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【ヒーロー】

かつての師匠が語る左腕の本性

【野球】

2010年10月20日 掲載

「負ければ終わり」の大一番で4安打無四球6奪三振の完封劇

●成瀬善久(ロッテ・投手)
 恐ろしいほど落ち着いていた。レギュラーシーズン3位から初の日本シリーズ進出を演出した、ロッテ・成瀬のことだ。CS初戦から中4日での先発登板にもかかわらず、ソフトバンクに二塁を踏ませない好投で、4安打無四球6奪三振の完封勝利を収めた。
 ファイナルステージは3勝3敗と最終戦までもつれ込み、「負ければ終わり」という大一番。緊張と不安が背後に迫る中、左腕エースは至極冷静だった。「ブルペンから落ち着いていたが、マウンドでも何も変わらなかった」とは西本投手コーチ。
 高校時代、成瀬を自宅に下宿させていた横浜高前部長の小倉清一郎コーチによれば、いかにも気の弱そうな風貌とは裏腹に、強気でマイペース。当時、小倉コーチが「何だ、そのフィールディングは」と一喝すると、あからさまにふてくされた。野球部を引退した9月から高校卒業までの約半年間、ひとつ屋根の下で生活を共にしたが、小倉コーチが「学校まで(車に)乗っけていってやる」と言っても、知らん顔で勝手に電車で行ってしまったこともあったという。
「成瀬はランニングが嫌いでしょっちゅうサボっていた。そのたびに怒鳴りつけていたが、翌日、お構いなしにまたサボる。そのくせ、試合本番ではコントロールが良くて抑えるから、最後は強く言えなくなっていた」と小倉コーチは笑う。
 小倉コーチが絶賛するそのコントロールは、高校時代から一級品だった。
「成瀬の持ち味は何よりコントロール。スピードは135キロそこそこだけど、(同じ横浜高出身の)松坂や涌井とは比べものにならないくらいコントロールがいい。あんなに制球のいいピッチャーは見たことなかった。捕手の要求した通りに(球が)行きすぎるから、配球が(打席で)バッターに読まれて苦労したくらい」(小倉コーチ)
 14日のCS初戦。4安打1失点で完投勝利を収めたばかりの教え子から電話が来た。「珍しく力で押していたな」と伝えると、成瀬は笑っていたという。この日は一転して、変化球主体で打者の打ち気をそらした。硬軟自在のピッチング。試合後「きょうが一番プレッシャーがなかった」と話した左腕は、最後までケロリとしていた。
~2010年10月20日以前の記事~