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PJ: 林田 力

添加物を使用する「無添くら寿司」
2010年10月19日 08:27 JST


無添くら寿司のチーズグラタンの原材料表示(撮影:林田力、撮影日:2010年10月17日) 

【PJニュース 2010年10月19日】回転寿司チェーン・無添くら寿司は店名に「無添」を謳っているが、これは添加物不使用を意味しない。無添くら寿司のセールスポイントは食材に化学調味料、人口甘味料、合成着色料、人口保存料の四大添加物を使用しないことである。四大添加物以外の添加物は使用している。

例えば以下の食品で添加物が利用されている。
・チーズグラタン:増粘多糖類、カロチノイド色素
・カリカリポテト:増粘剤
・スイートポテト:クエン酸、着色料
・緑茶:ビタミンC

最後の緑茶のビタミンCは酸化防止剤として添加されるものである。これは酸化されやすいというビタミンCの性質を利用している。ビタミンCが酸化されることで緑茶の成分の酸化が抑えられ、緑茶を新鮮に保つことができる。

あくまで無添くら寿司は四大添加物不使用と述べており、他の添加物を使用していたとしても、嘘はついていないと主張するかもしれない。しかし、自社で選定した4種類の添加物を四大添加物と称し、それらを使用していないから「無添」と謳うことが公正であるかは疑問が残る。

問題は「無添」という言葉から想起する消費者の期待に応えられるかである。それが裏切られたならば、いくら「嘘はついていない」と述べたところで企業内でしか通用しない独り善がりな論理に過ぎない。「売ったら売りっぱなし」で売り抜けられればいいという悪徳業者の発想に立たない限り、消費者の期待を裏切れば企業としては負けである。

そもそも四大添加物不使用のバックボーンになる企業理念「食の戦前回帰」からして疑問である。「食の戦前回帰」は「添加物を含まない、素材そのものの味わいを求め、「食」が安心・安全だった戦前の食卓に戻ろう」という意味が込められている。

その趣旨は理解できるが、何故に戦前なのか。工業化によって汚染される前に戻るならば、戦前では中途半端である。江戸時代への回帰とした方が自然である。実際、持続可能な循環型社会として江戸時代は見直されている。

戦前回帰という言葉は政治的には軍国主義の復活を連想する。個人を抑圧する軍国主義的な風潮に染まっている組織は現代日本でも存在する。それはブラック企業である。そして無添くら寿司を経営する、くらコーポレーションもブラック企業との指摘を受けている。戦前回帰を掲げる企業とブラック企業が重なることは興味深い。
くらコーポレーションがブラック企業と認識された契機はテレビ番組による内定辞退強要報道である。これに対し、くらコーポレーションは内定辞退の強要は事実無根と反論した(林田力「くらコーポレーションが内定辞退強要報道に反論」PJニュース2010年10月14日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5071300/

しかし、その反論自体が添加物を使用しながら「無添」と冠することと同じ独り善がりを印象付ける。労働法上、内定辞退が内定者の自発的意思によるものか、企業が強要したものかで大きな相違が生じる。内定辞退者による裁判が起きているが、この点が裁判の争点になる。それ故に、くらコーポレーションが内定辞退の強要はなかったと反論することは法務的には重要である。

しかし、テレビ報道に対するインターネット上の反応は、極論すれば内定辞退が自発的か否かは問題ではなかった。現実の人間の意志は自発的意思か他者からの強要かで一刀両断できるものではない。内定辞退のような不利益な決断をする場合、多かれ少なかれ他者からの働きかけが存在する。

仮に純粋に自発的意思であったとしても、折角取得した内定を辞退することは余程のことである。とても働けないという企業体質を目の当たりにしたからに他ならない。内定を強要しようと、自発的意思だったとしても、ブラック企業であることには変わらない。

それ故に強要はなかったとの反論はブラック企業との指摘には無意味である。「最近の若者の気質」にまで言及して自社を正当化するならば、ブラック企業の烙印が強化されるだけである。添加物を使用しながら「無添」を冠する無添くら寿司と市民感覚の乖離を感じた。【了】

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PJ 記者