見あげるフェイトちゃんの視線を真っ直ぐ受け、
「アタシ達は人間だよ。疑似生命体なんてニセモノじゃない、れっきとした生き物、人間だ!」
「そう、その通りよ。フェイトさんもシアも少しみんなと違う生まれ方をしただけ。ちゃんとした人間ですよ」
 シアちゃんの言葉を、リンディ提督が引き継ぐ。で、
「シアもフェイトさんを諫めてくれるのは良いんですけど、直ぐ暴力に走るのはいただけませんよ」
「だって、何時もクロにぃが……」
 ああ、今のシアちゃん、誰かと重なったと思ったらクロノ君だ。クロノ君ってさりげなくシアちゃん殴るからね。だから取りあえず、
「「クロノ(君)、女の子に暴力禁止!!」」


☆Side Fate★


 あの人に殴られた頭が痛い。でも心は……痛くない、というより暖かい。あの人が本当にわたしの事を思って撲ったのが分かるから。

 あの人は本当にわたしの事を気遣ってくれる。それは嫌な気分ではない。ううん、それが本当に嫌なら、わたしは別の意味で人間じゃない。
 わたしは多分、あの人のことが好きなんだ。

 あの人に対するわだかまりが消えた訳じゃない。それにわたしはずっとあの人を無視するような、傷付けるような態度を取ってきた。だから、今更どうしたらいいのか分からない。
 なのでわたしは、傍にある優しい温度にまだ触れられずにいた。本当はその横顔に心解きたいのに……


☆Side Crono★


「もーーーっ! フェイトは兎も角、なのははなんか納得できないって顔ね。じゃあエイミィ、『アルファの手』のデータ出して」
「え? ああアレだね。ちょっとお待ちを」

 シアの要求にエイミィがボチボチ操作すると、スクリーン上に画像が浮かぶ。
 それは一本の腕だった。なのはが襲撃された日、シアが切り落としたアルファの右腕。それは透明なカプセルに入れられ、保管されている。

「これじゃ分かりにくいから、早回しするよ」
 エイミィの声とともにスクリーン上のクロックがみるみる動き出す。同時に、
「えっ?」

 安置されている腕、ソレが砂で出来た置物の様に端から崩れていく。
 崩れた欠片は光の粒となり、虚空へと消えていく。
「詳しい原理は分からないんだけど、形を保てないで魔力素に還元されてるらしいんだ」
 エイミィの台詞の間にも崩壊は続いていく。完全に崩れた後、其処に残ったのは1つの指輪。それもパリンという感じで割れ、砕け、宙に消えていく。

「分かったフェイト? 人間じゃないって、こういうモノの事を言うんだよ」
 流石にフェイトも顔を青ざめ頷いた。
「そうだねぇ。あたし達使い魔も魔法生物、って言うヤツなんだけど、流石にこれはねぇ……」
 そうだな。これがアルフの場合、普通に犬、じゃなくて狼の前脚が残っている筈だ。
「そうだよねぇ、使い魔でもこんな感じには…… あれ?」
 シアがなにか口籠もった。
「ん? 使い魔? ねぇ、アルフ。使い魔ってどうやって存在してるんだっけ?」
「姐さん、今更何言ってるんだよ? あたしはあたしのご主人様、フェイトの魔力を貰って生きてるんだよ」
「だよねぇ……」シアはここで首を傾げた。「あれ、ん? じぁ……ああ、そういうこと、か」
 ? どうかしたのか?

「クロにぃ、リンディ姉さん。この戦い、もう使い魔組は出さない方がいいと思う」
「えっ?」
「ん? 何故だ?」
「使い魔って、魔力で体を維持してるんだよね。もしアルフとかが蒐集されたら……」

 ……ああ、そういうことか。
 使い魔にもリンカーコアはある。ただし魔導師のコアと違って、大気中の魔力素を吸収する能力は弱い。
 このため使い魔は主人から供給される魔力が全てだ。
 使い魔のコアは魔導師のコアと違って比較的大容量であり、多めに魔力を蓄積できるらしい。この為主人からの魔力供給が一時絶えても、在る程度自身を維持することが出来る。だけど、

「使い魔ってのは、自分のリンカーコアに蓄えた魔力で自分を維持してるのさッ。だけど、もしも……」
「そうか、もしもアルフやユーノが蒐集された場合、自身を維持できなくなって……」
「最悪、消滅するかもしれない」

「えっ! ユーノ君、死んじゃうの!」
 なのはが怯えたようにユーノに抱きついた。そう、ユーノのコアが奪われて、同時になのはのコアも奪われるか、魔力供給が出来ないくらい遠くにいたら……

「……なのは ん? おい、ちょっと待て! 僕はなのはの使い魔じゃ無いぞ!」
「「「「えっ?」」」」
 フェレットもどきの言葉に、僕達は目を丸くした。
「おい!」
「はいはい、分かってるのさッ」
「そう、場を和ませる軽いジョークじゃないか」
「そうそう♪」
「君たち、ぜったいわざとだろう」
 何を言う。僕は本気で場を和ませてるつもりだ。

 で、もう一組の使い魔組はと言うと。
「アルフ」
「大丈夫だよ、フェイト。アタシはフェイトの使い魔だよ。簡単にやられりゃしないさッ」
「でも……」

 うん、こっちは普通に心配しあっている。大丈夫だ、アルフ達にはやってもらいたい事がある。
「そういうことならちょうど良い。実は使い魔組にはやって欲しいことがあったんだ」
「使い魔『組』って、さりげなく僕のことも入れてるでしょ?」
 ははは、考えすぎだよ、フェレットもどき君。


☆Side Yuno★


「で、僕たちに会わせたい人って誰だい?」
「ああ、君は初めてか。アルフは……知ってるはずだ」

 僕とアルフの2人、使い魔組ではないぞ、はクロノにクラナガンに連れてこられた。ある人達と会って今後の相談をするとの事だ。
 ミッドチルダの首都、クラナガンに来たことは在るけど、管理局、それも中央本部に入るのは初めてだ。クロノ自身もこの場所に慣れていないようで、時々案内図を参考にしている。どっちかって言うとアルフの方が慣れてるっぽく、堂々としている。まあこの中じゃ、見た目アルフが一番年上なんだけどね。

「ここか」
 言うと二回ノック、ドアを開ける。
 中にいたのは2人の女の人。ソックリの綺麗な人たち。ただしネコミミ、尻尾付き。使い魔?
「おお、クロ助、アルフ。久しぶり」
「ああ」
「あっ、姉さん達、久しぶり♪」
 アルフが嬉しそうに駆け寄り2人と軽くハグ? で、誰?

「彼女たちはグレアム提督の使い魔のリーゼロッテとリーゼアリアだ」
「よろしくぅ」
「よろしくお願いします」
 グレアム提督? たしかシアの義理のお父さんだよね。なるほど、フェイトもグレアム提督に引き取られる予定と聞いた。ならフェイトの使い魔のアルフも当然グレアム提督の家に。だからこの人たちはアルフの『お姉さん』なのか、納得。

 で、揃ったところでクロノの説明を聞くと、
「無限書庫?」
 噂に聞いたことがある。管理局の全ての知識が詰まった図書館、いや資料庫のようなものがあると。
 僕たちスクライアの人間など、研究者にとって垂涎の情報の宝庫だとか。ただし、
「そこって資料放り込むだけで、全然整理されてないって聞くんだけど」
「ああ、局も人手不足だからな」

 ……人手不足というのは言い訳じゃないかな。管理局で不足しているのは優秀な『魔導師』だ。局にも非魔導師は一杯いる筈。彼等を回して整理させればいい。
 結局、管理局はこういう資料整理とか地道な目立たない仕事をおろそかにしてるって事じゃないのか。
 うーーん。だとすると、今度うちの長老とかと相談してみよう。資料整理する代わりに閲覧ができるなら、スクライアとしても美味しいかも。

「で、そこで『闇の書』の資料を探すのはいいとして、何故彼女達の処に?」
 素直に書庫に行けばいいのに?

「資料探しするにも外部の者を書庫に入れるには色々と面倒でね。彼女達は局のあっちこっちにコネがあるからそのコネを借りようと」
 コネ、ね?
「ああ、提督の使い魔の彼女達は局でも古株でね。色々顔が広いんだ」
「……古株? それってどういう意味なのかな、クロノ」
 クロノの顔がピクッと引き付いた。そうか古株って事は…歳が……
「ユーノ君。なにか失礼なこと考えませんでしたか?」
「いえ、滅相もありません」
「よし、ではロッテ」
「OK、アリア♪ こういう場合、シアが言う『お話』するんだよね」
「はい、よろしく♪」
「ち、ちょっと待ってくれ!」
「行ってらっしゃい、クロノ♪」
「ロッテ姉さん、クロノ壊さないでね」

 僕とアルフとアリアさんに見送られ、クロノはロッテさんに何処かに引っ張られていった。『お話』か、別名なのは流と言うとか言わないとか。

「さて、ユーノ君。無限書庫の件は分かりました。わたしの方で話を通しておきます」
「ありがとうございます」
「姉さん、よろしくお願いします」
 僕とアルフはアリアさんにお辞儀。礼儀は大事だね。
「はい。で、ね」
 アリアさんはここで困ったように口籠もった。
「なんですか?」
「代わりというわけじゃないんだけど、スクライアに、あるロストロギアの情報が無いか、聞いて貰いたいの」
「ロストロギアですか?」
「そう、ある事件に必要でずっと探してるんだけど、見つからなくて」
 うーーん、それくらい長老に話しを通せばいいかな?
「はい、分かりました。なんとかなると思います。で、そのロストロギアはなんて言う?」
 僕の答えに、アリアさんはクロノには黙っておいてねと口止めすると、安心したように微笑んだ。
「ロストロギア・スターシーカー。強力な、クラッキング用ツールよ」


PS1
 フェイト、デレ期寸前。
 あれ、フェイトってシアオンリーのツンツンキャラだから、もしかしてツンデレ?

PS2
 Stsではヴォルケンズと聖王教会は和解している。
 だけどA'sの時代だと色々あるのでは? 時代劇風にいうなら、ヴォルケンズは流派の名を語りながら辻斬りをやっているようなもの。勢力低下を嘆く現役ベルカの騎士にとって目の上のこぶじゃない?

PS3
 SSでは良く、管理局って一派一絡げに『人手不足』にされるけど、不足しているのは優秀な魔導師だけでは? 事務方の人間なら非魔導師であれば確保できるかと。確保できないなら『人手不足』じゃなくて『予算不足』?




[11860] A's編8話 激突!! ベルカの騎士対ベルカの騎士、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/08/23 19:46
☆Side Nanoha★


 朝です。なので今日は『フェイト』ちゃんと通学です。
 バス停で待つこと数分、時間通りにやってきたバスに乗り込みます。
 さてと、あ、居た。
 スクールバスの一番後ろ、いつもの指定席にアリサちゃんとすすかちゃんが。だから、
「おはよう。アリサちゃん、すずかちゃん」
「おはよう。なのは、フェイト」
「なのはちゃん、フェイトちゃん。おはよう」
 私たちの朝の挨拶です。それに続いて『フェイト』ちゃんが、

「おはよう。アリサ、すずか」
と続けます。そして座席について、いつものようにバスが動き出すのですが、
「ん?」
 変な顔してアリサちゃんが『フェイト』ちゃんをのぞき込みます。えーーーと。

「どうしたの? アリサ」
「ううん、なんでも? て、ん? んんんんんん?」
 食い付くようにアリサちゃんが『フェイト』ちゃんを見詰めます。えーーと、バスが動いてるんだから、そんなに顔近づけると危ないよ。あれ? 外国の人?はそんなこと気にしないのかな?

「アンタ、……フェイトじゃないわね!?」
「えっ?」
「えぇっっっっっっっっっっっ!!」
「えっ?」

「ほら」
 このバカ、という風に『フェイト』ちゃんが一瞬私を睨みます。でも私の所為じゃないもん。  ちゃんの所為だもん。
「そんな。アリサは、私がニセモノだって言うの?」
「だってね~」アリサちゃんは『フェイト』ちゃんの頬をピタピタ叩き、『フェイト』ちゃんの髪をツンツンと引っ張り、『フェイト』ちゃんの眼をのぞき込んで……

「分かった。アンタ、アリシアでしょ!!」
「えっ?」
「えぇっっっっっっっっっっっ!!」
「……なのは、アンタ驚き過ぎ」
「ほら、当たりじゃない!」
「ううう、なんで分かったのさッ?」
 バスの椅子にすがりつくように『フェイト』ちゃん、もとい、シアちゃんが泣き真似?します。

「ほら、アレよ」そんなシアちゃんにアリサちゃんは得意げに指を立てます。「アンタにはフェイト特有の守ってあげたいオーラというか、天然ぽさっていうか、そういう萌え系オーラがないのよ」
「萌え系か、流石バーニングちゃんは言うことが違うのさッ」
「あたしをバーニングちゃんと呼ぶな! それにも1つ。フェイトの一人称は”わたし”よ。”私”じゃないわ!」
「あああっ、そうだった。アタシとしたことが、しまったぁ!」
 ガックリ膝を落とすシアちゃん。でも、シアちゃんにアリサちゃん、それって色々メタだよ。


「でも、アリシアちゃん。今日は何でフェイトちゃんの代わりにアリシアちゃんが制服着てるの?」
 それはね、すずかちゃん。
「フェイトは今日、家の都合でお出かけなんだ。それてアタシが身代わりにと」
「身代わり?」
「そう、出席日数かせぐのさッ」
「……本音は?」
「なはははは、アタシも実は日本の学校に興味あったんだい♪」
「ああ、そういうこと」
「納得した」

 シアちゃんの説明? にアリサちゃんとすずかちゃんは納得したようです。
 確かにフェイトちゃんは今日はお出かけ、ミットチルド?で行われる裁判に出るためです。クロノ君も一緒で、向こうでユーノ君とアルフさんも合流するとのこと。
 今日の裁判が無事に終わればフェイトちゃんの件は取りあえずお終い。あとはプレシアさんの裁判だけになります。

 フェイトちゃんが居ないからって、代わりにシアちゃんが学校に来るって言い出したのは驚きましたが、これはこれで良いのかな?
 シアちゃんは地球の人に壁を作ってあまり仲良くしていません。それは私も一緒で、何度か遊んでいるアリサちゃんやすずかちゃんも同じ。でも今日はなんだか仲良しです。普通に名前で呼んでるし。

「でもアリシア、一度聞いときたかったんだけど、アンタとフェイトってどういう関係なの?」
「そうそう、ソックリ過ぎだよ」
 シアちゃんの話をするとフェイトちゃんが微妙な表情をするので、二人はこの辺フェイトちゃんから聞いていません。なので代わってシアちゃんが、
「ん、アタシ達? 従姉妹なのさッ」
 ああ、そういえばそういう設定でした。
「親戚なの? でもそれにしたって……」
「母親同士が双子なの。ついでに言うと一卵性……ってわかる」
「ああ、そういうことね」
「じゃあ、2人は姉妹みたいなモノ。だからアリシアちゃんはフェイトちゃんの事、妹って言うんだね」
「そうことなのさッ。天然さんだけど仲良くして欲してやってね♪」

 「「「勿論!」」」


☆Side Mariya★


 ザクっ
 騎士甲冑の足下で砂が鳴く。
 闇が支配すべき暗い夜を、2つの月が柔らかく照らす。砂を洗う波の音。目の前に広がる海原に、無粋な人造物の影はない。

 ここは未開の管理外世界。97、現地名地球から個人転送で移動できる範囲内にあり、あの『闇の書』の騎士が何回か目撃されている世界だ。
 アリシアから貰った情報を元に、自分や親しい騎士で分析し、『闇の書』の騎士が現れそうな処をチョイスした。ここがその1つ。
 本来自分達のようなベルカの騎士、正しくは正式な称号を受けていない準騎士が、好き勝手に管理外世界を移動することは出来ない。審査とか申請が必要だ。
 ただし今は特別。
 聖王教会の上層部、グラシア家が中心となって、あるロストロギアを強力に調査中だ。その一環として自分達、手空きの騎士も動員されている。この為ロストロギア探しに託けて、堂々と管理外を彷徨くことができる。

 『闇の書』の騎士といえば地球に出没することが多いらしい。ここの調査が終わったらあそこに行くのも良いだろう。文明レベルが高いため入界審査が厳しいが、向こうにはシアがいる。現地に居る友人に会いに行くという口実なら許可も通るだろう。

 そのためにもまずこの地での調査だ。ここで彼等は現地の魔法生物を狩っているらしい。だが、それだけかどうかは分からない。魔法生物を狩る魔導師もいるし。単独行動する彼等は、そこそこのランクを持っていたりする。

 …………

「其処の処、どうなんですか?」
 いきなり後ろに湧いた気配に、振り向きもしないで尋ねる。
「どういう意味かわからんな」
 それもそうか。だから自分は背後の人物に振り返る
 白と赤をベースにした騎士甲冑、後ろで止めたピンク色の髪。『闇の書』の騎士、その将。名前は確か……
「ヴォルケンリッターの将、騎士シグナム。済まぬが貴公のリンカーコア、いただいていく」

「……それは無理な相談です」
「どういう意味だ?」
「貴様は此処で、自分に倒されるからだ。この、…………ベルカの恥さらしめっ!!」
「なにっ!」
 自分はティルビングを抜き、構える。
「自分はベルカの騎士、マリヤ・キャンベル!
 ベルカの騎士を名乗り、罪無き者を傷付ける貴様ら『闇の書』の騎……、魔導プログラム。今を生きる我々ベルカの騎士は貴様らを絶対に許さない!」

 シグナムは一瞬怯み、顔を歪ませ、そして最後にニヤリと笑って見せた。
「ほう、現代のベルカの騎士か。古代ベルカに端を発する我らヴォルケンリッター。その挑戦、受けよう」

 ああ、見せてやる。自分の覚悟を!


☆Side Alicia★


 国語。ミッド人のアタシには日本語は必要ないな。
 算数。バッチグー♪
 理科。問題ない。
 社会。歴史は得意だよ。特にベルカ戦争終わりは色々にぎやかで。
 昼食。焚いたライスは苦手です。パンが良いの。
 体育。すずかって何者? なのはって萌え者?

 さて、そろそろ学校も終わりか。今日は何事もなく無事に済みそうだね。
 フェイトがミッドで、アタシが学校。
 さっきアリサ……、バニングスちゃん達にはああ言ったけど、勿論嘘だ。
 これはなのはの護衛のため。勿論本人には内緒。なのははこういう気の使われ方嫌がるからね。
 で、気を抜き掛けたところに、

(-- PiPiPiPi --)
 念話、警報?

(≪ティルビングから直接通信が来ました。現在『闇の書』の騎士と交戦中≫)
 ……あのぉ、バカぁっっっっっっっ!

 何か嫌な予感がしたんだ。マリヤは真面目で融通が利かないから一人で突っ走りそうって……。あっちに騎士達がいるなら、なのはは大丈夫だね。よし。
「先生、お腹痛いんで早退します」
 アタシを手を上げ、教師に挨拶。鞄をもって教室を飛び出す。
「えっちょっと、シ……じゃなくてフェイトちゃん?」
「なのは、後でね」
 取りあえず追ってくるなのはは無視。

(リニス?)
(≪はい、留守番のエイミィには連絡しました。あとは……≫)
 オッケー。アタシはリニスがサーチしてくれた空き教室に飛び込む。そしてリニスの演算能力にモノを言わせた高速転移魔法陣展開。

 アリシア、行きま~~~すっ!!


