<富田氏が代表に>
運命の日はやってきた。22日、ナチュラルグループ本社は取引先「れい明会」の幹事会社を招いて、高輪の本社ビルで幹事会を開催した。そこで、代表取締役会長兼社長の橋本幸雄氏と代表取締役副会長の山下利光氏が退任することを発表した。また、橋本会長に代わってアニュー中四国(株)と加盟店契約を結んでいる (株)ウェルの会長・富田義久氏が代表の座に就任することを発表し、26日の役員会で正式に決定した。「事実上の解任だ」と関係者は異口同音にいう。
事実を知った業界関係者のなかには驚きの声を上げる者もいた。生半可に同グループの暗部を聞きかじっている関係者は、とくに驚いたようすだった。「地球環境財団はどうなる?」と憂い声を上げた。
地球環境財団というのは、そもそも橋本会長が設立した財団法人で、82年4月に立ち上げられたもの。環境啓蒙活動の一環として設立されたものだが、自然食品関連会社が集まったNPO全健協が行なう通信販売事業の事務に携わってもいたからだ。憂い声を上げたのは自然食品問屋の関係者だった。
ナチュラルグループ本社にいよいよ運命の日が訪れた。ブラジル酵素の償還日を過ぎ、代表交代が発表された後で、第1回目の約束手形の決済日を7月末に迎えたのである。不渡りを出そうものなら、一気に倒産に突き進む恐れもある。業界内では不安が渦巻いていた。関係業者のなかには売上の半分以上を同社に依存しているところもある。れい明会に所属する業者の「30~40%は吹っ飛ぶだろう」と声をひそめる関係者もいた。長崎の食品会社C社は毎月1,000万円を超える商品をアニューに納めているといわれている。福岡の自然食メーカーでも数百万規模の売掛がある。なかでも、最も危ぶまれるのは配送を請け負っている東京のG社である。NG本社で月に約1億円の売上があるとされている。
当時、ナチュラルグループ本社が振り出す手形は、業者によってさまざまだった。60日もあれば、90日もあった。月末を間近に、手形のジャンプの要請を受けたメーカーもあったという。れい明会側でも、一部にあきらめムードがただよい、同会の幹部がなだめる場面があったともいう。
「ジャンプなんてとんでもない」という業者を幹部がなだめる一幕も見られたようだ。
ところが、食品メーカーのなかにはナチュラルグループ本社の株主もいた。彼らは株主であることを盾にとり、従前どおりの前金を主張したと伝えられている。そんなこんなで一部の幹部はれい明会全体の調整に手を焼いていた。それまでジャンプの要請を受け入れていたある幹部も、「ここまできたら受け入れるわけにはいかない。8月を乗り切るのは至難だろう」と苦渋のため息を漏らした。
とくにお盆を前にしてギフトの注文が多い時期だけに、決済日直前になると緊張は頂点に達したようだった。NET-IBニュースにも匿名の電話やメールが頻繁に寄せられた。
中国地方のある自然食品メーカーは、静観の構えで運命の日に臨んだ。
「幹事会が一枚岩でないことだけはたしか。会社によってはかなりの(売上高の)比重を占めるところもあるし、株主もいる。ただ、これまでにそのようなこと(不渡り)は一度もないし、情報も錯綜しているようで下手に動くわけにもいかない」と本音を吐露した。同社は今も従来どおり商品をNG本社に卸しているが、「新たな提案は行なっていない」という。
また、東京のある原料メーカーは、ナチュラルグループ傘下の受託製造会社に打錠を依頼していた。「ここまできたかという印象」と、小さくつぶやいた。元NG本社の社長を務めたこともある九州のK氏は、「思ったとおりになった」と側近に漏らしたという。
休日を挟んで月が改まり、3日、4日になっても何事も起きなかった。一部の投稿者から数社に不渡りが出たとの情報が入ったものの、本誌が独自に進めた調査では不渡りの確認はできなかった。記者が電話で確認したところ、上記の2社においても特段の問題はなかったようだった。
後日、不渡りが出たという誤報の原因が判明した。NG本社側がアニュー店側や一部のメーカーに、現金の支払いを8月10日まで延期するよう要請した事実を取り違えた結果だったものらしい。
記者は先ごろ、7月22日に開催された幹事会に出席したという人物と接触することができた。幹事会の一部始終を見届けた人物である。次回はそのインタビューの内容をお伝えする。
【田代 宏】