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カメと行政書士試験 (仮題)

  はじめにお読みください

2010年10月21日(木)

一期一会から生き方を考える(アヒルおじさん編)

もう10年近くも前になるが、東京近郊の某市の幼稚園で園児たちに農業を指導している人から興味深い話を聞いた。それも聞いた当時とこれを書いているいまとでは、「興味」の中身が違っている。

取材の仕事だったのだが、その話自体は取材のテーマではなくて、雑談の中で出たものだった。なのでこれまでどこにも書いていない。名前を仮にAさんとしておく。

自分と会った当時のAさんは60代前半。50代までは某大手電機メーカーの技術者だった。定年に際して、ずっとこころに決めていたことを実行した。

好きなことしかやらない。

好きなこととは「農業」だった。農村で生まれ育ったAさんは、まったくの初心者ではなかったが、住んでいる市が市民向けにはじめた農業講座の一期生になった。

講座といっても2年間かけて学ぶ本格的なもので、市内農家との連携による実習もあった。また、農繁期のパート募集などの情報も得ることができた。実際、人材不足に悩む農家の新しい担い手づくりをも視野に入れた講座だった。

Aさんはその人柄から一期生のリーダーとなった。Aさんには相棒がいて、これがアヒルだった。講座の最中も、実習中も、アヒルは常にAさんと一緒。ときどき姿を消して散歩に出かけるが、かならずAさんの元に帰ってきた。

ある日、Aさんは講座を担当する市の職員から、市内の幼稚園で園の畑を世話してくれる人を紹介してほしいと頼まれたのだが、やってくれないだろうか、と声をかけられた。

週3日程度ということだった。Aさんは、二つ返事で引き受け、アヒルを連れて通った。行ってみると、畑とは名ばかりで、耕作放棄されてから随分と年数が経っていた。

結局、Aさんは耕作放棄地を耕作適地に変えるため、アヒルとともに毎日通わなければならなかった。作業中、アヒルは畑と近くの小川を行ったり来たりしていた。

しばらくすると畑らしくなった。Aさんは園児たちにサツマイモなどの種をまかせ、収穫までの間の世話を行い、収穫自体は園児たちにさせた。アヒルもアヒルのおじさんも園児たちに大人気だった。

やがて園児たちの給食の献立に、少しずつ園の畑の野菜が加わっていった。

翌年の春に異変が起きた。少子化で最盛期の5分の1にまで落ち込んでいた園児数が、元に戻るどころか定員を超えた。母親たちの口コミで、あの園に入れると野菜嫌いが治る、という噂が広まったためだった。

その年、Aさんの待遇は、週3日のパートから正規職員に格上げされた。さらにその翌年の春には定員の2倍に及ぶ入園申し込みがあった。

そのAさんに、自分は「これからどうされるんですか?」とたずねた。Aさんの答えは、「まだ決めてない」。じつはAさんには、定年に際して、もうひとつこころに決めていたことがあった。

3年先のことまでしか決めない。

Aさんは定年後に子会社への出向を打診されていた。65歳で年金生活に入るまでの5年間を、出向先から給料をもらいながら、好きな農業を趣味として過ごすこともできたのだ。

子会社への出向を蹴ったAさんが、定年後の最初の3年に行ったことは、ひとつの幼稚園の再興につながった。その中で数百人の子どもたちが、種をまき、収穫し、食べるという行為を通して、嫌いだった野菜が好きになった。

結果はたしかにそうなのだけど、Aさんからすれば、アヒルを連れて毎日畑に通った、好きな農業を3年間続けた、それだけのこと。この話の中に何を見るかは、読んだ人の自由だ。

自分の場合、この話を聞いた10年前に興味を覚えたのは、アヒルだった。とにかくインパクトがあった。自分が園児だったとしても、親や先生のいうことは聞かなくても、アヒルのおじさんのいうことなら聞いたと思う。

10年後のいま興味を覚えるのは、60代からの人生を3年刻みで生きるという、そのライフスタイルだ。

それで、自分も来年の8月で50歳になるので、これを機に、Aさんをお手本に、人生を3年刻みで生きてみようと思った。そして、最初の3年は、将来の起業に必要な資格を得ることに費やそうと決めたのだった。いまはそのための助走期間のようなもの。跳ぶのは来年だ。

ただし、自分の場合、好きなことは、これまでさんざんやりつくしたので、そちらはもういい。願わくば、自分にしかできないことで、地域に役立つ小さなビジネスモデルを構築したい。


※操作ミスで前に書いたものを全部消してしまった。書き直そうかと思ったのだけど、結局、新しいものにした。余談だが、いつかアヒルを飼ってみたい。
http://www.geocities.jp/ahiru_net2/top.html


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