社説
札幌と大田市 日韓友好の礎築きたい(10月21日)
札幌市が明日、韓国の大田広域市と姉妹都市提携に調印する。
ロシアのノボシビルスク以来、5番目の縁結びだ。道も先にソウル特別市と友好交流協定を締結している。
今年は韓国併合から100年の節目の年にあたる。最も近い隣国と新たな協力関係を育(はぐく)み、市民レベルでも末永い友情を築いていきたい。
大田市は人口150万人。道民になじみが薄いだろうが、韓国中西部にある同国第5の都市だ。高速鉄道のKTXでソウルから約1時間。先端技術都市としても知られる。
2004年に経済交流促進のための覚書を締結したのがきっかけとなった。札幌市は今後、観光や経済分野での交流を目指すとしている。
確かに経済交流も大事だが、現状は厳しい。農水産物や食品加工など期待の分野もあるが、具体化していくにはまだ時間がかかりそうだ。
まずは市民の触れ合いを深めることから始めてはどうか。その積み重ねの上に次の道筋も見えてこよう。
一つは観光客誘致に工夫を凝らすことだ。自然に温泉、グルメ、ゴルフ場。韓国の人々が北海道に求めるものは札幌周辺にふんだんにある。
若者や家族向けへの設定も含め、どうすれば継続的に楽しんでもらえるか。初めは札幌市が汗をかき、隣接市町村や観光・旅行業界を巻き込んで知恵を出し合うことも必要だ。
スポーツや文化・芸術を通して、市民に韓国への関心を持ってもらう機会も増やしたい。大田にはハンファ・イーグルスや大田シチズンなどプロ野球やプロサッカーのチームもある。日本ハムやコンサドーレとの親善試合などできないものか。
若い世代の交流も実現したい。旭丘高校と大田外国語高校が結ぶ姉妹提携は、そのきっかけになりうる。修学旅行やホームステイなど両市は受け入れ態勢を検討してほしい。
学校で日韓交流史を教えることも考えるべきではないか。相手を知らずに相互理解などかなわない。
「日韓間には不幸な歴史があったが、国家間の問題を乗り越える力は市民にこそ存在する」。上田文雄市長がそう話すように、隣国と息の長い友好関係を築いていくには、市民の理解と関心が欠かせない。
韓流ブームやW杯サッカー共催などで両国民の互いを見る目は変わってきた。竹島(韓国名・独島)の領有権問題など今後も両国関係が波立つことはあろう。だが、草の根レベルでの信頼関係ができていれば感情的にならず、偏狭なナショナリズムにひきずられることもあるまい。
姉妹提携を機に官民が知恵を出し合い、そんな関係を札幌と大田の間でつくっていくことを期待したい。
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