☆Side Signum★


「紫電っっっっ」
「獣牙っ」
「「一閃っっっっっっっ!!」」

 私とマリヤの最後の技が交錯する。
 マリヤの剣戟でレヴァンティンにヒビが入り、脇腹の激痛に膝が挫けそうになる。しかし私は膝を付くわけにはいかない。何故なら、

「……糞ッ」
 ドサっ。
 私の背後で相手が倒れ込む音。アレに見苦しいところを見せる訳にはいかない。

 久々に胸躍る戦いだった。
 単なる戦闘力で言えば、大魔力の後押しを受けたフェイト・テスタロッサの方が上だろう。ただし純粋な剣戟、そしてそれを支える気迫に於いて、マリヤは彼女の数段上を行く。
 今後成長し、体が出来て行くに連れ、その強さは順次増していくことだろう。
 古いベルカの騎士として、現在にもこのような騎士が育っていることは歓喜に堪えない。
 ……いや止めよう。我らは主のためといいながら凶刃を振るう者。ベルカの騎士の名を汚す次元犯罪者だ。今更先達顔されても彼等は…


 ……
 …………

 --- Anderung ---
 ≪.....OK≫

 ……………………

 ……………………

 --- Rebooten ---
 ≪.....OK≫

 ……
 …………
 ………………
 …………
 ……
 …いベルカの騎士として、現在にもこのような騎士が育っていることは歓喜に堪えない。
 ベルカの先達として誇りに思う。

 だが、今はそんな時ではない。
 同じベルカの者として慚愧に堪えぬが、主はやての為、そのリンカーコア貰っていく。

 私がマリヤに向け歩き出そうとした時、その足下が爆発した。そして飛び込んでくる叫び声。
「マリヤぁっっっっっっっっっ!!」
 それは魔杖を掲げたアリシア・グレアムだった。


 嵐のように突き刺さる射撃、私は溜まらずバックステップ、後退って距離をとる。
 その隙間にマリヤを庇うようにアリシアが飛び降りてきた。その時既に彼女のデバイスはピッタリと私の胸に向けられている。

 正直拙い状態だ。アリシア・グレアムはフェイト・テスタロッサとは違う。
 ヴィータに向けたオーバーキルな火力といい、シャマルを一撃で落とした凍結砲撃といい、アリシアには我々に対する躊躇いがない。
 フェイト・テスタロッサが我々を止めようとしているのなら、アリシア・グレアムは我々を潰しに来ている。
 いや、アリシア・グレアムだけでない。もう一人の白い少女、ヴィータ曰く高町なんとか、彼女もまた我々を潰しに来ている。その為の、あの強力極まりない砲撃連射だ。力量差があるため直撃は受けていないが、当たれば我々は、おそらくザフィーラ以外、一撃で落とされても不思議はない。
 更に高町なんとかの場合、こちらを煙に巻くためか、やたらとお話お話と言ってくる。それに調子を狂わされるほどこちらも甘くはないが、やりにくいことはアリシア・グレアム以上だ。


「さーてと、シグナム。良くもアタシの親友、いたぶってくれたね」
「親友?」
「そうさ」
「そうか」
 意外な、しかし私にとり最悪な関係だ。家族、仲間、友が傷付けられた。その敵を討つ。それは戦うのにとてもシンプルで、十分すぎる理由だ。
 そして私はアリシアに勝てるのか?
 完全な状態なら問題はない。一対一でベルカの騎士に負けはない。……ベルカの騎士同士の場合は別だが。
 連戦。マリヤに勝ったとはいえ、ダメージは深い。カートリッジも残り少ない。念話は入れたがそれまで持つか分からない。
 逃げるのは論外だ。戦って、勝った。そのマリヤのコアを残して逃げることはあり得ない。
 さて……

「さて、前にベータにも言ったけど……腕の二本や三本、覚悟するのさッ!」
 アリシアはニヤリと獰猛に嗤い、そして、
「ま、……待って、くれ」
 動きを止めた。

 声の主は地に伏していたマリヤ・キャンベル。
 マリヤはアリシアに縋るように立ち上がると、立ちふさがる。
 私をアリシアから守るように。

「……マリヤ、これは一体なんの真似かな?」
「シア、済まない。ここは引いてくれ」
「…………なんで?」

 アリシアがいぶかしげに眼を細める。マリヤの表情はこちらからは見えない。
「これは自分とシグナムの勝負だ。そして自分は、負けた」
「騎士同士の勝負ってこと?」
 アリシアの口元が怒りと苛立ちで歪むのが見える。マリヤを睨み、そしてこちらを睨み付けてくる。
「騎士、ベルカの騎士なんて名乗ってもソレは単なる魔導プログラム、人間どころか、生き物ですら無いんだよ!」
「関係ない」
 マリヤが言い切る。しかし、
「シグナムが何だろうと、関係ない。自分は、自分がベルカの騎士なんだ!」

 なにかが突き刺さった気がした。
 騎士同士の礼を守るためではない。騎士として自分の矜持を守るためにと言っている。
 この場にあって、マリヤにとって私は同胞たるベルカの騎士ではない。その銘を汚す、単なる犯罪者なのだ。
「マリヤ、アンタねぇ!」
「……ごめん、アリシア。 Meine Dame」
 マリヤの呟くような一言に、アリシアは一旦眼を瞑り、溜息を漏らし、マリヤを見、私を火の付いたような眼で睨んだ。そして表情を緩める。
「まったく、アタシ……私の騎士様は、強情だね」
「迷惑、かける」
「全くなのさッ、貸し1つだよ」
「了解」

 二人して笑いあうと、
「ほら、胸張れ、騎士様」
 アリシアはマリヤに肩を貸すと体をこちらに向ける。
 マリヤの方が背が高いから寄りかかる形になるが、それでも両の脚で立ち、胸を私にかざしてみせる。
「やれ、シグナム」
 歯を食いしばり、敵意を隠さず、マリヤは私を促す。だから私は、レヴァンティンの柄元をかざし、

    ≪Sammlung≫


☆Side ??????★


「あらあら。アリシアお嬢様も、結構お甘いようで」
「いや、違うぞ」
「あら、そうなのですかぁ?」
「私はアリシアお嬢様を見直した。あの歳で戦士の心根が分かるとは見上げたものだ。流石ドクターのご友人であられる」
「……あの歳って、お嬢様の稼働時間ってお姉様と大差ないんじゃありません?」
「関係ない」
「そう……、おやぁ?」
「あれは?」
「ミッド式の転送魔法陣ですわね。管理局の増援でしょうか?」
「ん、誰か飛ばされてきた。たしかあの白い少女は……」


『シアちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! マリヤさぁぁぁぁぁん!』


「確か、アリシアお嬢様のお仲間の魔砲少女ですわね」
「さて、どうなるか…… む、伏兵?」
「のようですわね。あら、殴り飛ばされましたわ」
「更にバインドだと」
「増援を狩るために張っていたようですわね」
「……気に入らんな」
「あら、お姉様。どちらへ?」
「マリヤ殿とアリシアお嬢様の心根を見た後、この状況は許せない。サポート、頼むぞ」
「あらあら、仕方ありませんわね。IS・シルバーカーテン、発動」


☆Side Alicia★


「シアちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! マリヤさぁぁぁぁぁん!」


 蒐集され、縮んでいくマリヤのリンカーコア。今にも倒れそうになりながら騎士の意地で胸を張るマリヤを支えるアタシ。それを無言で見つめるシグナム。
 そんな中、頭上に光が。
「あれは」
≪ミッド式転送魔法陣。個人転送でない。転送ポートのものです≫
 てことはアースラ組?
 見つめるアタシ達の視線の先に一人の少女が吐き出される。なのはだ。しかし、

 今は一応停戦中の筈。ここで手を出したらアタシ達が悪者だ。仕方ない、なのはを止めるか。
 で、念話を送ろうとしたその時だ。

「てぇぇぇぇぇぇぇい!!」
 ガタイ男、ガンマが何処からか飛び出してきた。ガンマはそのままなのはに飛びかかる。
「に、にゃゃゃゃ?」
 突然の事になのはは意味不明のことを叫んで、
≪protection≫
 レイジングハートがオートでバリアを張る。しかし、
「でぇぇぇぇぃ!」
 あれはバリア・ブレイク? レイジングハートが張ったバリアを撲ち割り、なのはが吹き飛ばされる。その途中で宙に停止。あれはバインド。
 そして捕まったなのはの後ろに緑の人影。あれは……アルファ!

「シグナム!」
 アタシは魔導プログラムに怒鳴りつけた。
「増援が来ると思って、それを狩るために罠を張ったね!」
 確かに厳密に言えば停戦中ではない。守護騎士が他のみんなを襲おうと文句を言える筋合いではない。でもこの状況で、ここで襲うのは色々違う。心根とか、矜持とか、お約束とか。

「い、いや。ちょっと待ってくれ」
 勿論待ってなんかやらない。
「リニス、ジャミング開始!」
≪了解≫

 リニスにインストールされた魔法プログラム。いつの間にか外れていたプロテクト領域には、ちゃんとリンカーコア干渉用の術式群が存在していた。それを解析、組み上げたのがこのリンカーコア蒐集妨害用のジャミングプログラムだ。
 シグナムの剣から、マリヤのコアに伸びるパスを破壊。そして思い切り後退る。マリヤのコアが自然に胸の中に戻るのを横目で見ながら、シグナムを睨み付ける。
「こういう時って、なんて言うんだっけ? 堪忍袋の尾が切れましたわ、だっけ?」
「ち、ちょっと待ってくれ。いまシャマルたち…… 待て! なんだアレは?」
「ん?」

 用心しながらもシグナムの視線を追ってみる。そこに在ったのはバインドに捕らえられたなのは。なのはの胸元に手を突っ込んでいるアルファ。イヌ耳のガンマ。そして、
「なに、あれ?」

 女の人だった。いや女の人達だ。十人以上の女の人達が守護騎士達に飛びかかっている。
「なにあれ? アンタ達の仲間?」
「いや違う、管理局の人間じゃないのか?」
「馬鹿言わないで! 管理局の人間があんなはしたない恰好で彷徨くわけないじゃない!」
 プールとかスポーツジムなら分かるよ。でも、あんな体にピッタリとしたボディスーツというか、レオタードというか、全身タイツ? 着て外出るなんてまともじゃないよ。

 アタシとシグナムが怒鳴り合っている中、女の人たちが守護騎士に飛びかかる。
 先頭にいたハンマーを持った人がガンマに殴りかかり、しかしガード。返す手でお腹のあたりを殴られるが……
「消えた?」
 幻のようにその人の姿は宙に消えていた。転送、じゃないよね。

「これは、幻影魔法か?」
 シグナムの呟きが耳に入る。幻影魔法?
 気になるがいまはソレを正す時じゃない。アレが幻影だとすると……

 ガンマは手足を振り幻影を牽制。しかし何人かはガンマから距離を取り、その後ろに回り込む。其処にいるのはなのはとアルファ。
 最初に突っ込んだ人が、アルファに手にしたブレードを振りかぶる。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 アルファはなのはに差し込んだ手を引っ込め、慌てて背後に下がる。だが遅い。女のブレードはアルファに振り落とされ、
「シャマルゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 シグナムの叫びを余所にアルファ……本名シャマルゥ? をすり抜けた。幻影だ。
 その隙をついて別の人がなのはに接近。抱き抱え、一瞬こっちに視線を向け、宙に消えた。なのはと一緒に
 シャマルゥは慌てて当たりを見回すが、別の女の人達に飛びかかられ急いで逃げる。

 ……えーーと、なのはを助けてくれた、のかな? ならあの娘は平気?
 なら、ちょっと。うん、冷静に、koolに……
 いや、クールになれ! アリシア・テスタロッサ・グレアム。
 その為のマインドセットでしょ。
『何をすべきか、今は考えろ』だよ。なら、


「なんか、気が抜けたのさッ。どうするシグナム?」
 怒りと苛立ちを無理矢理引っ込め、力が抜けた風を装う。
 確かに、ここである意味正解は、疲弊しているシグナムだけでもサクッと倒しておくこと。でもそれは……。
「いや、引こう」
 シグナムはまだ持ったままだった剣を鞘に戻す。
「言えた義理ではないが、マリヤ・キャンベルと高町なんとかに『すまなかった』と、伝えてくれ」
 ……高町なんとか? えーーと、これはなんか、場を和ませる軽いジョークなの? ま、兎に角、
「伝えるだけは伝えておく。だけど」
「ああ、すまない」
 コア蒐集をキャンセルされ、ショックで今度こそ意識を無くしたマリヤを見下ろす。
 謝罪したとはいえ、相手がそれを受け入れるとは限らない。なのはは兎も角、マリヤは間違いなく拒否するだろうしね。


「で、結局あの女の人達、何だったんだろ?」
≪不明です。距離あったため情報採取、できませんでした≫
「……やっぱり」
 右目の保存領域にあった女の人達の映像を呼び出す。なのはを抱えて逃げた人。あの人は間違いなくアタシを見ていた。で、だ。

≪……シア≫
「うん」
 アタシの前で空気が歪み、一人、いや二人の女性が姿を現す。なのはを抱えたさっきの人だ。遠目で気付かなかったけど、でかい。なにとか言わないけど。

「彼女を」
「えーーと、ありがとうございます。で、貴女は?」
「申し訳ありません、アリシアお嬢様。私は自分の事を貴女に語る事をまだ許されておりません」
「……そう」
 彼女はなのはを砂浜に降ろすと一礼。出てきたときと同じようにその姿が宙に溶け込む。
 レイジングハートとリンク。なのはのバイタルを見てみるが今直ぐどうこうという問題はなさそうだ。それはそれで一安心。なので話を戻す。

「で、なにか分かった?」
≪済みません、ジャミングされてデータ取り出来ませんでした≫
「ぬかりは無いってことね」
 敵か味方か? R...、じゃなくてデルタの関係者なのかな? それでも分かることはある。

「兎に角、あの人はある意味間違いなくアタシの敵ね」
 シグナムやシャマルゥと同じようにだ。
≪敵、ですか? ならあの人、順番で言えば、コードはイプシロンですか?≫

 アタシは視線を下ろし、つま先を見る。遮るモノなく、ストンと視線が落ちていく。
 あの女の人の、はしたない恰好……とかを思い出す。
「ううん。あの人は、パイね」
≪……ずいぶん飛ばしますね≫
「いいの」

 フ、フン。アタシはまだ10歳相当。後6年、いや5年あればきっと、
「ああ、シア、頑張れ……」
 ……
 …………今の声、マリヤだよね。アタシ声に出してなかったよね。寝言だよね。セクハラじゃないよね。
 でもまあ、いいか。
 アタシは、アタシの親友で、頑張り屋の騎士様で、大事で大切なヤツに笑いかける。

「期待して待ってて。ふふふん、失望はさせないのさッ」



PS1
 オリジナル展開。
 この話は元々、リンカーコア蒐集を逃れたなのはを蒐集させるために考えていました。その為にマリヤ暴走と。
 何ですが、考えてみればなのはが絶対に蒐集されている必要はないと気付きました。なので代わりにナンバーズと接触編に。
 4話とか11話(予定)のオリジナル回はこの流れで展開しました。
 兎に角これで、フェイト×トーレ、ライバルフラグ2、成立。

PS2
 剣を交わせば解り合える? そんな体育会系なこと、うちの子に期待しないでください
 いずれにせよそんな達人みたいな真似、精神的未熟な10歳そこそこの子供にゃ無理でしょ。
 チート気味のシアにしても、早熟に見えて根っこは子供で未熟なんですよ。

PS3
 ゆとりな時代、円周率は約3と教えられていたそうな。偶然とはいえシア鋭すぎ。



[11860] A's編9話 炎の魔剣が堕ちる刻、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/09/07 22:32
☆Side Amy★


 ……空気が重い。
 スクリーンの中ではフェイトちゃんがシグナムと戦闘中、……は、まあ良い。
 で、ここは海鳴の司令室。わたしの隣にはシアちゃん。うん、あれだ。
 この前のマリヤさんやなのはちゃんの戦闘からずっと、シアちゃんの機嫌が悪い。流石に当たり散らすほど子供じゃない……、子供なんだけどさ、不機嫌さを隠しきれずにいる。

 取りあえず、なのはちゃんは軽傷だったんだけど、念のため本局の病院で療養中。
 対して、マリヤさんは結構重体。最初は本局の病院に担ぎ込まれたんだけど、話を聞いた親御さん達が確保、聖王教会系の病院に連れ込まれたらしい。その後情報はシャットアウト。親友の状況が分からず、シアちゃんはイライラって訳。
 なんだけどキャンベルさん家とシアちゃんの仲悪い訳じゃない。ご家族の方達からはシアちゃんに頻繁に連絡があるらしいし。でもなんか変にクッション挟んだ言い方で家のお姫様はお冠。
 女の子だね~。

 ……現実逃避は此処までで。
 地球から近い管理外世界に張ったサーチャーに感があったのが少し前。で、見付けたのがシグナム。
 シアちゃんかフェイトちゃんか。どっちも派遣を希望したんだけど、わたしの判断でフェイトちゃんを送った。だってフェイトちゃんが自分の意見を主張するのが珍しくて、それに応えたかったんだよ。
 でシアちゃんはますます不機嫌に。

 現在、リンディ提督やクロノ君は不在。アースラの改修作業の報告と受領の申請に本局に出向いている。
 なのでアースラチームのナンバー3のわたしに指揮が回ってきてるんだ。

 わたしは一応アースラチームのナンバー3と言うことになっている。理由は簡単。ラインの士官だからだ。
 これでも士官学校の卒業生、二尉さんなんだよ。
 細かいことを言うとアースラチームにはわたしより上位の人は居る。軍医さんとか、武装隊の隊長さんとか。でも組織の構成上、司令部付きのわたしの方が上に来る。
 だからリンディ提督やクロノ君が居ない時は、わたしが指揮を執ることになってるんだ。

 なんだけど、ぶっちゃけわたしは情報士官だ。指揮に向いているとは口が裂けても言えない。
 それでも今やっているのが悪手、戦力の逐次投入だというのは分かっている。フェイトちゃんとシアちゃん、二人揃ってシグナムにぶつけて倒す、それがいい手だと言うことは分かってるんだ。
 それをしなかったのには理由がある。シグナムは『闇の書』を持っていなかったから。
 わたし達のメインターゲットは『闇の書』。ここで二人とも出撃させたら、その後『闇の書』を発見できても手が出せなくなってしまう。

 それはシアちゃんも分かってくれていると思う。大人しく司令室で待機してくれてるんだから。
 実際シアちゃんはアグレッシブだ。指示をしてもその通りに動いてくれないことが時々ある。なんだけど、結果としてベストに近い動きをするから注意しにくいんだ。指示を無視というより、指示の先読みをしてるというか。
 このシアちゃんを使いこなしていると聞くネコムラさん。クロノ君は嫌ってるけど結構凄い人かも。


「ん? 感あり!」
 サーチャーが同じ世界で別の反応を感知。開いてみるとベータちゃん。そしてその手の中には、
「「『闇の書』!」」
 よっしゃ、ドンピシャ♪ 偉いぞわたし。
「シアちゃん、よろしく」
「OK、任しておくのさッ ……手足の二、三本はいいよね♪」

 うん、最後の台詞、わたしは聞いてないのさっ♪


☆Side ??????★


「シグナムにはフェイト。ヴィータ、じゃなくてベータにはシアか」
「シアの方は問題ないね。あの娘ならちゃんとやってくれる筈」
「うん、問題はシグナムの方ね」
「と言うか、やるじゃないのフェイト。あのシグナムと互角なんて」
「そうね。でも……」
「ん? どうかしたのかい?」
「ええ。ここは。うん、フェイトを止めましょう」
「えっ、ちょっと待って! あの娘も可愛いウチの娘だよ。まさか傷付けようってかい」
「あなたにも分かる筈よ。一見互角でも、フェイトはまだシグナムにはおよばない」
「そりゃあ、実戦経験とか色々不足してるけどさぁ」
「それにシグナムの方が強いとはいえ、無傷で制圧できるほどの差はない」
「……あっ! そうか」
「幾ら『闇の書』のプログラムが不殺を心がけていたとしても、何があるのか分からないのが戦いよ。このまま戦闘を続けていたら、取り返しの付かないことが起こるかも」
「そうなる前にこっちで戦局を決める、か」
「そういうこと」

「うん、それは確かに正しいのかも知れないけど……」
「けど?」
「あの娘、……怒るよ」
「う、それは……」
「頭の良い娘だから、最後には分かってくれるだろうけど。それまでは……」
「そうね。二、三発は覚悟しなくちゃね」
「仕方ない、付き合うよ。でも……」
「でも?」
「右だと良いね。左は……きつそうだ」
「……」


☆Side Alicia★


「勿論、左だよ」
≪シア、どうしました?≫
「ん、なんかそういう突っ込みを入れたい気分なのさッ」
≪警告。そういう態度を続けているとギャグ系キャラ、堕ちます≫

 む、それは拙い。アタシは女の子らしく、キュートでプリティでリリカル目指すんだから。だから、
「忠告、ありがと」

 でだ、視界の先に赤いちびっ子発見。ベータだ。
 さて、戦闘開始なのさッ!


