薬物やアルコール中毒者を対象に、不妊手術を受けることで報酬を受け取らせる米国の慈善団体が英国にも進出し、物議をかもしているという。「メトロ」紙が報じている。

米国に基盤を置く団体「Project Prevention」は、「薬物やアルコール中毒者のために障害を持つ子供が増え、社会に大きな負担を与えている」として、中毒者に子供を作らせないための活動を進めており、これまでに、米国内の薬物やアルコール中毒者の男女3,500人に対し、不妊手術を受けることを条件に報酬を支払ってきたという。最近は、英国の中毒者を対象にヘルプラインを開設。

先日、「BBC」のドキュメンタリー番組『インサイド・アウト』に、『ジョン』(仮名)と呼ばれる38歳の英国人男性が出演し、精管切除手術を受ける代償として米国の団体から200ポンドを受け取った事実を告白。「11歳から薬物に手を出した」というジョンさんは、現金がもらえるならと先月、NHS(英国国民医療サービス)での手術に踏み切ったとされる。番組の中でジョンさんは、「自分には子供ができても育てられないし、自分のことで精一杯。だから、決意に至った。報酬に飛びつく人も多いだろう」と語っていた。

これに対して、薬物中毒者の救済を目指す慈善団体「DrugScope」のマーティン・バーンズ代表は、「薬物中毒者は、社会から取り残された貧しい人も多く、こうした弱みに付け込むように現金をちらつかせて不妊手術を受けさせることには反対。倫理的にも道徳的にも疑問がある」と、強く批判。また、「どこで一線を画すのか? 次は誰が対象になるのか? 喫煙者か、精神病患者か、貧困に苦しむ人か? 質の高い治療や福祉と保護制度を人々が確実に利用できるようにすることのほうが先決」と訴えている。

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