2010年10月20日0時0分
社員が自己負担で入会金を支払った顧客会員カードの一部。宿泊者の代わりにペットや小物類の写真を張りつけていた
フロント業務の長時間労働をめぐる労使トラブルが表面化している大手ビジネスホテルチェーン「東横イン」(本社・東京都)の四国にある一部店舗で、顧客会員カードの入会金を社員が自己負担で支払っていたことが、東横イン労働組合(三田圭子委員長)の調査で明らかになった。同労組は「ノルマ達成のため上司から強制されていた。他店でも同様の行為があるのではないか」として再発防止を会社側に求めた。
このカードは「東横インクラブカード」。公式ホームページによれば、入会金(キャンペーン価格)は1500円で、無料宿泊券(10泊で1枚)や割引などの特典がつく。労組の説明では、この店舗では部屋数と同じ数の新規会員獲得が毎月のノルマとされていたという。
フロント業務に携わる複数の社員が労組に証言したところでは、ノルマが達成できそうもない月末、支配人から「今月は買い取ってもらうからね」などと不足分の穴埋めを迫られたという。新規入会1件につき100円の「手当」がつくが、差額の1400円が自己負担となる。
カード登録には宿泊客の写真も必要。「買い取り」の際には社員自身の写真や雑誌のモデル、足りなければペットなどの写真まで使っていた。架空の人名を登録したうえで、実在しない顧客のカードを作っていたという。
昨年7月分と同12月分を労組が調べたところ、フロント社員4人が総額6万4500円を負担。それぞれ月に約6千〜約9千円を払っていた。女性社員の一人は「断れば無理な仕事を押しつけられるなど制裁が怖かった。ノルマ強制はもうやめてほしい」と訴える。労組側は「全店舗で強制していたわけではないが、厳しいノルマを課す体質が背景にある」とみる。