きょうのコラム「時鐘」 2010年10月20日

 桂三枝さんの連載「落語とわたし」が終わった。味わいのある芸談をもっと読みたかった

軽妙な語りのタレントという印象が強いが、三枝さんは当代きっての新作落語家。連載でも触れていた「ゴルフ夜明け前」は、坂本竜馬と近藤勇が京都でゴルフ対決をする楽しい一席である

「近藤さん、OBじゃ」「何、帯が解けたか」といった会話が笑いを誘う。何よりもおかしいのは、西洋を知る竜馬がゴルフの名を「こるふ」と近藤に教え、二人が事あるごとに舶来の「こるふ」を賛美するという仕掛け。生半可に横文字を使うおかしな知識人は、今も山ほどいる

30年近く前にできた落語は今も鮮度を失わない。逆に昨今の笑いの薄っぺらさが分かる。が、よくしたもので、「こるふ」に似た笑いを、今は国会審議が届けてくれる。首相は得意げに「大風呂敷」を広げ、官房長官は「柳腰」を自慢して失笑を誘う

極めつけは実力者の「一兵卒」発言か。あの人が一兵卒なら、彼を慕う大勢のセンセイは半人前となる。そんな人たちが「国民の生活が第一」と心配してくださる。ありがたくて涙が出そうになる。