洋画市場は“円高”を追い風にできるか!?
ORICON BiZ 10月19日(火)10時0分配信
トム・クルーズ&キャメロン・ディアス、主な主演作品のDVD売上動向(ページ下側)
■『ナイト&デイ』のメインターゲットは女性層
上半期に比べて、洋画が少々低調な今秋の映画興行にあって、『ナイト&デイ』はひさびさに熱い期待を集めている。
トム・クルーズとキャメロン・ディアスという2大スターの競演作であり、ロマンチックでコミカル、アクションふんだんの、いかにもアメリカ映画らしいエンターテインメントに仕上がっている。
配給する20世紀フォックス映画も綿密なプロモーション戦略のもとに幅広い認知を目指し、ヒットを狙う。
「抜群に知名度のある“クルーズとディアスの2大スター競演”というところでスタートして、次の段階では、ふたりの役柄でこれまでありそうでなかったロマンチックな面をアピール、さらに世界を股にかけるスケールの大きさを押し出していきました。
途中、リサーチをかけた時点で、クルーズの役柄のミステリアスな部分を訴えるべきだとの指摘があり、明るさ、痛快さ、ミステリー的側面に焦点を当てた訴求に収斂させていきました。この作品にエンターテインメントのあらゆる要素が詰まっています。そのことは、認知されたと思います」(20世紀フォックス映画マーケティング本部 鷲谷一氏)
作品の内容を広く深く浸透させるために、この作品では15秒テレビスポットのみならず、30秒バージョン、60秒バージョンも製作する戦略に出ている。
「ターゲットとしては、クルーズやディアスのスター性を知っている20代以上の女性層が中心になると考えています。実際に一般試写を行ったところ、満員状態が続きました。すべての試写で満員状態になるというのは最近では珍しいことです。この作品に対して映画ファンがいかに魅力を感じているかが肌で感じられて、大きな手応えを感じました」(同鷲谷氏)
ディアスに対して女性の共感度が高いことがはっきりしたという。また、クルーズはどちらかといえば男性層に支持されていて、この作品のようなアクションが立つタイプは歓迎されると分析している。
■興行収入増を狙うなら円高日本は大事な生命線
プロモーションのために、クルーズとディアスが14時間滞在という超過密スケジュールで来日。ジャパン・プレミアに花を添えたことは記憶に新しいところ。
クルーズにとっては『M:i:IV』の撮影が待ち構えているなかでの来日となったわけだが、こうしたサービスが日本での人気維持に貢献している。
この作品では自らプロデュースを兼ねているわけでもなく、いわば他人の企画に後から参画したかたちなのだが、スター性を保つためにはあえてハードなスケジュールも厭わない。この努力がクルーズの卓抜したセルフ・プロデュース能力を表している。
なにより日本は円高状況にあり、アメリカ映画界にとって、ドル換算をするとこれまで以上の映画市場となりうる。
日本の人気を維持することはすなわちマネーメイキングの早道となりうる。プロデューサーとしてのセンスも謳われるクルーズがそこを計算していないはずがない。
『ナイト&デイ』が日本で成功すれば、アメリカ映画界でのスター・バリューも落とさないですむ。『ミッション:インポッシブル』シリーズを除き、近年、大ヒットに恵まれていないクルーズにとっては、円高日本は大事な生命線ともいえる。
ただ、残念ながら日本ではアメリカ映画がコンスタントにヒットする状況ではなくなっている。
親近感の強い日本映画に拮抗するためには、『ナイト&デイ』のような無条件に楽しませる作品や、新鮮さを感じさせる作品がアメリカ映画に求められている。『ナイト&デイ』は最低の目標を興行収入30億円に置いているといわれているが、成り行きが注目される。
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最終更新:10月19日(火)10時0分
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