蓬莱の島通信ブログ別館

「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

中華人民共和国ブロガーの間で高まる「琉球」奪還論

2005年11月09日 | 「謀略」に抗するために
 昨年末の中華人民共和国潜水艦による沖縄・先島諸島への領海侵犯(国際法による通過告知義務違反)事件からもうすぐ一年になろうとしている。昨年の事件の頃、google簡体字版で「琉球是中国的」を検索してみても、出てくる記事は尖閣諸島関係が大半で、”琉球諸島は中華人民共和国領である”という主張を述べたページは、ブログで見つけた一件だけだった。
 一年経った今はどうか?ざっと見ただけで、以下のように、中華人民共和国ブロガーの間で、多数の、”琉球諸島は中華人民共和国領である”という主張を展開するページが見られるようになった。
 今年、初夏の頃、中華人民共和国の研究者が、「琉球領有権未確定論」を出したそうだが、その論が引用あるいは敷衍されて、次第に拡大しているようである。
 今後、少しずつ検討してみたいが、,らは、中華人民共和国官僚の発言やCCTVでの「戦後60周年記念」放送を捉えてのブロガーの感想、きイ蓮◆瀕圧綵島は中華人民共和国領である”ことの”歴史的証明”である。
 今日は、,陵彭世鮠匆陲靴燭ぁ

〔圈半官方的説法:琉球是中國的領土--釣魚島的本質是..
http://bbs.ce.cn/bbs/thread.jsp?forum=139&thread=95566&postsord=0&thstart=0&message=192167
中央電視台終於喊出琉球群島是中國的了,振奮啊
http://www4.blog.163.com/article/-84Mn-ee9sZy.html
主題: 為什麼中國地圖上的琉球是日本國的土地
http://bbs.cctv.com.cn/forumthread.jsp?id=6683266
げ繩:被中國遺失卻不願意脱離中國
http://www.nihaoblog.com/526_22369.html
ノ圧縱∪ё穹覆滅的
http://news.ysu.edu.cn/xwzx/sszl/document.2005-04-21.1092340955

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猛!半官方的説法:琉球是中國的領土--釣魚島的本質是..
(心強い!半公式の主張:琉球は中国の領土である−尖閣諸島問題の本質はこれだ)
http://bbs.ce.cn/bbs/thread.jsp?forum=139&thread=95566&postsord=0&thstart=0&message=192167
台灣11日消息:據中評社(記者 鄔雲報道),中國前駐日外交官唐淳風10日接受中評社專訪時表示,日本首相小泉純一郎面對政局危機,為轉移國内視線,必然挑起國際紛爭,特別是利用東海油氣田問題,中日雙方今年内很可能打起來。(中略)唐淳風認為,東海問題考驗中國大智慧。他説,解決東海的關鍵在琉球。琉球是被日本非法佔領的,中國從來就沒有承認所謂將沖繩交給日本的《舊金山和約》(1951年美國英國不顧中國反對簽訂)。他指出,日本挑戰東海、釣魚台,要爭的是琉球。他説,不管從國際法,還是二戰後聯合國托管協議看,琉球是中國的。中國應該據理力爭回琉球;爭回琉球,就不再有釣魚台、東海問題了。
(台湾11日の情報:中評社によれば、中華人民共和国駐日外交官の唐淳風が、10日に中評社のインタビューを受けたときに以下のように述べた。日本の小泉首相が政局の危機に直面して、国内に視線を向けさせると、国際紛争は必至である。特に、東シナ海のガス田問題を利用すると、中日双方は今年撃ち合いを始める可能性がある。(中略)唐は以下のように見ている。富樫シナ海問題は中華人民共和国にとって知恵が試される問題で、解決の鍵は琉球にある。琉球は日本に不法に占拠されたもので、中国はもともと沖縄を日本に与える「サンフランシスコ条約」を承認していない。1951年にアメリカと英国が中国の反対を顧みず調印したにすぎない。日本は東シナ海、尖閣諸島で主張を強めているが、争うべきは琉球である。国際法ばかりでなく、第二次大戦後の国連の信託統治協議を見ても、琉球は中国のものである。中国は論理の力(理力)で琉球を奪回しなくてはならない。琉球奪回が、尖閣諸島にとどまらず東シナ海問題解決の鍵である。)
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 これは2005年8月13日に「中国経済網」に投稿されたブログの記事で、東シナ海問題解決の方法として、前駐日外交官唐淳風の「琉球奪還論」の記事を引用している。

