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500円の夢
〜DVDを取り巻くヒトビト〜

1.ワンコインが団塊世代を魅了

2.生き残りかけソフト探し

3.著作権料の壁乗りこえ「おそ松くん」発売


1.ワンコインが団塊世代を魅了


【法の“盲点”ビジネスチャンスに】

 駅前のワゴンセールや書店の棚…。最近は至る所で「500円」のDVD群が目に飛びこむ。定番の洋画名作はもとより、昔懐かしのテレビドラマやアニメの数々。拡大する500円DVD市場という“金脈”を掘り当てようと集まったのは、女性社長に出版社社長、元音楽業界人ら多士済々だ。ワンコインで夢を売る“団塊の星”たちのドラマを追った。

 「発端は弁理士資格の取得試験だった」

 格安DVD業界に参入するきっかけをこう振り返るのはブレーントラスト(東京都中央区)の平山ミツ子代表取締役。

 同社はパブリックドメイン(PD)映画のマスターフィルム(原盤)を製造・販売している。

 PDとは主に(1)著作権の取得に必要な手続きを取らなかった(2)著作権の保護期間が経過した−などの理由により、著作権が失効し、公共の財産と見なされるようになった知的創造物。PDとなった作品は、著作権料を支払わずその作品を複製、販売できる。

 500円という破格値のカラクリだ。

 「今まで、550タイトルを製作。すでに約250タイトルを製造している」(平山社長)

 社員数17人の小さな会社ながら、昨年までに2億円を売り上げた。顧客の多くは業者だが、企業の販促用や英会話の学習本などへも素材を提供しているという。

 平山社長が、法の“盲点”に気付いたのは2000年の弁理士試験の科目改正がきっかけだった。「この年、試験科目に著作権法が追加された。勉強するうちに商売になると思った」

 証券会社に勤務経験があり、大手外資系証券会社に太いパイプを持つ平山社長は、人脈を生かして米国や欧州、アジア各国などからマスターフィルムを入手。人気洋画がPDとして“解禁”されるその日を待った。

 記念の第1作は04年に発売した西部劇の名作『シェーン』。「海賊版とは根本的に違う。弁護士とも入念に協議したうえで出した完全に合法的な廉価DVDだった」

 法律の穴を完全に抑え、満を持して出したはずだったが、版権を持つパラマウント・ピクチャーズ社は予想外の行動に出た。パ社は同社を相手取り、作品の製造販売の差し止めと損害賠償を求めて提訴したのだ。訴えの論拠は著作権法改正。旧法では50年だった保護期間は70年に延長されたのだ。

 「パ社が持ち出したのは、同法の施行日04年1月1日が03年12月31日と接している。そのため53年公開の同作は保護される、という法的解釈だった」

 だが、パ社の訴えは1審で請求棄却。控訴していた知財高裁でも棄却されている。パ社は同年公開の「ローマの休日」に関しても販売差し止めを求めた仮処分申請を別の業者に行ったが、申請を却下されている。

 パ社がこれほどに53年公開作品を死守しようとするのは、同年公開作品に名作が多いという事情もあるようだ。

 平山社長は「商品価値があるものをみすみすPDとして出してしまいたくないのでしょう。私たちのような零細企業は知的武装が生命線。大手映画会社は、資本のカサの中で安穏としすぎだ」と批判する。

 従業員のほとんどが団塊Jr.の女性というオフィスはまさに“女の園”。

 女性軍団を率いる女性社長は「1日中映画を見続ける地味な仕事。とても男の人にはできる仕事じゃない」と笑う。ウーマンパワーが500円DVD市場の台風の目になっている。=つづく



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