☆Side Signum★


 今回我々がリンカーコア蒐集に向かったのは砂漠の世界、ではなくとある管理外世界の砂漠地方。
 この地にに住む魔法生物、砂虫が目当てだ。最初は順調だったのだが調子に乗りすぎたようだ。大物目当てに挑んだところ、危ない場面に遭遇してしまった。
 そこに乱入してきたのがフェイト・テスタロッサ。一応ピンチを救って貰ったのだが獲物を逃がす結果となり、痛し痒し。

 そして始まる私と彼女の勝負。地球というか日本の諺で言うところの三度目の正直だ。
 フェイト・テスタロッサもこの前のマリヤ・キャンベルに負けぬ維持を見せる。
 バリアジャケットの魔力構築を削って速度に当ててきた。つまり今までとは速さが格段に上がる。


「はぁぁぁっ!!」
 テスタロッサの斧剣が振り下ろされる。私は辛うじて受けようとした。しかし、
「え! なにっ?」
 テスタロッサのデバイスが振り下ろされることはなかった。

 テスタロッサの腕には輝くリングのようなものがまとわりついていた。バインドだ。勿論私のものではない。だとすると誰が?
 答えは直ぐに出た。テスタロッサの背後に人影が湧く。それが彼女に手を伸ばすとバインドは増し、テスタロッサの全身を拘束してしまった。
 背後の人影、あれは……シャマルが見たという仮面の男か? しかし、

「貴様、なんの真似だ!」
 シャマルを助けて貰ったことには礼を言おう。しかし騎士の勝負に水を差されたこと、水に流す訳にはいかない。
「フッ、何を言っている『闇の書』の騎士」ソレは私の怒りを嘲笑う。「貴様らがやらねばならぬ事、ソレは何だ?」
「そ、それは……」
「さあ、奪え。貴様らの獲物、この娘のリンカーコアを」
 仮面の男はバインドで固められたテスタロッサを私に差し出す。テスタロッサは何とか抜け出そうとするが男の方が一枚も二枚も上のようだ。彼女の拘束は小揺るぎもしない。
「さあ」
「くっ」
 ……私は、『闇の書』の騎士。私のなすべき事は主はやてをお助けすること。その為のリンカーコア。
 だから私は、レヴァンティンの柄元をかざす。
 私のかざした手に、テスタロッサは驚いたような、傷ついたような、失望したような、表情を残し……

    ≪Sammlung≫


☆Side Alicia★


≪シア、司令室と交信が途切れました≫
「ん? 故障?」
≪不明です≫
 さて、どうするか? アウェイ? での単独は不安だな。この前のマリヤの件もあるし。
 ん、ん、ん、ん。そうか。
「リニス、バルデッシュと直接回線繋いで。同じ世界だから繋がるはず」
≪了解です≫

「テメェら、なにチンタラやってやがる!」
 そんなアタシ達に誘導弾1つ、2つ。アタシはそれを余裕で交わし、
「スティンガー・レイ!」
 直射弾で撃墜する。

 アタシとベータの戦いは一進一退。元々は逃げるベータをアタシが追う戦いになる筈だったんだけど、ベータがやたら突っかかって普通に空中戦。アタシとしてはどうでも良いんだけどさぁ。
 さてどうするか。キャンキャン叫くベータの相手もめんどくさいんで、いっその事撃墜してやろうかな。だけどベータ、『闇の書』もってるし。
 そんな時。

≪バルデッシュと回線接続。救援要請。デルタ、出現しました≫
 ? なんで? なんであの人がフェイトのとこに? で、救援要請?
 ……やばい、な。 なんか嫌な予感がする。

(リニス、転送準備。バルディシュから座標もらって)
(≪了解しました≫)
 リニスの準備ができるまでアタシは牽制。敵の前で無防備に転送なんて以ての外。隙を作らないと。だから取りあえず、
「スティンガー・スナイプ!!」
 誘導弾を二発発射。
「させるかよっ!!」
 ベータが迎撃している間に次の準備。
「アイシクル・ジャベルン!」
 アタシの背後から4発の特殊誘導弾が伸びる。それを見てベータは次の一手、どうしようか躊躇する。前の戦いでコレに痛い眼を見たのを忘れてない。前に出て迎撃か、後ろに下がって防御か。
 だからアタシは次の手。
「スティンガー・レイ!!」
 ベータの動きを制限するように直射弾を連続発射。
「そうは行くか!!」
 多重攻撃を嫌がったベータは後ろに下がり、アタシから距離を取ろうとする。だからアタシもそれに遭わせ全力後退。そして、

「リニス、行って!」
≪了解しました≫
 リニスによる転送用魔法陣展開。アタシはその中に突っ込む。離脱成功。
 フェイト。お願い、無事でいて。


☆Side Signum★


 私の腕の中には一人の娘。黒と黄金の少女、フェイト・テスタロッサ。
 私と彼女は武を競っていた筈だった。しかし私は仮面の男の声に負けてしまった。
 拘束され身動きのとれない少女。私が彼女のコアを奪う直前、彼女の浮かべた表情が私を苛む。
 裏切られた。その一言だ。

 そう、私は正面から戦おうとする彼女を裏切った。主の為、仲間のため、なんとでも言い訳できる。だが、真っ直ぐ心をぶつけてきた彼女を裏切ったことには変わりない。
 こんな私が騎士と名乗るなど……

(……シグナム)
 いや、私は騎士だ。主はやて、あの幼い主を救うまで私は彼女の騎士であり続けねばならない。たとえこの身にどんな汚名が降りかかろうと、だ。

(……おい、シグナム)
 だから騎士として胸を張る。主の為に、仲間の為に。

(だから、おい! シグナム!!)
 なんだ? 念話。ヴィータか?
(どうしたんだよ、ボーッっとして)
(いや、何でもない。どうかしたのか?)
(アリシアだ、あの女を見失った)
(見失った?)
(ああ、いきなり転移しやがって。今度こそアイゼンの落ちない染みにしてやるつもりだったのによぉ)

「アリシア・テスタロッサ、か」
 私は頭上を見上げた。そこに展開されているのは、数日前に見たばかりのミッド式の転送魔法陣。その中から姿を現すのは、もう一人の黒と金色の魔法少女。
 フェイト・テスタロッサが姉と呼ぶ少女、アリシア・グレアム。
 彼女の目線は私には向かない。真っ直ぐ私の腕の中のテスタロッサだけを見詰めている。
 まるで私には、視線を向ける価値すらないと言っているように。

(彼女なら、私の方に来た)
(おし、ならちょうど良い。アタシもそっちに行く。アタシとシグナム、2人がかりでアイツを潰すんだ)

 ……ベルカの騎士が2人がかりで1人に掛かる? この幼い少女に? それは、
(ダメだ)
(何でだよ! アリシアの危険性、オメェだって分かってんだろ)
 ああ、分かっている。彼女の戦闘力も、心の強さも、覚悟のほども分かっている。だが、しかし、
(ベルカの騎士が、2人がかりとはあり得ない)
(シグナム、オメェ!)
 そこまで堕ちる訳にはいかない。

 チカ、チカ、チカ。
 私の腕の中の少女、その手の中にあるデバイスコアが点灯する。
 チカ、チカ、チカ。
 それに合わせるかのようにアリシア・グレアムのデバイスも点灯する。ここで起きた出来事を伝えているのだろう。デバイスから情報を得ているのか、アリシア・グレアムの口元が苦く歪む。
 アレにヴィータを付き合わせるわけにはいかない。

(それにだ、そちらには闇の書がある。アレを何時までも管理局の眼の前に触れさせてはおけない)
(あっ!)
(グズグズしていたらクロい執務官やあの白い少女、高町なんとかが来るかもしれん。そうしたら厄介だ)
(だけどオメェ一人じゃ)
(フッ、私を舐めるな。お前達の将が、これくらいでどうとかなると思っているのか)
(……わーったよ。でもシグナム、無事に帰って来いよ)
(無論だ)

 砂漠に降り立った少女はゆっくりと歩み寄り、既に私の目の前に立っていた。だから私は立ち上がり腕の中の少女を彼女に差し出す。
 アリシア・グレアムは無言でフェイト・テスタロッサを受け取り、……私に背を向ける。

 ガツガツ・ケリケリ。
 そんな感じで砂を踏み固め、テスタロッサの体を優しく横たえる。そして、
「バルディシュ、カートリッジロード」
≪Yes Mam!≫
 アリシア・グレアムの命令にテスタロッサのデバイスは従う。
 ガチン、ガチン!!
 圧縮された魔力がデバイスに満ちる。

「シールド発生、並びに維持。お願い、バルディシュ。フェイトを守って」
≪Please leave it. Mam≫
 横たえられたテスタロッサを守るため、球状シールドが張られる。これで多少のことで彼女が傷付けられることはない。だから、

「ねえ、シグナム。マリヤの次、なのはの次はフェイト?」
 アリシア・グレアムの口調には抑揚がない。感情がこもっていないのではない。感情をもてあましているのだ。
「次はクロにぃ? それともリンディ姉さん? ネコさん?」
「それは……」
「ううん、分かってる。これはただの八つ当たりだって。こんな事意味がない、するべきじゃ無いって」
 ? この少女はなにを言ってるんだ?
「でもね、シグナム」デバイスを握る手に力が入る。「八つ当たりに付き合って貰う!! なのは流に『お話』、だぁ!!」


☆Side Alicia★


 アタシとシグナムは砂漠の空で向かい合う。
 シグナムの手の内は分かっている。接近してクロスレンジでのどつき合いだ。だけどこういう騎士の戦い方、アタシは良く知っている。つまりマリヤと同じ間合い、手の内は読めている。
 だからアタシはミドルレンジを保つ。

 この戦いは剣士が懐に飛び込めるか、砲撃手がそれを阻止できるか、それに掛かってくる。
 ついでに言うとアレだ。シグナムがこの場から逃げ出すにはアタシを何とかするしかない。後ろを見せ、逃げに入っても長距離砲撃持ちのアタシからは逃げられない。アタシをある程度無力化しない事には戦場離脱も無理なのだ。

≪Stinger Snipe≫
「はぁぁっっっ!」
 アタシの放った誘導弾をシグナムが切り捨てる。その隙に
「スティンガー・レイ」
 直射弾を発射、しかし、
≪Panzergeists≫
 シグナムの騎士甲冑に弾かれる。しかしこの一瞬、シグナムの動きは制限される。だから、
≪Flaze Cannon!≫
「甘い!」
 蒼い砲撃をぶっ放す。しかし、シグナムは魔剣一閃、吹き上げた炎の反動で体を変える。
 シグナムは砲撃の術後硬直を付こうとしたようだが、そうは行かない。アタシはその直後に背後に飛んでいる。シグナムは舌打ち1つ、剣を構え直す。

「やるな、アリシア・グレアム」
「当然、フェイト・テスタロッサのお姉ちゃんを舐めて貰っちゃ困るのさッ」
 そう、下で眠っているフェイトに無様な真似は見せられないのさッ。

「ならば、こちらも本気で行かせて貰おう」
≪Schlangeform!≫

 シグナムのデバイス、確かレバ剣、が解けていく。剣から鞭というか、なんというか、蛇腹剣?とかいう形態に。
 これがシグナムの中距離制圧用の形態。だから、
(勝った)
 そう、アタシはコレがくるのを待っていたんだ。

「行くぞ」
シグナムがレバ剣を振るうと、アタシの目の前の空間がごっそり削られていく。それに巻き込まれないようにアタシはちょっとだけ後退。大質量の蛇腹剣を頭上に這わせ、シグナムが詰めるように前進してくる。
 そう、大質量だ。
 レバ剣はただ分割した訳ではない。ベルカ式デバイス特有の形状変換でその質量を増している。ベータのハンマーと同じようにね。
 だからベータハンマーと同じような弱点を持つはず。それは蛇腹剣の圧倒的な慣性を制御するため、攻撃の最中は、起点であるシグナムは移動できないということ。つまりシグナムの足を封じたのと同じ意味なのだ。

 そしてタイムラグ。
 シグナムが手元で制御しても、そのコントロールが末端にたどり着くまでラグが出来る。フェイトとマリヤにこのモードを見せた。ソレがコイツの敗因だ。


「リニス、行くよ。ウィング全開!」
 アタシの声をトリガーにリニスから二対四枚の羽根が展開する。高速移動用の二枚と姿勢制御用の一対。次いでリニスの声。
≪はい、ドライブ全開≫
 四枚の飛行用の翼に火が入る。次いで、
「アクセル、チャージ!」
 リニスの先から剣、じゃなくて魔力で構成されたパイルが伸びる。
 準備完了。さて行くのさッ。
≪OK A,C,S Full Drive!!≫

 アタシ達はシグナムに突っ込んだ。シグナムが蛇腹剣を放つのが見える。だけど、
「リニス、ランダム回避」
≪OK Believe me. Cia!≫
 勿論信じてるのさッ。

 幾ら元は剣だとは言え、分割した今、その速度はマリヤやシグナムの振るう剣の何分か一に過ぎない。
 リニスの圧倒的演算能力を生かせば回避出来ない訳はない。アタシのリニスは管理局最新、最高のデバイスなんだ。だからアタシは鋼の鞭をかい潜る。そして向かうは『闇の書』の魔導プログラム。
「なにぃ!」
 一旦剣の波を抜ければあとは一直線。放った剣を手元に返すには圧倒的に時間が足りない。だからアタシはただ撃ち貫くだけ。

 ≪Zero Drive Circuit Open!≫
  この世界にあるモノ、その全てはちっちゃいパーツ、分子とやらで出来ている。
  この分子が激しく運動すれば温度が高く、動かなければ冷たくなる、そうだ。

 迎撃を諦めたシグナムが手元を返す。剣の柄、いや根本でリニスを受ける恰好だ。

  リニスに搭載してあるゼロドライブユニットはこの分子を動き(Drive)をゼロにする。
  原理? 知らないよ。だって魔法だもん。

 計算通り、アタシは容赦なく飛び込む。そして、

≪Zero Drive!≫
「インパクトぉぉっ!!!」


☆Side Signum★


≪Zero Drive!≫
「インパクトぉぉっ!!!」
 蒼い光と共に突っ込んできたアリシア・グレアム。このタイミングでは迎撃は無理、だから私は彼女の突進をレヴァンティンの根本で受けた。そして、視界が真っ白に染まる。

 何が起きた?
 この変化に私の頭は付いていかない。分かっているのは、
「冷たい」
 私が握っていた愛剣レヴァンティン、それが真っ白に凍り付いている。流石に先端まで凍っている訳ではないが、私が握っている柄や根本は完全に凍り付いている。
 そしてそれはレヴァンティンを握りしめていた私の手も同様だ。冷たく、固く、力が入らない。

 レヴァンティンは炎の魔剣。レヴァンティンの炎ならこんな氷……、溶かせる訳がない。凍り付いて強度を失った金属、そんなモノを炎にかざせば結果は明らか。砕け散るだけだ。そんな事は出来ないのだが、甘かった。

 アリシア・グレアムだ。気を取られた隙に彼女はデバイスを振りかぶると、
「消滅!!」
 先頭のパイルをレヴァンティンに振り下ろしていた。凍り付いた金属がそれに堪えられるはずもなく、

 バキキーーーン!!

 レヴァンティンの刃が砕け散る。残されたのは私が握りしめていた柄のみ。デバイスコアこそ残っているとは言え、ほぼ全壊と言って良い。

「フフン」
 唖然とした私の視界の中、アリシアが嗤う。そう、彼女は分かっている。ヴィータ達とは違い、私の攻撃の起点は全てレヴァンティンだ。それを失った今、私の戦闘能力は激減してしまっている。
 そして凍り付いた両手、これでは戦いにならない。
 そこに追い打ちが来る。

「アイシクル・ジャベルン!」
 アリシアの背後から誘導弾が発射される。アレはベータを落とす布石になったモノ。受けるのは拙い。
 だがそれを追うように、
≪Stinger Ray≫
 デバイスから至近距離から直射弾。それに対し
≪....Panzer .geists≫
 レヴァンティンが咄嗟に強化防御を張ってしまう。パンツァーガイストはミッド式のシールドなどとは違う。基本的に騎士甲冑の部分強化魔法だ。直射弾に対応して展開してしまうと、

 ドス!!
 背中、脇腹、左脚。

 そこに誘導弾が突き刺さる。ついで直射弾を防御した瞬間。

 パリ--ーン!!
 誘導弾が弾ける。そして私の体を拘束するバインド魔法。
 そしてその時にはアリシアは全力攻撃出来るだけの十分な距離を取っていた。

「クロにぃのエクスキューションシフト、ガンマは堪えたみたいだけどアンタはどうかな。アタシのコレはクロにぃのアレとはひと味違うよ」

 天上に伸ばしたアリシアの右腕、その直上に展開される魔力スフィア。それは黒でも金でも無く蒼色。それはアリシア・グレアムのデバイスの色。つまり、凍結属性?
 魔力スフィアの数は概算で百を超える。それがピタリと私を狙う。
「行くよ。スティンガーブレイド・ブリザードシフト……」

 私は此処までなのか? 『闇の書』の守護騎士である私はここでひとたび散るのか?
『闇の書』のオプション、魔導プログラムである我々は、一旦滅んでも主の命があれば復活することが出来る。
 しかしそれでは、私が散ったのを主に知られることになる。主は聡明な方だ。私が命を失ったことで、我々の所行に気付かれる可能性が高い。
 なんとしてもそれは避けなくてはならない。だが、どうやって。
 アリシアは私の方を見、ニヤリと嗤い、顔色を失い、そして、

「フェイトぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 ソレを発射した。


☆Side Fate★


 カツカツ、カツカツ。

 空の上に2つの人影。1つは黒と金、もう一つは白と赤。
 ああ、シグナムと……あの人だ。
 凄いな、あのシグナムと互角、ううん優位に立っている。

 またあの人には迷惑を掛けちゃった。こんなわたし、ダメだよね。あの男の人、デルタにあっさり捕まっちゃうようじゃ。

 カツカツ、カツカツ。
 また音がする。何だろう? わたしは視線を下ろし……
「あ、ああああああっ!?」
 なに? 蟲?

