2010年8月24日 22時17分 更新:8月24日 23時29分
連日うだるような暑さが続く日本列島。気象庁によると、この夏の東京都心の猛暑日の日数は観測史上2位、熱帯夜は3位に達している。9~10月も平年より気温が高い状態が続くとみられる。「酷暑長期化」は、暮らしや健康にどんな影響を与えるのか。【八田浩輔、飯田和樹、井出晋平、田村佳子、和田憲二】
■天候
気象庁は24日、9月初めの平均気温がかなり高くなるとする異常天候早期警戒情報を出した。各地で8月29日ごろから1週間は平年より0.9~2.3度高くなるとしており、暑いまま9月がスタートし、真夏日となる所も多い見込みだ。その後についても、日本列島を覆う高気圧の勢力はなかなか弱まらず、10月までは平年より気温が高い状態が続くとみられる。
また、夏から秋にかけては台風が気になるが、今年は5個しか発生していない。8月末時点で4個しか発生しなかった98年に次ぐ少なさだ。
■体調
9月も厳しい残暑が続いた場合、人の体にはどんなリスクが生じるのか。健康に対する気象の影響に詳しい気象予報士、村山貢司さんは「夏バテ」の継続と学校での集団熱中症を懸念する。「日中の高い気温が体に負担を与えており、熱帯夜のせいで不規則な睡眠が続けば体調を崩しやすい」。その結果、免疫力が下がり、感染症などの病気にかかりやすくなるという。
酷暑がもたらす間接的な影響として、来春に花粉症が増える可能性もあるという。光合成で大量の糖分ができれば、花粉を作るスギの雄花も多くなるためだ。村山さんは「暑い日が続けば、スギとヒノキの花粉の量は、今年の5倍以上になる可能性がある」と話す。
■生活品
暑さで一定のプラス効果が出た衣料・食品業界からは反動を懸念する声が出始めた。
全国の百貨店の7月の売上高は、夏物衣料が好調で、前年同月比1.4%減と減少幅は6月(6.0%)から改善した。だが、百貨店各社などによると、今も夏物が売れ、秋物は今一つ。そごう・西武は「気温が下がらないと、お客さんが秋物を見ようという気持ちにならない」と話す。日本百貨店協会も「単価の高い秋物が振るわないと、売り上げは最終的にマイナスになりかねない」と気をもむ。
アパレルのワールドは当面、カーキや紫など秋色ながら夏素材で涼しい「端境商品」を中心に展開する予定という。ただ、「(価格が高い)本格的秋物が売れてほしい」(広報)と話す。
食品業界はアイスクリームの売り上げは伸びているが、チョコレートは不振。各社は9月からバレンタインデーなどに向けた新製品を発売するが、「猛暑で小売店から新製品の注文が来ない」(大手菓子メーカー)という。
■果物
季節の味覚はどうなるのか。農林水産省は「今夏は日照が確保され、秋の果物の甘みが増すと見込まれる」。盛んな光合成で糖分が十分に蓄えられるためだ。山梨市でブドウ園を営む男性(67)は今月から巨峰の出荷を始め、「甘みが増して、顧客から再び注文があった」と話す。だが、収穫量は減っており、価格は上昇気味。茨城県のナシ農家の男性(30)は「例年より小玉で収穫量も2割近く減った」と話す。