甲南女子大(神戸市東灘区)は20日、所蔵する「古今和歌集」の写本が、鎌倉時代初期のものと判明したと発表した。1首の欠けもない完本で、漢文の序文「真名序(まなじょ)」、和文の「仮名序(かなじょ)」の両方そろう本としては最古となる。平安・鎌倉時代の歌人、藤原定家の初期の写本を別の人物が書き写したとみられ、古今和歌集の成り立ちや定家の解釈の推移を知る手がかりになるという。
写本は上下巻で縦15・9センチ、横14・6センチ。保存状態は良く、上質の和紙「鳥の子紙」の上下計429ページに、序文と全1111首が書かれていた。
大学が1982年に東京・神田の古書店で428万円で購入し08年9月、同大の米田明美教授(日本文学)が図書館の書庫で確認。中世文学鑑定の田中登・関西大教授が書風や他の写本との比較から、完本としては平安期の「元永本」(国宝)、「伝藤原公任筆本」などに次ぐ1220~40年ごろの本と断定した。選に漏れた11首を最後に置く定家のスタイル▽晩年の定家と異なり歌を2行で記載▽上の句、下の句にこだわらず書く平安-鎌倉初期の書風が46首ある--などから、若い時期の定家の写本を写した可能性が高いという。【石川貴教】
毎日新聞 2010年10月21日 東京朝刊