 そこに居たのはこの世界の現住生物。シグナムが狩っていた生き物だ。ただしシグナムが戦っていたモノよりかはかなり小さい。とは言えこの胴回りはわたしと同じくらい在る。
 そんな蟲がわたしの周りに数匹……。バルデッシュが張ったシールドにへばりついている。
 この蟲達はなんで此処に? わたしの周りに?

 ギャァァァァ
 そんな声? と共にソレは口を開ける。気持ち悪い牙を生やして。
 そして、それはつまり、
「わたしを、狙っている?」

 じ、冗談じゃない。わたしはこんなところで死ぬわけにはいかない。母さんとまだちゃんと話していない。なのはのお見舞いにも行ってない。それに……
 ねえさ……、あの人と仲直りもできていない。
「バルディシュ、カートリッジロード」
≪Yes Sir!≫
 シグナムに奪われてわたしの魔力は空っぽだ。でもわたしにはバルディシュがいる。バルディシュのカートリッジなら。でも

 ガチン!! カチン!
 えっ、なに? カートリッジ切れ? 予備のカートリッジは……ない。
 シグナムが狩っていたように、この蟲は魔法生物だ。それがシールド魔法に干渉して、もう持たない。
 わたしが悲鳴を上げそうになった、その瞬間だ

「フェイトぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 ズドドドドドドドっっっっっっっっっ!!

 頭上から無数の剣が振ってきた。これはあの人の……なんとかシフト。範囲攻撃だ。
 見上げると顔を強ばらせ飛び降りてくる、あの人。あの人は地面に舞い降りると、
「フェイト、大丈夫?」
 わたしに抱きついてくる。
 顔を見、腕を見、脚を見、怪我がないのを確認すると、安心したかのようにわたしに体重を預けてくる。
 だからわたしも恐る恐るあの人の体に手を回し……、しかし、あの人はそれに気付かず視線をキッと空に向ける。
 ……なんか悔しい。でもわたしも頭を振ると気持ちを切り替えて空を見る。
 正しくは空じゃない。空に浮かぶ一人の騎士を。

 シグナムはわたしとあの人の方を見、なにか言おうと口を開き掛け、そして噤む。それに答えたのは、
「勝負は、アタシの勝ちだね」
「ああ、私の負けだ」
 あの人だった。あの人は疲れたように手を振ると、
「なら、良い。もうどっかに行っちゃえ」
「……いいのか?」
「元々、怪我してるフェイトを放って戦ったアタシが悪いんだ」
≪....Sorry Mam≫
「バルデッシュの所為じゃないよ」
「済まない」
「いいのさッ。でも、次ぎに会ったら、今度こそ、潰す!」
「分かった、肝に銘じておく。で、フェイト・テスタロッサ」
「は、はい!」
 なんだろう?

「貴公との勝負、私は汚した。言い訳はしないが、謝罪する。済まなかった」
 シグナムはわたしに頭を下げると、
「もう、会わないことを祈っておく」
 飛び去っていった。
 それを確認すると、緊張が解けたのか、頭の中がボッとしてきた。
 隣にある優しい温度。わたしはソレに持たれるように意識を失った。
 次に目が覚めるとき、ね さんに隣に居て欲しいと思いながら。


PS1
 シア暴走の回。設定でも書いたように周りの人が傷付けられるとシアの沸点はとたんに下がります。
 やっちゃいけないと分かっていても暴走します。シアの活動時間はまだ4年程度なんです。本当に子供なんですよ。

PS2
 さりげなく最長?
 というか微妙にリリカル?
 シニカルに、ロジカルに、テンポ良くが私の一人称作品のコンセプトなんだけど、外したかな?

PS3
 えーと、方向性とかご意見とか色々確認したいんで、コメントください。
 ウサギは寂しいと死んでしまうんですよ。(なお、コレは実は嘘、ただの都市伝説なんですよ。群れを作らないウサギの類は単独行動デフォルトです)



[11860] A's編10話 二人の夜、始まりの刻、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/09/07 22:33

☆Side Alicia★

「というわけなのさッ、OK?」
『でもね、シア嬢。それじゃあ君に対して借りを返すことにならないんじゃないか? これってクロ坊の仕事じゃないかな?』
「だ~から、クロにぃには内緒で調べて欲しいの」
『う~ん、ちょっと理由が分からないんだけど』

 アタシは本局のスペースを借りてネコさん、ケン・ネコムラ執務官と通信中。ネコさんに作ったちょっとした貸しで、ちょっとした事を、ちょっとだけ調べて貰おうかと。
 だけどネコさん、しぶとい。
 アタシは左腕をコキコキ回しながら、続けてお願い。

「『闇の書』事件ってクロにぃには色々因縁だからね。要らない負担を掛けたく無いんだ」
 妹分としては大変なのさッ。
『まあ、クロ坊は分からないでもないんだけど、ボスまでもっていうのは流石に無理だよ』
 そこは仕方ないか。
「父さんに気付かれたら、アタシからのお願いって言ってみて。それでダメって言われたら、諦めるよ」
 そこは多分アレだけどね。今度は指の運動。人差し指から順に曲げていく。

『違法でもないし、執務権限から外れている訳じゃないし、シア嬢のお願いなら聞いてあげたいんだけどね』
「だから、お、ね、が、い。ネコさん♪」
『は~、こっちの業務スケジュール次第だね。空いてる捜査員がどれくらいいるか』
「あっ、マリヤ退院したらこき使ってやって。アイツから貸しは取り立てないと」
『取りあえず、スケジュール調整はしてみる。答えは明日で良いね』
「うん、期待して待ってるのさッ」
 アタシは左手でニギニギ、ネコさんにお礼の挨拶。

『……ところでシア嬢。さっきからなんで左腕をワキワキさせてるんだい? 義手が故障でもしたの?』
 なにを言う。アタシの左腕は一級品だい。なんだけど、
「ちょっと無理な運動させてね。左腕本体じゃなくて接合部がちょっとワキワキしてるんだ」
『なんか知らないけど、無茶はダメだよ』
「勿論。アタシは根に持たないタイプなのさッ」
『?』

 取りあえず、調査依頼はした。なんだかんだ言ってネコさんはやってくれると思う。
 後は結果が、……出ないと良いな。

 取りあえず、この件は終わり。
 次はフェイトだ。


☆Side Ken★


 さて、ボクはアリシアの依頼を思い起こした。
 管理局員としての服務規程、ボクの職務権限。どちらもクリア。請け負っても別に問題はない。
 内容は『闇の書』事件の追加調査、アースラチームへのフォローになる。
 ボクもアースラチームも共にグレアム派閥、なのでボクが彼等のフォローを行っても苦情苦言が来ることはない。

 しかしだ、これはアースラチームへのフォローだ。
 本来アースラチームが、執務官であるクロ坊が行うべき事だ。それがアリシア経由で内密にボクの処に来る。
これは異常と言って良い。
 思えば今回の『闇の書事件』、色々不可解なことが多い。
 例えばアースラチームは人事に追加戦力を要求している。その要求に対し、レティ先輩が武装中隊を送ったという。実はこれはかなりおかしい。

 『闇の書』事件のような広範囲物件において、必要なのは武装隊員ではなく捜査員だ。
 怪しいと思われる箇所に大人数を動員し、ローラー作戦を行う。ボクの経験から言って、これで何か出てくる公算は意外と高い。
 回せる部隊がないはずはない。強力な戦闘能力を要求されない捜査員は数で言えば武装隊員よりも多いんだ。

 なのに要求があったのは武装隊員。
『闇の書』の騎士達はニアSクラスと聞く。かえって一般武装隊員は平均してランクC程度。武装中隊なら隊長クラスにAやBが数人居るはずだが、逆にその程度だ。
 部隊運用を上手く行わなくては各個撃破でやられてしまう。
 言っちゃ悪いが経験不足のクロ坊に、そんな指揮能力はない。
 そしてこれはレティ先輩も分かっているはず。今回のような事件では武装一個中隊より、捜査一個大隊を回す方が簡単で有効だと。

 もしかしたら、何か裏事情でもあるのか。
 さてどうする、ケン・ネコムラ。日和見に走るか?

 この場合の日和見とは何もしないで見ていることではない。動くことだ。
 アリシア・グレアム嬢は僕たちグレアム派のプリンセス。ガチガチ鉄板の次期派閥リーダーだ。彼女に恩を売っておくことは、今後を考えるととっても有効。

 実は去年の今頃だと次期リーダーはクロ坊かと思っていた。名門ハラオウン家の跡取り息子。この家名は結構大きい。
 だけどこの半年、シア嬢の成長はめざましい。あの歳で能力的には執務官補真っ青だ。戦闘能力だけでなく、魔法以外の視野も広い。才能がない癖に魔法一辺倒なクロ坊とは違う。
 師匠の一人と自負するボクにとっては嬉しいことだ。
 クロ坊がシア嬢を婿……じゃなくて嫁に貰えば万事解決なんだが、そうは行かないだろう。シア嬢にはアイツがいるし。

 ならボクのすべきことは1つだ。シア嬢の依頼を受ける。グレアム派の執務官として、シア嬢の師匠として。
 そしてなにより重要なのは、アリシアについて行った方が面白そうだと言うことだ。

 魔法戦闘は無理そうだがマリヤもボチボチ動けそうだ。この前の件のペナルティということで、色々頑張って貰うぞ。
 そう言えばシア嬢によると、こういう時、確かこう言うんだったな。よし。

 魔法執務官ジェントル☆ネコムラ、はじめるよッ♪


☆Side Fate★


 スーーッ。
 かすかな駆動音にわたしは眼を覚ました。
 開け放たれた入り口のドア、逆光の影に一人の女の子。
 なのはじゃない。なのはより髪の毛の短い、少し背の高い子。あの人だ。
 あの人はわたしが眼を覚ましていたことに驚いたように、ピクリと身を強ばらせる 
 病室に入るのを躊躇うような、奇妙な素振り。

 数秒の躊躇いの後、あの人は部屋に入ってきて、わたしのベットの脇に立つ。
 再びの駆動音と共にドアが閉じ、そして、
「……フェイト、ごめん」
 あの人は呻くように呟いた。

 ごめん? なんで?
 わたしが謝られるようなことはない。

 わたしが弱かったから、デルタに捕まった。
 わたしが弱かったから、シグナムにあんな顔をさせた。
 わたしが弱かったから、この人にシグナムを逃がさせることになった。
 みんなわたしが、弱いわたしがいけないんだ。だからわたしが謝られるなんて。だから、

「違う!」思わず強い声が出た。
「貴女は悪くない。貴女は強くって優しくて頭も良くて。さっきだってもう少しでシグナムを倒せる処だった。
 でもわたしは戦う事しかできない癖に、弱くて、足を引っ張って!」
「フェイト、それは違うよ!」
 この人は何か言ってる様だけど、わたしの心に届かない。
「だからわたしみたいな人ぎょ……!」

 パシッ!
 頬に走る鋭い痛み。
 顔を上げるとあの人の手がわたしの頬に。……撲たれたんだ。

 スッと頭が冷えた。この話題はわたし達の間では禁句。言っちゃいけない事だ。
「頭、冷えた?」
 あの人の左手がわたしの頭に。労るように撫でてくれる。あの時、時の庭園でしてくれたように。

「……じゃあ、こうしよう。馬鹿なことを言ったフェイトが悪い。
 で、あの時フェイトをほっぽっといてバトルに走ったアタシも悪い」
「でも……」
「ん?」
 あの人がわたしの顔をのぞき込む。その顔は悪戯っぽく、悲しそうで、頑なで。だから、
「……はい」
「良くできました」

 何時の間にか、わたしはあの人に抱きしめられていました。その温もりが少し嬉しい。
 そして身を離すと、次ぎに何故か軽い拳骨。

「えーーと?」
「まったく、アンタは変なときに変な風に自虐的で」
「……」
「……一緒にいるから」
「えっ?」
「アタシはずっとアンタの傍にいるから。つまんない過去に惑わされるんじゃないの」
「ずっと?」
「そう、ずっと」

 ずっと傍にいる、ずっと一緒にいる。それはわたしにとって大切な約束。でもそれは、
「ダメだよ」
「ん?」
 そう、ダメだよ。だって、
「わたしは、使い魔組じゃないよ」
「はあ?」
「わたしはアルフやユーノとは違うよ」
 ずっと一緒、それはわたしとアルフの契約。その契約のもとアルフはわたしの使い魔になった。
 でも、わたしはこの人の使い魔にはなれ……

「全く。この、天然」
 ガチン。頭を叩かれた。
「家族で、姉妹なんだから一緒って事。当たり前じゃない」

 あははは、とこの人は呆れたように笑う。何時もと同じような笑い声だ。だけど、
 その笑い声の中に、なにか暗いモノを感じるのはワタシの気のせいじゃないはずだ。

 隣から伝わってくる優しい温度。直ぐ傍にはあの人の顔。ずっと望んでいた距離だ。でも、なにか違う。
 あの人の顔が、表情が違う。半年前なら分からなかった。でも今は、近寄りたくて、でも近寄れなくて、影から見ていたわたしには分かる。
 この人は笑っていない。笑っているようで、なにか隠して、辛そうで。それがなにか分からないのが悲しい。

 そう言えば、エイミィが言っていた。こんな時は……
 わたしはベットから半分起き上がり、この人の眼を見詰める。紅い瞳、わたしと同じ瞳の色。だからわたしは彼女に顔を寄せ。
 口付けた。


☆Side Alicia★


 唇に優しい感触。というかキス!! フェイトが?
 アタシはぱちぱちとビックリ眼でフェイトから身を離した。この娘ってもしかしてそういう趣味?
 ていうか、まだアイツにも許したこと無いのにぃ!!

「え、え~と、フェイト」
「えーーと、どうかな?」
「どうって?」
「元気に、なった?」
「えっ? えっ?、どういうこと?」
「えーとね、エイミィに教わったんだ。大事な人が元気が無くて苦しんでるとき、女の子はキスの1つもして元気づけてあげるんだよって」
「……」
「……」
「……」
「……えーと、元気になった?」

 え、い、みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! アタシの可愛い妹に変な知識を吹き込むなぁぁぁぁっ!!
 これがアタシだから良かったものの、変な相手だったらどうするつもり。
 たく、もう。だから、
「フェイト。こういうことは大事で大好きな人だけにするの! 元気ないからってやたらめったらするもんじゃないよ」
「でも、だから……」
「だから?」
「わたし、貴女の事が好きだから……」
 そう言ってきょとんと首を傾げる。なに、この可愛い生き物? 好き? アタシの事が? ラブじゃないよね、ライクだよね。
「ラブとライクって違うの?」

 うん、この子はこういう子だ。安心した。
 キスは、…………まあいい。ノーカンだ。
 家族で姉妹で女の子同士だもん。そこんとこスルーしないと、アタシのファーストキスの相手はロッテになっちゃう。ロッテとアリアとレティと父さんはノーカンだ。だからフェイトもノーカンだよ、うん。でもだ、

「そういう事、人に勝手にしちゃう娘にはお仕置きが必要かな?」
 と、フェイトの首根っこに左腕を回し、捕まえる。そしてそのまま抱き抱え。
「え、えと、なにするの?」
「良い事♪」
 そして右手を腰からパシャマの中に侵入。
 ん、お肌すべすべ。アタシとは違うね。そして手をそのまま上に。
 フェイトはくすぐったそうに身をよじるが無視。うん、アタシの方が大きいね、なにがとは言わないけど、そして、


☆Side Fate★


 あの人に抱きしめられ、そして身体をモゾモゾと。これってTVでやってた擽りの刑とかいうもの?
 わたしはずっと一人だった。だから人に触られるのに、慣れてない。だから、くすぐったくて暴れてしまうけど、少し嬉しい。
 あの人の手がわたしの胸に触れ、そしてまた動く。そして……
「……暖かい」

 胸の奥に温もりが宿る、だけではない。ジクジクと痛むリンカーコア、その痛みの大半が収まっている。その理由は、手。あの人の手。
 あの人の手を介してわたしに注がれる彼女の魔力。わたしとあの人は元々同じ人間だ。だからあの人の魔力はわたしの身体に良く馴染む。
 だからわたしは顔を上げる。直ぐ其処にはあの人の顔が。
「どう?」
「うん、暖かい。気持ち良いよ」
 そう、というと彼女は優しく笑う。もしかして、
「今日は、この為に来てくれたの?」
「まあね」
「そうなんだ」

 この人は何時もわたしに優しい。それは勿論嬉しい。
 嬉しいけど、何時までも□さんの優しさに甘えてちゃいけない。
 胸に染みこむね□さんの魔力。心、想い、そして強さ。
 弱い自分とは違う、一人で立てる□えさんの重み。
 わたしも動かなきゃいけない。ね□さんのように優しく、強くなるために。
 だから、わたしも口を開く。出来る限りの勇気を込めて。
「ありがとう、姉さん」

 初めてこの人を姉と呼ぶ言葉。ずっと言いたくて、ずっと言えなかった言葉。
 わたしの呼びかけに姉さんは目を丸くし、戸惑った表情を浮かべ、でも最後にはとびっきりの笑顔を返してくれる。
「どういたしまして、フェイト」
 笑顔と共に唇に返される優しい温度。

 その晩、わたし達は夜遅くまでいろんな事を話し合した。そして抱き合ったまま、何時の間にか眠りに就いていた。初めて過ごした二人の夜。

 身体を包む優しい温度と、心を繋げた強い想い。
 後になって想う。わたし達が姉妹として始まったのは、この夜からだったのだと。



PS1
 フェイトとシアの和解編でした。どうかな?
 ここで、アンケートというか質問。
 この流れを受け、もしもStsまで繋がった場合、フェイトの名前はどれがいいと思いますか。回答よろしく。
 ①姉妹仲良く、フェイト・テスタロッサ・グレアム
 ②プレシアが生きてるので、フェイト・テスタロッサ
 ③原作通りに、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン

 一応どのパターンでも行けるようにはなってるんですけどね。


PS2
 この一件が癖になり、フェイトは人肌がないと熟睡出来なくなった。なんてことは実はありそう?


