峠
あたしがいなければひとつの家庭が壊れずに済むって分かってるけど、
それでもあたしはなかなか別れを決意できなくて。
でもそれは全部あたしのためで、あたしの我慢ひとつで救われる人がたくさんいるって分かってるけど、
でもでももうすでに遅いじゃんとか、今そんなこと言うなら最初からそうしとけば誰も傷付かないのにとか、
たくさんの葛藤があっても、結局あたしは結論を出せずにいて、
でも彼は、あたしが言いたかったことを、簡単に口にしました。
「これ以上お前悩ませたくないからいっそふってくれ」
と、言われて、言葉に詰まりました。
ほんとにこれでいいのかな?これが自分が望んでた結果かな?
「身を引いた」ふりして自分を正当化したいだけなんじゃないかな。
どれくらい続いたか分からない沈黙の後、何をどうしたら良いのか分からなくなってしまったのに、
今の時間が苦痛でとりあえず断ち切りたくて、
「分かったよ」 と言ってしまっていました。
でも、
彼はその場を去らず黙ってずっとそこに居続けるので、あたしはさらにどうしていいのか分からなくなりました。
その後、さらに続く沈黙の間、
考えて、考えて、
もしかしたら彼は引き止めて欲しいのかな?
あたしはなるべく彼を追い詰めないようにって思ってたけど、
もしかしたら彼は、強引にでもあたしのとこにきてって言って欲しいのかな?
と、なにかをきっかけにすごい自分本位に解釈し始めて、
”だとしたらやっぱり自分と彼以外の気持ちを考えるのはよそう”と、
彼と一緒になるんだと決意したときの気持ちに戻って、
今度はそれをちゃんと彼に伝えました。
「分かった、もうあたし決めたよ。
あたしがあなたのことを好きで、あなたがあたしのことを好きと言ってくれるなら、
もうそれ以外のことは考えない。
でもヒトリになるとまた余計なことばかり考えちゃうかもしれないから、なによりあたしを優先して?
会える日は全部会いに来て。もうできるだけあの人のトコには帰らないで。」
一気にしゃべるあたしを瞬きをせず見てた彼は、少し圧倒されたような後、
「分かった!じゃあ、オレもそう決めた!」
と、笑いました。
コンプレックスだらけであたしはなかなか自分のことを好きになれないでいるけど、
彼はいつも、「そのままの普通のお前がいい」と、言ってくれるから、
彼はこれから先もきっと、あたしのことを一番に考えてくれるから、
あたしは余計なこと気にせず、あたし本位で行動すればいいんだ。
最近燻ってたブルーな気持ちが一気に晴れた。
これからも越えていかなきゃいけない問題はたくさんあるだろうけど、
ひとつの峠を越えて気分です。