2010年10月20日8時3分
釣りファンに人気の高い和歌山県串本町で釣り船や渡船を営む約30の個人・法人が大阪国税局の税務調査を受け、昨年までの数年間で計約3億円の申告漏れを指摘された。帳簿への記入や管理がずさんで売り上げを適切に申告していなかった業者が多い一方、船に乗せた釣り客を実際より少なく見せかけて所得を隠していた悪質なケースもあったという。
関係者によると、国税当局が特定地域の釣り船・渡船業者を集中的に税務調査するのは異例。メジロやイシダイなどが釣れる串本町では、釣り船などを営む個人・法人の「遊漁船業者」が100以上登録されている。串本町を管轄する新宮税務署員らが昨年夏〜今年初め、プロジェクトチーム(PT)を立ち上げて一斉調査した。
PTのメンバーは夜明け前から釣り人を装って港で張り込み、釣り船や渡船の出航時刻や利用客数を確認。実態を把握したうえで本格的な調査に乗り出した。その結果、帳簿に売り上げをきちんとつけることを忘れるなどの「悪意のない事例」(関係者)のほか、船を利用した客の数を意図的に差し引いて売り上げの一部を除外していた業者もいたという。
重加算税を含めた追徴課税は総額数千万円で、指摘を受けた業者らは修正申告に応じたとされる。串本町で釣り船・渡船を営む複数の業者は朝日新聞の取材に「税務調査を受けたのは初めて。今後はしっかり売り上げを管理し、納税するようにしたい」などと話した。
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和歌山県串本町によると、同町には昨年1年間で推計10万人を超える釣り客が訪れた。今月初めの夕方、客3人を釣り船に乗せて港に戻ってきた男性が朝日新聞の取材に応じた。
男性が新宮税務署のPTによる税務調査を受けたのは昨年10月。少し前に同業者から「灯台で税務署員が船の釣り客の数を見ている」などと聞かされていたため、覚悟はできていたという。