PS3
 シアが夜這いをかけ、逆にフェイトに唇を奪われ、そして和解、というの無印のエピローグの頃から考えていた展開です。
 でもこんなリリカルタッチではなく、もっとシニカルに書く予定でした。なんだけど10歳の子供に難しく考えさせるのもどうかな、と言うことで大幅変更したと言う経緯があります。

 付録、と言うことで今回オリジナルヴァージョンの展開付けてみました。こっちの方が良かったかな?
 なおここは三人称でお送りします。


☆No Side★


 暗がりの中に浮かぶアリシアの相貌。しかしフェイトはその中に奇妙な事を見付けた。それはアリシアの右眼。
「眼、光ってる」
 明るいところなら気付かなかったろう。アリシアの右眼が僅かに光っている。
 それは暗い病室だからこそ気付いたこと。
 光を反射して、などと言うことはない。彼女の眼の奥、そこから光が漏れているのだ

「えっ、ああ」
 フェイトの呟きに、アリシアは罰の悪そうな表情を浮かべ、一旦眼を閉じる。そして再び開いたとき、さっきまでの光は存在していなかった。

「え?」
「右はね、義眼なんだ」
 フェイトの疑問の音にアリシアは苦笑を返す。

 ああ、そうか。フェイトは思った。この人はわたしと同じだけど、失敗作。半分壊れてて、機械で、わたしとは違って……
 ……
 …………!
 ……わたしは今なにを考えた!!
 自分の思いつきにフェイトは愕然とした。二人はおなじProject F.A.T.Eの産物。
 なのに一瞬ではあったものの、フェイトの頭をよぎったのは『失敗作』であるアリシアへの見下しと侮蔑。

 顔を上げるとキョトンとした『姉』の顔。
 しかしその中には、何処か自嘲したものがあるのをフェイトは感じた。
 それは何時も彼女の横顔を盗み見していたからこそ気付けるかすかな歪み。

 フェイトはそれを申し訳なく、悲しく感じた。
 こういう時、なにか力づけるためには……
 この時フェイトは、前にエイミィに聞いた事を思い出した。
『大好きな人が傷ついて、落ち込んでるときにはね……』

 だからフェイトは躊躇もせずアリシアの顔に手を伸ばした。頬に指を当て、顔を近づけ、ゆっくりと口づける。
 表面を触れさせるだけの、だけど確かにフェイトからアリシアへのキス。

 えっ!?
 それに仰天したのは勿論アリシアだ。
 少し距離が空いた二人の身体。それとは逆に顔を寄せ合い、互いの唇を触れ合わせている。

「どう、ですか」
 驚きのあまり硬直したアリシアから恥ずかしそうに距離をとると、フェイトはなにか期待したかのように小首を傾げた。
 アリシアはその表情に逆にその表情にバニクる寸前。彼女にとってフェイトはこうことをする娘ではないからだ。

 そうだ、フェイトがそんな事するはずはない、だってこの娘は……
 ……
 …………!
 ……ああ、そうか。
 アタシがフェイトの何を知っているの? アリシアは心の内で自嘲する。
 同じように作られた同じ人間。それは確かに『妹』と呼べる存在だろう。だけどアリシアはフェイトの何を知っているというのか? フェイトが今までどういう風に暮らしてきたのか。何を考えてきたのか。それを本当に考えたことがあったのか。
 所詮アリシアにとってフェイトとはおなじ遺伝子を持った他人でしかない。

 アタシはフェイトの事をなにも知らない。そうだよね、これじゃあ懐いてくれないわけだ。アリシアは心の内で自分を嗤う。


 う~ん、暗いなぁ……。リリカルどころかシニカルでもないかも。
 なお、アリシアの右眼が義眼と言うのはこのシーンの為だったりしました。



[11860] A's編11話 なぜなに『闇の書』、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/10/20 21:15

☆Side Nanoha★


 今日は珍しくすずかちゃんからお誘い。なのですが、
「ごめん、今日は……姉さんと約束があって」
 フェイトちゃんは来られないようです。
 シアちゃんは学校に行っている私達の代わりに待機任務に就いています。なのでシアちゃんの用事は大事にしたいのですが。

「仕方ないわね」と、胸を張って偉そうなアリサちゃん。
「なんか知らないんだけど、やっと仲直りできたんでしょ。だったらお姉さんに甘えてきなさいよ」
「はい」
 嬉しそうに恥ずかしそうに笑うフェイトちゃんがなんだか可愛くて、私達も顔を見合わせて笑ってしまいます。
 だからお見舞いは私達だけで行くことになりそうです。でも、
「えーと、そういえばなんて名前だっけ? すずかの友達の娘って」
「うん、八神はやてちゃんって言ってね……」


☆Side Tre★


 管理局の駐屯所とは言え、管理外世界の臨時施設など潜入は容易い。ましてや現地のマンションの一室など問題にならない。
 で、ドクターに頼まれたアリシアお嬢様へのお届け物だが、さてどうやって接触したものか。
 管理局の局員達は皆自分達の船に戻っているようで、今はお嬢様一人。でもいきなり声を掛けてよいものだろうか?
「あ~ら、トーレお姉様ぁ。ここはあたくしにお任せください♪」
 ……そこはかとなく不安だがクアットロは一応参謀タイプ。私より適任ではあるだろう。が、私から荷物を受け取るとクアットロは堂々と部屋の中に、おい、踏み込んだ。

「こんにちは、アリシアお嬢様ぁ♪」
「…………えっと、貴女、誰?」
 おい、思いっきり不審人物扱いされてるぞ。なお私達が着ているのはいつものボディスーツ、ではなくて潜入用に買った現地の女性モノだ。下がすーすーしていまいち落ち着かない。

「はぁい、アリシアお嬢様ぁ、貴女に耳寄りな情報をお持ちしましたぁ」
「情報?」
「はい、貴女のお養父様ぁ、グレアム提督の大事な大事な情報ですぅ」
 ……おい、なんの話だ。お嬢様の表情が怪訝そうになってるぞ
「はい、お嬢様が今追っている『闇の書』事件。それに貴女のお養父様とお姉様達がどう関わっているか」
「お姉様?……、リーゼ達のこと」
「はい、如何に管理局高官といえど裏であそこまでやられますと……ね」
 そういえばクアットロは基地を出る前に管理局のデータベースにハッキングを掛けていた。なにか極秘の情報でも手に入れたのか?アリシアお嬢様も何が何だか分からないように首を傾げて居るぞ。
「大丈夫ですよ、お嬢様ぁ。この情報を知っているのはあたくし一人だk……」

  ブン!!!!!!!

 え?
 高速戦用の戦闘機人な私だから分かった動き。アリシアお嬢様は何時の間にか展開していたデバイスで、クアットロの首を薙ぎ払っていたのだ。
 肉体強化の魔法を込めた、常人なら絶命必至の勢い。だがその一撃はクアットロには命中せず、その姿をかき消しただけだ。クアットロのIS、<シルバーカーテン>だ。
 私にも気付かせないまま、クアットロは自分と幻影を入れ替えていたのだ。

『危ないですわねぇ、アリシアお嬢様ぁ』
 どこからか聞こえてくるクアットロの声を無視し、アリシアお嬢様はデバイスを右脇に抱え込んだ。そして空いた両手で耳を塞ぐと、
「お願い、リニス!」
≪了解≫

 次の瞬間、私は身体のバランスを崩して倒れ込みそうになった。高機動用の体内ジャイロに頼り、倒れそうな身体をなんとか持ち直す。
 センサに残る信号。おそらくは超音波。……そうか、エコロケーション。

 コウモリやある種の海洋生物が持つ超音波を使った位置測定方法。
 デバイスの演算能力があれば、同じように超音波の反響で相手の位置が特定出来る。それに使う超音波に私達の三半規管がやられたのか。

 管理外世界でアリシアお嬢様と接触した際に、クアットロの幻術は見せてしまっている。敵か味方か知れぬ我らに対抗策を練っていられても不思議はないのだ。
 クアットロの幻術は主に視覚と電子データに影響をもたらす。だが音波対策など出来ていない。ましてや、

  ドタン!!

 耳が聞こえていたらそんな音が聞こえたろう。そこには三半規管を麻痺させられ、倒れ込んだクアットロの姿。
 アリシアお嬢様はそんなクアットロに左手を向け、手首をもたげる。
 ……拙い。なにか分からないが嫌な予感が背筋を走る。これが戦士の勘というヤツか。たから私は咄嗟に、
「(クアットロ、頭を引っ込めろ!! 」)
 肉声と念話で叫んでいた。
 咄嗟に避けたクアットロの頭、その頭髪を一房切り跳ばして、何かが走った。
 棒? 鞭? それはアリシアお嬢様の左手首から発射され、そして元の位置に引っ込んでいく。……あれは自在槍?

 一旦引っ込んだ槍をもう一度発射。しかし参謀型で戦闘用ではないとはいえクアットロも戦闘機人。
 発射されたそれを何とか掴んだ。そこで黙ってれば良いのに、

「おやおやアリシアお嬢様ぁ、これで終わり……」
 その時だ、槍の穂先が展開した。一旦細かいパーツに別れ、再構成。そして、

  ウゥゥゥィィィィィィィィン!!

 ……回転。これって……
「ドリルぅ!?」
 クアットロの眼前で回るモノ。それは正しくドリルそのものだった。幾ら我々の頭蓋といえあんなものなら一発だ。

 いずれにせよ放っておく訳にはいかない。
 私が<シルバーカーテン>の幻影から抜けると、アリシアお嬢様は舌打ち一つ。
「リニス、緊急コード2発動!」
≪了解≫
 デバイスになにか命じると辺りが僅かに暗くなる。これは……結界?
 そうか、ここは一応管理局の施設。こういう用意はしてあって当然か。だが、

「お待ちください。アリシアお嬢さ……」
 返事はわたしの胸にピタリと向けられたデバイスだった。アリシアお嬢様の視線はクアットロに向いている。しかしまるでデバイスに眼が付いているかのように、ソレは私に真っ直ぐ向けられていた。その驚きが隙になる。その隙を突いて、

「フェイトぉぉぉぉ!!」
 パリリリィィィーーン!

 アリシアお嬢様の叫びに応えるように窓を撲ち割って飛び込んでくる黒い影。それは黒いBJに金色の髪の少女。
 フェイトお嬢様だ。
「姉さん!? どうなって……」
「そっち、任せた!」
「はい!」
 躊躇わずに応えるフェイトお嬢様。ち、ちょっと待って欲しい。
 だがフェイトお嬢様はアリシアお嬢様の指示に迷わず悩まずデバイスを展開、私に斬りかかってきた。
 フェイトお嬢様の武器は長モノだが、お嬢様自身子供で背丈がないため室内でも何とか振るえる。
 私も仕方なくブレードを展開しお嬢様の攻撃を受けるのだが……やりにくい。
 僅か9歳とは思えない鋭く激しい剣筋。受けるのに精一杯と言うわけではないが、無傷で制圧出来るほど甘くはない。
 これが互いの技量を競うというのであれば心沸き立つモノがあろうが、今はそんな場合ではない。
 さてどうする?

 答えは簡単にでた。おそらくアリシアお嬢様相手では下策だろうが、フェイトお嬢様には有効なはず。即ち、
「お待ちください!」
 言葉と共に、私は武装を解除した。

「えっ?」
 デバイスを振りかぶった姿勢で、フェイトお嬢様は動きを止めてくれた。助かった、これでなんとかなる。
「アリシアお嬢様、フェイトお嬢様、愚妹の言った戯れ言は謝罪いたします。我々は貴方方にも、あの方達にも危害を加えることは在りません。全てはその妹の悪ふざけに過ぎません」
「悪ふざけ?」
 フェイトお嬢様はコクリと首を傾げ、その眼が私とアリシアお嬢様の方を行ったり来たり。

 クアットロも流石に場を読んだように
「そ、そ、そうなんですぅ、場を和ます軽いジョークを……」

  グゥァゥゥィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!

 訂正、読んで無かったようだ。アリシアお嬢様のドリルが一層激しく回り、クアットロの謝罪が延々と続いた後、それはやっと停止してくれた。
 やれやれ。


☆Side Quattro★


「さて、改めて名乗らせていただきます。私はトーレ。ドクター・ジェイル・スカリエッティ麾下の戦闘機人、ナンバーズの一員です」
「同じくクアットロと申しますぅ。よろしくお願いします、アリシアお嬢様ぁ、フェイトお嬢様ぁ」
「はい、よろしくお願いします。フェイト・テスタロッサです」
「アリシア・テスタロッサ・グレアムだよ、よろしく。
 でもなんでアンタ達が? アタシはてっきりドゥーエが来るもんだと思ってたんだけど」
 まあ、普通はそう思うでしょうね。

「いえ、実は我々は極秘にお二人の護衛も任されていまして、直接戦闘向きでないドゥーエは今回外されています」
「アタシ達の護衛? は置いといて、極秘?」アリシアお嬢様は首を傾げた。「ん? この前の管理外での一件、今になって分かったけど、二人の仕業だよね? あれって極秘の護衛として拙いんじゃない?」
 はい、確かにそうですわよねぇ。トーレお姉様ぁ。

「はい…… あれは私の独断です。あの場面で水を差す守護騎士達が許せなくて思わず。申し訳ありません」
「ううん、そんなことない!」
 え? フェイトお嬢様?
「貴女のおかげでなのはの怪我が軽くてすんだ。本当にありがとうございます」
 トーレお姉様に真っ直ぐ頭を下げるフェイトお嬢様。うん、素直な良い子ですね。ウチのドライちゃんも良い子だけど、この子も良い子。お姉さん嬉しいですわよ。

「いえ、そう言っていただけると光栄です。でも」
「でも?」
「そうやっている姿は、先程の勇ましい人物と同じ方とは思えません」
「勇ましいって、わたしなんて、まだ」
「いえ、鋭く真っ直ぐな剣筋でした。その歳でよく修行なされた」
「いいえ、トーレさんこそ強かったです。全部弾かれて、もうどうすればいいか分かりませんでした」
「恐縮です」
「……えーとですね。それじゃあ、もし良ければ、また戦って貰えませんか?」
「私で良ければ喜んで」
「はい、よろしくお願いします。でも……」
「でも?」
「次は、わたしが勝ちます」
「私もそう簡単に負ける気はないですよ」
 フフフフフフッと笑う二人。……良い子と評価したのは間違いですね。何処がどうなるとこういう会話に繋がるんですかぁ? この子ってトーレお姉様と同じバトルマニアなのですか?。
 一見大人しそうな雰囲気と、中身は別物なのですね。全く。

 ふうと肩を竦めたあたくしは、同じように肩を竦めたアリシアお嬢様と目が会った。お嬢様が浮かべた生暖かい表情、それはきっとあたくしの顔に浮かんでいるのと同じモノなのでしょうね。
 困ったような、でも何処か暖かい表情。さっきのあたくしを殺そうとした顔とは全く違います。

 いえ、違いますねぇ。
 あの時アリシアお嬢様はあたくしを殺そうとしたんじゃない。自動的に反射的に本能的に傷害『物』を排除しようとした、が正しいのでしょう。
 さらに言うなら短絡的なところはありましたが、なにも考えていない訳じゃ在りませんでしたね。
 プロジェクト・デュランダル。ギル・グレアム提督が中心となって、管理局一部上層部の協力を得て進めている極秘プロジェクト。ドクターにも内緒であたくしの独断で調査したSSランク秘匿情報。
 ふふふ、あたくしのハッキング能力を舐めて貰っては困りますわ。それに、管理局のデータベースには、あたくししか知らないバックドアが沢山仕掛けてあるんですから。

 アリシアお嬢様はプロジェクトを嗅ぎつけたのがあたくし一人と判断して、それから排除に来ましたわね。冷静に、全力で、容赦なく。
 全くどう育てばこんな性格になるのやら。ふふふ、なんか興味がありますわねぇ。

 アリシアお嬢様はドクターのご友人とのこと。なら、これからもご一緒する機会はありそうですね。
 でも……ご友人? ドライちゃんのお姉さんなのに同格の友人?

「でも姉さん。この人達って姉さんの知り合いなんだよね? どういう人達なの?」
 おっ、フェイトお嬢様。良いところで振っていただけました。どういう人か知ってから、再戦の約束した方がいいという意見は置いておいてあげましょう。
「うん、個人的な知り合いだよ。局とは関係なく知り合ったんだ。だけど、ね」
「だけど?」
「でも一応、管理局の関係者なのさッ。ただし裏のね」
「裏の?」
 あたくし達が局の関係者? なんか心外な言われ方ですわね。一応ドクターの活動資金は管理局から出てるんですけど。

「フェイトも一応もう9歳なんだから、本音と建て前、偉そうな組織にも裏があるって分かるよね」
 えーーと、ここは突っ込むところなんですか?
「例えば、ほら、一昨日の晩、ココのTVでやってたじゃない。法じゃ裁けない悪人を裁くために、国家警察が裏で殺人部隊を作って全力全壊って」
「えーと? うん、一緒に見たあれだね」
「あれの管理局版だよ。法律的に表立って出来ない研究をするために、管理局のお偉いさんが裏で作った実験部隊。そこのボスのマッドサイエンティストがアタシの友達なのさッ」
 やはりマッドサイエンティストという認識されてますのね、ドクター。

「えっと、でも姉さん、どうしてそんな人と知り合いなの? もしかして、オジ様の関係?」
「いや違うのさッ、アリシア……オリジナルの幼馴染みというヤツさッ」
「幼馴染み?」
「というか、元々あの女……」
「……」
「おん……」
「………………」
「お…………………」
「…………………………」
「……………………………お母さんの弟子みたいなもんで」
「うん♪」
 なにこの会話? あたくしもトーレお姉様も息を飲んでしまったじゃありませんか。

「PT事件の事を知って、アタシ達の存在に気付いて、会いに来たのさッ。幼馴染みのアリシアに、ね」
「……幼馴染みのアリシア」
「そっ、フェイトの記憶にもないかな? 研究所時代に一緒に遊んだ男の子の記憶」
「男の子?」
 フェイトお嬢様は目を瞑ってなにか考え込み、
「えーと、誰か大事な人と離ればなれになって、寂しかったって感じが」
「そうそう、多分そいつだよ」


☆Side Alicia★


 ジェルの処の二人が帰ってから、アタシはエイミィに結界展開した言い訳とかして、部屋でのんびり。
 というか頭の固いクロにぃに、ジェル達の事を言うわけにはいかない。フェイトにもちゃんと口止めしておいた。アタシと同じアリシアクローンで、それらしい共通記憶があるフェイトにとっても、ジェルは全くの他人という訳じゃないしね。

 ということで、ジェルに調べて貰った『闇の書』の資料をペラペラ捲る。
 基本的にユーノが無限書庫から発掘したものと同じだけど、色んなところで違いがあったりする。
 重要なところに付いているジェルの考察もありがたい。
 ユーノの資料と同じモノを見ても、全く別の結論が出ているのも面白い。ユーノやクロにぃが幾ら優秀といったって、次元世界トップクラスの頭を持つジェルとは見えるモノが違う。それも仕方ないのかな。

