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きょうの社説 2010年10月21日
◎北陸の企業倒産 見えてきた政策支援の限界
北陸三県で企業倒産がじわじわと増え始めている。9月は10億円を超える大型倒産が
続いたこともあり、負債額が前年同月比で2倍に増え、石川県は件数が25件と過去10年で最も多かった。10月に入っても金沢市のスーパーマーケットチェーンや名門の老舗産元商社が倒産するなど、悪い流れが続いている。東京商工リサーチによると、北陸三県の2010年度上半期(4〜9月)の倒産件数は 前年同月比17%のマイナスとなり、負債額も28%少なかった。これは企業が返済猶予を求めた場合、銀行がそれに応じる努力を求めた「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)と、中小企業向け融資で信用保証協会が100%保証する「緊急保証制度」が資金繰りの厳しい企業を下支えしてきたからである。 だが、返済猶予を繰り返しても多くの企業は業績の回復が思わしくなく、このところの 円高や中国リスクで将来の展望が開けない。中小企業金融円滑化法などの政策支援効果が薄れてきた事実は、中小零細企業が多い北陸にとってはゆゆしき問題である。 そんな状況下で、経済産業省は緊急保証制度を来年3月末に打ち切る方針を打ち出した 。小規模企業への融資については全額保証を維持するなどの対策を講じる考えのようだが、制度終了後は8割まで保証を受けられる通常の制度に戻ることになり、同制度を利用している企業にとっては頭の痛い問題だ。 また、中小企業金融円滑化法も来年3月末までの時限立法であり、緊急保証制度と同時 に打ち切られると倒産が続出しかねない。いつまでも返済猶予を認めていると、モラルハザードを招き、破綻のリスクを銀行が負うことへの批判もあるが、全国で累計40万件、13兆4千億円に達する返済猶予は、業績悪化に苦しむ多くの企業の命綱になっている。また、住宅ローンの返済猶予も4万件近くあり、デフレ不況下で、何とか踏みとどまっている企業や個人への支援を打ち切るわけにはいかない。 緊急保証制度を終了させるなら、せめて中小企業金融円滑化法は続けるべきだ。政府・ 与党は野党との合意形成を急いでほしい。
◎レアアース 代替材料の開発が急務
中国が日本に続き、米国や欧州向けのレアアース(希土類)輸出を停止したとされる新
たな動きは、ハイテク製品に使われるレアアースを外交上の武器として、一段と重視し始めた表われといえる。中国漁船衝突事件を受けて始まった日本への輸出制限は事実上の報復措置といえ、今回 の米欧への制限も、中国が米国の貿易措置に不満を抱き、対抗手段に踏み切ったとの見方がある。禁輸を公式に認めれば、世界貿易機関(WTO)の規則に抵触する恐れがあるため、中国政府は一貫して否定しているが、輸出停滞のタイミングをみれば駆け引きの材料にしているのは間違いないだろう。レアアースを政治的思惑で使う場面はこれからも増えてくるのではないか。 中国政府はこのところ、レアアースに関し、地下資源保護や環境保全を理由に輸出制限 を正当化する発言も繰り返している。中国に資源を依存することのリスクを日米欧が共有し、貿易ルールを損ねる動きに対しては協調して是正を迫る必要がある。日本としてはレアアースで「脱中国」の道筋を描くことが急務である。実用化への取り組みが始まった代替材料の開発も官民一体で加速させたい。 レアアースはレアメタル(希少金属)の一種で、鉄などに混ぜると磁力や耐熱性が強ま るなどの特性がある。中国が世界需要の95%を賄っているが、「自国の資源を合理的に使う権利がある」として、来年は最大3割の輸出枠削減も取りざたされている。 経済産業省が今月発表した「レアアース総合対策」では、備蓄の検討や代替材料の技術 開発、使用済み製品からの回収・リサイクル体制の拡大、カザフスタンやベトナムなど中国以外での鉱山開発、権益確保などが盛り込まれた。 代替材料開発では、北大などがレアアース不要の車載モーターを開発し、電気自動車へ の応用も期待されている。中東の石油のように、中国がレアアースを資源外交の切り札にするなら、石油危機後に飛躍的に伸びた省エネ技術と同様、「脱レア」を技術革新を進める弾みにしなければならない。
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