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遺族落胆「軽すぎる」 禁固4〜5年

2010年10月20日

 「被害者全員の気持ちとして、この判決は軽すぎる」。横浜市都筑区で乗用車にはねられた女性看護師3人が死亡した事故で、自動車運転過失致死傷罪に問われた少年(19)を禁固4年以上5年以下(求刑禁固5年以上7年以下)の不定期刑とした19日の横浜地裁判決。小池勝雅裁判長は「危険な運転態度で悪質だ」と批判したが、危険運転致死傷罪での厳刑を求めていた遺族らはなお、落胆を隠せなかった。

(太田泉生)

 少年は黒のスーツ姿。入廷すると遺族らに向かって2度深く頭を下げた。判決言い渡しが始まると、身じろぎもせずに前を向いて聴き入った。

 「あなたは左足で運転したことを特に危険とは感じないと言ったが、それは普通の人の感覚と違うことがわかりますか。運転への傲慢(ごう・まん)さが、被害者の心を本当に傷つける」

 小池裁判長は、少年が右足指を骨折して左足でペダル操作していたことに判決後の説諭で言及し、償いについて考えを深めるよう求めた。

 判決によると、少年は時速約70キロで車を運転し、交差点手前約50メートルで赤か黄色の信号を見過ごした。交差点で対向右折車に気づいてハンドルを切ったが間に合わず、衝突して歩道に突っ込み、生駒ひろみさん(当時31)ら看護師3人を死亡させ、右折車の男性にけがを負わせた。

 小池裁判長は「約190メートル前から信号が見えていたのに(直前まで)まったく確認しなかったことになる。危険な運転で、見えにくい信号を見過ごした事案と比べはるかに悪質」と厳しく非難した。

 弁護側はこれまでの公判で、「信号が見えにくかった」「信号手前約20〜30メートルで黄信号に気づいた」などと主張していたが、判決はいずれも退けた。

 「『運転への傲慢さ』とはっきり言っていただいた。かなり危険な運転をしていたことは認定されている。だからこそ、とても軽い判決だと思うのです」。亡くなった加藤智子さん(当時43)の義兄の可児直行さん(49)は判決後の取材に語った。

 遺族は危険運転致死傷罪の適用を求め、これまでに約9万6千人分の署名も集めた。

 危険運転罪は、悪質な交通事故への罰則を強化するために導入された。速度超過や飲酒運転、信号無視などで一定の条件の下に適用され、信号無視の場合は「殊更に」無視したことの証明が必要だとされる。赤信号を見たのに無視した場合や、信号を意図的に見なかった場合が考えられるが、単なる「見過ごし」は対象外とされる。

 可児さんは「法律の文面の解釈は色々あるだろうが、法律の趣旨としては今回の事故は危険運転だと思う」と話した。検察には控訴を求めるという。「危険な運転が過失事故ととらえられることのないよう、立法府にも検討をお願いしたい」とも話した。

 亡くなった岩山典子さん(当時49)の妹(45)も「残念な結果で、悔しさでいっぱいです」と話した。

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