東出雲町で、40歳の長男が両親を殺害する事件が起きました。12日に発表した松江署によると、長男は統合失調症で入院歴があり、現在は通院中。刑事責任が問えるのかどうか現段階では何とも言えず、毎日新聞は社内基準に照らし合わせ、長男を匿名にしました▲本人を推知させる関係者も伏せなければ、匿名の意味合いは薄れます。ところが、13日の各紙は判断が分かれました。全国紙、地方紙6紙のうち、両親も匿名にしたのは毎日新聞を含む3社。実名は3社でした。実名か匿名か。犯行の内容にもよりますし、実は、線引きは難しいのです▲「通院歴はあるのか、ないのか」。若いころデスクによく聞かれ、「精神的疾患があれば匿名」という意識が刷り込まれました。しかし、「疾患」という言葉でひとくくりにするのは乱暴です。私には、統合失調症と診断され、長年闘病生活を送った知人がいます。心温かい、誠実な人です。「精神疾患=怖い」という偏見の方が怖い。今回のような事件が起こるたびに痛感します。【元田禎】
毎日新聞 2010年10月14日 地方版