「お茶、入ったよ」
「ん、ありがとなのさッ」
 キッチンでゴソゴソしていたフェイトがお茶を入れてくれた。隣に座ったフェイトにお礼を言って、一息いれるとしよう。

「なにか役に立ちそうなこと、分かった?」
「ん? ん~~と。ああ、『闇の書』はロストロギアじゃ無いんだって」
「え?」
「ベルカの考古学者の論文? だけどね、なにやらめんどいこと言ってる。あとで読んでみるといいよ」
「ふ~ん」
 と、フェイトの前にウィンドを一つ弾く。
「まあ、それは本筋じゃないんだけどね。面白いことが色々分かったよ」
「面白い事?」

 そうだね。ココからかな?
「そうだね……。『闇の書』って、強いて言えばデバイスの範疇に入るモノみたいなんだ。
 でね、フェイト、『闇の書』ってどういうことをするデバイスだと思う」
「どういうこと?」
「こういう機能があるとかないとか?」

 フェイトは少し考え込んで、
「えーと、シグナム達守護騎士を呼び出して、魔法を集めて、転生する?」
 うん、管理局が対処してる『闇の書』問題ってそんなレベルだよね。でも、

「ジェルのレポートに寄るとこんな感じかな。
 魔法蒐集、術式管理、自己保存。それが『闇の書』三大理論」

 蒐集はまず、『闇の書』自体の蒐集機能に、サポートシステムであり主の剣である守護騎士システム。
「サポートシステム?」
「守護騎士って本来効率よく魔法を集めるための攻勢プログラムらしいよ。人格コピーらしいけど古代ベルカの強力な魔導師って騎士だから、それに釣られてアイツらも騎士を名乗ってるんじゃない?」
「……」

 古代ベルカに存在した名だたる騎士達の思考パターン、それと『闇の書』の主の嗜好を元に、その時の主が望む姿の騎士達を構成する。それが守護騎士システム。
 過去の『闇の書』事件の騎士達が全て違う姿をしていたのはそういう事らしい。一応記憶の引き継ぎはあるらしいけど、正しく伝わってないらしいとの情報もあり。
 ……主の嗜好ね。
 シグナムとかベータとかの姿からすると、…………正妻、愛人、子供、番犬?
 てことはそれを望んだ主って、中年の独身のおっさん当たりなのかな。うん、これは情報源伏せてクロにぃにも伝えておこう。

「次に術式管理は魔導データベースとしての術式管理システム。んでそれを使用するための超強力な演算機能、よーするに普通のデバイスがやってる機能だね」
「超強力って、そんなに?」
 うん、強力だよ。『闇の書』ってベルカ式のデバイスだよね。
 だけど『闇の書』はミッド式とか魔法生物とかの魔法も使える。てことはベースのベルカ式の上でいろんな術式をシュミレートで走らせてるって事。決まった術式だけって事じゃないから、エミュレートってことはないしね。

「それに『闇の書』って本来はユニゾンデバイスらしいんだ」
「ユニゾン?」
「ん~、わかりやすく言えば”合体”かな? 主とデバイスが合体するの」
 マリヤに話だけは聞いたことがある。古代ベルカにはそういうデバイスもあったって。現存するモノはほとんど無く、古代ベルカ崩壊のゴタゴタで作成技術もパー。で、古代ベルカのロストテクノロジーだとか。

≪I'm impossible Sir≫
 ……だからフェイト、バルデッシュを取り出して自分達が合体出来るか確認しないように。その素直さ、お姉ちゃんは心配だよ。

「自己保存としてはまず自己防衛プログラムかな。これが一番凶悪みたい。『闇の書』自体が被害に遭うと思ったら、主無視して暴れ回るという」
「えっ? それじゃあ」
「うん。例えば主が管理局に投降するなんて判断しても、『闇の書』にそれに納得して貰わなきゃ何とも出来ない。だから……」
「? だから?」
「ん、なんでもない」
 そう、なんでもないのさッ。

「あとは所謂転生システムだね。一言で転生機能というと簡単なんだけど、次元世界をサーチして、自分に相応しい主を捜すってドンだけリソース使うのか想像も出来ないし。ね、リニス」
≪ワタシとアレ、一緒に考えないでください≫
「と、デバイスも呆れる機能みたいだね」


「でだ」ここからが本番「機能、多すぎると思わない」
 そう。ロストロギア……じゃなくてロストロギア級デバイスとしても、出来る事が多すぎる。

「古代ベルカのオーバーテクノロジー、ロストロギア級の超級デバイスとしても色々詰め込みすぎ。
 色々無理した所為でデバイスの総合バランスが悪くなって、機能不全に陥っている。というか、多すぎる機能が干渉して変な具合に安定化してるって。
 要するに『夜天の書』って元々不完全で欠陥品だったって事。それがジェルの推論」

「ちょっと待って」
 なにかな、妹?
「それじゃあユーノが言ってきた事って? 悪質な改変を受けたって」
「改変を受けたって、それ何時の話なのさッ?」
「何時って……」
 そう、何時、何処で、誰に。なにも分かっていない。

「ユーノが言ってきたのは、ユーノが調べた情報の中で、ユーノが尤も在りそうと推測したものでしょ。『夜天の書』と『闇の書』の比較、そこからそう結論づけただけ」
「だって」
「それに基本的なこととして、無限書庫にデータが在ったとして、それが正しいって何で言えるの?」
「なんでって」
「一次情報があるわけでなし、精々三次や四次情報でしょ。それに量も少ないし。クロスチェック出来ない情報なんて参考にする分には良いけど、絶対視しちゃいけないのよ」
「…………
 そうか。ユーノの言ったこともあやふやなデータを元にした推測に過ぎないんだ。それを鵜呑みにしちゃいけないってこと」

 そういうこと。だってそういう風に、
「ネコさんが言ってました」
「へ? ネコさん?」
「父さんの部下の人だよ。クロにぃと同じ執務官なんだけど、クロにぃとは違って頭脳派。アタシのまあ、師匠の一人かな。フェイトもそのうち嘱託で世話になると思うから、勉強させて貰うといいよ」
 艦付き執務官のクロにぃより、独立捜査権限を持っているネコさんの方が圧倒的に優秀。戦力判断もリスク管理も上。クロにぃの下にいるよりお姉ちゃんとしては安心出来るし。
「わかった」
 うん、よし。

「でも、そのジェイルさんの言うとおり『夜天の書』が最初っから欠陥品なら、なんで最初っからそうなってないだろう?」
「ん、え~~と」
 確かこの辺に? あった。
「えーと、情報操作らしいよ」

 『闇の書』は古代ベルカ時代にすでに危険物として扱われていた。当時の情報は今は残ってないけど、逆に古代ベルカ時代には『夜天の書』を作った人とか組織とか団体は特定出来たはず。
『闇の書』が最初から欠陥品だと言うことが知れたら、その制作者達がどんな目に遭うか分からない。

「だから不特定の主が改竄した事にして、ソイツに罪をなすりつけたと」
「…………………そっか」
 なんか、アレな話だ。でも、

「でも、改竄されたって考える余地もあるのさッ」
「えっ?」
 どう説明するかな? うん、こうかな?

「えーとね。『闇の書』ってなにを蒐集してるかな?」
「え、魔法だよね?」
 残念。
「ちょいと違う。今の『闇の書』が集めてるのは魔力だよね」
「うん、たしかに魔力だよ」
「でも元々の『夜天の書』は何のために作られたのかな? なにを蒐集するべきなのか?」
「えーーと、……あっ!」
 気付いたみたいだね。
「そう。『夜天の書』はもともと魔法術式を集めるためのデバイスなのさッ。でも……」
「今の『闇の書』が集めているのは魔力!」
 そう、魔法術式という『質』を集めるべき『夜天の書』は、今『闇の書』として魔力という『量』を集めている。これは明らかな矛盾だ。

「そもそも術式を集めるなら、なのはを狙うこと自体変なのさッ」
「えっ、そうなの?」
 あれ、フェイトそういう反応? …………ああ、そうか。
 今回再会したら、バルディシュとレイジングハートが壊れて。
 デバイスが直ったらカートリッジ機能の習熟でかわりばんこで訓練。
 その後なのはが入院して、この前までフェイトが入院。
 フェイトとなのはって一緒に魔法訓練したことないんだ。
 ならなのはがどういう魔法使うか、フェイトはまともに知らないんだね。

「なのはが使う魔法は砲撃魔法のディバイン・バスター、射撃魔法のディバイン・シューターをベースにしたいくつかのバリエーション。
 プロテクション2種類と、バインドが3つ。それと飛行魔法のアクセルフィン」
「うん、それで?」
「お終いだよ」
「……え?」
「これでお終いなのさッ」
 治癒とかの回復魔法も、転送とかの補助魔法も無し。結界張るのはレイジングハートに丸投げ。儀式魔法なんてそれって美味しいの? のレベル。
 バリアブレイクするより砲撃で吹き飛ばした方が速いって、そういうのも無し。
 本当に直接戦闘用の魔法にしか興味をしめさないの。……なのはの魔法の先生としてアタシは非常に不安。

「スターライトは?」
 スターライトブレイカーは元々はディバイン・バスターに、アタシのゼロドライブ・ブレーカーの収束術式を加えたモノ。なのはが収束技能を持ってたから対フェイト用に一緒に組んだのさッ。
 もっともアタシがあの女の攻撃で倒れていた間、なのはは術式に色々手を入れてたから今では別物になっているけどね。それでもディバイン・バスターのバリエーションであることには替わりないし。

 アタシはデスクに置いたカップをピンと指で弾く。小さなミッド式の魔法陣が一瞬輝き、冷めかけていたお茶は再び湯気を立て始める。
 フェイトも同じように指先でピン、と。こっちも同じようにお茶が温まる。
「こういう便利な魔法も覚えようとはしないんだよ」
「えーーと……」
 フェイト、アンタもなのはが戦闘用じゃない魔法覚えるように協力してね。こんななのはの性格が上に知れちゃって、なのはを管理局にスカウトしようとなにやら動きがあるみたいなんだ。
 子供を局に関わらせないようにって父さんが防波堤になってるみたいだけど、父さん自体管理外世界出身で、子供の頃から管理局に関わってたから強気に出られないらしくて。

「話を戻すとね」
「うん、話を戻そう」
 逃げたね、フェイト。
「本来、アタシ達の中で『夜天の書』のターゲットとして一番相応しいのは、多分ユーノだよ」
「ユーノ? クロノじゃなくて?」
 ううん、ユーノだよ。
「クロにぃはなんだかんだって戦闘用の魔法中心。オールラウンダーだけど術式はそう多く持ってないの。だけどユーノは」
 考古学者で、フィールドで発掘作業とかにも従事するユーノは戦闘用以外の色んな魔法も知っている。学者らしい好奇心で面白そうなのは試しているという話も聞いたことがある。

「なのにあのプログラム達はなのはやアタシ達には興味を示すのに、ユーノには興味を示さない」
 ユーノを蒐集するチェンスは結構あったのに、魔力の大きなアタシ達ばかり狙っていた。
「確かに変だね。でも」
 そう、でも、だ

「そんな事悩んでも事件解決の役には……」
「立たないんだよね~」
「きゃん♪」
 アタシはソファにゴロリと寝転ぶ。手を伸ばしてフェイトを引っ張って、抱き枕に。

「その辺、一応、想像はできるのさッ」
 魔力資質が今一な主の元に飛んで、その主が術式と一緒に魔力も蒐集出来るように改造した。
 いや、改造じゃないのかも知れない。高度な技術で作られた『夜天の書』は、魔導知識の乏しいポッと出マスターが手を入れられるほど甘い物じゃないはず。
 例えば『夜天の書』に元々隠し機能として魔力蒐集モードみたいなのがあって、隠し機能だからデバッグが不十分で、使ってみたらバグっていたとか。で、そのモードの名が『闇の書』モードだっりして。

 本当にだからどうしたって話だ。学術的には意味があっても捜査的には役に立たない。
 なにやらクロにぃは『夜天の書』の情報に悩んでいたけどアタシ達の、いや、アタシのすべき事に変わりはない。

 アタシは、あの時のリー……じゃなくて、デルタの台詞を思い出す。
『何をすべきか、今は考えろ。お前の出番はまだ先だ』

 そう、アタシの出番は、そろそろなのさッ。


☆Side Fate★


 資料チェックで疲れたみたいで、姉さんは今わたしの膝を枕にお昼寝中。マルチスキルって便利だけど、その分疲れるんだ。
 今日は姉さんに料理を教えて貰う約束だったんだけど……、いいや、もう少し眠らせてあげよう。
 姉さんの寝顔を眺めているのも楽しいけれど、折角だからジェイルさんの資料を読んでみる。最初はえーーと、姉さんの推薦から。 なになに……なるほど。古代ベルカのロストロギアって呼び方、間違いなんだ。

 要約するとこうかな?
『ロストロギアとはなにか? それは技術が進み、滅びた世界が残した遺産である。
 ではベルカという世界は滅びたのか? 否、ベルカは滅んではいない。
 滅びたのは王朝支配による古代ベルカという"国"である。ベルカという世界は政治体制を変え、管理世界と看板を付け替え現在まで存在している。故に古代ベルカという"国"は滅んでも、ベルカという世界は滅びてはいないのだ。
 滅んでいない世界の魔法遺産をロストロギアと呼ぶ? それは明らかな間違いである。古代ベルカの遺産はロスト・テクノロジーとよぶのが相応しい。
 最近の若い研究者や管理局のボンクラどもは言葉を知らず、取りあえず分からないものは全てロストロギアと一纏めにしたがる。
 言葉を大切に、その定義を明確に。それをおざなりにすると研究者してあーたらこーたら、そーたらなんとか………』

 そうだ。言葉は大事だ。
 言葉がないと、話じゃなくてお話になっちゃう。お話は…………、痛いし。
 うん、変なことは忘れよう。でも、

 わたしはジェイルさんのデータを捲る。
 ユーノの資料を見ても思ったけど、読めば読むほど『闇の書』への対処が難しいのが分かっていく。
 書だけを押さえたんじゃダメ。
 主だけを押さえたんでもダメ。
 そう……、でも手段がない訳じゃない。
 姉さんだ。
 姉さんと、姉さんの手の中にはそれを何とか出来る力がある。でも、

 わたしが気づけること、それに姉さん、いや、この人が気づかないわけがない。
 なのに、この人は何も言わない。そう見せない。
 ううん、でも、きっと、それには何か理由があるはず。
 だから、わたしはこの人を信じる、そう決めた。

 だって、この人は、アリシア・テスタロッサ・グレアムは、わたしの姉さんなんだから。


PS1
 所謂スカレポートの回。なにげに長い。でも遅れた。
 決してFF14用に新PCを組んでいたり、データ移行にトラブったり、キャラメイクを悩んだ所為じゃないですよ。
 仕事が忙しかったり、体調崩した所為です。
 え、今のレベル? 最高12でフィジカル18です。


PS2
 機能干渉によるトラブル。
 これはAs編3話、シアの身体のトラブルとして前振りしていました。気付いたかな?
 この辺の話、リアルではケータイのプログラム開発の難しさとかで有名。最近の話だとト○タのプ○ウスのリコール問題も、これが原因の可能性かと言われてます。機能の詰めすぎって、実は結構問題なんですよ。


PS3
 四局、これでメンバー決定。
・管理局チーム
 クロノ、リンディ、なのは
・『闇の書』組
 シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ
・デュランダルチーム
 グレアム、リーゼ姉妹、一部管理局上層部
・予備計画チーム
 アリシア、フェイト、ネコムラ、マリヤ、スカ一味

 ……なんか妙に貧弱なチームがある気がする。気のせいだね、きっと。
 また10話で書いたように、動きがおかしいレティがデュランダルチームだったりしたらとってもシニカル。


PS4
 気づいた人も居るでしょうけど、揺れ戻しというヤツで、この時点のフェイトはシアに依存しかかっています。
 それに気付いて矯正するためシアは後で苦労することになります。まあ空白期というヤツですね。


PS5
 シア-クアットロ・腹黒仲間フラグ
 フェイト-トーレ・ライバルフラグ
セット終了。
 これで予告したフラグはコンプ? ああ、シアでガンマ倒すのがまだか。




[11860] えーすな設定というか雑記、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/08/23 19:42
 本編読むのには関係ない裏設定なモノを並べてみました。今回はA’s時代からプレStsまでという感じで。
 まあ想像というか、妄想というか、一つお好きに。
 勿論流用可、ただし自己責任でどうぞ。


1.人物裏設定

・オリ主
 シア(アリシア・T・グレアム)
 時空管理局本局付き嘱託魔導師。
 シア・インバースではないことに注意。
 その正体はプロジェクト・デュランダル予備計画、そのもの。

 言わずと知れた本SSの主人公。なんだけどヒーローというより、トリックスターとか黒幕って立場が似合ってくるのは、色々不味いかも。(なお、ヒロインはフェイトです。)

 魔導師ランクは総合AA。敢えて高ランクを取っていない。
 プレ1話でも書いたけど、魔法は戦うためだけのものじゃない、子供の頃から高いランクを取るのは心の成長を歪める元になる、というのがグレアム家の家訓。グレアムさんはマーリン伝説がある国の出だから、魔法にロマンを持っているから。
 またプロジェクト・デュランダル予備計画であるシアに、行動上の枷を付けない為でもある。
 実力的にはオーバーSというか空戦S(短期決戦に限るならS+)。Sts時にS-のシグナムよりこの時点で強い。
 ただし技能的、デバイス的にカンスト。肉体的に成長して多少強くはなるがSSに行くかは微妙。最終的にフェイト達と並ぶ感じ。

 リリなのキャラらしく精神的に歪みを抱えている。
 それは『父や皆に認めても貰った自分は幸せで居なければならない』という一種の脅迫観念。それを妨げるモノには過剰行動に出る。(オリジナル・アリシアに対する過剰反応や、シャマルの腕を躊躇わずに切り落としたのはこれが原因)
 SSでよくあるフェイトの歪み、『皆のために頑張る』とは真逆の方向と言えるが、起点は同じ。流石、元同一人物。
 この歪みが問題視されていないのは、シアは自分が幸福でいる為には周りの人間も幸せじゃないといけない、と認識しているため。この為、一旦身内判断した相手にはシアは親身で優しい。

 最近、自分の体のメンテナンス費用を知った。父親が管理局幹部で自分も嘱託だから管理局持ちになっているけど、管理局以外に就職した時、とても自分では払えそうにない金額だったりする。この為、将来は管理局入局以外の道はない、と少しブルー。

PS:実はこれはギンガ・スバル・ナンバーズも一緒。スバルは戦うの嫌がっていたけど、現実問題として管理局に入って、自分の維持費を局持ちにするしか彼女に未来はない(局員なら食堂代金も局持ちらしいし)
 組織を離れた(戦闘用)サイボーグが自分の体のメンテナンスに苦労するのは古くは”サイボーグ・ブルース”からのテーマ。仮面ライダー(漫画版)はお金持ちみたいで個人でメンテスタッフ抱えてたけど、そういうのは普通無理。


