【社説】庶民に負担強いる「健保上の不正」を放置するな
10億ウォン(約7300万円)以上の財産を保有するにもかかわらず、健康保険上は職場加入者の被扶養者として登録され、保険料を納めていない人が1万827人に達することが、国会国政監査の資料で明らかになった。220億ウォン(約16億円)もの不動産資産を所有しながら、健康保険料を一銭も納めていない人もいるという。
地域健康保険の加入者は、家族の人数に応じて健康保険料を納めているが、職場加入者の場合、給料の5.33%を保険料として納めれば、所得が500万ウォン(約36万円)に満たない配偶者や子女、両親、兄弟姉妹を被扶養者として登録し、健康保険の恩恵を受けさせることができる。被扶養者制度の趣旨は、単独では生計の維持が困難な家族のために、医療保障を用意するというものだ。だが、財産が10億ウォンを超える人にただで健康保険の恩恵を与えるというのは、被扶養者制度の趣旨にそぐわない。公務員年金や私学年金など、各種の年金を年間3000万ウォン(約220万円)以上も受給しながら、健康保険上は被扶養者となっている人も、現時点で4万6000人に上る。一方、派遣労働者や契約社員などは、120万ウォン(約8万7000円)程度の月給の中から毎月3万4640ウォン(約2500円)の保険料を納めなければならない。生活苦にあえぐ人々が、金持ち層の病院代を支援しているというおかしな状況なのだ。
高額の所得があるにもかかわらず、さまざまな手段で健康保険料の支払いを逃れている人も多い。年間数億ウォン(1億ウォン=約730万円)もの不動産賃貸所得がありながら、保険料が少額で済むよう、月給100万-200万ウォン(約7万2500-14万5000円)の会社員だと偽って申告し、摘発された人が、昨年1年間で1082人に達した。国民年金には、年金保険料を毎月納付しているにもかかわらず、健康保険上は被扶養者として登録し、保険料を一銭も納めていない人も多い。海外に移住し、健康保険の加入資格を失ったにもかかわらず、韓国に戻って不正に診療を受けて摘発されるケースも、年間2000人に上る。専門職従事者が所得を過少申告し、保険料納付額を低く抑えている例も後を絶たない。
こうした不正を食い止められないのは、健康保険公団、国民年金公団、国税庁の間で、国民の所得に関する資料がきちんと共有されていないからだ。機関ごとに異なる所得データを統合・管理する事業を前倒しで実施し、健康保険に関する「不公正」な行為がなくなるよう、早急に抜け道をふさぐべきだ。