CAUTION!
本作は東方projectの二次創作です。
現実→東方世界オリジナルキャラ転生TS。
主人公以外にもオリジナルキャラが出現。
基本的に主人公最強。ただし無敵では無い。
大筋は東方歴史に沿いますが、特に最初がむちゃくちゃオリジナル。
独自解釈、東方歴史、設定の改変及び消失。
以上の事を構わん! と言える方はお読み下さい。
先程、妖怪と最初の邂逅を果たした。
何の事はないいつもの帰り道だった。大学入試まで一ヶ月を切ったというのに呑気に部活を続け、コンクールに提出する予定も無いのに彫刻に夢中になったせいで今日も昇降口を出る時には夜の帳が完全に降りていた。暗い。風が寒い。
友人達とは家の方向が反対なので一人で暗がりを歩く。すきっ腹に民家の窓から漂ってくる夕飯の香りが染みた。コンビニで肉まんでも買っていこうか……
黙々と視線を落として細い路地裏を歩いていると、何やらもこもこした物が塀の脇に転がっているのに気が付いた。
外灯も無く、月明りだけでは正体が分からない。
……なんだこれ。
大型犬ぐらいの大きさだが、完全な球体だ。白いもこもこに興味を引かれる。細かい毛が生えていたので丸めた毛布かと思ったが継ぎ目が無い。ぬいぐるみ、な訳ないよな。手足も顔も無いぬいぐるみなんて聞いた事も無い。
もしかして生き物かと鞄の角でもこもこをつついた瞬間、毛皮が触手の様に伸びて俺の体を飲みこんだ。
「ちょっ!」
突然の事に慌てて真っ暗闇の中で暴れる。生き物だった! 今、俺喰われてる!? 何か肉壁からどんどんぬらぬらした液がでてくるんだけど! もしかしなくても消化液? 食べる気か!? 本当止めてくれ、俺はまだ死にたくない!
「てめーが何かは知らんが喰われてたまるか!」
ポケットを探り、ヤケクソ気味に部活で使った彫刻刀を蠢く肉壁に突き刺した。殴っても蹴ってもびくともしなかったが、刃物なら効くに違いない。きっと効く。効いて下さい。
天に願いが届いたのか、彫刻刀の刃はあっさり突き刺さった。いける!
刃を捻って傷口を広げてから引き抜き、再び渾身の力で突き立てる。獲物の抵抗を感じ取ったのか肉壁の動きは激しくなり、全身に感じる圧迫感も強くなった。
「負けるか! 美術部の根性ナメんなぁあ!」
負けじと刺して刺して刺しまくる。オラオラオラオラオラオラオラオラ!
渾身の連撃でジョジョに締め付けが緩くなり、ラストスパートをかける。スタンドこそ出なかったが胃液ではなく血で全身が濡れるほど滅多刺しにした。
やがて血で手が滑り彫刻刀をしっかり掴めなくなってきた頃に肉壁は動かなくなり、俺を外に吐き出した。勝利! 見たかUMA!
「ぬぁあ、全身べっとべと」
消化される前に脱出できて良かったが、胃液で服が溶け、血と混ざって凄い事になっている。月明りを頼りに目を凝らしてみると目の前に真っ赤な毛玉が転がっていた。グロっ。
ただしスプッラッタ毛玉の下は落ち葉が積もっていた。横には枯れ木。
「あ、れ?」
勝利の喜びがどこかに吹っ飛んだ。どこだここ。俺、町中にいたはずなんだけど。何で森の中?
周囲を見回すが鬱蒼と茂った森が広がるばかりで家や街灯どころか人間の気配すらなかった。試しに耳を澄ませても車のエンジン音は全く聞こえない。呆然とする。
……毛玉に喰われる次はテレポートですか。超常現象のバーゲンセールだな! あはははははは!
……ふう。OK落ち着こう。クールになれ。戦場では焦った奴から死んでいく。ここ戦場じゃないけど。
まず帰り道で正体不明の白い毛玉を見つける。つついたら喰われた。内側から滅多刺しにして脱出。胃袋から出るとそこは森の中だった。
よし。いや良くない。結局ここどこだよ。木の種類から見るに日本っぽいけどさあ。北海道だったらどうすんだよ。俺、近畿在住だぞ。
しばらくぼけーっと突っ立ったまま考えていたが、不意に「くちゅん!」とやけに可愛らしいくしゃみが出た。なんか喉がおかしい、と思いながら手で鼻を拭ったのだがその手がやけにちんまくなっていた。
「おん?」
あれ? 何か声おかしくね? 周りの木もやけに高くね? 服でかくなってね?
それにどことなく体の感覚が変わったような。
嫌な予感がした。鏡は無いのでだぼだぼの服な上から恐る恐る股間に手を伸ばす。
「…………」
絶句した。
大型犬くらいの大きさの真っ赤な毛玉に恐々近寄る。うむ、どう見ても死んでいる。いやそれは良い。身長を比べてみるとほとんど同じだった。青褪めた。
……ここは叫んでいいよな? いや、駄目って言われても叫ぶ。
「わああああああああ!」
夜の森にロリヴォイスが響き渡った。
高校からの帰り道、妖怪っぽいUMAに喰われた。
「ねーよ」
胃袋から脱出したが森で迷子になった。
「ねーよ」
幼女になっていた。
「ねーよ。どこのファンタジーだよ」
俺はぶつくさ言いながら落ち葉を踏み分けて歩いていた。
あの後一通りパニクってから服を調達した。胃液でボロボロな服を幼女が身に着けていたら危ないおっさんに襲われそうだ。まあこんな森の中におっさんがいたら襲われる前に道を教わるがな!