 半戦闘機人なシアには微妙なギミックあり。

・左手
 義手。無印時はロケットアームが付いていた。ただしAs本編で書いたように色んなギミックを積んだ複数の腕が用意されている。
 リーゼ姉妹が違法研究者から押収したモノ、ということになっているが、『予備計画』のために(グレアムとかが趣味に走って)作ったモノがあるとかないとか。

・右目
 義眼。望遠、暗視機能はあるが、旗を出したりは出来ない。
 一種の情報端末であり、必要なデータを視覚情報としてシアに提供する。イメージとして某キングな海賊王とか、猿の名を持つ探偵の目の劣化版という感じ。
 リニスと特殊な回線で接続されていて、リニス経由で外部ネットワークにアクセス可能。特に戦闘時にはリニスのターゲットスコープとして射撃能力を強化する。(Sts時のディエチのイメージ)


 シア専用オリジナル魔法
・フレイズ・キャノン
 ブレイズ・キャノンの凍結属性付き強化版。
 シアの砲撃ってブレイズ・キャノンの上がゼロドライブ・ブレーカーだった。威力的に違いが在りすぎるので間を埋めるために設定。なのはで言えばエクセリエン・バスター的な位置づけになる。
 ……フレイズという英語がないのは知ってる。でもきっとミッド語には『凍る』とかいう意味できっとある……

・ゼロドライブ・インパクト
 ブレイク・インパルスの凍結属性付き強化版。と思っていたが、書いたときは別モノになってしまった。
 凍気などをぶつけるのではなく、対象の分子運動(ブラウン運動)を直接減衰させる魔法。このため相手が高温を持っていても無視して凍結できる。
 ゼロとか言っているが絶対零度まで下がるほどチートではない。対象の質量にもよるが、フルドライブで10Kくらいまでと思ってください。
 対シグナム戦が印象的だが、実は初出はプレA's1話だったりする。

・スティンガーブレイド・ブリザードシフト
 エクスキューションシフトの凍結属性付き強化版。
 いくつかのSSで、クロノがデュランダルを使って『コキュートスシフト』を撃っている。初出が分からないし、差別化を図るためブリザードにしてみた。どうかな?、

・○○○○・ゼロドライブ・ブレーカー
 ゼロドライブ・ブレーカーの上位魔法。
 ロストロギアの封印『も』出来る砲撃魔法のゼロドライブ・ブレーカーとは違い、砲撃形態の『ロストロギアの封印用』魔法。つまり、対『闇の書』用の切り札。これを運用するためのデュランダルでありプロト・デュランダル、リニスである。
 デュランダルにもセットしてあるけど、残念ながら魔力不足でクロノには撃てない。


 Stsまで続く場合、シアとフェイトのプロフィールはこんな感じになる、かも。
 ミッド在住のシアでも、学校通いながら正式局員というデタラメはなし。

シア
 以前   普通学校生徒兼、時空管理局嘱託魔導師
 12歳  普通学校卒業後、本局付き士官学校入学(正式入局)
 13歳  士官学校2年生
 14歳  本局航空艦配属、普通に『海』の士官として任官
 15歳  執務官補佐資格取得、グレアム派の執務官の元で修行
 16歳  執務官資格取得、執務官として活動開始
 17歳  執務官活動継続
 18歳  査察官資格取得、査察官へジョブチェンジ
 19歳  査察官活動
 20歳  機動六課出向?(または創設)

 フェイトはミッドに戻らないで海鳴で過ごしたケース。実際どうするのかは未定だったりする。

フェイト
 以前   中学生兼、時空管理局嘱託魔導師
 15歳  執務官資格取得、ただし嘱託のため執務官補佐扱い
 16歳  中学卒業後、時空管理局正式入局 短期士官研修
      この年は執務官補佐として活動
 17歳  執務官任官、シアの執務官チームを引き継ぐ
 18歳  執務官活動、テスサロッサシスターズの名が一人歩き
 19歳  機動六課出向

 シアとフェイトの経歴を並べると見事に二人三脚になる。

補足として
①ミッドの普通学校5年と設定。これはViVidの魔法学院・初等部と等しい。
 シアは魔導師のための学校ではなく、非魔導師も通う普通の学校に行っている。この為名称が違う。
②シアは一気に特殊職に行くのではなく、1ステップ置いた。
 これは将来、上に行くのを見越して視野を広げるため。
③シアとフェイトは実は同年度に執務官資格を取っている。
 ただし当時嘱託のフェイトは任官できず補佐に留まる。上司は当時二尉で執務官のシア。
④シアの執務官チームはグレアム派の幹部がシアの為に集めたスペシャルチーム。
 かなりスパルタにシア(とフェイト)を鍛えた。
⑤シアの査察官任官でチームは分割、大半がシアで残りがフェイトに。
 不足を補うためシャーリーが入る。
⑥機動六課にはシャーリー以外にもテスサロッサシスターズ・メンバーが密かに入っている。

 このへん『とある六課』にあるなのはとクリスのプロフィールと比べると面白いかと。
 なのはのプロフィールはあっちと同じです。というか、なのは達を正規局員にしようとするリンディから、シアが二人を守ったという感じ?
 なおクロノはリンディの思考誘導に騙され、義務教育中退で士官学校に行った不良? です。
(艦長なリンディはクロノの面倒見られないから、士官学校の寄宿舎に入って貰った方が楽だったため)


・管理局の人

 ケン・ネコムラ
 時空管理局 統括執務官付き執務官、一等空尉
 名前を漢字で書くと『拳・猫村』であり、『犬・猫村』で無いことに注意。
 32歳

 ギル・グレアムの部下。(正しくは部下の部下)
 趣味は体を鍛えることで、ボディビルダーのようなムキムキボディ。ついでに悪相。
 一見ヒールの様に見えるがグレアム派閥切っての頭脳派。特に情報収集、解析に長ける。

 魔導師ランクは総合A。鍛え上げた技と肉体で魔法無しでは文句なしに強いのだが、魔導師として前線を張るには不安なレベル。
(原作の設定において武装隊の隊長クラスがランクB。無印、A'sに出るキャラがチートに強いだけで、ランクAなら一応強い)

 高い指揮能力を持ち、多くの執務官補佐や捜査官を抱え、彼等を動かすことでチームとして行動する。また鉄火場においては、なじみの深い信用できる嘱託魔導師を動員することで対応する。
 執務官として、のちのフェイトら(原作)とは真逆の方向性を持つ。

 クロノやフェイトは高魔力による派手だが力任せの事件が主体。だが管理局上層部にとっては、ネコムラのように地道に多種多様の事件に対応出来る執務官の方が評価が高い。
 また男らしいマッチョな肉体を持つネコムラは、クロノにとって身体的コンプレックスを刺激される存在。また地道に子供扱いなどされるため、隔意を持っている。(ネコムラ的には頑張っている後輩を応援しているという意識しかない)

 第79管理世界の出身。リンディのあの趣味は彼の出身世界の影響。クライド(クロノパパ)の後輩で、ハラオウン夫妻が彼の実家に遊びに行った時、リンディが填った。

 妻子あり。時々遊びに行くシアやマリヤに子供達は懐いている。(ネコムラ家はミッドチルダにある)

 A's中盤、シアが暗躍するときにサポートするキャラが必要、ということで出来たキャラ。
 日本もどきの79出身としたらなんかピタリと填って、味の在るキャラになった。
 ……のだがサポート役をスカに取られそうで、どうしよう。



・その他の人

 マリヤ・キャンベル
 聖王教会所属・準騎士(家出中)
 マリアではなく、マリヤである。ここ注意。
 12歳。歳は離れているが、シアの嘱託仲間で親友。

 聖王教会の名門キャンベル家の出で、ベルカの騎士。(カリムのグラシア家とは別の派閥?)

 A’sの時点でベルカ式魔法はほぼ廃れ、聖王教会においても伝統芸能じみた扱いになっていた。
 ベルカ式魔法の継承者としてこの現状を打破するため、ベルカ式の強さを知らしめようと家と聖王教会を飛び出した。
 何だけど聖王教会への所属意識が強く、管理局に正式に入局するのも躊躇い嘱託止まり。
 嘱託で十分生活できるため余裕があり、今後の方向性を考え中。
 また、元々ベルカの騎士でありながら教会を離れ管理局に入ったゼストに対しては、微かな憧れと共に強い反発心を持っている。

 年齢を12歳にしたのには、この歳なら普通学校(というか魔法学院初等部)は卒業しているという理由。義務教育を卒業してから家出した律儀な子供。
 実は現状、何処で何をしているのか実家は把握しており、騎士の修行の一環として黙認。ネコムラに個人的に面倒みることを依頼している。
(ついでに言うとネコムラの勧めで、魔法学校(魔法学院中等部相当)に通っていたりする)

 魔導師ランクは空戦Aで陸戦AA。接近戦に限れば+が付く。(普通に子供だからこのレベル。Sts時にはシャッハレベルには強くなる予定)
 フロントアタッカーのマリヤと、センターガードのシアのコンビは、ネコムラ配下の最強コンビ。ちょくちょく呼び出され、ネコムラが苦手なクロノに文句を言われたりする。

 ベルカ式魔法の現状を説明するためだけのキャラだっんだけど、シアの親友というスタンスが気に入って色々使おうかと考え中。
 この時点でSts終了時のスバティアやクリスと同格以上に強いんだけど、チートキャラ揃いのA'sでは見劣りしてしまう。悲しいことに前衛要員としては最弱(支援キャラのザフィーラとなら互角?) なので難しい?

 使用デバイス、ティルビングはレバ剣と同じで、北欧神話のティルヴィングのパクリ。キャンベル家の家宝だったりします。

 剣の騎士ということで、能力と性格がシグナムと被ったりする。A'sの流れ次第(八神一家消滅とか♪)でシアが機動六課を作る事になったら、ライトニング副隊長にするのも良いかも知れない。
 その場合のスターズ副隊長? 勿論クリスだよ♪



ドライ・T・スカリエッティ
 人造魔導師。プロジェクト・F.A.T.E、アリシア・テスタロッサ・タイプ・No3
 "F"としてのアリシア・クローンの三体目。(シアが二体目、フェイトが五体目)
 偽名でキャルと名乗るかどうかはさだかではない。

 "F"としてフィジカル面ではほぼ完成に達している。ただし新アプローチの記憶転写処置が上手く行かず、プレシアの目的としては完全な失敗作となっている。また複数回、記憶転写術式を受けたため人格的に混乱、破綻してしまった。
 その後、なんやかんやありスカに引き渡されることになる。

 現在のドライの人格は、ナンバーズにも使用されている人格構成技術により人工的に植え付けられたモノ。このためアリシアの記憶も、プレシアに対する想いはまったくない。
 スカを父と、ウーノと(何故か)ドゥーエを母と、残るナンバーズ先行組を姉、以降の者を妹として認識している。
 能力的にはシアとフェイトの中間。性格的にはシア、正確にはオリジナル・アリシアに近く調整されている。

 BJは赤いライダージャケット(ツナギ)風。デバイスの待機状態は勿論オルゴール。
 ……デバイス、どうしよう。ドライなら銃なんだけと、それだとクリスとダブる。ご意見プリーズ



2.時空管理局

 次元世界の平和を守っていると自称する組織。
 なお、時空管理局が次元世界のトップという訳ではない。管理世界共同で作る次元連合(仮称)があり、その一行政組織。
 検察と警察と軍隊を併せたようなモノ。
 司法組織である裁判所などは別にある。どっかのフェレットもどきが言った裁判所とも一緒というのは、子供の誤った認識。
 全体をとりまとめる『中央本部』をトップに『地上部』『次元部』その他で構成。

 古代ベルカ(ベルカ王朝)崩壊後、次元世界の秩序を守るため、『治安維持能力の向上』を目的として『次元連合』麾下の全ての治安維持組織を統合して結成された。(シナジー効果を期待した、とか)
 建前として『次元連合』下の文民統制にあるものの、(武力的な)対抗組織が無いのを良いことに事実上暴走状態。(『管理局法』と呼ばれるものの一部は、単なる管理局の内規だったりする。これを法律として裁判所に通せるくらい暴走している。または、第二次大戦前の日本帝国軍をもう少し酷くした感じか?)

 また、出自も性格も違う組織を無理矢理統合したため、内部統制もとれていない。
 例えば『次元連合』が『中央本部』を管理下におけてないように、『次元部』も『中央本部』の完全なコントロール下にはない。
 なお『地上部』は各管理世界にも所属しているため暴走傾向は弱い。
(最高評議会があるから暴走しているのではなく、彼等が居るから内部崩壊していないというレベル)

 『海』と『陸』の反目だけでなく、『海』内部ではセクション間の軋轢も激しい。
 このため親しい者同士が集まり、派閥を作って共同して動く傾向がある。管理局の所謂『身内人事』はこの派閥内の融通のことを言う。
(主人公組は(旧)グレアム・グラシア複合派閥所属)

 内部的に整合がとれていない組織だが、そういう組織にありがちなことに外敵には一致団結して抵抗するため、『次元連合』も強く出れない。
 過去、策略により『次元連合』の制御下に置かれそうになったことがあり、この『管理局の危機』に対し的確に対処し、切り抜けさせたのが『三提督』というエピソードがあったりしたら、なかなかシニカル?

 なお、この様な管理局バンザイ♪、身内人事バンザイ♪な状態は『海』な主人公組にとって心地良いため、原作三人娘は問題視していない。(まあ、前線部隊の士官はこの辺気にするべきことではない、というかどうこうする権限はない)


2.1 中央本部
 時空管理局全体の管理部門。次元連合(仮称)の直下にある。
 実際『海』と『陸』が別れてるなら、それを取り持っている部門(軍における幕僚本部的なもの)が必要だと考え設定。
 最高評議会、『三提督』はここに所属。
 一般教育機関、陸士学校、空士学校も中央本部の所属(士官学校は『海』と『陸』で別に持っている)
(なのはとフェイトの恩師が陸士学校の人間なのは、陸士学校が『陸』でなく中央本部所属のため)

 また、将官以上は正式にはここに所属?(日本警察で警視正以上は警察庁所属のように)
 Stsのお嬢様騎士は『海』とか『陸』よりこっち所属の方がそれらしいかと。

 直接部隊は持たないが例外的に『査察部』は中央本部の所属。将来査察官のシアの所属はここ。
 シークレットメンバーとしてスカがいるとかいないとか。


2.2 地上部
 地上部として見ると、管理局は組織として三段構成。
 日本警察風に説明すると、
『中央本部』=警察庁、『地上本部』=警視庁、各『管理世界支部』=都道府県警察、とするとわかりやすい?
 ただし『管理世界支部』の実体はその管理世界の警察機構で、半分各管理世界政府の下にある。
 具体的には『地上部』一般職員はその管理世界の公務員だけど、上層部は管理局サイドの人間、という感じ。
(日本の県警などで一般職員は地方公務員だけど、幹部は警察庁の国家公務員というのと同じ)

 また、『地上部』上層部は、地球的にはICPOを数段強化した連絡機関と言っても良い。

 『地上本部』はミッドチルダの警察機構であると同時に、『地上部』として各『管理世界支部』の橋渡しを行う(警視庁というか、IPCO本部っとこ?)
 ……だからレジアス中将はミッドの治安ばっかり強調している。


2.3 次元部
 やはり三段構成。
 『中央本部』→『次元本局』→各『部隊』
 『部隊』は艦船だったり執務官チームだったり基地だったりして、地上と違い規模が一気に小さくなる。そのため本局の力が強い。
 次元世界間犯罪や法整備が遅れている管理世界、管理外世界を担当する。

 基本的に艦船で移動するが、例外的に地上基地もある。
 代表的なモノがミッドチルダに存在する本局戦技教導隊。

 また警察機構を維持できない一部の管理世界には、本局地上部隊なるものが常駐している。
 例を挙げると、現地政府のない自然保護区などは『次元部』の管理下にある。

 ……ミッドチルダに本局地上部隊はないよ。あったら色々『海』と『陸』問題で矛盾がでまくり。本局海上警備部なんて、突っ込み所の多い矛盾した存在は無い。


2.4 次元航行艦
 正式名、次元空間航行艦船
『海』の実行部隊の一単位。基本的に定期航路を巡回。異変がないか調査を行う。
 異変が在れば急行して移動基地として機能する。

 管理外世界を含めた広い世界は転送だけで移動できないために存在する。
 転送の優位さはシリーズによって変わってくるが、航行艦があると言うことは、転送万能ではないというと。

 小説版でフェイトがミッドチルダから地球に自力で転送するシーンがあるが、あれはアナザーだから(笑

 プレA'sでシアが転送期限を気にしているのはこういう感じ。
 ミッドチルダと地球の距離を10Lとする。個人や転送ポートで移動出来るのは3Lとする。
 アースラに転送で行けるのは、アースラがミッドチルダから3L内に在る時だけ。アースラに乗り移って、4Lの距離をアースラで移動すれば、地球までは3Lで転送可能になる。ということで。


2.5 役職
 まあ、この辺はかなり妄想入ってます。リリカルとシニカルで折り合い付けないと。

①提督
 地球の提督のように艦隊指揮権を持つわけではない。
 このSSにおいては現場指揮・監督権限を持つ者と定義。

 艦長はあくまで艦の長で、戦闘部隊とは別の命令ラインなので直接指示できない。(地球で言えば、空母の艦長は搭載航空機の指揮権を持たないらしい)
 提督権限を持つ艦長が、執務官や武装隊員を直接指揮し、現場の責任を持つことが出来る、と。

『海』っぽい表現だけど『陸』でも適用。
(でないと『三提督』全員『海』の出になってしまう)

 主に佐官クラス、一部将官。

 提督という言葉はミッド語を日本語に翻訳した時にミスが発生したとか。
 取りあえず
 ・人事部門(らしい)のレティを提督扱いとするには、こういう理由でもないと困る。
 ・原作でグレアム”提督”の経歴を説明する時わざわざ艦隊指揮官を上げている。
  これは逆説的に提督イコール艦隊司令でないことの証左になる。


②執務官
 警察官と検察官を併せたような役職で、どちらかと言えば警察より。
 地球で近い職種を無理に上げるなら保安官。

 執務官の資格は管理局共通だが『海』で働く事が多い。
 管理外世界や辺境では『とある六課』で書いたように、
『辺境、および管理外世界に置いて、武力行使をも含めた司法行動を許可された者』
と本来の行政権に加え、一部司法権すら与えられている。
 与えられる権限と華々しい成果からある種管理局の象徴だが、管理が行き届いた『陸』では権限が押さえられるため、管理局外の一般人がその活躍をみる事はない。

 ある種、管理局の象徴であり高い権限を持つため、任官するにはハードルが高い。
 試験と研修を経て執務官資格を持った、管理局士官以上の者が、上位上司の推薦を得て初めて執務官になれる。

 指揮、命令権を持つため任官には管理局の士官以上の地位が必須。執務官資格を取ったからと言って階級が付いてくるわけではない。
 また嘱託魔導師や下士官でも、資格を得ることだけは可能。嘱託の場合士官学校への入学権利が、士官以下の局員の場合、士官研修への優先推薦権が与えられる。

