星野SD、虎よさらば!!退団会見
楽天の新監督候補に挙がっている阪神・星野仙一オーナー付シニアディレクター(63)が19日、大阪市内のホテルで会見し、阪神からの退団を表明した。9年間のタテジマ人生に終止符を打ち、楽天からの正式な監督要請を前に「ケジメ」をつけた。会見では“受諾宣言”とも取れる言葉を残し、日本シリーズでの甲子園での対戦の夢も口にして、愛するタイガースに別れを告げた。早ければ20日にも楽天側との交渉に臨む。
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野球人の本能に突き動かされ、新たな道へと踏み出す。どれだけ困難で険しくとも、前に進んでこその人生だ。抑えきれなかった最後の勝負への思い。後ろ髪を引かれるような思いを断ち切り、固めた決意。次なる戦いに身を投じるため、闘将・星野仙一がタテジマに別れを告げた。
「私は野球人なんだということで、タイガースのオーナーにも球団社長にも、『おれは野球がしたいんだ』とワガママを言いまして。色々とお互いが悩んだ部分もあるんですけど、私の意思を尊重して頂きまして感謝してます。僕は野球がしたいんです」
感傷的なサヨナラは言わない。涙もない。時折笑みを浮かべ、一言一言にありったけのハートを込めた。08年、日本代表を率いて4位に終わった北京五輪から、2年になる。日に日に増したユニホームへの情熱。そこに、仙台から聞こえてきた現場復帰の可能性。前に進むことを決めた。
01年オフ、阪神監督に就任し、2年目の03年9月15日にリーグ制覇を果たした。日本一こそ逃したが、18年ぶりのリーグ優勝を勝ち取った戦いは色あせない。輝ける記憶に優劣はないが、強く胸に刻んだシーンはある。
「一番印象に残っているのは、雨の中の御堂筋の優勝パレード、神戸での熱狂的なパレード。グラウンド外であれだけ感動したことはない。私の宝だと思っています」
今でこそ毎年のように優勝争いをしているが、低迷していたチームを変え、関西を盛り上げた功労者。もちろん「新天地」でも熱狂を巻き起こしたい。この日は阪神ファンへの「感謝の意を込めた会見」と話し、楽天の監督就任に関する具体的な言及は避けた。ただ、夢は膨らんでいる。
「(阪神と)日本シリーズで会うなら最高だろ。阪神も優勝してということだから。そうあって欲しいし、ものすごい遠い夢だろうと思うけど、それを目標にやっていかないといけない。交流戦じゃ意味がない」
楽天の監督要請に対し、“受諾”を示唆するかのような心意気。早ければ20日にも交渉に臨むが、すでに心は燃え上がっている。
阪神監督就任時、「死に場所」と表現した甲子園が、次は夢の到達点だ。簡単ではないが苦難を乗り越えてこその夢。支えてくれたファンへの最後のメッセージ。「また甲子園に戻って来ます。日本シリーズで」‐。ファンを愛しタテジマに恋をした。夢の舞台・甲子園。阪神を離れても闘将の思いは変わらない。