F.E.R.C Research Report - File No.0466
「ブラックマネーの謎 追加報告!
国際詐欺事件の犯人逮捕!凶悪事件の真相が明らかに!」

2003/05/18 報告
2003年2月23日、通称『419事件』と呼ばれる国際的詐欺事件について報告した。これは、「ブラックマネー」と呼ばれるアメリカの100ドル札を黒く塗った物という紙を、元に戻すには特殊な薬品が必要と偽り、その代金をだまし取るのだ。
そして、このリサーチ報告から数週間後。なんと東京で、ブラックマネーを使った詐欺容疑で2人の外国人男性が逮捕されたのである。我々はこの詐欺事件に遭遇した人と接触し、事件の詳細について話を聞くことが出来た。この事件の経緯を検証し、日本で実際に起きているブラックマネー事件の実体について報告する。
東京都内で会社役員をしているある男性が、都内の喫茶店に入った。そしてスーツ姿の身なりの良い3人の外国人グループに、隣の席が空いているか英語で声を掛け、座ったという。すると、その外国人たちは、英語が話せると判断したのか話しかけてきたのだ。アフリカからビジネスで来たというデビット、マーク、ジョン(すべて仮名)と名乗る3人は、帰り際に携帯電話の番号を男性に渡し、名刺をもらえないかと言ってきた。男性は特に気にすることもなく名刺を渡した。すると翌日、携帯電話に昨夜の外国人から電話がかかってきた。折り入って相談したいことがあるというので会ったところ、男たちは次のような驚くべき話を語り始めたのだ。

「実は、デビットはリベリアの元大統領サミュエル・ドゥの息子で、私たちはその親族です。サミュエル大統領は失脚する前に、アメリカから資金援助を受けた秘密資金を地中に埋めたのです。私たちは最近、その秘密資金を掘り起こし、国外に持ち出しました。実は、アメリカから送られたその秘密資金は、そのままでは税関を通りませんので、特殊な加工をして黒く塗ってあるのです」

そう語ると、デビットが黒い紙を取り出し、何やら薬品をその黒い紙に垂らし、こすり始めた。すると、みるみる表面の黒い部分がはがれ、100ドル札の模様が見えてきたのだ。そして…
「こうしたお札が500万ドル分(約6億円)あり、安全に保管出来る場所を探しています。あなたの会社に投資してもいいので、ビジネスパートナーとして協力してもらえませんか」
と言ってきたのだ。帰宅後、男性がリベリアの元大統領サミュエル・ドゥについて調べてみると、確かに1990年に殺された元大統領であることがわかった。数日後、再び会うことになったが、待ち合わせの場所に現れたのは、マークとジョンの2人だけ。デビットは都合が悪くて来られないと言う。そして…
「500万ドルのブラックマネーが入った旅行ケースと、それを元に戻す薬品は、現在アメリカ大使館の人が持っています。それを受け取るのには1万8000ドル必要なのですが、私たちには6000ドルしかありません。実は、6000ドルで旅行ケースと薬品の両方受け取れるように、今デビットが交渉に行っているのです」
すると、男性の携帯電話に、大使館の人と会っているというデビットから次のような連絡が来たのだ。
「6000ドルでは、お金の入った旅行ケースか薬品のどちらかしかもらえません。ひとまず旅行ケースをもらいましたが、薬品をもらうには、あと1万2000ドル必要なのです」
ここで、彼らは1万2000ドル=約150万円の援助を依頼してきたのだ。迷った男性は、友人に相談し、一緒に会うことにした。外国人たちはその友人の目の前でも黒い紙を100ドル札に戻した。そのため怪しい話とは思いつつも二人は150万円を半分ずつ出すことにしたという。