 前駐日外交官唐淳風という、この人物が何者かについては、関連記事がある。
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「大紀元時報日本語版」
日本脅威論?進む中国のファシズム化
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/08/html/d80430.html
【大紀元日本8月14日】前駐日中国大使館商務参事官・唐淳風氏は8月10日、香港のメディアに対して、年内に日中の間で軍事衝突が起きる可能性があるとし、日本の脅威に備えるべきであると述べた。武力行使について政府関係者からの発言としては、中国軍部の朱成虎少将が先月、北京の国防大学での演説で、米国政府が台湾海峡での武力紛争に介入した場合、核攻撃も辞さないと述べている。今春の反日運動の扇動から日本脅威論のプロパガンダへと、日米を戦争相手国とした中国のファシズム化傾向が水面下で進んでいるようだ。
 中国商務部研究員で日中問題の専門家とされている唐氏はこのほど、マカオで抗日勝利60周年記念行事の一環として「日本の政治と外交及び日中関係の今後五十年を探る」をテーマにした学術会議出席した。その帰路、香港に立ち寄り「中国評論新聞社」の取材を受け、当該の発言をしたという。
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 「大紀元」報道なので、噂話程度というところかもしれないが、「中国商務部研究員で日中問題の専門家とされている唐氏」が本当だとすれば、この人物は、日本通のふりをして、とんでもないでたらめを、中国国民に流して煽動していることになる。
 この人物の発言から言えることは、二つある。
 一つは、「琉球」奪還論の前半にある、”中国と日本が今年、軍事衝突をする”というデマで、”日本通”を利用して活動してきた中華人民共和国”外交官”が、こうしたでたらめを平然と公言するようになったところに、この国の明かな変化を確かに読み取ることができる。心理学的には「投射」と言われるが、この発言には、自分の願望を、まるで相手がそう望んでいるかのように相手の願望として解釈する心理構造が端的に現れていると思われる。つまり、潜在的に中国にある”対日開戦論”を汲み取って、この人物は、外交官でありながら”日本の軍国主義化で中国は開戦せざるを得ない”という趣旨のデマをインタビューで流しているのである。
 もう一つは、法秩序の破壊である。この人物は、外交官という立場にありながら、サンフランシスコ条約のいきさつを勝手に解釈して、「中国は承認していない」から「琉球は中国領だ」という詭弁を、まるで国際的にまかり通るかのように主張している。しかし、近代法の原則は、今の取り決めを無視して、過去に効力を溯及してはならないという点にある。
 ここで言う中国は、中華人民共和国だが、日本との中華人民共和国とは、確かに、サンフランシスコ条約の平和条約では講和していない。しかし、その後の日中平和友好条約で、きちんと互いの領土保全を含めて講和条約を結んでいる。この唐氏は、そうした外交上互いに尊重すべき「現在の」平和条約を勝手に破棄して、「中国はもともと沖縄を日本に与える「サンフランシスコ条約」を承認していない。1951年にアメリカと英国が中国の反対を顧みず調印したにすぎない。日本は東シナ海、尖閣諸島で主張を強めているが、争うべきは琉球である。国際法ばかりでなく、第二次大戦後の国連の信託統治協議を見ても、琉球は中国のものである」という論を展開している。日本に関して、靖国問題を処理したサンフランシコ条約など、第二次大戦後の戦後処理の全体に対して、こうした論法は、今後ますます中華人民共和国で拡大して行くであろう。 
 「大紀元時報」は、氏のような言論の拡大を”ファシズム化”と呼んでいるが、まさにそのとおりで、第二次大戦を引き起こした恐怖のナショナリズムと同じ論法が、今、中華人民共和国でいわば”対日本攻撃正当論”として、展開されているわけである。この人物の最近の活動を「大紀元時報」は以下のように伝えている。

