大分市内の中国籍女性(78)の生活保護受給を巡る訴訟は、原告女性の敗訴となった。18日の大分地裁判決を受け、女性側弁護団は同市内で会見し、「『永住外国人は生活に困れば国に帰れ』という冷酷な判決」と批判した。一方、訴えられた大分市は「妥当な判決」と受け止めた。【高芝菜穂子、深津誠】
女性側の主張などによると、女性は関西で生まれ育ち、54年、夫と結婚して大分市内に住むようになった。夫は体調を崩し、その後は駐車場の収入などで生活してきた。06年4月ごろ、突然女性宅に引っ越してきた親族が、預金通帳などを管理し自由に預金を引き出せなくなったという。女性は08年9月以降入院中だが、医療費の滞納額は250万円以上という。
原告側の田中利武弁護士は「国は1954年の厚生省通知以来、外国人にも広く生活保護を認めてきた。行政の審査が間違う可能性もあるのに、裁判での再審査を認めないのは非常識だ」と述べた。
一方、被告側の大分市福祉事務所の入田光所長は「今後も生活保護制度の適正な運営に努めたい」とコメントした。
在日外国人の権利問題に詳しい一橋大学の田中宏名誉教授は「永住外国人も生活保護法上の『国民』に当たらないとする判断は、国際人権規約を日本が批准した1979年以降、公営住宅法などが永住外国人を日本人と同様に扱うように運用を改めてきた流れに反する。外国人への生活保護が恩恵でしかないとする見方は、外国人の申請の審査を行政が適切に行わないことにつながる」と指摘した。
毎日新聞 2010年10月19日 地方版