翌日昼過ぎ、外国人たちは500万ドルが入っている大きな旅行ケースを持って登場。そして150万円を渡すと、ジョンが一人を残して薬品を取りに行ってくるという。そして夕方、大きなシャンパンの瓶のようなものを抱えてジョンが戻ってきた。彼が、ブラックマネーは光に弱いので部屋を暗くしてくれ、というのでカーテンを閉めきり、薄暗い中でブラックマネーを元に戻す作業が始まった。瓶から出てきた薬品は黄色いどろっとした液体で酸っぱい臭いがしたという。それでブラックマネーを洗ったところ、次第に100ドル札の模様が見えてきた。しかも、液体の方は全く濁らない。ところが作業開始から約1時間後、ドル紙幣が38枚、元に戻ったところで事態が急変する。なんとジョンが、薬品が化学反応を起こし固まってしまい、瓶から出てこないと言うのだ。確かに瓶の中で液体が揺れる音は聞こえるが薬品は出てこない。ジョンは今日の作業はここまでで、明日、大使館の人にかけ合ってくると言う。そして…
「今日、元に戻った3800ドルも、残りの旅行ケースのブラックマネーも預けるから、自分たちを信じてほしい」
という。だが、ここで彼らの話の鵜呑みにはできないさらに決定的な事態が発覚する。彼らの話によれば、これらのお金は1990年に殺害された大統領が失脚前に埋めたもので、お札は当然1990年以前に発行されたものでなければならない。ところが、なんと2001年発行のドル紙幣があったのだ。ジョンに問いただしてみても、わからないと答えるだけであった。
翌日、ジョンとマークはアメリカ大使館の「薬品をもらえる」という証明書を持って現れた。しかし「あと200万円必要だ」という。予想したとおりの展開に男性は、これが詐欺であると確信を得たのである。さらに数日後、テレビを見ていて驚いた。なんと「特命リサーチ200X」で、ブラックマネーを使った国際的詐欺犯罪について放送しているではないか!改めて、このブラックマネー事件が国際的な詐欺事件であることを認識したのだ。
そして男性は、警察に通報。その後、男性は200万円を渡すといって、ジョンとマークを呼び出した。何も知らない二人は約束の時間通りにやって来て、陽気に薬品の入手方法について説明し始めた。だがその時、別室に隠れていた捜査官たちが一斉になだれ込んできたのだ。こうして今回のブラックマネー事件は二人の容疑者を逮捕するに至ったのである。

今回の事件の注目点は、まず、騙すためのマニュアルに沿って、完璧な役割分担がされていたと思われる点である。例えば、被害者が話を疑い始めると、大統領の息子というデビットが「信じないのであれば、もういい。自分たちは無理に頼んでいるわけではない」という態度を見せて口をきかなくなる。すると残りがデビットをなだめながら、間に入って話を進め、被害者の疑問点を誤魔化してしまう。つまり、「怒る」役、「なだめる」役といった役割分担があらかじめ決められていたと考えられるのだ。
次の注目点は、容疑者たちも、この詐欺にお金をつぎ込んでいた点である。
@最初に被害者を呼び出した時、黒い紙から元に戻した100ドル札3枚を被害者に持ち帰ってくれと渡している。
Aブラックマネーを洗った時にも元に戻った38枚の100ドル札を被害者に渡している。
これらは確かに本物の100ドル札だったという。
つまり50万円近くのお金を本当に黒く塗りつぶして用意していたのだ。

では、この事件で使われていた100ドル紙幣に戻るブラックマネーとは一体どのようなものだったのだろうか?
被害者の話によれば、
@ブラックマネーはグレーがかった黒で、お札の模様が透けて見えることはなかった。
A薬品は黄色い液体で酸っぱい臭いがした。
B薬品で洗った時、薬品の方は濁らなかった。
これらのことから何か化学的な反応によるもと考えられる。そして、我々が調査を行ったところ、ある仮説が浮かび上がってきた。それは市販の「うがい薬」を使う方法。これに「ある物」を混ぜて使うと、うがい薬の成分であるヨウ素が反応して黒い色になる。このブラックマネーを黄色い、酸っぱい臭いのするレモン汁などビタミンCを含む液体の中にひたすと、うがい薬の成分であるヨウ素分子がビタミンCによって無色透明のヨウ化物イオンに変化するため、元の模様が見えてくるのである。しかし、この方法の場合、ただの水を使っても黒い色が落ちてしまうのだ。 そのためブラックマネーには、さらに高度な技術が使われていると考えられる。
こうしたことから、この犯罪の背後には、それなりに資金を持ち実際にブラックマネーを作り出しているなんらかの組織が存在していると推測される。この事実関係については新たな情報を入手次第、追って報告する。
日本国内で起きていたブラックマネー詐欺事件。しかし、こうした話は必ずどこかで辻褄が合わなくなるものである。「うまい話には裏がある」ことを忘れずに、こうした詐欺の手口を知ることであなた自身の身を守ることに役立てていただきたい。
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