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先の引用の続き(http://www.epochtimes.jp/jp/2005/08/html/d80430.html)
唐淳風氏は、日中関係の専門家の立場から中国共産党の統一戦線を理論面から支えており、一貫して日本脅威論のプロパガンダを展開している。今年6月に「中日両国は開戦するか」を出版し、日本は平和憲法の範囲を超えて有事法制を整備し、周辺諸国と戦争の準備をしており、中国は日本に対する見方を修正しないと、甚大な被害を被ると警告している。また、8月3日には「日本の戦略方向と中国の対応」という文章を中国官製のBBS「人民網」で発表し、「日本には、小泉の支持の元に戦争愛好者がおり、結果を恐れず戦争を起そうとしている。東シナ海で開戦したら、我々はどうするか?我々の取るべき道は、日本の侵略行為を阻止するために闘争を展開することだ」とし、日本に対する軍事面での認識を改めるよう、中国社会に警告、日本の侵略方針は130年間変わっていないなどと、日本が脅威であることを強調している。
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 正式の外交官が、こうした発言をしている以上、日中友好はもはやすでに過去の歴史の一節に過ぎない。この唐氏の発言は、反響が大きく、google「唐淳风」で調べてみると、2200件のヒットが出た。以下のURLで検索できる。
http://www.google.com/search?hl=zh-CN&newwindow=1&q=%E5%94%90%E6%B7%B3%E9%A3%8E&btnG=%E6%90%9C%E7%B4%A2&lr=lang_zh-CN
 また、「唐淳風」で検索すると、以下のようにhttp://www.google.com/search?hl=zh-CN&q=%E5%94%90%E6%B7%B3%E9%A2%A8&btnG=Google+%E6%90%9C%E7%B4%A2&lr=lang_zh-CN
100件あまりのヒットがあった。
 こうした発言を借りて、「琉球」奪還論を含め、第二次大戦の戦後処理を破棄せよという動きが、中華人民共和国のネット利用者の間で今後加速されるのは、間違いない。(2005年11月7日)

追記(2005年11月9日)
 国際法の専門家ではないので、各条約の条文がどの程度の効力を持つのか分からない。しかし、中華人民共和国外交官・唐淳風の言う「中国はもともと沖縄を日本に与える「サンフランシスコ条約」を承認していない。1951年にアメリカと英国が中国の反対を顧みず調印したにすぎない。日本は東シナ海、尖閣諸島で主張を強めているが、争うべきは琉球である。国際法ばかりでなく、第二次大戦後の国連の信託統治協議を見ても、琉球は中国のものである」は、二重三重の誤謬を犯している。
 第一の誤謬:一般人の常識で考えれば、1978年に北京で調印された「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約 」の第一条「両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉」の原則なかに1972年に日本に施政権が返還された沖縄が日本領として認められていることが含まれていると見るべきであろう。

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「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約 」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_heiwa.html
第一条
1両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
2 両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
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 第二の誤謬:沖縄に施政権がアメリカから日本へ返還されたのは、1972年であり、WIKIPEDIAには、以下のように説明がある。

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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E8%BF%94%E9%82%84
1951年のサンフランシスコ平和条約では、沖縄はアメリカ合衆国の施政権下に置かれるものとされた。そのため、行政機関としての琉球政府主席や立法機関としての立法委員は公選とされ一定の自治は認められたものの、最終的な意思決定権はアメリカが握ったままだった。その間にも、アメリカ軍が琉球住民の神経を逆なでする事件がたびたび起き、左翼陣営も含めて本土復帰運動が推進された。
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 先の条文と沖縄での施政権返還の経過を読み返してみれば分かるように、唐の「中国はもともと沖縄を日本に与える「サンフランシスコ条約」を承認していない」という沖縄の地位に関する論は、サンフランシスコ条約の条文の読み違え、または、改竄である。サンフランシスコ条約で沖縄はアメリカに信託統治領として施政権が渡されたのである。

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第三条【信託統治】
 日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)、孀婦(そふ)岩の南の南方諸島(小笠原群島、西ノ島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。
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第二条で、旧日本帝国領の中で、樺太、千島、台湾など返還される土地が決まっているので、それ以外は日本領として認められ、その結果、日本領の内の第三条該当部分の施政権がアメリカに与えられたのである。これは条約に調印した全ての国が認めた「日本の領域」に関する規定である。
 従って、この中華人民共和国外交官唐の発言は、戦後処理に参加したアメリカはもちろんサンフランシスコ条約に調印した全ての国が認めた国際秩序に対する挑戦になる。

 第三の誤謬:中華人民共和国外交官唐の発言は、日中関係では、サンフランシスコ条約に優先する日中平和友好条約を事実上破棄している。自分がこうした国際法秩序を認めない以上、唐の言う「国際法ばかりでなく、第二次大戦後の国連の信託統治協議を見ても、琉球は中国のものである」は、成たない。つまり、法を成り立たせる信頼関係とそれを守ろうとする権威・権力の存在が、すでに中華人民共和国には存在しないことになる。まさに暴力を法に優先させるファシズムの論理が、こうした発言に端的に現れている。
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いろいろありそう (あきら)
2005-12-10 19:44:18
こちらにこのハンドルでのコメントは初めてです。まずはトラックバック有り難う御座います。御礼遅くなりました。平松教授のレポートと合わせて読むと東シナ海の独占したい状況がよく見えてきます。そして日本占領と台湾併合ですか。杞憂なら良いのですが。http://www.fides.dti.ne.jp/~shinwa/topics/forumhiramatsu.htm

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