 執務官資格を得た嘱託魔導師は、嘱託身分で執務官補佐として働くことは可能。この制度の元、フェイトは執務官補佐試験を受けずにシアの補佐となった、というかなる予定。

 主に尉官クラス。


③上級捜査官
 主に『陸』の役職。
 イメージ的には『陸』の執務官と考えればよい。
 ただし『陸』の各部隊との連携が必須のため、執務官ほどのスタンドプレーは出来ない。

 主に尉官クラス。


④査察官
 警察官と検察官を併せたような役職で、どちらかと言えば検察より。
 中央本部の所属で、執務官と上級捜査官を足したようなもの(2で割らない)

 業務は執務官達に似ているが、政治的な分野が多く『陸』の上での活動も多い。
 執務官や捜査官が上司の推薦を受け、試験と研修を経て査察官資格を得て任官する。

 部下に執務官や捜査官を持つことは可能。この場合部下も中央本部の預かりになるため、『陸』や『海』での縛りや魔力制限にかかることはない。(……セクション問題が発生しなければ)
(魔力制限がないためシアは適正ランク取得を強制されず、AAを通している)

 主に佐官クラス。


⑤士官昇格
 士官任官の方法は次の3つ。

・士官学校卒業
 士官学校に入学し、卒業して士官になる。(2年コース)原作ではクロノとグリフィスがこれに相当する?
 普通学校、または魔法学校・上級学校卒業してから入学する。
 地球の軍隊的にはこれが普通のルート。

 クロノは普通学校中退で士官学校入学という、ミッドチルダでもレアケース。
 シアは普通学校卒業後入学というケースを予定。

・士官研修
 実地で成果を出し、また上司に推薦を受けた者は、士官資格取得のため研修を受けることが出来る。
 一年? 任務から完全解放されて必要十分な教育を受け、試験に受かることで士官資格を得る。
 就業年齢の低い管理世界では、士官学校卒よりこのコースで上に行く者が多い。
『とある六課』のクリスがこれに相当する。

・短期士官教育
 局員としての任務を受けながら、短期間に士官としての最低限の心得のみを叩き込まれるコース。
 高レベルの魔導師に、(戦闘)能力に相当する階級を与えるために存在する。原作三人娘がこれに相当する。
 士官としての体裁を整えるためのものなので、実際色々問題はある。結果、指揮能力、人材把握能力のない士官が誕生するとか……。
『とある六課』ではやてが自分を卑下し、クリスを称して”流石正規な教育受けた士官さん”というのはそういう意味。
 また原作Stsにあるはやての”本局に行ったら小娘扱い”という台詞もこの為。

 ……地球の軍隊における”特務士官”に近い扱いかも?(特務士官は国や時代によって意味合いが違うけど、取りあえずお米の国風で。なのは達、みかけ士官で、内実は下士官なのかも)


2.6 その他

・時空管理局登録魔導師
 管理外世界に住む魔導師で、時空管理局に登録してある魔導師のこと。

 原作では、高い魔力を持つ者は許可がないと管理外世界には住めないらしい。ただしこれは管理世界出身の者に限るとこのSSでは定義。管理外世界の人間の処遇を、管理局に決められちゃ堪らない、ということ。

 なのはの様に管理外世界の魔導師は違法滞在者と区別がつかない。そのため管理局に登録しておくと便利。
 それが『時空管理局登録魔導師』という制度。別に強制ではないけど便利は便利。素直でよい子のなのははキチンと登録している。
 一応義務としてデバイス内のログの提示が求められる。それで管理局的に違法行為が無いか確認。
 ただし、一般に管理局に登録するような善良な魔導師は違法行為など(あまり)しないから、意味の無い行為ではある。

 また管理外世界出身者の管理世界入国へのビザの役目も持つ。
 Sts時のなのはも正しくは『時空管理局登録魔導師』。管理世界に戸籍はなく、就労ビザで管理局に勤務している? で、ヴィヴィオを引き取るためミッドに戸籍を作るとか?

 ……はやては聖王教会登録管理外世界魔導騎士経由で、ミッドチルダ・ベルカ自治区に戸籍を作っていそう。


3.魔法

3.1ベルカ式魔法
 アースラのデータベースにすら存在しないベルカ式魔法。つまりそれだけ使う人間が居ないと言うこと。
 本編でも説明したとおり、このSSでは次のように設定。

 A's時にはベルカ式魔法はほぼ廃れ、聖王教会においても伝統芸能じみた扱いになっている。
 後に近代ベルカ式と呼ばれる、ミッド式でエミュレートする方式もあるが、乗せられる魔法が少なく普及していない。(この時点では近代ベルカという名称すらない)

 A's後に八神一家が聖王教会に接触し、遺失したベルカ式魔法を提供することで近代ベルカ式が日の目を見ることになる。(つまり八神一家が全滅すると、近代ベルカへの道はなくなるということ)

 なおベルカ式というか古代ベルカ式には非殺傷設定はない。アレはミッド式と近代ベルカ式の術式になる。
 はやてに戦闘(活躍)シーンがないのはこのため。非殺傷なしの広域砲撃魔法なんて怖すぎ。

 ゼストは近代ベルカが出来るまで(古代)ベルカを使用。その後非殺傷設定のある近代ベルカ式に乗り換えた。
 ゼストさんはストライカーとしてクラナガンではある程度知名度があるけど、『海』なアースラは彼の名前は知っていても、使う魔法体系までは知らなかった、と(普通にミッド式と思っていた)
 で、OK?

 クイントの場合、ギンガに教えたのはシューティング・アーツで、魔法は元々ミッド式だったけど相性の良さそうな近代ベルカ式に乗り換えた。

 3.2で説明するように近代ベルカは地上本部主体で開発。この為レジアスとのコネでゼスト隊はモニター的に早い段階で近代ベルカが使用できた、ということで。


3.2 近代ベルカ式
 ミッド式デバイスを使い、ベルカ式魔法をエミュレートする魔法体系。
 Stsの時代には広く普及しているが、A’sの時代には表向き存在ない。
 実はA's時には管理局地上本部と聖王教会の一部が手を組み開発中。試作品はすでに出来て評価中。
 『海』のシア達はそのことを知らない、ということ。
 聖王教会としてはどんな形でもベルカ式魔法を復興したい。
 管理局、特に『陸』としてはカートリッジシステムによる低レベル魔導師の底上げをしたい、というのが目的。

 ただし載せる術式の選定に困って計画が遅延している。
 『闇の書』のデータが手に入れば実は”陸”はとっても嬉しい。
 原作ではこのタイミングで八神一家が管理局入りしたため、色々優遇されている、ということで(はやては『陸』の人間、だよね?)

 なお近代ベルカ式確立後、管理局の教育部門で教える魔法は近代ベルカが推奨されている。表向き戦闘特化で戦う時に有利なためとされているが、本音は魔導師として潰しが効かないから。
 身も蓋もない言い方だがベルカ式の魔導師は戦うことしか出来ず、管理局を離れたら能力を活かせる場は少ない。これによる離職率の低下を見込んでいる。
 Stsで登場する魔導師の内、兄の魔法に拘っているティアナと、ニッチな召喚士以外は全員近代ベルカなのは、こういう理由。


3.3 非殺傷設定
 非殺傷設定はA’sの時代にはなく、Stsとの間で開発、導入されたと設定。
 本編の描写を見ると非殺傷設定などがあったら矛盾でまくり。ない方が自然だし、本編で非殺傷設定は言及されていない。(小説版であるけど、あれはアナザー。A’sコミックスでの模擬戦時にはあるけど、あのシーンはA’s本編終了後、結構たっていそう)

 管理局のルールとして、殺傷行為は基本禁止。警察機構としてはこれは当然。殺傷行為OKって治安維持組織は色々怖すぎ。
 重傷以上の怪我を負わせた場合、報告書提出の義務。なお報告書であり始末書では無いことに注意。この段階で処罰はない。
 報告書の内容を調べ、問題行動が見られた場合、また報告回数が多かった場合、査問会議が開かれる。ここで問題行動だと判断された場合、初めて処分が下される。

 ……なんか普通で当たり前だ。(なお元ネタはダーティーハリー。ハリーが正当防衛で射殺したことの査問がどうこういうのが2であったような気がする。それが元)

 非殺傷設定が導入されてから、管理局魔導師は徐々にそちらに移行。
 理由として非殺傷設定を信じたわけでなく、非殺傷設定で怪我人が出た場合、基本報告書提出不要という不文律が出来たから。(脳筋な管理局戦闘魔導師はデスクワークは嫌い)死人がでた場合は流石に要提出。

 実際、重傷者を出さないように注意して狙ったり、手加減したりするのはストレス。それなら非殺傷でドカンと撃つ方が気分的に楽。
 また正義を謳う管理局魔導師として、やはり人を傷つけるのは好ましくないと思っている人間が多い。

 なお非殺傷設定はミッド式とこれをベースにした近代ベルカ式特有のモノ。古代ベルカを含め、他の魔法体系には存在しない。

 非魔導師で銃火器で武装していた武装隊員達もいるが、非殺傷設定導入後、殺傷行為が五月蠅くなったため減少傾向。このため人手不足が顕著になった。

 また非殺傷設定でもそれが有効になるのは魔法攻撃のみ。実体剣で斬ったり殴ったりという物理攻撃は普通に通る。
 フェイトで言えばザンバーは非殺傷対応だけどライオットは非殺傷無効と。……スカ、よく生きてたな。

注:このSSでのトンデモ設定
  非殺傷設定導入前、リリなの組で報告書がダントツで多かったのがなのは、かもしれない。
  御神流の暗部、不破の血を引き、父も兄も姉も人斬りであるなのはに取って人を傷付ける禁忌は薄い、と。
  またなのは自身『(場合によっては)魔法で人を傷付けることがあっても仕方ない』的発言はあっても、『傷付けるのは絶対ダメ』的発言はない。
  だからStsの8話はなのは的にはOK。


4.闇の書関係

4.1 このSSでの追加設定
 『闇の書』は強い自己保存機能がある。覚醒前でも周囲の状況を判断し、危険とあれば(主の命を無視して)勝手に暴走、転生する。前回のクラウディアの件がそれ。

 『闇の書』の在処を知ったグレアムが公表しなかったのはその為。
 極秘レベルで公開した場合でも、何処で誰の目にはいるか分からない。その結果正義感に駆られた者、復讐に走る者がはやての元に行く可能性は0ではない。(管理局の曖昧体制では可能性は高そう)
 まして執務官なんて自由度の高い職種があるならなおさら。

 なお、正確にはグレアムは隠蔽したのではなく、公開しなかっただけ。need to knowというヤツである。
 管理局重鎮のグレアムにはそれだけの情報制限を行える権限がある。(グレアムの一部上位者には暗にほのめかしてあり、プロジェクト・デュランダルの黙認も貰っている)


4.2 闇の書の在り方の矛盾
 スカ・ファイルにて説明予定。


4.3 守護騎士
 『闇の書』の守護騎士ってあの四人固定なのだろうか?
 守護騎士のベースユニットみたいなモノがあって、主ごとに調整して違う人?が出てくる、という考えはどうだろうか。
 傍証はこんな処。
・『闇の書』本体はユニゾンデバイス。ユニゾンデバイスはユニゾン事故が起こらないように、各マスターに合わせて調整が必要。なら各騎士達も主に合わせた調整があっても良い。
・ベータ、じゃ無くてヴィータの性格がA’s時とStsじゃまるで別物。即ち成長している。一人一人の騎士の意識が継続しているなら、今更この様な成長があるのは可笑しい。
・四人の守護騎士が固定なら、顔写真付きの手配書が回っていそうなモノ。そういう気配はない。

 はやては今回、オッパイ、オッパイ、妹、ペットと望んだからあの四人になった。
 で、仮にオッパイ、オッパイ、オッパイ、ペットと望んだらヴィータは適乳の10代後半の少女に成ったかも知れない。
 更にオッパイ、オッパイ、兄、ペットと望んだ場合、ヴィータの代わりに長身、白髪、色黒、鉄槌より双剣とか弓の似合いそうな兄貴が出てきたかも知れない。はやての中の人だけに。(双剣の騎士エ○ヤ?)


4.4 プロジェクト・デュランダル予備計画
 八神はやてを『闇の書』毎封印するプロジェクト・デュランダル。
 それが最善の手段だと信じつつ、自分達の行いが過去の出来事による影響、復讐心などに駆られての行動ではないか。それに悩むギル・グレアムが思いついた一つの計画。

 『闇の書』への拘りのない純粋存在。それなら自分達の行動を肯定してくれるのか、更にはそれ以上の答えを出してくれるのではないか。それはそんなある種、身勝手な夢想。

 そんなグレアムの元に迷い込んだ一人の人造魔導師。よりにもよって海鳴市で見つかった、管理局全体を見渡しても最上位に位置するスペックを持つ少女。
 グレアムは彼女に強靱な身体を与え、高度な戦闘技能を仕込み、鋭利で狡知な知性を持たせ、最強のデバイスを与えた。
 即ち、それがアリシア・グレアムである。
 つまり、シアもまた、はやて同様『闇の書』とグレアムに運命をねじ曲げられた存在と言える。プレA's2話にある、
『それは真逆のようで、でも似ていて』
 というのはそういう意味。

 グレアム家の娘としてのシアの矛盾、家訓である『戦うことだけが魔法じゃない』と、歳の割に異常なまでの戦闘力を持つ、の理由がコレ。

 なのだがギルとシア、この2人は相性が良く、父娘として接しているうちに普通に親子としての愛情を持つようになる。
 その結果、予備計画は廃棄された。
 定期航路に地球を持つアースラ勤務が多かったのを減らして、嘱託仕事先をネコムラに回してるのもその一環。

 しかし、結果としてシアは『闇の書』と出会う。F.A.T.E(運命)の銘のように。
『大人の夢想』が作った少女が返すのは新たな答えか、『子供の達観』か。
 それは『聖なる夜に輝く深紅の星』だけが知っている……、なんちゃって?


4.5 色々
・罪と罰
『闇の書』事件はヴォルケンズが勝手に動いたため、はやてに罪はないと言うのがあっちこっちでの共通意見。
 ……ところで、
『ギャングの構成員が犯罪を行った場合、ギャングのボスはそれを知らなくても罪を問われる』
という法律が、某リアルな国にある。
 別に深い意味はないよ、うん。


・八神家
 このSSでは出し損なったけど、八神家関係で色々な矛盾の少ないケースを思いついた。
 それは”はやて達八神家は、PT事件が終わった頃海鳴に引っ越してきた。そしてはやての誕生日前に家族は事故かなにかで死亡した”
 というケース。海鳴の病院ならはやての足は治るのでは、と期待して海鳴に来た、とか。
 親戚がいないはやてが普通に孤児院に入れられそうになって、グレアムが慌てて保護者になった、と。
 孤児院に入るなら私物制限されるだろうから『闇の書』は手放さなきゃならない。また持っていっても守護騎士出てくりゃ拙すぎるし。
 これなら、
・はやての足が不自由になる前の友人達の気配がない。
・八神家周辺の人がはやての事を気に掛けていない。
・はやてが学校に行っていない(転校手続きする前に親が死んだから)
という不整合の理由が付く。


5.その他

5.1 質量兵器
 管理世界では質量兵器が禁止。
 質量兵器とは銃とかミサイルとかの火器、と普通SSでは扱われている。
 でもこれは実は考え違いをしているのかも知れない。

 質量兵器とは、『質量(をエネルギーに変換する)兵器』、の事ではないだろうか? 
 要するに核兵器。リリカルでマジカルな話に核兵器なんて単語を出さないためにこのように表現したとか。
 こういうようにアニメで言葉を飾るのは前からある。例えばマクロスの反応弾って水爆のこと。重力制御
を使って臨界越えて爆発させる、という設定。
 質量兵器が核兵器なら、世界を滅ぼす兵器で使用禁止、というのは納得できる。
 この定義ならアースラにビーム砲詰めるのも納得。Stsで地上本部が戦車とか使ってるのも納得。


5.2 銃規制
 軍用ライフルを指して『兵器』というのは納得。
 でも狩猟用の散弾銃を指して『兵器』という人は少ないだろう。
 Forceの舞台の23管理世界ルヴェラなんて普通に野生動物が闊歩してそう。またミッドチルダだってアルフの元になった狼が自然に生きている。
 魔獣なんてトンデモではなく、一般の生き物対策として銃とか必要なはず。
 魔導師が対応する、とか言っても、ヒグマクラスの生き物を確実に倒せるなら、管理局の隊員務まりそうだし、収入よさげ。
 管理世界には猟師さんは居なくてジビエなんて食べない、なんてことは無いだろう。

 結局、銃には規制はあるけど質量兵器規制とは違う、と。ミッドチルダは日本のように規制されているけど、別の管理世界ではアメリカの様に個人で武装可能な処もある? とか。


5.3 本局戦技教導隊
 本局戦技教導隊ってミッドチルダに存在するって表現したけど、ミッドチルダに在るって公式設定あったっけ?
 ミッドチルダって『陸』のお膝元なんだから、ミッドチルダ外の方が自然かも?
 管理世界の田舎に本局地上部隊の一環としてある方が自然かもしれない。『預かった部隊相手に短期集中での技能訓練』(Stsコミック1表現)は業務の一部だし、教えに『行く』では無く、教えに『来させる』的表現なんで、やはり田舎?
 Sts後、本局の力が強くなってミッドチルダに移転かな(Vividで高町親子はミッドチルダ在住)


5.4 戦闘機人
 スカ製のナンバーズは成長しない。タイプ・ゼロのナカジマ姉妹は成長する。
 『兵器』として考えれば成長しない方が有利。
 この差異の理由として次の二つが考えられる。

①ナンバーズの方が完成度が高い
 正論。……だけど正直正論過ぎて面白くない。
 その流れに於いては、スカ製ナンバーズが成長しないことの証明のため、チンクは幼女状態で固定されたのでは無いだろうか?

②実はタイプ・ゼロは幼女タイプとして運用予定だった。
 運用年齢まで成長させてから機械化したほうがメカニカル部分の調整面からも絶対有利。なのにタイプ・ゼロは幼女時代に機械化している。
 その理由は幼女タイプとして運用するためでないか? 
 なのだが機械化後に管理局に保護された2人は年齢固定化処理を解除され、普通に成長するようになった、と。
 言い換えれば、年齢固定化処理を解除するとチンクも普通に成長するとか。
 いずれにせよナカジマ姉妹のあの胸はもったいない。年齢固定化されなくて良かった……。

 あと……
 戦闘機人はスカの研究成果が外部に流れてナカジマ姉妹の様な者が生まれた、だった筈。
 時期的に可笑しくないかい? ナンバーズ先行組とナカジマ姉妹の誕生って大差ない気がする。というか下手すりゃギンガの方が先行しているかも。
 つまりナンバーズはタイプ・ゼロのベースではなく、二つの共通の先行型、スカ製のプロト・ナンバーズと呼べる存在が在った方が自然じゃないかな。
 あったならそれ、何処に行った? 管理局で運用中かな?
 それとも『吹きすさぶがぁ風がよく似合う、○人の戦鬼と人の言う♪』という感じで管理局に反旗を翻しちゃったりして。(ウーノって○○1○?)


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
7.26851010323