「パ・リーグCSファイナルS・第6戦、ソフトバンク0‐7ロッテ」(19日、ヤフド)
ロッテが7‐0でソフトバンクを下して第4戦から3連勝し、対戦成績4勝3敗でレギュラーシーズン3位チーム初の日本シリーズ進出を果たした。4安打完封で、今ステージ2勝目の成瀬が最優秀選手(MVP)に選ばれた。ソフトバンクはリーグ優勝チームに与えられる1勝のアドバンテージを生かせず、2004〜06年のプレーオフ、07年からのCSに計6度出場し、すべて敗退となった。ロッテは30日開幕の日本シリーズに5年ぶり6度目の進出で、4度目の日本一に挑む。
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土俵際からの奇跡に、しばし酔いしれた。勝負師の顔から、柔和な笑みをたたえた西村監督。主将・西岡に促され、ナインの手で2度宙に舞った。「胴上げは最高の気分ですね。みんながひとつになって、スローガン『和』のもと戦った結果です」。涙こそ見せなかったが、その声は震えていた。
驚異的な粘りと執念。シーズン最後の3連戦、1敗もできない状況から3連勝でCS出場をもぎ取ると、ファーストSでは西武に劇的な逆転劇を演じた。「リーグ戦終盤から、負けたら終わりの戦いが続いていた。本当に精神力の強い選手たち」。まるでそんな土壇場の状況を楽しむかのように、1勝3敗の瀬戸際からミラクルを起こした。
3位からの下克上‐。82年に鹿児島鉄道管理局から、ドラフト5位で入団した西村監督。俊足が売りながら、中央球界では無名の存在だった。「3年やってダメなら地元に帰ろうと思っていた」。しかし、自らの性格を「負けず嫌い」と称する指揮官は、温厚な面立ちからは想像できない反骨心でのし上がった。
右打ちから両打ちへ転向するため深夜までバットを振り続け、翌朝起きると両手が開かなかった。「負けたくない」。泥くさい努力の結晶で、4度の盗塁王、首位打者を獲得する名選手にはい上がった。並み居る上位チームをなぎ倒してきたロッテの戦いぶりは、西村徳文という男の生きざまを表していた。
博多の地は、そんな自らを発掘し、プロに導いてくれた故・田中久寿男さん(享年65)の自宅がある。今でも、遠征時に訪ねては墓前への報告を欠かさない西村監督。天国の恩師へ、何よりの恩返しとなった。
約束は守る男だ。CS進出を決めた1日、オリックス戦(千葉マリン)後、「西武、ソフトバンクを必ず倒して、日本シリーズで帰ってきます」とファンに誓った西村監督。この夜はくしくも、88年に川崎球場のダブルヘッダーで近鉄の優勝を阻止した伝説の10・19。ロッテに、新たなドラマが生まれた。