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悲しみを演じきる深い器 映画「七瀬ふたたび」の芦名星

2010年10月17日10時8分

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 昨年の映画「鴨川ホルモー」で演じた早良京子は、女性の鼻を偏愛する主人公に愛される大学生だった。「私の鼻で大丈夫かなと思いましたよ」と照れるが、なかなかどうして、非の打ちどころのないラインである。

 もちろん美しいのは鼻だけではない。冷たささえ感じる整った面ざしはこんな風に喜劇にも使えるわけだが、しかし、悲劇の中心に彼女を置いてみると、その魅力はさらに光沢を増す。

 映画「七瀬ふたたび」で演じる火田七瀬は、人の心が読める超能力者。人々の笑顔の下に潜む邪悪さが見えるため、人里離れて超能力者仲間とひっそり暮らしている。ところが超能力者撲滅を図る特殊部隊が七瀬たちを襲う。愛する人を次々失った七瀬は彼らの前に立ちはだかる。

 七瀬というキャラクターはよほど映像に向いているらしい。NHK少年ドラマの多岐川裕美を始め、幾多の俳優たちが七瀬を演じてきた。その中でも、原作者の筒井康隆をして「もっとも七瀬らしい」と言わしめた。

 「純粋にうれしいです。でもどのあたりが七瀬らしいんでしょう。長い年月読まれてきた小説であり、読者の皆さんそれぞれが七瀬のイメージを持っているんだと思うし、自分では分かりかねるんですけどね」

 強い意志力で胸の奥にしまい込んだ大量の悲しみ――。七瀬の特徴を言葉で表せば、このようになるだろうか。そして、大量の悲しみを詰め込むのに、彼女ほど適した器はない。いまどきの若い俳優にはめったに見られない深みを、彼女は持ち合わせている。

 七瀬を演じるに当たって、彼女を主人公にした3部作「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」を読み込んだ。「台本を読んだ時にいくつか疑問点が出てきたので、七瀬がどんな人生を歩んできたのか、知りたくなった」と言う。

 「『家族八景』の時の七瀬は自分の能力とどう付き合っていくか悩んでいたんですね。『七瀬ふたたび』で守るべき人が現れ、一人の女性として強くなった。七瀬は実は普通の女性なんだと思う。だから、超能力の部分で私の知らないことはあっても、彼女の気持ちで分からないところはありませんでした」

 器の良さに頼らず、中身を理解する努力も怠らない。原作者の太鼓判は伊達(だて)ではない。

(文・石飛徳樹)

    ◇

 あしな・せい 1983年、福島県生まれ。08年に公開されたカナダなどとの合作映画「シルク」でキーラ・ナイトレイらと共演し、注目される。今年は「ねこタクシー」ほか公開作が続く。「七瀬ふたたび」は各地で上映中。

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