小惑星の地球衝突、核爆弾で回避可能?
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 10月14日(木)19時40分配信
小惑星を爆破した場合に懸念されるのが、大量の破片が地球上に降り注いで深刻な状況がさらに悪化するのではないかという点だ。だが最近では一部の研究者が、そのような事態は回避できるとして、実証に向けた研究を行っている。また、これまでのさまざまな推測に反して、それほど強力な威力が無くても爆破できると指摘する研究者もいる。
アメリカ、ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所のロバート・ウィーバー氏は、「国際社会の合意が得られれば」と前置きした上で、次のように話す。「大型の小惑星が地球に衝突した場合に予測される人類への被害は甚大だ。最終手段としては、地球近傍天体(NEO)の爆破も十分考えられる」。
小惑星の詳しい性質は依然として解明されていないが、研究者によれば大きく2種類に分類できるという。それは、1つの堅固な岩体と、細かい破片が互いの重力によって緩やかに集積した「ラブルパイル(rubble pile)」という集合体である。
ウィーバー氏によると、人為的な破壊に関する議論は、爆弾をセットする深度が深いほうが爆破効率がより上がるという前提で進められてきたという。だがウィーバー氏は最新の計算結果から、内部に爆弾を挿入する必要はないことを明らかにした。
同氏のモデルでは、堅固な小惑星の場合、TNT火薬100万トン相当の核爆弾を使用すれば、小惑星の表面と内奥部との違いはあまりなく、どちらでも十分な効果が得られるという。この程度の核爆弾の保有国は既にいくつもある。
また、小惑星がラブルパイルの場合、爆破はもっと容易だ。例えば、多数の小破片が全長300メートルほどのジャガイモのような形に集積した小惑星「イトカワ」がある。ウィーバー氏のコンピュータープログラムはTNT火薬50万トン相当で足りると予測している。やはり相当大型になるが、珍しいものではない。
NEOへの対応策に関して議論になる点がもう1つある。それは、小惑星の爆破に伴って大量の破片が散弾のように地球へ降り注ぎ、広範囲に被害をもたらすのではないかという懸念である。
ロスアラモス国立研究所のキャサリン・プレスコ氏は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のドン・コリキャンスキー氏とともに、コンピュータープログラムを駆使して全長1キロメートルのラブルパイル小惑星が爆発するモデルを作成した。ちなみに、この大きさのNEOがまともに地球に衝突すれば、悲劇的結末を迎えることは間違いない。
シミュレーションによると、広島型原爆(15キロトン)のおよそ25倍の核爆弾を使用すれば、小惑星は非常に細かい破片まで破砕されるため、地球に被害をもたらす恐れはなくなるという。
一方、15キロトンより小さい威力だと、爆破後の小惑星はわずか1日足らずで元の姿に戻ってしまうのだという。破片が十分細かくならず、重力の作用でそれらが再び結合してしまうためだ。
だがこの場合に重要なのは、威力の弱い核爆弾でも、再形成後の小惑星を衝突軌道から離脱させるインパクトがあるかどうかだ。これはプレスコ氏の研究テーマの1つでもある。
衝突のリスクがある小惑星に何らかの衝撃を与えてその軌道を変える手だては、これまでにもいくつか提案されている。巨大な宇宙船を派遣して突っ込ませたり引っ張ったり、何らかの衝撃波でコースを変えるなどさまざまだ。だがこれらの代替案には不安材料も多い。というのも、テクノロジーが核爆弾ほど成熟したものではない上、爆破より所要時間が長くなるからだ。
いずれにせよ、さまざまなNEO対策に共通する問題は、小惑星の追跡がいまだ正確に行えない点にある。バチカン天文台(Vatican Observatory)で小惑星の研究を行っているガイ・コンソルマーニョ(Guy Consolmagno)氏はこう話す。「地球に接近するNEOが衝突するかどうかは直前まで分からないし、分かったとしても手遅れだろう」。
爆破作戦についてもコンソルマーニョ氏は、「興味深いが考察の余地はまだあると思う。どの点でも依然として発展途上の段階だ」とコメントしている。
Traci Watson for National Geographic News
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最終更新:10月14日(木)19時40分
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