14日午後3時35分ごろ、岐阜市北一色6の金属加工会社「かんぜん」の解体中のアルミ加工工場の外壁(高さ約11メートル、横17.5メートル)が北側の市道に倒壊した。約1時間後、倒れた壁の下から近くの私立富田高校2年、川瀬友可里さん(17)=岐阜県大垣市=が見つかり、病院に搬送されたが、死亡が確認された。ほぼ即死状態だった。解体工事のクレーン車のアームが壁付近の足場に接触したとの目撃証言があり、同県警岐阜中署は業務上過失致死の疑いで工事関係者らから事情を聴いている。
同署によると、工場は3階建てで、道路拡張に伴う解体工事中。川瀬さんは自転車で帰宅途中で、市道のうち工場から遠い方の路側帯を東から西に進行中だったとみられる。
道幅は約10メートルしかなく、高さ約11メートルの外壁は防じんシートと共に道を完全に覆う形で倒れた。倒壊した壁は鉄筋コンクリートやトタンが混じっていた。
近くのタクシー会社の事務所にいた男性運転手によると、クレーンの先端が、壁に固定されていた足場とみられる金網状の鉄骨にひっかかり、外そうとする動きをした直後、壁が2、3回大きく揺れ、倒れたという。【三上剛輝、山盛均、石山絵歩】
犠牲になった川瀬さんを知る人や事故の目撃者らは一様にショックを隠せない様子だった。
近くのタクシー会社の事務所にいた男性運転手(69)は壁が倒れる瞬間を目撃した。壁と防じんシートが大きく揺れ、直後に「ドドーン」という音とともに壁が横倒しになった。川瀬さんは上を見上げ、頭をかばうような姿勢のままがれきに埋もれたという。
近所の主婦(45)によると、現場の道路は富田高や近くの中学校の生徒が登下校でよく利用するという。下校中に通りかかった同高1年の男子生徒(15)は「すごい音がして振り向いたら、電線がひきちぎられていた。(同じ高校の生徒が下敷きになって)驚いている。怖い」とぼうぜんとした表情で語った。
富田高の楠典洋校長は「川瀬さんは、委員会活動も熱心で、まじめないい子だった。今でも間違いであってほしいと思っている」と声を落とした。同校は15日朝に全校集会を開く予定。
川瀬さんが大垣市立大垣西中3年の夏にオーストラリアに国際交流で派遣された時の団長の堀憲司さん(62)は「9人の団員のリーダーとして物静かで落ち着いた子だった。地元の高校に半日の体験入学した時は積極的に話しかけ、ホームシックにかかった団員の面倒も良くみていたのに」と振り返った。
川瀬さんの父正明さん(41)は県警を通じ「事故についてはもちろん、娘を失ったこれからの生活についても何も考えることができません。今は娘との最後の時間を家族と静かに過ごしたいと思います」とコメントした。【岡大介、子林光和】
毎日新聞 2010年10月14日 18時12分(最終更新 10月15日 0時04分)