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タンパク質科学や分子生物学への応用

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タンパク質工学

非天然型アミノ酸を多数含む、新しいタンパク質工学への挑戦

大腸菌において、1つのタンパク質へ複数箇所、ヨードチロシン等を導入することに成功しています。非天然型アミノ酸が複数箇所に導入されたタンパク質がどのような挙動を示し、活性を得るのか、全く未知なるタンパク質工学へ挑戦していきます。

構造生物学への貢献

重原子導入

大腸菌と真核生物において、タンパク質へ部位特異的に3-ヨード-L-チロシンを導入する系を開発しました。また、ヨードチロシンを含むタンパク質を結晶化し、単波長異常分散法(SAD 法)によって結晶構造を解析する方法を確立しました。この方法を用いてタンパク質結晶構造解析への貢献を目指します。

光クロスリンク能を持つパラベンゾイルフェニルアラニン(pBpa)などの非天然型アミノ酸をタンパク質複合体中の適切な部位に導入し、光架橋することで複合体を安定化させて複合体結晶を得ることを試みています。

部位特異的蛍光修飾

膜タンパク質など結晶化が困難なタンパク質の結晶構造解析を成功させるためには、発現・精製・結晶化条件のスクリーニングが重要です。GFP タグを付加してスクリーニングをサポートする技術などが使われていますが、巨大な GFP タグは発現・フォールディング・機能・結晶化条件などに影響し、必ずしも望ましいものではありません。アジド基を用いたタンパク質の部位特異的蛍光修飾法を使うことで、なるべく影響を少なくした結晶標識法を開発しています。

タンパク質翻訳後修飾

大半のヒトタンパク質は翻訳後修飾を受けます。多くの場合、翻訳後修飾を受けることで相互作用する相手が変化します。タンパク質のX線結晶構造解析においては、翻訳後修飾を受けていない状態のタンパク質を用いることが一般的です。しかし、シグナル伝達にかかわるようなタンパク質複合体構造を解析するためには、翻訳後修飾を施す必要が出てきます。私たちはアセチルリジンはじめとして、様々な翻訳後修飾導入系の、タンパク質複合体構造解析への応用を目指しています。

分子生物学への貢献

細胞内光クロスリンク法によるタンパク質間相互作用解析法を開発しました。この技術は、特定の2つのタンパク質間相互作用のみならず、未知の相互作用因子の同定にも応用できると考えています。そこでSH2 ドメイン中に光クロスリンカーアミノ酸を導入した Grb2 タンパク質を HEK 細胞で発現させ、光クロスリンクされたタンパク質を回収し、質量分析による同定を進めています。HEK 細胞はヒト由来なのでゲノム情報を活用できます。Grb2 タンパク質以外にも、同じ SH2 ドメインを有するタンパク質でも相互作用因子の探索が可能であると考えられます。光クロスリンカーを導入する最適部位はドメイン毎に異なるため、それぞれ最適化する必要があり、そこで現在はドメイン毎に、クロスリンカーの最適導入部位の特定を目指しています。これらの知見を集積すれば、結合ドメインを介したタンパク質相互作用ネットワーク解析において有用な研究ツールになると考えています。

翻訳後修飾の導入

アジド基を有するアジドフェニルアラニンやアジド-Z-リジンは哺乳類細胞において効率よくタンパク質へ導入でき、また Staudinger ligation 反応により、生理的条件下において効率よく蛍光基で修飾することができます。GFP タグはタンパク質局在を変えてしまうケースが報告されていますが、アジド基を用いた部位特異的蛍光修飾法によって解決できる可能性があります。現在はタンパク質の局在観察などへの応用を検討しています。

タンパク質翻訳後修飾

ヒト細胞において、アセチルリジンをタンパク質へ効率的に導入する技術を開発しました。この技術を使って翻訳後修飾の機能解析を目指します。アセチルリジン以外にも様々な翻訳後修飾の導入系開発に取り組んでいきたいと思います。