脂で切れ味の落ちた彫刻刀でなんとか毛玉を解体し、浴衣モドキの服を作った。裁縫など家庭科の時間以外でやったことはないがどうにかそれっぽい物に仕上がる。
毛玉はどういう体の構造をしているのか体のほとんど胃袋で、脳と目がもこもこの毛に隠れて申し訳程度にあるだけだった。これは生物学的にありえるのだろうか。
とにかく得体の知れない怪物? でもこの非常事態では資源に違いない。獲物の有効活用だ。訳の分からん状況だが、いや訳の分からん状況だからこそ使える物は何でも使う。伊達に毎年一人でキャンプしてないぜ。
毛玉は外側の皮は刃が立たなかったが、内側からは簡単に切れた。変な毛皮だ。
皮肉にも体が幼女サイズになったおかげで全身を覆う服と前で締めるための帯ができたが、流石に糸無しで下着は作れなかった。腰から下に風が通って寒い。
彫刻刀は最後の方で刃が折れたので、ボロ切れになった学ランと共に埋めた。所持品は血で赤く染まった毛皮浴衣モドキだけである。まさに着の身着のまま。
毛皮一枚を羽織って靴も無しに月光が差し込む森を彷徨っているのだが町が近くに無いと冗談抜きで死ぬかも知れない。舗装されていない落ち葉の道を幼女のちまい足で歩くのは想像以上に疲れた。水も食べ物も無い。何故か腰に届きそうなぐらい伸びていた髪も返り血で紅くべっとりしていた。重い。
遭難ですか、そうなんです、なーんてギャグを思い出したが乾いた笑いしか出なかった。
せめて明日の朝には町につかないと野たれ死ぬ。既に足がガクガクいってる。体だるい。
ふらりとよろけ、危うく転びそうになった。近くの木の幹に手をついてバランスを保ち、長々と息を吐く。でこぼこした幹の感触が嫌にリアルだった。
一度立ち止まってしまうともう一度歩き出す気力は湧かなかった。今日はここまでか……体力が続く内にできるだけ進んでおきたかったんだが仕方ない。凍死の危険がありそうだが寝よう。毛皮の衣もあるしなんとかなるだろう。何より眠い。
地面の落ち葉を軽く掻き分けて浅い穴を作り、浴衣にくるまったうえで落ち葉をかけて眠った。果たして朝日は拝めるだろうか。
目が覚めると日が真上に昇っていた。眩しい日の光が目に痛い。
「……おお」
凍死せずに済んだ。この衣すげえ。一晩野ざらしでも寒いどころか暖かい。
もそもそと土を除けて起きた。軽く屈伸、伸びをする。体力も回復していた。
「よしゃ!」
いける! 助かる! 町が近ければだが!
昨日の夜地面につけておいた矢印に従い、まっすぐ歩く。昨日より体が軽く、腹の感覚がおかしくなっているのか空腹もあまり無い。
鼻歌を歌いながら小一時間歩くとちょっとした空き地のような開けた場所に出た。と思ったら湧き水発見! うおお神様ありがとう、俺まだ頑張るよ! 俺っつっても今幼女だけどな! 家族の待つ家に辿りついても「誰?」って言われる事請け合いだけどな! いいんだ今は気にしないから!
変なテンションのまま岩の間に顔を突っ込み、直接水をがぶ飲みした。生水だけどそんなもん知らん。
ついでに髪も洗う。手でもみ洗いして血が落ちた長い髪はなぜか雪のように真っ白だった。
え、何この驚きの白さ。恐怖で白くなったとか? まあ確かに毛玉に丸呑みにされた時は思わず串刺しフリークになるぐらい怖かったけどさ。
……まあ髪の色ぐらい構わんか。後で染めればいい。
髪のついでに浴衣も洗おうとしたが、水を弾きやがった。意地になって血を落とそうとしたが徹底抗戦された。むしろ擦った分毛皮全体が真紅に染まる。
「べ、別に諦めたんじゃないからね! 勝負を預けるだけなんだから!」
折角ロリ声になったのだからと最後まで抗いきった浴衣に言ってみたが、自分の声だと思うと猛烈にキモくて落ち込んだ。もう二度と言わない。
衣を羽織ったら再出発。水あるところに文明あり。近代はそうでもないが、希望を膨らませながら湧き水の出る岩を後にした。
夕方、村についた。
「まじか」
村だ。町ではない。どう見ても村だ。
崖の上の木の陰からこっそり下を伺う。
ものの見事に竪穴式住居。高床式倉庫。瓦などありはしない。
それだけなら縄文テーマパークかと思ったが、粗末な麻の服を着た住人が老若男女歩き回っていた。魚が刺さった木な銛を担ぐ者。石臼で木の実をすりつぶす者。極め付けは男女共に上半身裸だった事だ。Oh...
・喰われる
・森で迷子
・幼女になる
・タイムスリップ←NEW!
もう何があっても驚かない事にした。